JAPAN、第一次戦国時代に突入する。藤原石丸の死後、放置されていた【帝シリーズ】を求めて戦いが始まる。帝に統治されなくなったJAPANは各地で大名化、独自の軍隊を保有する様になって大陸には目もくれず、お互いに殺し合いをする様になる。この事態に大陸の半分を支配する大オピロス帝国はまさにドン引きという様子を見せていた。何故魔王という脅威を前に身内で殺し合っているんだこいつら、という言葉に対してJAPAN以外の大体全ての存在がそうだよな、と納得するしかなかった。
JAPANが戦国時代を開催する陰でオピロス帝国、東西に分割。魔軍との戦いを放棄し、オピロス帝国内で内乱が発生する。オピロス皇帝のJAPAN側を全く笑えないじゃないかという言葉が歴史に残される。まさしくその通りだった。魔軍との戦いを止めても東部オピロス、西部オピロス、そしてJAPANと三大国家に世界情勢は割れた。魔軍が手を出さずとも三国家の間で勝手に疲弊するという事態が進み始めた。のちの歴史家に人類が最も愚かであった時代として名を残す様になる。争い始めて国家は勝手に疲弊し、魔軍に対して脆弱な姿を見せる事になった。だがこの状況に対して魔軍は静観する事を選んだ。藤原石丸の成長の時の様に、まるで最大の成長まで待つように魔軍、そして魔王ナイチサは国家情勢を見守る様にした。
世界最大国家に東部オピロス帝国が名を上げる。未だに帝シリーズを求めて内乱を続けるJAPANとは違い、東部オピロス帝国は魔軍に対する最前線を守る代わりに西部との間に不戦協定を結ぶ事に成功する。これによって東部と西部の間では戦闘が行われなくなり、同時に東部オピロス帝国が急速な発展を迎える。かつて藤原石丸によって齎された文明成長のノウハウを吸収した東部オピロス帝国は大陸南部に巨大な支配領域を生み出し、そこで食料の大量生産に成功する事で爆発的な人口増加に成功する。この陰には《農耕Lv3》の存在があったのではないか、という話が存在する。そうでもなければ爆発的な人口増加に対する答えが存在しないから、と認識されている。また、これによって東部オピロス帝国は過去最大の軍備増強を行う。あの藤原軍を超える、大陸最大規模の軍隊が結成しつつあった。
東部オピロス帝国が魔軍、魔王ナイチサに対し宣戦布告。国民の一人に至るまで死なない限りは戦争を続けると宣告し、魔王ナイチサを討伐する為の戦争がついに始まる。これに魔王ナイチサが国民すべてを葬る事で終わらせると言葉を返し、開戦する。
のちに東部オピロス帝国の人間全てが死亡する戦争、死滅戦争がこれより開幕する。人類史で最も多くの血が流れ、最も多くの人間が死んだという最悪の戦争であった。
「西部オピロス【賢人会】へのご招待、か」
NC951年。今回はバランスブレイカーからの反動ではなく純粋な外傷がメインだったので怪我自体は数十年で治った。それからは再びマイホームへと戻って再びリハビリの日常だった。そこまでレベルが下がらなかった事がある種の救いだろう。だが問題は元カラー女王というネームバリューと、お散歩が原因で自分が翔竜山周辺に住んでいるというのが西部オピロスの方ではそこそこ認知されている、という点だった。つまり定期的にゼス周辺の国家からお誘いだったりするものがあるのだ。基本的に強引なアクションはないのだが、たまーに、100年に一度程、身の程をわきまえない馬鹿がやってくる。そういう馬鹿はきっちりとぶち殺して差し上げている。ぶっちゃけ、権力とか間違いなくデッドウェイトになるので欲しくはなかったのだ。なのにそういう勧誘ばかりやってくるのが困りものだった。
「【賢人会】ってなんだよ……あ、パンフついてきてる」
そこはポイント高いぞ西部オピロス帝国君。
家の椅子に座りながら招待状に付属しているパンフレットを取り出し、その内容を確認する。西部オピロス【賢人会】とは西部オピロス帝国に才能を認められ、そして十分な能力を持つ【賢人】を見出し、それによって魔法、化学、文化、様々な面での技術向上を目指し、更なる叡智を求めようとする団体であると説明されている。
「国家に還元していくスタイル。あ、だけど政治的な力は持てないのは好感持てるな。だけどめんどくせぇ」
誰がやるかよ、と思ってベッドの上に招待状とパンフレットを投げ捨てた。
「どうせ滅ぶ国と関わってもなぁ……」
呟きながら椅子に背を預けた。
ナイチサに敗北してから150年近い時間が経過した。東部オピロス地獄は既に国民が8割程死滅している。それも一方的に、圧倒的な力で。魔人と自分自身が最前に出る戦争の中でナイチサは少しずつ、少しずつ前線をじりじりと削る様に押し上げ、戦争が始まってから今になり、東部オピロス帝国は死滅の危機を迎えた。逃げ場を無くすように東部オピロス帝国の国境に魔軍と魔人を配置し、囲みながら宣言通り、全ての国民を見逃す事無く殺し尽くしている。人類最大人口を誇った国家が今では絶望と死の国になっている。魔軍が通り過ぎた大地に生き残る人類は残されていなかった。とはいえ、そろそろ東部オピロス帝国の全滅が見えてきた。
そしてそれが終われば勇者スイッチが魔王を殺すモードに入る。そうなればナイチサに致命傷が入る。
「ナイチサももう終わりかぁ……ん? あー……そうか、魔王の交代か……」
ジルの事は覚えていたが、そういえばジルの所属は忘れていた。若く聡明な賢者だったが、苦しめられて歪んだ結果人類家畜化計画をする様な魔王になってしまった、というのがジルに存在していた設定だっけ? と思い出す。その内容をより鮮明に思い出す為に【ひつじNOTE】を取り出してパラパラと頁をめくり、内容を確認する。
「あったあった……迫害から四肢切断でレイプか。ひっでぇなこれ」
人類全てを憎む魔王となる、のだったか。だがその前は聡明な賢者で、美しい女だったと言われる。いや、魔王ジルになっても十分美しいのだが、それでも拷問レイプされるぐらいには美しかったのだろう。ちょっと、なんで迫害されてしまったのか、というのには純粋に気になる。何よりも西部オピロスは魔法研究と魔法開発の方が非常に盛んになっている、という話を聞いている。
その中には《魔法Lv3》の存在も感じるような、感じない様な。だが時折、長く生きた自分の様な凝り固まった、或いは螺子曲がった思考の持ち主では絶対に思いつけない様な突飛で奇抜な、とても若い発想を人類というのは生み出せる。そういう視点は長寿の種族には持てない発想力である。自分の様に無駄に長生きな奴は、若い頃に見つけ、そして鍛えたのを延々と鍛え、発展させ続ける事ぐらいしか出来ない。応用性はあっても、生産性がない。新しく生み出すというのが時代の発想力から難しくなってくるのだ。その為、魔法研究を行う上ではなるべく若い世代と接するのが、研究する上では良いとされている。
だから魔法研究を進める事を考え、魔王ジルとなる前にジルに接触し、どういう人物だったのかを探るには、西部オピロスの【賢人会】に乗っかる事を考えても良い。だが当然、これにはリスクがある。
まず第一に俺がカラー。それもドラゴン・カラーであるという事実だ。
つまり未だにカラー狩りが続いている時代であり、俺という元女王のクリスタルにはそれだけの価値があると見られるだろう。ぶっちゃけ、この呼び出しが罠で俺をハメる為の文章だったとしても別段、俺は驚かない。それでもまぁ、普通の人類程度には負けないだろう。一般人からすれば俺も魔人もそう違いがないレベルで化け物にしか思えないし。
ただそれ以外にも、ジルを迫害したとされる連中が存在しているのも事実だ。魔王とはなった瞬間から最強になる訳ではない。そもそも魔王には素質が関わってくる。そして同時に、魔王は元々存在してた素質を大幅にブーストする。解りやすいのはランスが《剣戦闘Lv2》だったのが魔王になる事で《剣戦闘Lv3》へとそれが進化した事だ。こんな風に、魔王化は単純にレベルを上げて強くなるのではなく、素質や資質をブーストする。故に、元々ジルには優秀な素質が、才能があるという事が解る。
このジルを四肢欠損に追い込んだというのならマジでビビる。スラルは元々レベル50以上あった貴族の娘だったらしいし、ナイチサも同じく、貴族出身の男だった。魔王になるには一定以上の強さが必要の様に思われる。そしてそれが正しいのなら、ジルもそれなりのレベルがあった筈なのだ。そんなジルを四肢欠損に追い込むなんて。
「もしや伝説のタネ=ヅケ・オ・ジサンでも居たのか……!?」
椅子にだらり、と体をたれ状態でぐったりさせながらそんな馬鹿な事を口にしてみる。
真剣に考えてみる。
「でもアリスソフトさんなら種付けおじさんぐらいは出せそうだよね」
部長出てきてるし。というかちょくちょくスタッフの方々が出てきているし。ただ、未だに自分がハニーキングというか、部長とエンカウントするような事態はない。フラグを踏めていないのか、それとも避けられているのか、一体どっちなのだろうか……? どちらにしろ、魔王ジルとなる前の賢者ジルとエンカウントするのにはそれなりにリスクがある。当然、これを見逃しても良い。
なにせ、この間に出来る事はもう一つある。
勇者への接触だ。
ぶっちゃけ、魔王を殺せる勇者のスペックというのには凄い興味がある。それに魔王を殺せるレベルまで解放された状態の【エスクードソード】であれば、人類最強の武器と呼べるレベルにまで強化された状態になっているだろう。それを見てみたいというのもある。
だがそれとは別に、魔王をソロで殺せる人類の強さ、そのスペック、レベル、能力というのを一回把握しておくべきだと個人的に思っているのだ。マギーホアはアレ、バグの様な強さなので全く参考にならないのだが、人間という範疇で魔王を攻略するにはどれぐらいの強さが必要なのか、それを見極める為にもなる。それにこれから、未来で何度もエンカウントする事になりそうな勇者の従者、コーラス0024とは今のうちに顔を合わせておいた方が、色々と捗るだろうとも思っている。
「ま、どちらにしろこれから単独行動は控えるか」
堕天AK隊も一部、戦闘の才能のある奴とない奴で分かれ始めて来た。戦える奴を護衛として何人か連れて行くのが良いだろう。そろそろソロで活動する時期も終わりかなぁ、という感じが強い。ナイチサの一件で少々懲りたとも言えるかもしれない。それにいい感じに使える子が出てきたので、その子の試運転などを意味する。後俺について行動する事に慣れさせるとも。
レベルが上がるのが非常に遅く、中々強くならないが、それでも漸く外に連れ出せるだけの強さを持ってくれたおかげで、西部に行こうと、東部に行こうとどちらでも問題なくついてきてくれるだろう。将来的には魔人討伐隊に参加させる予定でもあるし、その事を考えたら対魔人経験はあげたい。だがそれとは別に、対策用の魔法研究も進めたい。
……どちらを選んでも問題はない。
また同時に、どちらも選ばないという選択肢がある。
つまりはこのまま森に引き篭るという選択肢だ。当然、ここにはドラゴン達やマギーホアが居る。そしてそれだけではない、将来的には……そのままかどうかは不明だが、【ペンシルカウ】が設立される。この【ペンシルカウ】がカラーの一番大きな里となり、2000人のカラーを収容し、結界で守る場所となるだろう。
それが発生するのが全人類家畜化計画が発動するGLの間の話だ。つまりここから出て行く事をせずに引きこもって、ペンシルカウの設立に向けてちびちび農地化などの準備を進める事が出来る。
「西部オピロスに行って賢人会で魔法研究するか、東部オピロスで勇者を眺めつつ弱ったナイチサの顔面にうしのフンを投げつけるか。それともここに引きこもってしばらくの間は農家に転職するか」
「私個人は最後のをお勧めしておくわ。ここに引き篭って毎日お菓子でも焼かない?」
「我輩はやはり西部オピロスに行くのが最も楽しいと思うぞ。あそこの人間は大分腐敗が進んでいるからな」
振り返ればキッチンから焼きたてのケーキを片手に悪魔界へと帰って行くスラルと、逃亡する所をスラルに蹴られて床に倒れているマッハの姿が見えた。どうやらケーキ争奪戦の軍配はスラルに上がったらしい。
なのでマッハを持ち上げ、訓練中の集団の方へとその姿を投げた。
そしてそのまま、ノスに踏み潰された。その姿を見てからガッツポーズを決める。
俺もこの数千年間生きてきて、だいぶ元の男だった頃よりも意識が変わっている。これが自然なものなのか、本当の意味で壊れたのか、或いはこれが女という生物の意識の仕方なのか―――それは判断できない。だが俺も、漸くこの歳になって変わってきているんだ、というのを理解できた。問題はその方向性だけで。そして自分の選択肢が未来と自分を変えて行くのであれば、
その選択肢は慎重に行わなければならない。
さて―――何をしたもんか。どれも魅力的に思える以上、等しく楽しそうだった。
段々と未来が近づいて来たのでランス10に向けて要素やら準備やらが増えて来る。
それはそれとして、コーラは一度蹴り飛ばしたい。