※この作品はR-18です。

ルドラサウム転生異聞録   作:てんぞー

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300年 カラーの国

 引っ張られている内にあれよあれよと何時の間にか王宮にまで引っ張られてしまった。

 

 そう、王宮。この時代のカラーはどうやら王国制だったようだ。カラーの里だったら将来的に存在するのを知っているが、流石に王国という形は初めてだった。王宮へと半ば連行される様な軽やかさで拉致られている道中、どうやらこの国は今、カラーの女王によって支配されている事が解る。しかしその道中で、目撃するのは恐れる事無く額を晒すカラーの姿と、そして首輪を装着した人間の姿がちらほら見える。

 

「アレは……」

 

「奴隷です。魔力が低く、魔法技能もないので魔法道具に魔力を込める事も出来ないので、肉体労働を対価に衣食住を提供されています。ですが人権はあるのでご心配なく。犬畜生の様に扱っている訳ではありませんので」

 

「見りゃ解る。強制労働とかやらせてたら」

 

「やらせてたら……?」

 

 そら、吐き気がするし、無論と、呟く。

 

「同胞の恥だ。俺が皆殺しにして回って恥を灌ごう」

 

「そ、そそ、そうですか。なら心配はいりませんね」

 

ハンティ様が説得してくれてよかった……

 

 あぁ、それで何となく事情を察してしまった。なんというか……ハンティも結構苦労する子だなぁ、と苦笑を漏らしてしまう。将来的に大騒動に巻き込まれる事は確定している超ショタコンの我が妹の事を考えると、少し心配になってくる。あぁ、でもヒーロー君産まれたら俺もおばあちゃんになってしまうのか。

 

 ……なんか、ちょっと、いいなぁ。

 

 おばあちゃんおばあちゃん言われて孫に追いかけられるの、悪くないかもしれない。あぁ、なんかそれ、凄く可愛いぞ。悪くない未来だ。そういう未来、見てみたいなぁ、と思う。たぶん猫可愛がりしてしまうと思うけど。ははは、と心の中で笑い、この呆れた王国をどうしてやろうかと、現実に引き戻される。そしてそのまま、首都にある王宮の中へと真っ直ぐ案内されてしまった。

 

 ずっと、衛兵などは申し訳なさそうにしていたり、悦んでいたり、或いは困った表情やガッツポーズを決めていたり、実に様々な姿を見せていた。なんで、俺こんなに歓迎されているのだろうか? やっぱりちょっと記憶にないなぁ……と、首を傾げつつ奥に進む。

 

 そして、そうやって王宮、玉座の間の前に止められた。

 

 玉座の間の前に立つ二人のカラー・ガードが、

 

「武器をお願いします」

 

「そうなると俺は残された腕を引き抜いて額からクリスタル引き抜いて、この両目と歯を全部抜いた上で足も引っこ抜かなきゃいけねぇんだけど。言っておくけど、武器や魔封じした程度じゃ、噛みついてでも殺しに行く時は殺しに行っちゃうよ」

 

 という訳で、という言葉を置いて背負ったゴルディ―――《勝利の鍵》をガードに渡す。

 

「それ、大悪魔からパクってきたもんだから、大事にしろよ。傷つけたら魂奪われるから」

 

「先輩……私トイレいいですか? ちょっと下着が使い物にならなくなったんですけど」

 

「大丈夫か? 私もチビってる」

 

 君たち本当に大丈夫? とは思いもするけどどこか笑えているので、まぁ、大丈夫だろうと判断し、扉を開けて進む。その先にはずらりと並ぶガードの姿が、その奥の玉座に座る水色の髪、蒼い色のクリスタルの女王カラーが、そして近くの陰には申し訳なさそうに、片手で顔を覆いつつ片手で挨拶をしてくるハンティの姿が見える。あぁ、これで大体なんとなく察せてしまった。お前、俺の次はこれとか本当に苦労性だなぁ、と視線をハンティへと向ければ、

 

 解ってる……言わないで……という表情をハンティが向けて、またがくり、と肩を降ろした。

 

 そして、

 

「―――汝が旧時代より生きるもう一人のドラゴン・カラーか」

 

「おう、俺がウル・カラー様だ。図が高いぞ小娘」

 

 中指を突き立てて声を返した。何時も通り。スタンスは崩さない。今まで相対してきた全ての王や権力者に対してそうであったように。自分というモノを誰が相手であろうと貫く為に、覇気を込めた。

 

「―――」

 

 此方の呼吸を乱される前に此方から言葉を叩きつけて足元を乱してやる。案の定玉座に座ったカラーの女王が驚愕した様な表情を浮かべ、そして言葉を失っていた。その姿を見てふはははは、と笑う。偉そうにしている奴の姿を見れば何をしたいのか、大体解る。何年間魔王と一緒に生活してきたと思ってるんだ。()()()()()()()()()()()()()()()、と自分がスラルの王というイメージを比べながら判断する。

 

「小娘、先に言っておく。俺を勧誘するなんてことを考えるな」

 

「なっ、妾はカラーの女王じゃぞ!?」

 

「そうか」

 

 だけどそれだけだろう? という話だ。とても簡単な話だ。

 

「俺様の王様は一人だけだ。俺が王と認め仰ぐ者は唯一無二の竜王マギーホア様だけなんだ。それ以外の王に従うつもりも道理もない。だがお前がそれを超える器を見せられるというのであれば俺も従わない理由もない。だが無理矢理従わせるというのなら―――」

 

 片足を床に叩きつける。その衝撃で足場が割れて、罅が城に走る。

 

「この俺と戦って屈服させる事ぐらいは考えるんだな、小娘」

 

「ぴぎぃ!?」

 

 しばらくそのまま玉座に座るカラーの女王を睨みつけてから、横からガードがいいぞ、もっとやれ、みたいな視線を向けてくるのを感じ取った。なんか、握られていて強く言えないのだろうか? まぁ、俺もそこまで鬼じゃない。頭の裏をブルっている女王の姿を眺めながら掻きつつ、

 

「ま、そういうのなしなら仲良くしようぜ。あぁ―――お前天使か悪魔に最終的には変化するんだっけ? それまでの時だけどな」

 

流石始祖様、迫力が違うな……

 

ハンティ様の言う通りだったな……

 

脅迫フィニッシュまで完璧ですね

 

 なんか微妙に便利に使われてしまった感じがするが、それでどうだ、と視線を玉座の方のカラーに向ければ。無言のまま、静かに玉座に座っている姿が見える。その姿は意外と威厳がある様に―――いや、ちょ、待てよ。

 

「あれ、気絶……してる……?」

 

玉座に座ったまま、カラーの女王は気絶してた。その姿を見てえっ、と声を零す。

 

「これだけで……?」

 

「いえ、ウル様。戦士でも死を覚悟する威圧感出してるのが原因です」

 

「ん? あぁー……あー……」

 

 王様ってスラルとマギーホア、後は悪魔界連中等が基準……の他にはALICEぐらいだ、直接会った事があるのは。成る程、そう言う連中と会う時のノリで人類圏の王と会ってはならないのだ、と、漸く理解できた。少し威圧するつもりが失敗させてしまった。まさかここまでへっぽこだとは欠片も思わなかったのだ。

 

「……やり過ぎた?」

 

「いえ、女王が余計な野心をこれで切り捨ててくれると思いますので」

 

「ま、そういう事だよ、姉さん。久しぶり」

 

 よっ、と声を零しながら近づいてきたハンティと手を叩き合わせ、それから抱きしめて数百年ぶりの再会を喜ぶ。数秒程抱きしめ合ってから離れ、ハンティの姿を見て、んー、と声を零す。

 

「……あんまり育ってない?」

 

「もう育つ育たないという時期は千年も前に終わったじゃないか……」

 

 それもそうだな、と笑い、玉座に座る女王を見た。

 

 結局、女王(アイツ)の名前聞いてない……。

 

 

 

 

 それから、気絶した女王を運び出して起きるまでの間、暇なので城の客室に案内された。そこで今は簡単な服装に着替えてあるハンティと、数百年ぶりに漸くゆっくりと話し合う事が出来た。間のテーブルには自由に食べられる果物が飾られており、そこから林檎を手に取って齧りながら、しばらくはなかった血の繋がりはない姉妹の時間を取り戻していた。

 

「えっ、皆で悪魔界に乗り込んでたのになんで呼んでくれなかったの!?」

 

「いや、ハンティ若いし……」

 

「だから何時まで姉さんの中で私は子竜扱いされてるんだよ! 私だってそんな楽しそうなイベント便乗させて貰いたかったよ……うわぁ……マギーホア様健在なのに駆けつけられなかったの恥ずかしいよ……」

 

「締めは悪魔界で焼肉したけど楽しかったぞ」

 

「なんでそこで焼肉……?」

 

 仲良くなるには鍋か焼肉。これは古来から続くルールなのだ。そう、地球の。つまり此方側の世界にはない。だからルドちゃんも焼肉パーティーを三超神で囲んでみる事を一度は挑戦してみるべきだと思う。

 

「ま、その後遺症でここ数百年はずっとリハビリと治療だよ。おかげで魔法研究ばかり進んじまったよ」

 

「呼んでくれれば特に大事な用事があった訳じゃないし手伝いに行ったんだけどなぁ」

 

 それでスラルやレガシオとエンカウントされると俺の心臓に悪いから呼べなかったのだ。まぁ、ハンティはハンティでパットンとの出会いが未来に待っているのだ。下手に此方から干渉して、その流れを崩壊させる事はちょっと困る。アレはハンティが確実に幸せになる事の出来る未来でもあるのだから。義姉としてはそこらへん、割と祝福したい事でもあるのだから。だからとりあえず。あまりハンティの行動にはあれこれと干渉しない事だけは決めている。

 

 後この子、巻き込むのは罪悪感ある。

 

 ……女王ちゃんにもそう思うと悪い事したかなぁ。

 

「というか俺、なんで喜ばれていたんだ?」

 

「あぁ……女王を見たでしょ?」

 

 ハンティの言葉に頷きながら林檎を齧った。

 

「あの子ああ見えてまだ40なんだよね」

 

「若いなぁ」

 

 ここら辺、年齢感覚がかなりインフレしてしまっている。だがそれでも、40歳で指導者というのは結構若い感じはする。少なくともこの時代、100歳以下の状況で国家運営を行うのはたとえLv3持ちでもナイチサに滅ぼされるだけだ。実際、数百年後には藤原石丸が魔人ザビエルに殺されるし。

 

「うん、若いから勢いはあるんだよね。だけどその分経験が浅くて……ね。私の方で叱れたら良かったんだけど、生まれた頃から知っている分、自分の子供の様な感覚だから中々叱るに叱れなくてねー」

 

「あー……お前そういう所あるよな」

 

「逆に姉さん、身内だろうと同胞だろうと自分のルール破った奴には一切容赦ないでしょ? だからその内国の話を聞いて叱りに来てくれないかなぁ、って期待してたんだよ。実際、思った通りになったし」

 

「マジでいい様に使われたな俺!」

 

「う、うん、ごめん……?」

 

「超許す」

 

 まぁ、これぐらいなら可愛いもんだと思うし、そこまで何か問題がある訳でもないと思っている。まぁ、それでも、

 

「この国は長く持たないだろうけどな」

 

「……やっぱり?」

 

 ハンティの言葉に頷きながら座っているソファにごろり、と横になる。自分の家にも大きなソファ、一つ欲しいかもしれない。後はやっぱり、ジュークボックスだろう。だけど間違いなく今の技術力じゃ不可能―――いや、まて、魔人パイアールなら可能なのではないか? ジュークボックスの作成となるとやはり、これは突撃、隣の魔王城! しなくてはならないのかもしれない。

 

 近いうちにレベルアップ地獄確定だなぁ、と思う。またマギーホアにスパルタトレーニングを頼む必要があるのかもしれない。それはともあれ、

 

「今の時代、協調政策取れない奴が国家を存続させるのは難しいぞ」

 

「……姉さん、どうにかならない?」

 

「無理。そもそもカラーは神々が天使や悪魔を補充する為の手段として創造した種族なんだ。元々表舞台に立って活躍する様に作られている訳じゃないんだ。そこは俺やお前が特別なだけで、ほとんどのカラーは長期間の統治や君臨などが出来る様に設定されていないんだよ。どう足掻いても天使か悪魔に変化するから、王国なんてそもそも作るのが間違いなんだ」

 

 変化の時をカラーは迎えてしまう。それに備えて常に情報と連絡を怠らず残しつつ連携して動ける国家であれば問題ないだろう。だがあの若過ぎる女王にそれが出来る様には到底思えない。なので無理だ。アレが天使か悪魔となって国のトップが消えた時、次に引き継ごうと思うカラーが出て来ないだろう。

 

「後はそこから自然分解だな。そもそもカラーに国家とかなんでそんな余計なもんを考え付いたのかが知りたいわ」

 

「あー……あははは、ほんとぼろぼろに言うなぁ……」

 

 そこはほら、割と真面目に何やってんだこの馬鹿……? って感じで見つめているから、しょうがない。実際、カラーなんて森に引っ込んでひっそりやってなきゃカラー狩りで額のクリスタルが狙われるのだから、当然に決まってる。

 

 と、考えたところで、

 

「あっ」

 

「なんか今更大事な事を思い出したって顔をしてるけど」

 

「そういやぁ蒼くなったカラーのクリスタルは物凄い魔力の籠ったアイテムになるって知らんのか……」

 

「私も初耳なんだけどそれ」

 

 カラー狩り最大の理由である。これが人類側にバレてしまったせいでカラーの王国は崩壊、そしてカラーのクリスタルの価値が世界に広がり、それでカラーが極端にその数を減らして暗黒の時代を過ごす事になった。すっかり忘れていた。

 

 この国がその原因だったわ。

 

 どうしよ……。




 ハンティが悪い事をしたらそれとなく嗜めて小さく叱ってまぁ、次はもっと良くやろう? というタイプであれば、

 こいつはまずロケットランチャー叩き込んでから蹴り上げてもう一度ロケットランチャー叩き込み、首を付けてさぁ散歩の時間だ! と連れ出して一番楽しい場所へと連れて行くタイプ。

 適材適所かな。
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