※この作品はR-18です。

ルドラサウム転生異聞録   作:てんぞー

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800年 作戦フェイズ

 お着替えである。

 

 ボトムスはホットパンツを、トップスはビキニ型のトップスを。そこにハーフサイズの半袖ジャケットを上から着る。長袖は左腕がない事が原因で見栄えが悪いので、基本的に服装は半袖がメインになっている。露出が多い恰好が基本的に多いのは、露出を控える格好だと長袖を着るハメになるからだ。自分の体格は把握しているし、女性として魅力的な体をしているのも解る。だからこういう恰好をすればどういう視線を向けられるのかも解る。だがそれはそれとして、女性らしい体をすれば解る。

 

 胸の谷間って蒸れる。オープンな恰好をしていないと辛い。特にこの時代、というかこの世界はそこら辺の服飾関係があまり発達していない。発達しているのは戦争続きだから兵器技術と戦争戦術ばかりである。服飾ももうちょい発達していいんだけどなぁ、と思うけどLv2に匹敵する才能とセンスを見せたのは魔王城に居た仕立て屋だけだった。その為、此方で用意する服装というのは、()()()()()()()()()()のだ。

 

 とはいえ、最近は新しく追加された堕天AKのレヴィが《服飾Lv1》技能持ちである事が発覚した。おかげで大体欲しい服装を要求すれば、作れるという事が判明している。技能レベルのインフレでLv1が低い様に見えるが、既にLv1を保有しているだけでも凄いという事実を忘れてはならない。Lv2は天才の領域であり、Lv1でもプロフェッショナル級なのだから。その為、今の服装もレヴィの自作品である。

 

 それ以外にも《農業Lv1》持ちが居たりするので、最近はカラーの森に少しずつ、農地が増えている。貢物でもらったうしを繁殖させ、ブランド牛を育てようという計画も実は上がっている。そろそろ主旨を間違えてないかな? と思っているが、それでも生活の向上と安定は大事な事だった。ジルも翔竜山にまでは飛び込んでこないであろうことを祈っておく。

 

 ともあれ、ハーフフィンガーグローブを装着し、スカーフを装着する。今日もこれでストライダーの気分だな《飛竜のスカーフ》君。天井に一度逆さまに張り付いてお前にそんな玩具は必要ない、とでも言うべきだろうか?

 

 まぁ、それはともあれ、結構露出の多い恰好になってしまっているが、元々ドラゴン時代が全裸生活の様なものであって、厚着している方が違和感を覚えるのは実際、事実だ。自分が部屋の中に一人でいるときはなるべく全裸で居たいし。ただ、それは一人の時だけだ。堕天AKの連中、堕天したのを良い事に普通にレズセックス楽しんでるし。俺を誘うな馬鹿野郎。

 

 後オナネタに人の枕を使うな。割と真面目にショックで数日、マギーホアを洞窟から追い出して引き篭るのに利用させて貰った。流石ルドラサウム大陸、相変わらず倫理という言葉の概念が存在しない。

 

 ゴーグルを首に通しているのを持ち上げてセットし、本日はサイドポニーな気分なのでセラクロラスのリボンで髪を纏める。これ、かなり長い間使っているのが相変わらず朽ちる気配さえないのは、流石神クラスのバランスブレイカーとでも言うべきなのだろうか? まぁ、サイドポニーも偶には悪くないよね! という気分になった。そうだ、《白色破壊光線》をカスタムしたら魔砲使いっぽくならないだろうか? どうだろうか? でもぶっちゃけ、《白色破壊光線》みたいな光線系の魔法が最上位というのはなんとなくだが地味だよね、って思う。

 

 今度、効率度外視の究極魔法みたいなのを開発してみよう。Lv2でぎりぎり使えるというレベルの大魔法を。こう、破壊光線じゃ魔法として見栄えが地味じゃん? だったらもっと見栄えの良い破壊魔法が欲しい。まぁ、課題だ、課題。暇な時間は腐るほどあるのだ。正史ランスではサボったり、隠れていたりでレベル下がってたり、時間を有効活用してなかった連中が多い。

 

 だけど俺は違うぞぉ。

 

 持っている時間全てを自分の研鑽と強化、そして世界を盛り上げる事に全てを捧げる。

 

「ま、これでお着替え完了、っと」

 

 ベルトにポーチを通し、その中に必要な道具やらを詰め込み、勇者王を何時も通り残された片腕で握って肩に担ぎ、家の外に出ると額に手拭いを巻いてクワを片手に汗を拭う、いい感じに農業女子をしている堕天AKの姿が見えた。

 

「あ、ウル様。見てくださいこのトマト! さっき菜園で取れたんですけど甘く出来たんですよ! ちょっと食べてみてくださいよ!」

 

「ん、良く出来てるじゃんか。もう完全に俺が教える事ないな、こっち方面じゃ」

 

「はい! 美味しい野菜はお任せください! 元エンジェルナイトの力で育てますから」

 

 力を籠める方向性間違えてない? 一応君、対魔人戦術の切り札の一つだから、そこら辺ちゃんと自覚していて欲しいんだけど。でも、まぁ、美味しい食事には勝てないよねぇ、と思う部分はある。素材を自分の所で調達できるようになるのは理想的だと思える。だから心の中でフレー、フレー、と応援しておく。美味しい飯が俺は食べたいのだ。JAPANからも味噌と醤油を確保したし。

 

 とりあえず。

 

 お出かけの準備は整った。トマトを食べ終わった所で、農業担当AKが此方へと視線を向け、首を傾げる。

 

「ところでウル様どちらへ?」

 

「ん? あぁ」

 

 ちょっとした遠出である。

 

「そろそろ魔王城に挨拶に行こうかなぁ、って」

 

「あ、魔王城ですか……ん? 魔王城?」

 

「じゃ、それでは」

 

「待ってください、それ完全にカチコミ―――」

 

「《見える見える》」

 

「うぉっ、まぶしっ」

 

 目を潰している間に素早く斥力跳躍で逃亡する。森を飛び出してそのまま北へと向かって移動する。向かう場所は現在の魔王城が存在する、リーザス周辺地域である。ヘルマン側から魔王城へと向かおうとすれば、必然的に山脈を越える必要が出てくるが、そこは自分の魔法と身体能力の出番である。まるで障害にもならないだろう。南の自由都市ルートから魔王城へと向かおうとすると、必然的にオピロス帝国を経由する必要があり、そこから北へと向かえば、魔軍とオピロス軍の最前線にぶつかる。

 

 今は歴史で派手に姿を見せるつもりはない。歴史のサブキャラクターとしてちょくちょく登場する程度で十分だ。だからなるべく、オピロス帝国には関わらない。死滅戦争が始まってからはまた、別の事を考えるかもしれないが。それでも今は回避するルートで魔王城へと向かう。

 

 死滅戦争で勇者が動き出す前に。

 

 まだ余裕があり、完全な状態の魔王ナイチサという男の存在を、自分の目で確認したかった。これは必要な事だった。使命感を抱いていると言っても良い。ここしばらく、藤原石丸の相手をしたり自分もリハビリでのレベリングで、レベルも190以上をついにマークしている。これだけあれば襲われても即死するという事はまずないだろう。逃げるだけならバランスブレイカーを放出すればどうにかなるという打算もある。

 

 そこら辺、仕込みのあるなしでの判断は命に関わる。俺がナイチサであれば、俺を魔人にしようとする事も考えられるから、その対策に逃亡する手段を常に用意する事は意識している。やっている事は笑えるかもしれないが、その為には念入りに準備をしている。

 

 魔王ナイチサ。

 

 その男の素顔を見極める為にNC800年。

 

 いよいよ、魔王城へと向かう。

 

 

 

 

 ヘルマンの寒気を乗り越えて、山を斥力跳躍で飛び越えて進んで行く。猛吹雪が発生しようがストライダーの前では無駄なのだ。新鮮な空気と風が常に補充され、それを足場に山を常に跳躍して越えて行く。そうやって山を越えれば寒気が山脈によって遮断される為、一気に周辺の気温が上がってくる。未来でリーザスと呼ばれる地域の周辺は自由都市に次いで過ごしやすい気候をしていると個人的には思っている。スラルも良い場所に魔王城建設したよな、と思っている。

 

 それはそれとして、思惑通り戦線の背後を、魔王城の背後を取る様に山越えで魔王勢力圏へと侵入する事が出来た。ヘルマンも一応は魔王の勢力圏になるのだが、あそこはまだ人類がほぼ住み着いていない為、そもそも魔軍が派遣されていないという事実がある。派遣する為には山脈を越えて兵力を運送する必要があると考えれば、ある意味当然とも言える判断なのだが。

 

 そうやって裏手から回り込む様に魔王城へとやってくると、久しぶりの魔王城の姿に思わず懐かしさが蘇ってくる。忙しなく魔軍が人類と戦う為に動き回っている姿が見える。堂々としていると逆にケッセルリンクのラバーズか何かとして誤解されないかなぁ? と思って行動すれば、これが割と簡単に行けた。額のクリスタルを隠さないのが良かったのかもしれない。とはいえ、魔物兵には警戒される。

 

 だがこれは魔物将軍に見つかると話が変わる。

 

「料理長! 料理長じゃないか! 長い間見てなかったけどどこ行ってたんだよ! またあのパラパラチャーハン作ってくれよ!」

 

「お、トレロ君? おぉ、久しぶり。暇が出来たから遊びに来たんだけど」

 

「おぉ、マジか! じゃあちょっと厨房に行けよ厨房! チャーハン作ってくれよ!」

 

「お前チャーハン中毒症か何か? まぁ、一品ぐらい別に良いけどさ」

 

 ザビエルダークの件でなんか、敵対してる事になってないかと思ったが、案外そんな事はなかった。スラル時代から生きている魔物兵や魔物隊長で生き残っている連中はあの頃と変わらない様子で普通に迎えてくれた。俺が敵とか裏切ったとか、そういう意識がこの連中にはまるで存在しなかった。

 

「俺、ザビエルと一時期は殴り合ってたんだけど」

 

「え、まぁ、ザビエルなら別にいいかなぁ、ってみんな思ってるし……」

 

 ほんと人望が欠片も存在しない魔人だった。アイツと敵対してたならセーフ判定とかいう、謎のルールが魔軍では広がっていたらしい。アレでもナイチサには割と便利に使われていただけに、非常に憐れな奴だった。アイツ、もうちょっと横の繋がりとか、部下を大事にする事が出来ないのだろうか?

 

 まぁ、ザビエルだし無理だよなぁ、と思う。

 

 《粘着地面》に最も苦しめられた魔人の称号はお前のもんだよ。ゴキブリかよ。

 

 ともあれ、魔軍に昔馴染みが居る事が救いだった。案内されつつ今代の魔王、ナイチサの居る魔王城に入る。少なくとも増築などの類はされていないようで、姿はSSの時のままだった。つまり、構造等も変わってはいないのだろう。魔王城に入ってみるとうわぁ、懐かしい! という気分が自分の中で炸裂する。

 

 そこまで来れば、もはや案内も必要がない。

 

 魔王城を一人で歩き始める。向かう場所は最も親しみ慣れた厨房だ。シェフに転職してしまった魔物連中はちゃんと生きているだろうか? そんな事を考えながら通路を歩いていれば、

 

「あっ」

 

「……」

 

 ばったりと、通路で魔人メガラスとエンカウントする。

 

 その両目は此方を捉え、視線を逸らし、窓の外を見て、もう一度此方へと向けられた。

 

「ふぅー……現実か……」

 

「そこまで嫌そうな顔をするなよお前。俺でも傷つくんだぞ」

 

「そうか……そんな法則がこの世界にはあったのか」

 

「お前《ハイスピード》で絶対に回避出来るからって調子に乗ってない?」

 

 メガラスがその言葉にわざとらしく首を傾げる。お前―――本当にお前、変わらないなぁ、と溜息を吐く。いや、まぁ、まだ無口になっていないのは驚きなのだが。それとも俺が無口化を阻止しているのだろうか。どちらにしろ、笑えるような話を出来る奴の方が、無駄に無口になっている方よりは良いと思う。

 

「それより何故戻ってきた」

 

「いや、ナイチサ君の顔面を1回拝んでおこうかなぁ、って……なんだよその表情。まるでなんだこいつこっわ……って感じの表情は。今も昔も俺の行動原理なんて大体そんなもんだったろ!!」

 

 その言葉にいや、とメガラスは言葉を零す。

 

「昔のお前は……目がもっと曇っていた。SSの最後の時代、それも晴れていた。だが今は瞳の奥が見えない程に澄んでいる。迷いも、闇もない、そんな瞳だ。信じられる正義の為に動くものが見せる瞳だ。だから昔の様な事をしに来たお前に驚いてる」

 

「お前、ほんとよくそういうのサラッと言えるな……」

 

 その言葉にメガラスが何の事だ、と首を傾げる。まぁ、言った相手が俺で良かった。まだ心が雄なのでまだ堕ちる可能性が欠片もないので。こいつがホルスの女王に好かれている理由が今の一瞬で分かった気がする。

 

 ま、それはともかく、

 

「ナイチサの面を軽く拝んだら帰るつもりだよ。とはいえ、その前に厨房に寄るけど」

 

「変わらないな、お前は……」

 

 メガラスはそう、嬉しそうに呟くと、横を抜けて去って行く。

 

「……また会おう」

 

 その言葉を背に受けつつ、頭の裏を掻く。なんというか、本当に魔人にしておくには勿体ない男だよなぁ、とメガラスの事を思う。とはいえ、アイツが魔人ではないと抑えられない連中がいるのも事実だ。それを考えるとメガラスにはそのまま魔人でいて貰った方が好都合なのだろう。酷い事を考えるなぁ、俺も。しょうがないのだが。

 

 メガラスと別れた所で、そこから厨房まで問題なく行く事が出来た。そこで厨房に入れば、コック帽とエプロンを装着した、シェフ型魔物兵のスーツ姿を何人か目撃する事が出来る。連中を見て、

 

「おいーっす、お姉さんが様子を見に来てやったぞー。元気かー」

 

「料理長!! 料理長じゃないっすか!」

 

「生きてたんですか!?」

 

「というかまだ処女なんですか!?」

 

「逆レしそうなぐらいバイタリティある人なのに!!」

 

「よっし、お前とお前、そこに並べ。光にしてやる」

 

 並べてからケツに勇者王を叩きつけてケツバット。はたき倒してから担ぎ直し、よし、と呟く。相変わらず魔王城の設備は非常に優秀だ。昔使っていたキッチンは綺麗なままだが、前よりも一段と洗練されている気がする。

 

「キッチン拡張された?」

 

「あぁ、うっす。ナイチサ様が飯の味を気に入られて、その功績で」

 

「魔物が作る飯だから期待してなかったそうでしたけど。実際に食べた時のナイチサ様の表情は今思い出しても笑えますよ」

 

「マジかー。俺も見てみたかったな、それ」

 

 心の中にメモっておく。ナイチサは美食家、と。それに部下に対してはそこまで非道を働いていないようだ。見た感じ、魔王城内そのものの空気は悪くない。あくまでも苦しめているのは人類だけで、ちゃんと部下の事を認めて功績に対して報いているのだろうか?

 

 アレ、これ、普通に優秀な上司なのでは?

 

「アレっすよアレ、料理長が前に考案したフレンチ料理」

 

「ナイチサ様、アレが大好きなんですよ。開発するのに苦労したの覚えてます?」

 

「お前ら最初はクッソ適当に野菜切ってたりしたから、教えたり開発するのにすっげぇ苦労したよなぁ……しっかしお前ら生きてたかぁー……」

 

 場合によっては死んでるかと思ったが、がっつりと生きている上に認められていた。変な所で魔軍の食糧事情が改善されている気がする。もしかして一番最初に発生させた、大規模な事情の変化って魔王の食事事情なのではないだろうか……?

 

 まぁ、そんな事はともあれ、

 

「ナイチサの顔を見に来たんだけど―――久しぶりに料理するか」

 

 最近は《料理》技能持ちの堕天AKに色々と教えては頼んで任せていたし。俺も美味しいものを自分で作って食べたい。つまり食事の時間であった。魔王城に来てまで何をやっているのか?

 

 まともに考えてはならない。魔王城では脳味噌を半分蕩けさせた方がうまくいく。これは経験からの答えである。

 

「JAPANで手に入れた味噌、醤油、こいつを使ってなんか新しいもんに挑戦するぞお前ら……!」

 

「料理長!!」

 

「料理が出来るのはポイント高いっすよ!」

 

「でもまだ処女だよな!」

 

 顔面に勇者王を投げつけてから厨房に向き合う。地味に最新式設備……一世代ぐらい機能、進んでない? もしかしてナイチサも美食系?

 

 そんな事を考えながら数百年ぶりに、緩そうで緩くない魔王城へと戻ってきた。

 

 これ、客観視すると人類と魔軍、両方裏切ってるんだよなぁ……なんて事を考えながら、久方のクッキングタイムである。




 魔王城おひさ、元気にしてた? そう……のノリで唯一ラスダンに乗り込める女。人類側からすれば裏切ったなこいつって見えるけどなぜかザビエル追い返してるし、魔軍側からしても何時もの発狂だ……程度にしか思われてない奴。なんなんだこいつ?

 答えはルドちゃんのファン。ランス君のファン。

 という訳でナイチサの顔面に季節違いのメリークリスマスしに行こうか。
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