「ケーちゃん、何か見えるー?」
「雪しか見えねぇよ!」
「ケーちゃん、何か見えるー?」
「今答えたばかりだろ」
「ケーちゃん、ククルククルとマギーホアが肩を組んでダンスしているの見えない?」
「おい、幻覚見え始めてないか? しっかりしろ! おい! 高度落ちてんぞ!!」
おっと、やべぇ。体に積もった雪が原因でちょっと意識が落ちそうになっていた。流石に北の豪雪地帯に長居するのはヤバかったな、と飛行しつつ軽いバレルロールを決める。角の間に陣取るケーちゃんがそれを必死に掴んで振り落とされないようにする。そうやって体の上に積もった雪を振り払い、身を軽くしてから大きく翼を羽ばたかせる。少しすっきりした。
「あー、やば。ハイパー兵器を手に入れる前にドラゴンの氷像になる所だった」
「俺様まで死ぬからマジで止めろよ」
「解ってるってケーちゃん。この【ウル様】にお任せよ。ただちょっと眠くなってきたから居眠り飛行してもいい?」
「止めろ! フリでもなんでもないからマジで止めろ! 止めろよ!!」
本気で焦るケーちゃんのリアクションを見て、がっはっはっは、と笑いながら少しずつ高度を下げて行く。流石に北の豪雪地帯を長時間飛行するのは未熟なドラゴンでは限度があるらしい。そろそろ休んだ方が良いだろう。そう判断し、高度を下し、そのまま着陸してから大地を薙ぎ払い、そこに穴を開けてサクッとシェルターを作った。自分が入る事前提なので、かなり大きなシェルターになってしまった。
「ぺったんぺったん。ちょっと溶かして固めてぺったんぺったん……まぁ、こんなもんだろ」
「あー、寒い寒い。クッソ、俺様が何でこんなことをしなきゃいけないんだ……」
愚痴りながら頭の上からシェルターにケーちゃんが飛び込み、転がる。愛嬌のある姿をしているが、その口調は悪辣な物だった。というか口が悪い。それさえどうにかすればもっと可愛いのだが。ケイブリス? 知らない子ですね。これはケーちゃんなのだ、ケーちゃん。どうせトロンが建国されたらエンジェルナイトの粛清で死ぬのだ、その先を考えるだけ無駄だ。そう、だからこの子はケーちゃんだ。ちょっとした感動。頑張れ、頑張れ。
まぁ、それはそれとして、ケーちゃんが焚火の準備をし、それに《火の矢》で炎を灯した。シェルター内に光が生まれ、そして黄金の鱗に光が反射され、ちょっとだけケーちゃんが眩しそうにしている。
「どうしたんだ、ケーちゃん。俺の高貴さにやられたか」
「いっぺん高貴って言葉の概念を考え直せ。クソ眩しいんだよお前の鱗」
「おぉ、ソーリー。俺の高貴さは隠せないんだ……」
「殺してぇ……!」
生きる為なら何でもするというスタンスのリス、ケーちゃんは土下座でも足を舐めるのでも何でもする。文字通り、なんでもだ。とはいえ、丁度長旅にオトモが欲しかったのも事実だ。変にへりくだられても困るので、素のままでいいという事にして、旅の道連れにケーちゃんを引っ張り回す事にした。最初はビビり続けるケーちゃんは面白かったが、しばらく連れ回していると表面上は遠慮はなくなった。
表面上は。
「しっかしほんと、この豪雪地帯にはなんにもないなぁ……」
「
いや、まぁ、そうなんだけどね? とケーちゃんの言葉に答える。確か未来にはヘルマンの領土だった筈なんだよなぁ、とおぼろげな記憶を引っ張り出している。設定とか周りだったら楽しいからガンガン読んで覚えていたが、だけど場所とか地名とか、そういうのはあんまり覚えていない。転生する前に神様がこれから転生しますよー! しっかりWIKI確認してくださいねー! みたいなサービス開始してくれないだろうか。ないよな。
「んー、じゃ次は東かなぁ。戦艦もないし」
まだ異星人ホルスの戦艦がヘルマン豪雪地帯にはなかった。つまり連中が来るのは恐らく魔王アベルの時代、AV歴になってからなのだろう。ホルスもホルスで良い観光スポットなので、連中が宇宙からやって来た時は軽く見に行っても良いかなぁ、って気分である。もしかしてホルスの超科学ならハイパー兵器の一つや二つ、生やす方法があるのかもしれない。
嫌だわそんな超科学。
「つーか、実在するのかよ神の扉なんて」
「あるぞー。たぶん創生の瞬間から神様が戯れに作ったのが」
まぁ、神様連中の考えている事は大分理解不能なのだが。一級神までは愚直にルドラサウムの為に働いているのが解るのだが、それ以上―――つまり三超神となるとまるで読めない。偏ったバランスに独自の発想、ルドラサウムの為に頑張っているというのは解るのだが、その内側での行動や思考が読めない。他の神々は大体狂信者だと認識してれば問題ないのだが。
それでも神の扉みたいなデバッグルームへの道を残す辺り、ほんとよくわからない。
「ケーちゃんは神様に気を付けろよ。連中、ほんと生物を苦しめる事しか考えてないから。絶対に味方だとか考えちゃいけないぞぉ。あいつらはほんと耳にチンコが突き刺さった状態で物事を考えているからな」
「おまっ……」
仮にも神に対する言葉じゃないのにケーちゃんが一瞬ドン引きするが、しかし、
「つーかお前、まるで神を知っているかのような言い方だよな」
「よーく知ってるよ。会った事はないけど、恐らく現存する生物の中では一番神に対して詳しいんじゃないかな? なんだ……興味ある?」
「おう、俺様が強くなる方法が解るかもしれねぇじゃんか」
そう言って胸を張るリスの姿はしかし、悲しいけどリスなのだ。まだまだ、可愛らしい姿をしているリスなのでそこで威張った所で威厳は欠片もない。これが遠い未来では最強の魔人と呼ばれる様になる程努力をして成長するのだから、世の中実に面白いもんだと思う。うーん、嫌いじゃない。だから唇を滑らせてしまう。
「まぁ、ケーちゃんだったらたぶん誰かに言う事もないし、軽く教えちゃおう」
まぁ、核心部分は言わないが。解りやすく整理しよう。
「まずこの大陸は創造神ルドラサウムが暇潰しの為に作った」
「暇潰し」
「そ、暇潰し」
根本的にはここはルドラサウムの箱庭で、そしておもちゃ箱なのだ。そのおもちゃを壊す瞬間がルドラサウムは大好きなのだ。
「で、今この世界を色々と管理しているのはルドラサウムを楽しませる為に生み出された三つの神様、三超神のプランナー、ハーモニット、そしてローベン・パーン」
ケーちゃんに教える。メインプレイヤーである種族、つまりメインの種族を生み出したのがローベン・パーンというキチガイ。バランス調整が壊滅的に下手でそれを反省する脳味噌を持たない害悪。生きているだけで迷惑なので死んでほしい神様筆頭。
次にハーモニット様。補佐を務める神々を創造したり、カラーを創造した神でもある。つまりハーモニットが自分の生みの親でもあると言える。とはいえ、同時に悪魔の存在と悪魔界の存在を知っていて放置しているので根元がクソなのはローベン・パーンとは変わらない。こいつも早く死んでほしい。
そして最後に皆大好きプランナー様。別名三超神最強のクソ野郎。第一世代モンスターである貝を生み出したのがプランナーだ。そして現在ではちゃつみ、ちゃそば、そしてハニー等のモンスターも生み出している。メインプレイヤーは謁見する事で唯一願いを叶えてくれる存在でもある。
「最後、特に酷くないよな」
「ところがどっこい、プランナーの糞は希望を与えて絶望させる事のプロフェッショナル。願いを曲解して叶える事によってその存在を破滅させる事を得意とするキング・オブ・クソなのだ」
「ロクなのがいねぇぞ……」
そう、本当にロクなのがいないのだ。神様は関わるだけ損する、そういう類の存在なのだ。
「ただし身に余る願いや世界のバランスを崩す願いじゃなければ普通に叶えてくれると思うんだよなぁー。だからケーちゃんも困ったら神の扉を探して願いを叶えて貰えばいいよ。今ならドラゴンを苦しめる様な願いを前提にすれば、叶えて貰えると思うし」
「誰がやるか! その話を聞いてから頼る訳ねぇだろ!!」
だよねー、とケーちゃんの言葉に笑いながらはぁ、と息を吐いて体をシェルターの中で休める。神の扉のある遺跡、間違いなくヘルマンにはある筈だから、豪雪地帯の付近だと思うんだよなぁ、と呟く。北部にはなかったから西部か東部……ここは棒を倒して適当に決めよう。どうせ神の扉を他に知る存在なんていないのだから。
「つかお前……それ、言ってもいい事なのか?」
ケーちゃんの言葉にちょい驚きつつも、んー、という言葉を零す。
「いいんじゃないかなぁ、どうせ俺は死ぬんだし」
「は?」
ククルククルがアベルに打ち取られてアベルが魔王になって、そうしたらアベルがカミーラをパクって、それにキレたマギーホアがラストウォーを開始。まさしくドラゴンの最終戦争が始まる。それによってドラゴンがこの大陸を統一してしまう。
「ドラゴン、調整ミスで強すぎるからね。ククルククルさえ死ねば後は勝手に大陸統一して世界平和。そんな退屈な世界、神様が許すわけないだろうし、俺ら皆殺しにされて次世代へと移行っしょ」
だから喋った所で問題はない。深く考えたり悩むだけ無駄無駄。最初から諦めて楽しむ事だけを考えれば良い。ドラゴンの滅びは確定しているのだから。それを覆す事は物理的に不可能だ。そして生き延びる事が出来るのは逃げ隠れが得意なケイブリス、魔人化したカミーラ、メガラス、そして高レベル技能を保有するドラゴンたちだけだ。自分の様な半端者はドラゴン・カラーに魔人級のエンジェルナイト粛清部隊と戦い続けるだけの力はない。
あっさりと始末されてデッドエンドがオチだろう。
「だから、まぁ、俺の言った事を適当に覚えていてくれ。俺が死んだあと、適当にそんな事を言っていたキチガイが居たとでも覚えてくれればうれしいさ」
「確実に忘れてやるから安心しろ」
ケーちゃんの変わらない態度に安心感を覚えながら、欠伸を漏らして体を丸めて暖を取る。豪雪地帯は中々寒い。だがこの寒さもドラゴンとして感じる初めての経験で、中々刺激的で、一生忘れる事が出来なさそうな経験だった。いや、絶対に忘れる事はないだろう。今の自分には法も社会も存在しない。
一匹の畜生として自由に生きているのだから。
殺したいときに殺し、喰らいたいときに食らう。
社会や人種、そういう枠組みから解放されている。ミリアがまるで存在しなくても、おそらくはかつてないほどの自由を得ているのだ。この自由を対価に数百年後殺されるというのであれば……まぁ、一度死んでいるのだし二度目ぐらいは問題はないかなぁ、と思えたりもしてしまう。
そんな事を考えながら眠りについた。
気づけばそれから更に数年が経過していたらしい。やっている事と言えばケーちゃんを頭の上に乗せて未来のヘルマンを探索し、ハニーなどのモンスターを見つけ次第即座に殺している事ぐらいだろう。探索範囲が広いのと知識がおぼろげなのが原因で、余りよく扉の場所を特定する事が出来ない。とはいえ、やはり種族として不老であるドラゴンだ、数年程度探索は人間の感覚に換算すれば数時間の探索の様なものだ。不老の種族を舐めちゃいけない。日時の感覚がだいぶ狂っている。
そんな訳でケーちゃんと一緒に北部を探検する数年間の間、お互いにレベルアップを目指して適当にモンスターを狩りながら、或いは軽い運動で肉体を鍛えたり、鱗や角の手入れを頑張ったりしながら過ごす数年を過ごした所で、
漸く、その目的地を発見する事が出来た。
既に半分朽ちている様な姿を見せている遺跡は根本的にドラゴンが入れるようなサイズはしておらず、ケーちゃんや少し大きめの生物でもなければ入る事の出来ない大きさだった。地下1階の目立たない端の方に扉がある事を告げると、それをケーちゃんが確認し、戻ってきた。
「本当にあったな……妄想じゃなかったんだな……」
「だーれが四六時中ラリってるだ。大体間違ってないけど」
ケーちゃんが戻ってきた所で手を差し出し、その上にケーちゃんを乗せた。そしてそのまま頭の上に乗せる。
「で、どうするんだ。扉開くのに必要なもんがあるんだろう?」
「黄金の像が四つ必要になるんだよなぁー。まぁ、俺はこれからそれを求めて冒険かなぁ」
まぁ、たぶんダンジョンとかにあるんだろうと思う。それを四つ揃える事で神の扉は開く事が出来る。少なくとも場所は確認して、存在するのも解った。だから後は開く条件を整えて遺跡を吹っ飛ばしながら中に入るだけだ。人間の姿? この時代にそんな姿の生物は存在しないのだ。
「かかか、カミーラさんもいないしなぁ」
「誰だそれ」
ケーちゃんにツッコミを入れられながらも、便利なタクシー代わりに飛翔する。扉を確認した以上はもう北部に用はない。次は黄金像を探す為に世界を飛び回る必要がある。ダンジョンレイドのお時間であった。
ククルククルが死ぬまでにハイパー兵器を手に入れるかどうか……かなり、怪しいラインだった。
原作まで4000年以上あると考えると雑に数年単位で進めたいよなぁ、って気持ち。後数話以内にはAV歴に移るかなぁ、って所。
ランスはそのままプレイしても楽しい。だがクリアした後で設定とか背景を調べて、それを理解した上でプレイすると更に楽しかったりする。本当、設定を良く作りこんでるものだと思う……。