死国、文字通り死の大地となったのを確認される。元々黄泉に最も近い場所とされ、鬼の大量発生によってJAPAN内では最も危険な土地とされていたが、数十年前による謎の爆破以降は沈黙を維持しており、その反動から人々が踏み込むには危険な地域として認識されていた。だが500年となり、ついに死国に探索の手が入る。【天志教】により死国の偵察が行われ、その結果死国の大半が死の大地となり、とてもではないが生活可能ではない大地へと変貌されているのが確認された。また、《神魔法》による簡易的な結界が死国最深部、地獄への大穴に対して張られているのが確認され、中鬼、黒鬼クラスの鬼が出てこれない様に封印されているのが発見された。依然、赤鬼と青鬼は出現し続けるものの、謎の爆破以降は減った死国を中心とした鬼被害の低下はこの結界によるものだと判断される。この行いにより、JAPANに鬼退治だけではなく、内側へと目を向ける余裕が多少生まれる事となる。この地に唯一残された下手人の証拠は、大地に刻み込まれたローベン・パーンマジ許さないという言葉だけであった。
鬼の活動が死国の封鎖によって下火になったとはいえ、JAPAN全土が依然鬼の被害にある事に変わりはない。だが鬼の数が減った事により、JAPANが内政を行う時間が増え、結果として人口と戦力の増加が始まる。大陸に対しては基本的にアンタッチャブルとしているも、JAPAN内部に関してはそう言う訳ではなく、今までは鬼の被害に苦しんでいたそれぞれの勢力が形として固まり始めるのがJAPAN内では見えていた。また、【天志教】が国内の落ち着きが見える中で、一つの大勢力として拡大し始めるのが見える。《陰陽》という新しい術を《魔法》の代わりに広げ、JAPAN内部での基盤を確実に固めていた。
JAPANは依然と鬼の被害に苦しめられる。だがその姿にも徐々に変化が見え始める。大陸文化をある程度吸収する余裕が生まれていた。それに伴い貴族などの文化がJAPAN内では生まれ、金のあるなしや領地という概念が明確に生まれ始める。地名だけではなく、それぞれの土地を支配する人物が出現し始める。これによってJAPAN内部で情報のネットワークや人の行き交いが発生する様になり、天満橋周辺のみだったJAPANの文化が、JAPAN全体で生まれる様になってくる。今までは
JAPANに一人の天才が生まれる。その名は【藤原石丸】。JAPAN現在の盟主とも呼べる藤原家に生まれた石丸は育つごとに明確な才能を見せ、幼少期の頃には既に青年と剣で打ち合い、そして勝利するという凄まじい経歴を見せる事となった。好奇心旺盛で非常に挑戦的な気質を持った石丸を藤原家は押さえ続ける事が出来ず、20の頃には藤原家を飛び出していた。そして藤原石丸の偉業が始まった。死国へと赴いた藤原石丸はそこから結界を超えて飛び込み、地獄へと挑戦する。そこで彼は【三種の神器】を入手する事に成功し、JAPANの支配者としての、帝の力を手にする事となった。元より最強の剣士という名前を背負っていた石丸が帝の力を手にする事により、もはや彼を止められる様な存在はいなくなった。JAPANという国家において、もはや石丸を超える英雄は存在しなかった。
藤原石丸、JAPAN国内統一を果たす。また【天志教】と協調し、軍師として【月餅】を迎える事により、JAPAN国内の鬼の発生を完全抑制する事に成功する。JAPAN最初の黄金時代がこれによって生まれて来る。JAPANの民に対する絶対権を持つ帝・石丸には絶対に服従するJAPANの民によって統一されたのちに、JAPANのもう一つの問題である妖怪とも藤原石丸は向き合った。これを石丸は軍隊で押し潰すような事はせず、妖怪王黒部との一騎打ちを自ら申し出た上で黒部を打ち倒し、そうする事で感服させた。これにより藤原石丸はJAPANの民だけではなく、妖怪さえもその配下として迎える事に成功した。これによってJAPAN内では全ての存在が統一され、突発的な鬼による出来事を除けば、完全なる平和の時代が生み出された。そして藤原石丸の野望は―――その好奇心は決して、JAPANのみで留まる事をしなかった。同年、藤原石丸は大陸遠征を決意、先遣隊を出す。
そして天満橋にて敗北を経験する。
「ウル様! JAPAN軍の姿が確認できました」
「おう、準備は良いよな?」
「勿論です」
「ウル様の背後は問題なく!」
「格好良く、そして楽しくやりましょうウル様!」
「あわわわわ」
ここ数百年で使い物になった部下を引き連れた状態で、キセルを口に咥えた状態、天満橋の中央を陣取る様に足を組んで、そこに置いた椅子に座っている。結構気に入ったもんで、職人には良い仕事をした、と是非褒めてやりたい。そして数名の部下の他に、周囲の露店は実に賑わっていた。商売のチャンスを狙って商品を並べる奴、こっちを応援したバナーを振ってる奴、何時も通りおーい、と手を振ってる露天商―――結局アイツ、出会ってから数百年経過しているのにまだ歳とってねぇよな。まぁ、正体に関しては欠片も興味ないのだが。
「お前の勝利に今回も賭けてるからなぁー!」
「負ける時は仕入れを変える必要があるから言えよー!」
「勝手言ってるんじゃねぇよお前ら……」
「数百年もここに住み着いていたらもうご近所感覚ですよウル様」
まぁ、藤原とJAPANの事が気になったのでちょくちょくレベルアップの為に翔竜山に戻りつつも、こうやって天満橋に入り浸る様になったのは、JAPANという国唯一の入り口と出口がこの天満橋であり、JAPANから遠征隊が出るのであれば、それはまず間違いなくこの天満橋を抜ける必要があったからだ。
うん、まぁ、別に、それを止める必要はないのだ。
だから、藤原石丸に対する一時的な敵対がここに覚悟された。
なぁに、魔王や魔人と比べればまだまだ、全然マシな部類だ。
そう思っている間に天満橋JAPAN方面、つまりはモロッコの方から軍隊の姿が見えた。整列され、武装され、戦争を行う為に練度が高められ、そして士気を高揚されている、恐らくはこの時代で最も強い軍隊だ。それが明らかな覇者の威圧感を兼ね備えた男と、そして黒い獣の様な巨大な男を先頭に進んできている。その姿を捉えたまま、静かに椅子に座ったまま、正面を睨む。ただ、外野は煩い。
「あわわわ、ウル様? 来てますよ? なんか人間として明らかに間違ったレベルのオーラしてる人ですけど!?」
「アレが幻の帝シリーズ……」
「アマテラス様が設定ワンランク間違えたってアレですね」
「アマ様ってちょっとボケ入ってる部分ありますよね。そこが話しやすいんですけど」
「あわわわわわわわわわわ」
「落ち着け……」
「なんだぁ、
「ののの、飲みます!」
「飲むのか……」
騒がしい。だけどその騒がしさが嫌いじゃなかった。苦笑しながら足を組み、カラーの王国を運営していた時を思い出す。あの時も大体、毎日騒がしかったよなぁ、と。苦笑しつつ勇者王の金ぴかボディに反射される姿を確認する。
後ろに控えているのは
その額にはクリスタルがある。そして見覚えのある顔の子達でもあった。
そう―――カラーから補充されたエンジェルナイトだった。普通のエンジェルナイトだったら割と素直に見捨てたが、元同胞出身、それも王国で見た事のある顔が混じっているとなると、流石にそのまま見捨てるのは憚られた。なのでラ・バスワルドの降臨に纏めて回収してきたのをこの数百年間、部下として鍛えて育ててきたのだ。
将来、第一次魔人戦争や死滅戦争の時に、自分の手足として動かせる部下が必要だから。俺もレベルが高く、大体なんでも器用にこなすだけの自信がある。だがそれとは別に、最終的に【魔人討伐隊】等で行う作戦の規模を考えれば、個人で動くには限界がある。どう足掻いても戦争などでは部隊単位で動く必要があるのだ。故に、堕天化エンジェルナイトであれば丁度良い、再就職先として自分の部下になる事を提案したのだ。当然、エンジェルナイト達は堕天していて戻れないのでこれに飛びついてきた。
後は餌付けして調練して、ランスワールド特有のさぼりが発生しない様に常に鍛錬を欠かさず、レベルダウンを許さずに鍛え続けるだけである。
つまり親衛隊、精鋭隊とも呼べる自分専用のチーム、部隊の完成である。
何より素敵なのは神魔補正でこの子達には《無敵結界》が通じないという事実にある。魔王や魔人と戦い、逃亡する時はこいつらが必然的な存在でもある。という訳で、怠けることは絶対に許さないように監視している。とはいえ、それだけじゃなくちゃんとお菓子とか作ってあげてるのだが。
なおラ・バスワルドの攻略法は簡単だった。
冗談のように思えるが、これが通じるのだ。そもそもラ・バスワルドの上司、一級神ラグナロクはローベン・パーンの化身である。なので同系列のマッハを投げてしまえば、人格も知性も存在しないだけに、機械的なラ・バスワルドではロジックエラーを起こしてしまうのだ。なのでその隙に加速して回収、直後、マッハを巻き込んでラ・バスワルド起動。
マッハの尊い犠牲にはいつも爆笑させて貰っている。
まぁ、それはさておき、
天満橋の前にJAPAN軍200万が陣取り、その先頭集団、一人の帝と妖怪王、そしてそれに500人程の部隊が付き従う。椅子に座ったまま、一定まで近づき、足を止める姿を見た。先頭に立つ男―――帝―――侍としての服装に軽度の鎧をあしらった、黒髪をポニーテールで纏めた、爽快感を感じる男は此方に視線を向けた。
「我が名はJAPAN軍総大将、藤原石丸! 名乗られよ!」
成程、戦国ルールだ。ここで名乗らないとガチルールで殺しに来る奴だ。日本史に詳しい俺は知っているんだ、と、誰にも通じないネタを思い出して小さく笑い声を零しつつ、
「ウル・カラー。数百年前までは女王なんて事もやってたけど……まぁ、真理の徒……って一部からは呼ばれたりしているかなぁ」
では、と藤原石丸が声を張った。
「何故道を遮る!」
「面白くねぇからだよ」
このまま藤原石丸を通せば、こいつは快進撃に快進撃を重ねるだろう。そしてそのレベルは90を超える。90を超えるレベルと《剣戦闘Lv3》という領域、もはや人類統一できるだけの力があるレベルである。だがこいつには《無敵結界》を突破する手段がない。だからナイチサに処理を命じられ、止める手段もなくザビエルに殺されるだけだ。
これではあまりにもつまらない。そう、それだけの話だ。
もっと燃え上がる様な結末にして貰わなければ
「このままお前を通してもいいんだが……その程度の強さで大陸の連中を刺激して貰っても困るからな。せめて、本当にLv3という領域を使いこなせているのか、それを確かめる意味でもお前をまだ通す事は出来ないなぁ」
小さく、未来を想って笑いながら答えれば、石丸が何かを言い返そうとしてそれを巨大な黒い妖怪が―――即ち妖怪王黒部が遮った。
「お前は俺らの大将だ。下がってろ石丸。まずは俺が奴を確かめる」
「頼めるか黒部?」
「任せろ」
黒部の覇気の籠った声に口笛をヒュー、と吹かしながら立ち上がれば、椅子を部下が回収して、邪魔にならない場所へと運んで行く。黒部が拳を握り、構えるのを見て、勇者王を横に立たせたまま、右腕を突き刺し、指をくいくい、と動かす。
「初手は譲るぜビッグガイ」
「吐いたな人間ッ!」
言葉の直後、黒部が天満橋の足場を蹴り、その妖怪の凄まじい肉体的スペックで一気に加速しながら拳を作り、殺す勢いでそれを振りかざしてくる。それを見極めながら勇者王―――つまりは槌、《勝利の鍵》を動き出した後から掴み取り、拳が目の前に来るのを確認した。
「なっ」
「おぉ、硬い硬い」
黒部の、常人では見る事さえ出来ない拳、それに合わせて顔面に槌を叩きつける。力は入れていないので衝撃の大半は黒部の速度となっている。それでも振り抜かれる拳を踏んで、下へと向かって過重を付与する事で少ない力で崩しつつ、顔面に槌をめり込ませる。
「ホォ―――ムラァ―――ン!」
そこから力を腕に乗せたまま、槌に通す。斥力跳躍の応用で相手を斥力で押し出し、殴り飛ばすのに衝撃を入れない様にしながら一回転しながら着地し、相手陣営へと向かって黒部を投げ返した。ダメージがほとんど入っていないのを理解し、黒部が空中で体勢を整えながら、JAPAN軍の方で着地する。
その姿を見てへいへーい、と声を送ってみるが、黒部の対応は冷静なものだった。
「すまねぇ石丸。不甲斐ない姿を見せたな。だがあの女、強いぞ」
「あぁ、今の一瞬で槌の扱いなら俺の剣に匹敵するものを見た」
「……恐れたか?」
「いや」
黒部の言葉に答える石丸の表情には、喜びの様な、愉しみの様な物が見えた。あぁ、たぶん初めてなのだろう。同じ、Lv3という領域に立つ存在と出会うのに。Lv3とは頂点だ。ある種、誰にも理解されない極限の才能。誰もがそれについて行けない。故にそれを理解する事が出来る存在も居ないのだ―――同じLv3でもない限りは。
それでも《無敵結界》の前には、本当の意味で熟成されたLv3技能でないと勝てない。少なくとも、あのモーデル級に技能を使いこなさなければ。どんなにレベルが高くても無意味なのだ。そして正史において、石丸はザビエルにダメージを与える事もなく首を斬られた。
つまり、ただのLv3だったという事なのだろう。
だけどやはり、それじゃつまらないだろう、という話である。ルドラサウムの真意を理解した今、自分の行動に対して一切の疑問、躊躇はない。
「ちなみに、解ってると思うが俺は認めるか負けるか、それまではここを通すつもりはない。そして戦う上では別に、1対1でもお互いに部隊同士のぶつかり合いでも、どちらでもいい。俺個人としては部隊を編成したほうがお勧めするけどな。そっちなら途中である程度の人材の交代も許す」
即ち《決戦》方式。
石丸君、
「―――ちゃんとCP稼いでるかい?」
「……」
笑いながら指をごきり、と鳴らし、挑発してみる。まだ帝シリーズを集めたばかりの石丸であれば、レベルはそこまで高くはない。マギーズブートキャンプで改めて鍛え直し、レベルは今では何とか180までは上げ直してある。後はどれだけ帝シリーズのブーストが恐ろしいか、という話である。場合によってはここで化けてくれた方が面白いのだが、
さて、どうだろうか?
期待を込めて視線を藤原石丸へと向ければ。
楽しそうな表情が見えた。
「黒部」
「おう」
「戦うぞ」
「任せろ」
「皆! 相手は間違いなく噂に聞く魔人に匹敵する強者! ここにJAPANの戦士の力を見せつけるぞ! 第一隊! 第二隊! 第三隊! 戦闘用意!」
「応ッ!!」
「援護します!」
「俺らを忘れて貰っちゃ困るぜ!」
帝のパワーで一気に鼓舞された侍や巫女たちが石丸の、帝ブーストを受けて力を増すのが解る。流石ブースト設定を間違えているとか言われているアマテラスの神器、やっぱり、というか間違いなくバランスブレイカーであるのをこう見ると理解させられる。とはいえ、まだまだ、此方が格上だ。この数程度どうにか出来なきゃ俺の方も将来的には怪しい。
とはいえ、これ……10年足止めするのは無理かなぁ。
たぶん2~3年で突破されそうな感じはする。ちょっと、帝シリーズを舐めてたかもしれない。こっちもバランスブレイカー上等で殴り合えばまだまだいけるが、そうしても意味ないし、部隊としての成長をする必要がある。
そう言う訳で、
「頼んだぞお前ら」
「お任せください!」
「負けませんよー。ひっく」
「本当に飲んだのか……」
「もう、しっかりと気合を入れてくださいよ……」
「やるます! やるです!」
未来に向けて状況と役者は少しずつだが揃える様に考えて動いている。歴史を知っているというアドバンテージを活かさないといけない。その上でもっと楽しく、もっと壮大に、だけどちゃんとランス君の活躍が残る様に未来を残さないとならない。なに、そこら辺の調整はたぶん神様が手伝ってくれる。だってそうだろう、
その方が絶対に楽しいに決まっているだろう、ルドラサウム。
「そんじゃ、やろうか。気合入れなニュービー。お前に本当にどうやって力を振り回すのか、痛い程に教えてやる」
「はは、気の強い女は嫌いじゃない―――俺が勝ったらお前も、是が非でも仲間になって貰うぞ!」
そういう展開には、まだ数千年早いと思う。とはいえ、そういう展開も楽しそうだ。そう思いながら戦闘を開始する為に踏み出す。魔法を発動させ、肉体の駆動を経験で補正し、制御する。技能を動きの歯車として合致させる。この数千年の命で理解した技能というシステムの本当の使い方をこの体で実践する。
未来を―――ここから、少しずつ、
少しだけズラすように、
少しずつ、変えていく。
また次回からちょっくら時間を飛ばすかな! 石丸君について行くのも楽しそうだけど、余りメインで活躍すると将来的な楽しみ減っちゃうし描写増えちゃうからね。まぁ、メインイベントをビール片手に始まったら遠巻きから眺めるのが楽しいって。
ちょっとずつ未来改変開始。結果は変えなくても経過を変える事で残す者を増やして行く。