※この作品はR-18です。

ルドラサウム転生異聞録   作:てんぞー

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470年 JAPAN 作戦フェイズ

「ま、こんなもんじゃろ」

 

 モロッコ……というか旅館での生活がそれなりに気に入ったのでしばらく滞在している。料金を割引する代わりに定期的に現れる鬼を吹っ飛ばしてくれ、という依頼をこなしており、そのまま鬼を何時も通り魔法で薙ぎ払って消し飛ばす。赤鬼や青鬼などの雑魚はともかく、黒鬼クラスの鬼となると少しだけだが経験値が入ってくるレベルになるので、漸く久しぶりのレベルアップを経験していた。これでレベルは122になる。駄目だ、全然低い。いや、人類全体のレベルと比べればそりゃあ高いだろう。

 

 だが今の魔人四天王、ザビエル、メガラス、カミーラ、ケッセルリンク。この4人組とタイマンを張れるレベルには100程足りないし、魔王相手に真面目に殴り合うだけのスペックならレベル300は必要だ。ここら辺、どう足掻いても超えられない身体能力の差がある。レガシオの時は200を超えるレベルを確保できていたが、あれはマギーズブートキャンプの成果の上に、100年以上の時間を濃密に鍛錬に費やした結果だ。元々ドラゴン・カラーという種族である為、レベルが上がり辛いというのも問題である。実際、カラー王国解体時から既に100年以上経過し、何度も国軍とぶつかっていたのに結局、レベルは10程度しか上がらなかったのだから。

 

「しかしこの10年間鬼をしばき続けても10レベしか上がらんか。地獄出身だからもうちょい経験値美味しいかと思ったんだけどなぁ」

 

「俺はねーちゃんが10年もここに留まっている方が驚きだぜぇ……」

 

「そーか?」

 

 中級広域重力魔法、《圧爆》で鬼を上から押し潰して始末し終わった所で、天満橋に拠点を置く露店の兄ちゃんに視線を向けた。俺としては10年経過しているのに歳を取らない露店の兄ちゃんの方が不思議でならないんだが。なんか、特殊な種族なのだろうか? まぁ、それはそれとして、

 

 そう、

 

 モロッコに滞在して10年である。

 

 ドラゴンの時間感覚は実に長いので、10年ぐらいのんびりしてても人間で言う昼寝の感覚に近いものがある。とはいえ、5年目でハンティは各地のカラーの様子が気になるのか、飛び出してしまった。ちょっと寂しいが、それでもあのフットワークの軽さで面倒見の良さは未来にまで続く美徳の一つさ。止める事もせずに、JAPANから飛び出す姿を見送る事にした。その間、自分は翔竜山に戻る事もなく、モロッコで鬼を相手に護衛を続けてひたすら旅館と温泉を楽しみ続ける生活を継続していたが。

 

 そろそろ、経験値効率が悪くなってきたので、作戦を変える必要があるかもしれない。

 

「しっかし姉ちゃんは馴染んでるなぁ……本当はJAPAN出身じゃないの?」

 

「魂の故郷はジャパンだよ」

 

 日本的な意味で。ともあれ、JAPANってこのままずっと鬼に未来まで襲われ続けているのだろうか? その状態で身内で殴り合っているとか軽くお前らすげぇよって言いたくなる。流石修羅の国。とはいえ、そろそろ経験値が欲しくなってきた。ここ10年は温泉でだらだらしているのは特にイベントがないのも事実だが、カラー王国の疲れを癒すのも理由の一つである。本能的にだらだらとするのが嫌いじゃないのだ、俺は。元がインドア派だし。

 

 ハンティはそこら辺、根っからのアウトドア派だ。どう足掻いても走り回っている方が落ち着くタイプだから、そこだけはどうもウマが合わない。俺はイベントさえなければ大体、のんびりゆっくり温泉生活でもしていたいのが本音だが、後数百年で藤原石丸の誕生とザビエルの再活動を考えると、今のレベルでは少々苦しいだろう。

 

 ……いや、目標はザビエルじゃない。

 

 一番の目標はナイチサだ。

 

 魔王ナイチサ。最も狡猾で最も残虐だと言われた魔王。アレに自分は絶対に会わなくてはならない。そして場合によっては()()()()()()()()()()()()()()()()。《無敵結界》を保有するガルティアかケッセルリンクが手伝ってくれればまだ、《無敵結界》破りの奥義を生み出す為の練習が出来そうだが、今の状況と環境では難しい。

 

 レメディア・カラーちゃん生まれてこない? 生まれてくれない? カラー環境改善したから生まれて欲しいんだけど。君の《バリア破り》が割と切実に死活問題なのである。

 

「んー……これはやるっきゃないか」

 

 浴衣の裾をちょっと叩いて伸ばしつつ、呟く。そろそろ経験値が欲しい所だし。目標はレベル250だ。それだけあれば最低限、ワンパン入れて逃げるだけの余裕はある。何せ、魔王の子達の最終的なレベルがそこら辺だった記憶があるからだ。魔王ランスという《剣戦闘Lv3》持ち相手に数人で戦えるのが250レベルなら、そのラインを確保すれば……まぁ、種族補正でどうにかなるだろう。

 

「お、姉ちゃんついに動くのか?」

 

「おうよ、流石にそろそろ動かないと体が鈍っちまうからな」

 

 サムズアップを向けながら、考える。

 

 ―――そろそろハンティから姿をGIまで隠したほうがいいのかもしれない、と。

 

 義姉として接して色々可愛がってしまったが、それがあの子の成長を阻害する原因になっているかもしれない。最終的には正史通りの強さを持ってもらわないと困る部分もあるので、試練を叩きつけるか、或いは彼女に対する助けを止めるか―――或いは敵に回ってみるのも面白いのかもしれない。

 

 どちらにしろ、何をしても人生は楽しい。更に楽しくする必要があるし、未来に向けて備える必要もあるのだ。それにはまず、強さが必要だ。あまり、マギーホアに頼っているのも困るし、ある程度は自分の力でレベルを上げておくのが悪くないだろう。という訳で、

 

「着替えたらお出かけするか……」

 

「どこに行くんだい?」

 

 不思議と歳を取らない露店の男にサムズアップを向ける。そして一言で自分の行き先を告げる。

 

「死国」

 

 

 

 

 死国―――つまり地球で言う四国である。この場所が今、JAPANで一番大量の鬼を保有している事にはシンプルな理由があり、JAPANに地獄への穴が開いた時、一番大きな穴を生み出されたのがこの死国になるのだ。そして同時に、そこから大量の鬼が発生している、JAPAN各地にも穴は存在するのだが、それでも死国にあるのは特大のそれだ。つまり、それだけ大量の鬼が死国には徘徊しているという事でもある。

 

 そう、つまりは経験値である。

 

 大量の経験値である。

 

 殺しても殺しても文句の言われない命である。そもそもエンジェルナイトがちょくちょく出動しては鬼を殺しているという話がJAPANにはあるので、鬼殺しは合法なのである。

 

 そういう事もあり、将来的なレベルアップを見据えて今は一番POPが美味しい死国へと真っ直ぐにモロッコから旅立った。服装はこの為に買った紺色の蒼袴に白い小袖に着替え、髪型はJAPAN風にハイポニーで纏めてある。これをセラクロラスのリボンで纏め上げ、何時も通りに斥力跳躍を織り交ぜた虚空歩で何度も加速と跳躍を繰り返しながら地形を無視して死国へと向かった。

 

 このウル様に行けない場所等ないのである。

 

 と、駆け抜ければJAPANという土地そのものが狭い事もあり、結構あっさりと目的地に到着できる。死国の端へと到着すれば、

 

 早速、鬼が二人、女を一人両側から犯しているのが見える。逸物を陰部に突き込んで犯しつつ、もう片方がそれを口に叩き込んで、女が全裸でえづきながら犯されている。流石ルドラサウム大陸、開幕レイプで歓迎してくれるとはやっぱこの世界らしいわと思える。

 

「お、女―――」

 

「それを遺言と見たァ!」

 

 勇者王を取り出して死国の大地を踏みしめながら、一薙ぎで赤鬼二体の頭を吹っ飛ばす。ホームランの様に遠くへと吹っ飛ぶ鬼の頭にたーまやー、と叫びながらいい感じに空に上がった所で《ゼットン》を放ち、それを汚い花火にする。空に此方だぞ、と周囲の鬼に対してラブコールを送れば、興奮気味の鬼が何十体と出現してくるのが見える。

 

「おい、女だ女」

 

「新鮮な女だぞ。中古ばかりで飽き飽きしてたんだ」

 

「へへ、馬鹿な女だぜ」

 

「うーん、このテンプレ的な感じ。敗北すればCG回収かな? だが残念、このウル様に敗北CGは実装されていないのである」

 

 首元に掛けていたゴーグルを装着しつつ、がおー、と脅しながら左の黒腕を生やし、重力斧を生み出す。それと勇者王で斧鎚二刀流を完成させる。踏み込みの足で大地を砕いて軽いクレーターを生めば、それに鬼が一瞬、動きを止める。

 

「ウル、あたたった―――っく!」

 

 なので、そのまま、薙ぎ払って消し飛ばす。数十程度の鬼であればレベル差のごり押しで十分どうにでもなる。必殺技を適当に放って集まった鬼を正面の大地、そして邪魔だった木々諸共吹っ飛ばすように消し去りつつ、後ろで倒れている女を一瞥する。どうやら既に限界だったようで死亡していた。

 

「うーむ、ダクファンだなぁ。このウル様でも世界観だけはどうにもならぬ。だからルドちゃんに戻ったら幸せな夢を見てろよ」

 

「まぁ、魂は私がもらうんだけどね」

 

 スラルが一瞬だけ出現し、死亡者の魂を回収すると悪魔界へと戻って行った。流石にこの流れでそれは卑怯じゃないだろうか……? ちょっとずるいぞ、スラルちゃん。心の中でそう呟きつつも、死国の大穴へと向けてそのまま跳躍して移動する。多く見えるのは赤鬼や青鬼だらけで。定期的に女を探すか、或いは殺す相手を求めて徘徊しているのが見える。

 

 それらを道中、サクッと殺害して経験値にしてしまう。塵も積もれば山となる。どんどん殺して経験値を溜め込んでおく必要がある。なので鬼を見かけ次第、それを近づかず、魔法で遠距離から狙撃して殺してしまう。どれだけ身体能力が強くても光線系の魔法は光速だ、放ってしまえばもう回避できないから後は種族スペックでごり押しすれば問題もない。

 

 赤鬼、青鬼、ともに雑魚だ。黒鬼も中々高いスペックをしているものの、レベルが100を超える相手と戦うには間違いなく力不足だ。《ガンマ・レイ》を放てば美味しい経験値に一撃で変わってくれる。そうやって殺して行けば行くほど、この死国から人の気配が消えている事を理解させられる。やっぱり、鬼が暴れた結果、軽く死滅している可能性が高いのだろうか。

 

 まぁ、どちらにしろ、好都合ではあるのかもしれない。

 

 死国を鬼の多い方へと移動する。数は段々と増えて行き、50を超える鬼が更に増えていく。その数が200を超え始めた所で流石に、皆殺しにしながら進んで行く事に躊躇を覚える。魔力切れによって途中で倒れる可能性を考慮して、だ。

 

 故にある程度死国を進んでからはステルス移動に切り替える。時間差で爆発する魔法を軽く仕込み、別方向へと設置しながらそれを爆破させ、鬼の気を其方へと反らしつつ、光属性の魔法でクローキングを行う。得意な属性が光と重力である為、クローキングするのはそこまで難しくはない。

 

 忘れられがちだが、光属性も得意なのだ。

 

 そうやってスニーキングしつつ見える黒鬼だけ暗殺して処理し、奥へと進んで行けば、やがて死国のお口、鬼たちの溜まり場へとやってくる。

 

 そこでは人間が千切られて遊ばれたり、内臓をロープ代わりに遊んでいたり、女を犯して交換したり。品評していたり、と、見た目からして品のない行いをしているのが見える集団が広がっていた。LPの魔軍と割とどっこいな状況だよなぁ、と鬼たちの姿を隠れながら眺め、

 

 その奥にあるものを見つけた。

 

 まるで虚無へと繋がる様な巨大な虚空―――穴だ。地獄へと繋がる大穴。それも数百メートル単位で存在する大きなものであった。ここから鬼が無限に湧き出ているのが原因なのだろう。アレさえ閉じちまえばしばらくはJAPANも平和だな、と確認する。

 

「……んー、ざっと赤鬼青鬼200、中鬼50、黒鬼20って感じか」

 

 こいつらは別段、神魔枠ではないので、強いって程度で滅茶苦茶という訳ではない。赤鬼青鬼で25Lv前後が限度だし。中鬼で35、黒鬼で50から60ぐらい、というレベルだ。それより強いのはネームドや特殊な鬼になる。あぁ、いや、待て、異形化している鬼が穴の中に抑え込まれているのが見える。アレが凶鬼か。それが穴の底に数百見える。場合によっては1000を超えるかもしれない。何時の間にあんなに汚染された鬼が増えていたのだろうか。

 

 クローキングを維持したまま、適当な木陰に入って全体を伺う。

 

「さぁて、使えそうな、も、の、はーっと……」

 

 地獄は流石にほとんど知識がないもんで困った。胸の谷間から【ひつじNOTE】を取り出し、自分が書き込んだ【真理】の数々に関するメモを確認する。えーと、地獄地獄、と呟きながら内容をチェックする。やっぱり項目が少ない。

 

「閻魔マンがマギーホア様と敵対してるってだけか。マギーホア様に敵対って自殺志願者かなにかだろうか」

 

 まぁ、あんまり関係ねぇか、と呟き、【ひつじNOTE】をしまう。閻魔に謁見する予定はないし。とりあえず、自分一人でこれだけの人数を抱えるのはやや苦しいと言いたい。やってやれなくもないが、流石に種族としてスペック差が薄いので、数の暴力で来られるとバランスブレイカーを解禁する必要になる。こっそり使う分にはいいが、大ごとに使うとまたALICEからペナルティを貰うかもしれない。

 

 ……ちょくちょく犯されているエンジェルナイトを見かける。助ければ此方側の戦力として使えるだろうか……? 数百程度だったら俺でもどうにかする自信はある。だが鬼で数千クラスとなると、サポートが欲しい。或いはレベルアップし続ける事でマッハに回復ボーナス貰って戦えるが、

 

 そう考え、どう動こうかと考えた時、

 

緑色の光が天を覆った―――。

 

「―――うそん」

 

 空からゆっくりと緑光を放ちながら降りて来る姿が見えた。神々しい、神としての神光を携え、全ての生命を緑色の光で照らし、自分自身を神の証である黄金光で満たしていた。その光を見た生物は瞬時にそれを理解する。

 

命とはいつか滅ぶものである

 

この世には絶対に抗えない破滅が存在する

 

どれだけ存在し続けようが破局は訪れる

 

飲み、喰らい、犯す事を許そう

 

―――全ての破壊と引き換えに

 

La Vaswald On Aproach

 

 見えてしまった。見てしまった。金髪の、神々しい姿を。赤と青の二色を備えた、緑の破壊神の姿を。へぇ、お前そういうデザインしていたんだぁ、というちょっとした現実逃避から意識をご帰還させる。ただいま俺の意識。

 

「破壊神ラ・バスワルド―――そうか、GIまで何故汚染された鬼を地上で全く見かけなかったのか、大量の鬼が地獄で溢れ出してなお何故地上が蹂躙されなかったのか……成程、極地投入されてたのか……!」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と神にさえ言われた二級の破壊神ラ・バスワルド、その存在が一度も歴史に出現する事はなかったが、それでも何故使い辛い、何て言葉が出て来るのか、その力を感じ取ってしまえば嫌でも理解してしまうだろう。この絶対的な神威を前に、破壊の後に生き残れるようなものが残るとは思えない。

 

 数千の鬼? そんなもの、ラ・バスワルドには関係ない。

 

 ()()()()()()()()()()なのだから。

 

 穢れもそうでないものも全く関係なく破壊するだけの神、ラ・バスワルド。その降臨に冷や汗を零した。

 

 何もしなくても特にJAPANが問題ないのは確認できた。

 

 問題は―――ここから自分が生きて逃げられるか、という所だった。ファックユー、神。俺がここにいるって知ってて投入したの誰だよ助けてALICEちゃんという気持ちだけでいっぱいだった。逃げれば、逃げれば問題無い。今すぐ全力で逃げ出せば済む話だが、

 

 エンジェルナイト達に、軽く視線が向けられてしまう。このままだと知覚されるまでもなくラ・バスワルドに処理されてしまうだろう。

 

 あぁ、クソ、と言葉にせず吐き出しつつ、黒腕を形成しながら術を編む為に手を結んだ。

 

「今回だけだぞ……!」

 

 より面白い未来を創る為の行動を始めた。




 ランス10の1.03にバスワルドちゃんついに来ちゃったね……?

 という訳で出張のバスワルド様。上からの評価は糞使い辛い。意識がないので文句を言っても無駄。仕事をした後で世界を破壊しようとする。ちゃんと客さんの仕様道理に完成されなかった神様の一つ。半分に割ってサイゼルハウゼルにして漸くポンコツになってくれる神様。

 でも見た目は凄く好みなんだよなぁ。
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