「―――良し、【賢人会】とかいうのがどれだけ凄いのか、このウル様が確かめてやろう」
ついでにジル対策を構築する為に、賢者ジルという人物を確認する。魔王になってからランス03でのランス君の活躍に任せるか、その時盗み見る感じでいいだろ。うん。正直魔王ジルは苦手だ。カラーは放置されていたらしいが、それでも全人類家畜化とか完了させてしまう魔王を一体誰が得意になれるというのだ。正直アレ相手にセェェェェ―――ックス! とか叫んで挑戦出来るランス君があまりにもランス君過ぎる。
美少女美女だったらセックスオールオッケーのランス君の法則が強すぎる。将来、自分も見つかったら間違いなく襲われそうだから、純潔の魔法でも作った方がいいのだろうか。処女である間は淫らな事を自らしない限りは守られる魔法とかファンタジーに良くありそう。
だがここはアリスソフト。そんな都合の良い物はありません。
偶に助けてTADA部長! ハニーキング! 居るんでしょ!? って叫びたい時があるのは事実だ。とはいえ、ハニーキングが存在するのは間違いがないのに、その姿が確認できないのが、ちょっと怖い。間違いなくこの大陸に存在する筈なのに。あれ? でもTADA部長とハニーキングは別の存在だっけ? 【ひつじNOTE】を確認すればTADAは上位存在、ハニーキングはハニー担当二級神(?)、と書かれてあった。ぶっちゃけ、カラー時代はハニーが必要だったから探せばちょくちょく調達できたのだが、それが恨みだとか何とかに発展する事はまるでなかった。ハニー、そこらへん割と重い筈なんだけどなぁ、と思いつつ。
まぁ、ハニーキングと部長の事は良い。メタ存在の事を考えると頭がおかしくなりそうだ。何時か、ハニーキングを見つける事は一旦おいて、とりあえず、向かう先は西部オピロス帝国にする事にした。【賢人会】、そして賢者ジル。自分の目で是非とも確かめておきたい事の一つだった。そこに本当に《魔法Lv3》がいるとしたら、それは自分が今、改めて魔人や魔王対策に考えている魔法等の助けになるだろう。
将来的にエールが習得するであろうAL大魔法クラスの、最上位魔法の上に来る【大魔法】レベルの魔法、それを生み出す事が今の自分の目標である。レベル250でありながら明確に魔王に対して大きなダメージを発生させる事の出来る魔法。その開発は必要だった。何せ、NCが終わればGLが来るのだ。
そうすれば大陸全土を舞台とした魔人戦争がやってくる。今からそれに備えても、早過ぎるという事はありえないだろうと思っている。だから早めに対策などを考える。特にナイチサと戦闘した辺り、そういう対策は非常に必要だと感じられた。まぁ、今の所俺に《無敵結界》を突破する方法はない。バフデバフと妨害惑乱をメインにし、堕天AK隊に攻撃を完全に任せるスタイルになる。
だが彼女たちでさえ、まだレベルは80を超えたばかりだ。レベル限界はかなり高いが、それでも200には届かない。一番高いルシアでもレベル限界は154だ。他の子はそれより10や20低い。完全に成長させた状態になれば、ある程度魔人と戦える強さは備わるだろう……あとは経験等の問題になってくるだろう。まぁ、魔人側も魔人側で数は増えている。カミーラも正史程引き篭っている訳ではない。もうちょい顔を出せたら話は別なのだが。ケッセルリンクもスラルが生きている影響で強いままだけどラバーズ増やすの止めない?
「ちっと思考が逸れたか。まぁいいや。さて、今回はどんな姿で行くかな……」
帝国に賢人として招かれるのだ―――こう、賢者っぽい服装で行くべきなのではないだろうか? 賢者っぽい服装ってなんだよ。だがこの体は女だ。だから着飾る位のおしゃれはしたい。なぜならその方が楽しいからだ。何時も、同じ格好ばかりでは飽きるし。
聞こえますか……作画班よ……CGを、ウル様の美しいCGを用意するのです……。
「届け、我が思念ランス外伝の発売へと向けて……ランス10マグナムでもいいのよ!」
……茶番完了。
どうせ皇帝とエンカウントする前提になるのだろうから、それを考えて服装を選んだ方が良いだろう。何時も通りの冒険用の服装ではなく、品のあるタイプの服装の方がいいよな? と判断する。それに合わせて……魔法使いっぽい服装がやはりいいのだろうか?
「レヴィー? レヴィいるかー? ちょっとこれから皇帝に物理的謁見をかます予定なんだけどー。品のある賢者っぽい服あったかー?」
「はーい? 趣味で縫いまくってますからありますよー。ちょっとお待ちくださーい!」
有能な部下を持つと幸せだねぇ、と思う。しかし趣味で俺の服を縫っているという話は少し、聞き捨てならなかった。君、こっそり俺のマネキンを作って着せ替えごっこなんてしてないよね……? まぁ、部下が変態ばかりじゃない事を祈る。それはともあれ、下着姿で部屋の中で待っていれば、服を持って来たレヴィがやってきた。此方も堕天したエンジェルナイトである為、背中の翼が一つしか存在しておらず、それが黒く染まっている。また、生活の間では不便なので背中の翼を魔法で縮小している。彼女は今、生活における服装等を作ったりしている、蒼髪の堕天AKだ。人気があるので、ちょくちょく作ってはそれを近隣の村での物々交換に使っていたりする。
「これはどうですかウル様ー?」
レヴィが持って来たのは黒いドレスの様な服装に、別のパーツの服だった。ちょっと見た事のないタイプだ。
「種別的にはスリットロングドレスとマントですね。こう……」
持ち上げて、ベッドの上に広げて説明してくれる。ホルタートップ型とでもいうのだろうか?背中がある程度オープンになっており、首の後ろから軽く吊り下げるような形のドレスになっている。スカートの部分はスリットが入っており、黒ベースに髪と同じ白に近い金で端等が控えめに装飾されている。それと同じようなマントが用意されておりよく見ればマントが両肩を超えるパーツが存在し、ドレスにくっつく様だった。
「マントは権威を表す物でもあるので、其方の方を。腕を出すと自然とマントが下がりますが、そうでなければ腕を隠す様に展開しますので、左肩口の傷は露出しない筈ですよ。右腕だけを動かす分には見えませんし。後なんかこのマントとドレスっぽい恰好が凄い高貴っぽい」
「高貴っぽい」
「ほら、風格とか高貴さって恰好より本人の資質が大事ですし。服装はそれっぽければ大体オッケーです」
「ぶっちゃけやがったな」
まぁ、言っている事は何も間違ってはいないので、サクサクと着替えてしまう。実際、デザインとセンスは悪くないのだから。そして着替え終わった所で、右手のみ、手袋を装着する。といっても手首までのタイプではなく、イブニング・グローブと呼ばれるタイプのものだ。これも黒。服装全体として額の赤いクリスタルと、プラチナブロンドの髪色が目立つようになっている。
普段の下着姿や、冒険者ルックとはまるで違う姿をしている。俺も着飾ればこれぐらいはどうにかなるもんだな、と着替え終わった所で姿見の前に立って、姿を軽く確認した。普段は本当にラフな格好か、或いは下着姿で家の周りをうろついているから、こういうまともな恰好をするのは割と初めてかもしれない。背後に回り込んだレヴィが髪の毛をサクッと整えてくれるし。うん、
「黙ってれば美人か」
「ウル様はクリスタルが綺麗ですからね。宝石で飾る必要がないのが良いです。もっと見せた方が良いと思いますけど……」
「視姦されてるようであんまり眺められるの嫌なんだよ」
「なら仕方がないですね」
前髪で軽く隠れる程度でいいのだ。だがふむ、と呟きながら軽く姿見の前で体を回し、周りから自分の姿を見てみる。ふわり、とスカートの裾が広がるが、余り広がらないのは、基本的には体のラインを強く見せるフィット感のあるドレス姿だからだ。女という生き物はドレス一つで結構言うもんだよなぁ、とは思っていたが、こうやって実際に着てみる立場になって、そこまで悪くは感じない。
まぁ、それでも戦闘用ではないよな、って思う。普段の露出の多い恰好の方が好きだ。
「じゃ、後はヒールを―――」
「あ、靴履いてくから」
「あっ、はい。やっぱ何時ものウル様だ」
空中で足場を踏めるというのは割と大きなアドバンテージなので、こればかりはどうしようもないのだ。あぁ、でもこの服装だと《飛竜のスカーフ》を装着できないのも問題だ。手首に巻いてしまえばいいか、と判断する。
「うわ、雑」
「ま、こんなもんだろ。良くやった、100年無税」
「これで合計1500年ですね」
それじゃあまだLPには届かないから、LPになった頃には税収が取れそうだ。ペンシルカウちゃんと設立してくれたら税収がっぽがっぽ―――割と自給自足で生きているので、特に金を使う先の予定がない。税収とってもこれ、無駄になるだけじゃないだろうか? 近隣の村とは物々交換とか貢物でやりとりしているし。というか数百年以上経過しているのに何でまだ貢物送ってくるんだよ近隣の村は。
まぁ、いいや。
家の外に出て、太陽の光を浴びる。今日も良い天気だ。ルドラサウムも楽しく世界を眺めていられるだろうか? 安心して欲しい―――世界は俺がもっともっと、盛り上げてみせる。だがその前にはまず、ノルマを達成しなくては。よし、と呟く。
「ルシア、アステル。西部オピロスにしばらくお世話になるからお前ら付いて来い。荷物持ちは頼んだぞー」
緩く声を放てば、勢いの良い返事と共に堕天AKが二人、目の前に飛び込んできた。自分と同じように金髪の堕天AKであるルシア、そして赤い髪をツインテールで纏めているアステルの二人は、堕天AKの中で一番レベルが高く、そしてLv2の戦闘技能を保有する二人だった。つまり一番強い二人になる。ルシアは《槍戦闘Lv2》に《魔法Lv1》を、アステルは《弓戦闘Lv2》と《呪術Lv1》を保有している。どちらもかなりレベルの高い組み合わせになる。
「命、拝承しました!」
「直ちに準備にかかりますよウル様っ!」
そう言って家に突撃し、あーだこーだと競う様に準備を整え始める。付き人が居ると自分で準備する必要がないから、移動の間が手ぶらで楽になるよなぁ、と思う。まぁ、荷物を持ち歩くのも旅の醍醐味だと個人的には思うが。とはいえ、今回の件を考えるとサクッと移動は終わらせて西部オピロスで時間を取るか、と判断する。普段は斥力で跳躍しつつ素早く移動するが、今回はそれを封印し、
ちょっと、インパクトの強い登場の仕方をしようかと思っている。
という訳で、
翔竜山の方へと視線を向けて、拡声魔法を使用する。
「おーい! 暇なドラゴンいるかー? ちょっくら足が欲しいんだけどー! できるだけ威圧感ある奴なー! 先着1ドラゴンだぞー!」
言葉を翔竜山の方へと響く様に放った。数秒後、翔竜山の上の方が騒がしくなり、光り始まるのが見える。その様子を眺めていると、レヴィが横に上を眺めながらやってくる。
「……アレ、もしかして争っていませんか?」
「うん」
「モテモテですね、ウル様」
「この世に残された卵を産めるドラゴンって、俺とハンティだけだからね。割とあいつらもシャレにならないレベルで必死な部分あるよ」
「あー……」
まぁ、基本的に馬鹿な連中なので、なにか楽しそうな気配があったらそれに全力で乗っかるという部分も実はあったりするのだが。あいつら、基本的に年中殴り合ったりして遊んでいるから、イベントがあるとなるとそれに直ぐに便乗したがる馬鹿ばっかりなんだよなぁ、と思っていると、雲を突き抜けてドラゴンが地上へと降りて来るのが見えた。
体がやや凍っていたり、焦げてたたり、びりびり感電しているのが見える、カオスドラゴン君だった。前、あの悪魔界に一緒に突撃して吹っ飛んで行ったカオスドラゴン君である。その姿を見てから、腕を組み、軽く胸を持ち上げつつ首を傾げた。
「痛い?」
「みんな割とガチだからけっこー痛い。《ヒーリング》お願いします」
「《ヒーリング》」
要望に応えて《ヒーリング》を使って、傷を癒してやる。それに合わせて手を出してみるが、まるで動きをマントが阻害する気配がない。流石の技能持ちが作った服装、普通に優秀だった。そしてカオスドラゴン君の鱗や甲殻が癒えていく。翼をそれで広げれば、1国は単騎で滅ぼせるだけの超精鋭ドラゴンの完全回復が完了し、
カオスドラゴンが振り返りながら翔竜山に顔を向けた。
「ねぇ! 負け犬の皆! 今どんな気分! 見てよ! 治療してもらったよ! 治療! どうよ! ねぇ! 見てみろよ! いえーい!」
「ウル様、ウル様」
「アレが馬鹿だってことはみんな知ってるから」
「ドラゴンの皆さん、親しみやすいですよね」
それはそう思っているが、宙の上からブレスによる掃射攻撃が降り注いでくるのを一瞬で横へと飛び出して回避する。《バリア》を張ってその余波を回避するものの、近くの大地が抉れ、粉砕されている。まぁ、普段から家の周りの土地はよく遊びにして吹っ飛んでいるので別に構わないのだが。それにしてもさっきのブレス、割とマジなのが混じってたなぁ、と何時も通りのドラゴンどもの様子に苦笑を零した。
「ま、ルシアとアステルが準備を整え終えたら―――行くか、【賢人会】とやらを拝みに」
そして俺を利用しようと考えていそうな皇帝の面を拝みに行く。しばらくは退屈しそうになかった。
ドラゴン君たちは登場させるだけで会話が楽しくなるけど、お前らほんと脳味噌蒸発してるなぁ!
という訳で今度は西部オピロスにメリークリスマス(非殺傷物理)しに行こうか。