※この作品はR-18です。

ルドラサウム転生異聞録   作:てんぞー

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951年 賢人会

「【賢人会】はな、新たな思想や発想を生み出し、それを様々な方面に適用する為に余が考案した集いでな、古今東西、賢人等と謳われる存在を集めたものだ」

 

 皇帝と横に並んでうし車に乗っている。昨日同様のドレス姿と、王も外出用の礼服姿となっている。無論、これだけという訳ではなくうし車の周囲には近衛が務めており、それとは別に俺がかけた《クローキング》の魔法でルシアとアステルが飛翔しながらうし車の上を飛んでいる。片翼でもアイツら、普通に飛べるというあたりが地味に羨ましい。俺も跳躍だけではなく、そろそろ空を飛ぶ為の魔法というモノを開発してみるべきなのかもしれない。そんな事を考えつつ、皇帝の言葉に耳を傾けた。

 

「余はな、東部オピロスの惨状を見て、今のままでは未来がないと知った。単純に強くなるだけでは駄目だ。もっと思想や技術においての革新が必要だ。その為には身分などに囚われずに才能のある者を見出す必要がある。魔軍とは正面から戦っても意味がない―――余には連中との戦いは、どうやって抜け道を見つけるか、という事に限る様に思っている」

 

「正解。《無敵結界》はそもそも人類で破れる様に設定されてないからな。裏技を利用するしかないよ」

 

「……あるのか?」

 

「人類には難しいけど何個か」

 

 喋った所で何も問題ないので、言葉を続ける。足を組んだまま、窓際に肘をついて、その外の光景を眺めつつ、話を続ける。

 

「《無敵結界》が効果を示すのはメインプレイヤーだけだ」

 

「メインプレイヤー?」

 

「つまり今の時代の主要種族の事だ。一つ前の時代は俺達ドラゴンがメインプレイヤーだった。だから俺も《無敵結界》は突破できないし、今の人類にも突破できない。魔物も突破できない様にされているが……神魔の類、天使や悪魔であれば突破できる」

 

「成程、東方のJAPANで魔人ザビエルが封印されていたのにはそういう事情があったか……」

 

 少し驚きながらオピロスを見た。それにオピロスはダブルピースを見せてくれた。

 

「余は最大国家の皇帝なるぞ。なに、悪魔がJAPANに居る事ぐらい知っているとも―――というのは嘘で、JAPANの悪魔、月餅と余は同盟している。JAPANの不可侵でな。だがそうか、悪魔に《無敵結界》が通じぬのであれば、藤原石丸の居ないJAPANで何故ザビエルが封印できたのか納得できるな……」

 

 それにしたってザビエルはヤバかったけどな。俺とハンティでやっとこさ抑え込めるレベルの魔人だった。それを月餅は何とか封印する事に成功したのだから、正直、偉業の一つであると言っても良い。それらの功績で月餅自身、悪魔としての階級を昇級させられているし。藤原石丸の魂、ちゃんと持ってたんだよなぁ、アイツ。

 

「俺が堕天したエンジェルナイトを連れてるのもそういう関係だ」

 

「成程、魔人に攻撃を通せるから、か」

 

「まぁ、それでも勝てる見込みが見える相手は少ないんだけどな……」

 

 今の所、本気で殺しに行って確実に殺せると断言できるのはパイアール、カミーラ、まだ弱めのケーちゃんだろうか? ガルティア、ケッセルリンクは正直無理だと思う。魔人黒部は実力が解らない、メイクドラーマー! とか叫んでるキチガイ宝石に関しては《魔法Lv3》とかいうクソ技能を持っているので出会いたくない。謎の悪魔の魔人、サタニアに関しては情報が足りなくてどうしようもない。ナイチサ? リベンジマッチを何時かは決めたい。

 

 まぁ、本当にエンカウントしたら100%逃げるのだが。アレ、勝つとかそういう領域じゃない。戦いという概念が通じない相手だ。だから出会う前に逃げる。それが一番大事だ。とはいえ、しかし数年は東部オピロスで遊んでいるだろうかその心配はいらないだろうが。

 

「ま、だから発想は間違っていない。連中を倒す方法には抜け穴がある。月餅のやった封印とかな。そういう術を俺も研究しているからな」

 

「だから乗った訳か」

 

「他にも考慮するものがあったけどな。政治にかかわる必要がなく、金と環境が用意されて好きなだけ研究できるってならしばらくは利用させて貰うさ。今までのは招集命令だったり、根本的に俺が部下か国民かなんかだと思ってる紙切ればかりだったからな……」

 

「まぁ、国家解体の話を聞けばもはやそういう場に関わりたくはない、というのは解る」

 

「それが解らない奴が多いのが困る世の中なのさ。というか呼んだのそっちなのに暗殺されそうになったしよぉ」

 

「はっはっはっは! なに、歴史の鬼畜女王ならその程度どうとでもなるだろうと放置していたわ!」

 

「おめー、俺だからサプライズイベント程度にしか思わなかったけど、腹パンするぞ皇ちゃん」

 

「来いッッッ!!」

 

 腹パンした。皇帝が腹を抱えて蹲った。流れを見ていた近衛兵がドン引きしている。皇帝が両手でタンマサインを出してる。俺はそれを許そう。横で椅子を叩いて10カウントを取り始める。それに応えて皇帝がむくり、と起き上がりながら片手を掲げた。そしてそれを御者が正面から覗き込んでくる。

 

「陛下、客人、煩いです」

 

「ごめん」

 

「すまぬ」

 

 2人揃って大人しく膝の上に手を乗せて、大人しく目的地まで揺られる事にした。

 

 

 

 

 王都から出て1時間ほどうし車に揺られて、広大な敷地を持つ大学院を思わせるような建造物の入り口までやってきた。広大な敷地に様々な塔が存在し、まさにファンタジー世界の研究所、或いは研究機関、賢者の場所! みたいな物凄い納得できる感じだった。見た目はこれ、悪くない。問題になるのは質の方だ。

 

「で、ここが噂の【賢人会】、の施設か」

 

「うむ、【賢人の塔】と余は呼んでいる。中央が会議などを行う為の施設で、周囲の塔はそれぞれ、それなりの功績を持った者に対して褒賞として与えた専用の塔だ。一つ一つがそのものの望む研究を心行くまで出来る様にカスタマイズされている」

 

「金出してるなぁ」

 

「未来の為に必要な事だからな。余には解らん事があるが、それが解る奴がいる。ならばそれを解る奴にやらせるのが効率的であろう」

 

 その言葉には同意する。というかタスクを全部抱える事がおかしいのだ。もしかしてオピロス君有能なんじゃね? なんでこんな状況でジル様は迫害なんてされたわけ? おかしくね? そんな事を考えながら馬車から降りる。《クローキング》は解除せず、護衛の2人はそのまま、姿を隠したまま護衛して貰う。

 

 うし車から降りて、近衛に先導される様に皇帝と並び、歩く。

 

「望むのであればウルちゃんの塔も余は建てていいぞ。何せ、余の政治はカラー国解体時に残された政治メモを参考にしてるからな」

 

「クソ、アイツら処分しやがらなかったな……あと塔とかいいわ。屋敷から跳んでもそんなに時間かからないだろうし。それにキマシタワーされそうで怖い」

 

「キマシタワー……?」

 

「あぁ、うん。何でもない」

 

 主にアステルだけど。ルシアはそこら辺、解ってくれるのだがアステルちゃん、煩悩塗れなので、チラチラとチャンスを伺っているのが解る。お背中流しますようへへへ、じゃねぇよ馬鹿。

 

 ついにランスワールドのエロゲ的法則が追いついて来たのだろうか? 寧ろなんで今まで適応外だったのか、その不思議もあるが。

 

 まぁ、それはともあれ、

 

 皇帝と並んで中央棟へと進む。エントランスに入ると受付が皇帝を迎え、そして奥へと案内される。案内されながら話を聞くが、どうやらここでは成果報告や品評会の様なものが行われているらしい。そういう発表を行う為の中央棟でもあるらしい。他にもちゃんと、最高の施設などが揃えられたりしている為、ここで寝泊まりしながら研究するのもいるとか。まぁ、中央が一番大きい理由が見て解る。

 

 そうやって奥へと進んで行けばどうやら発表会らしく、ここに集められた賢人、賢者たちが集まっているとされていた。これ、邪魔していいのか、と思ったりするが、皇帝が一切遠慮する気配がなかった。なので黙ってついて行く事にした。何せ、ウル様は偉いのだ。

 

 他人に遠慮して生きる必要は一切ない。

 

 ただし、ルドラサウムを除く。

 

「良し、では入るぞ」

 

 そう言って返事を待たずに扉を開けた。

 

 その先に広がっているのは広いホールである、舞台の上では魔道具を装着している男の姿が見える。意外とこれ、本格的だな、と内心で評価点を上げつつ、ホール内に居る人たちの姿を確認した。

 

 基本的にはおっさんや爺が見える。その中に若者のグループも存在しているが、明確に区切られる様に分けて座っている。あぁ、これは間違いない、めんどくさい派閥の気配だ。それに皇帝と共に入った自分に向けて、邪気を感じる。それを察知して《クローキング》されている堕天AKが僅かに構えているのを感じる。お前ら狂犬かなにか? ちょっと忠誠心高すぎない? 大丈夫? だけど必要な人材なので許そう。

 

 ウル様が欲しくなったので裏切って魔人になって奪いに来ましたとか言われない限りは。一番恐れているルートである。

 

 それはさておき、

 

「余である!」

 

「俺である!」

 

「だが余でもある……」

 

「つまり俺が凄い……」

 

「ふっ」

 

 皇帝と謎のノリで握手しながら皇帝がサムズアップを集まっている賢人たちへと向けた。

 

「見ての通り、マイ・フレンドを新しく賢人として迎え入れた!」

 

「陛下、陛下! 流石に正気を疑われますぞ! 陛下!」

 

「これは余もうっかりである」

 

 やっぱこの国面白いわ。賢人の内一人が即座にツッコミを入れた。眼鏡をかけた髭を生やした老人。邪気の気配もないし、おそらくはセーフな奴。と、てへり、と皇帝が片手を頭にやりつつ、ポーズから復帰する。そして視線を舞台の方へと向けた。

 

「発表の途中、済まぬな。余も用事が終わったらすぐに去る故」

 

「いえ、我らは陛下の支援あってここで好きなだけ研究できているのです。文句を言う権利はありません。それで、お隣のご婦人に関してを説明していただけるのでしょうか? 額のクリスタルを見ればカラーだという事は解るのですが……」

 

 うむ、と皇帝が頷き、良くぞ気付いたと俺が中指を見せる。その動きに誰もが注目し、誰もが動きを停止させている。皇帝の横で中指を突きつけて挨拶をする。みんな見てるー? 的なノリでちゃんと目に映る様にしっかりと突き出しておく。

 

「こっちはカラーの……今何歳だ?」

 

「次にその話をしたら金玉引っこ抜いてその耳の中に突っ込んでやるからね、皇ちゃん」

 

「そうだったな、今のはデリカシーが足りなかったな……」

 

 そうだよね、と皇帝が腕を組んで頷き、視線を上げた。

 

「年齢不詳だが確実に数百歳以上のご老人である―――」

 

 迷う事無くローキックを叩き込む。皇帝がそれで軽くよろめくが、拳を作り、それで体に力を入れて耐えた。皇帝を見上げる様に視線を向ける。

 

「おい」

 

「いや、そうだな……今のも表現が悪かったな……すまない、余は基本、スピーチは担当に用意させているから言葉は得意ではないのだ。半裸でマメとビールを飲んでいるのが好きなのだ」

 

「お前王族じゃなく酒場の店主として生まれてくるべきだっただろう」

 

「余もそう思う。でも皇族に生まれてしまったからこの罰ゲームは頑張らねばな」

 

「気持ちは凄く良く解る」

 

 王になれば何でもできるなんて考えは嘘だ。国の面倒を見ないと最終的に国が潰れてクーデターで狩られて魔物に殴られて人生が終わるだけなので実質的にこの世界における王族という役割は最大級の罰ゲームだと表現してもいい。だからその気持ちは本当に良く解る。誰だよこんな面倒な役割をやりたがる奴は。

 

「まぁ―――とりあえず、彼女は我が友……友で問題ないな?」

 

「たぶん」

 

「たぶん友である!」

 

「陛下! そこはもっと自信をもって言い切りましょう!」

 

「いや、余もほら、友達だと思ってたら友達じゃないとか言われたらショックだし……」

 

「変な所でナイーブさを見せないでください陛下! 陛下ァ!」

 

 今度はこっちが笑い殺される番なのではないだろうか? と今更理解する。この皇帝、本当に面白くて笑いを堪えきれない。これはきっと、過呼吸で倒れてしまった時の返しだな、と確信する。まぁ、それはさておき、此方へと向けられてくる視線がなんだこいつ、という感じの視線なので、

 

「紹介を上手く出来なかった皇帝ちゃんに代わって説明してやろう」

 

「今から面白い事を言ってくれるから全員聴くのだぞ?」

 

 言葉を止めて、皇帝へと視線を向ける。皇帝がそれに合わせてサムズアップを向けて来る。違うわ、そうじゃねぇよ。何勝手にハードル上げてるんだよお前。話をし辛くなってしまったではないか。この国で一番面白いのお前って認定するぞこいつ。

 

 

 たぶんこの数百年で内心、一番爆笑しているかもしれない。

 

 ここしばらく、ナイチサ関連で笑いが不足していたし、やっぱりこういう遊びは文明に集うんだなぁ、と理解する。

 

「えー……さて」

 

 仕方がない、一発目だ、気合を入れよう。軽く空気を入れ替えて、雰囲気を張り直し、視線を向けながら、見下ろす。威圧感を軽く出す中で気圧される姿が多く見られる。でもその中でも動じないのも見える。横に居る皇帝もその一人だ。老人の中に数人、若者はそれなりに居て―――居た、特徴的な水色に近い白い髪の少女の姿が。

 

 今はその姿を確認するだけでいい。

 

「名乗る必要は―――ないか」

 

 そうだな、名乗る必要はないよな、と思う。

 

「お前らが真に賢人だというなら俺の事ぐらい解ってるだろう。俺にどう接すればいいか、というのも解るだろう。だから今更説明する必要なんてないよな? という訳で、宜しく諸君。俺からすれば君らは全員、等しく赤子の様なもんだ。先達として君ら新鋭が見せてくれる新世代の発想や輝きというものを多少期待して話に乗ったんだ」

 

 少女の姿を記憶に焼きつけながら、口を開く。

 

「期待を裏切らないでくれよ、じゃなきゃ皇ちゃんにクレーム入れる」

 

 賢者ジルと思わしき存在の姿を、記憶に、焼き付ける。

 

 ―――見つけた。




 皇帝ちゃんが勝手に茶番に付き合い始めるの……。

 あまりにも動かしやすいキャラ……動かしやすい……! まぁ、最近ギャグ欠乏気味だったしこういうノリと勢いで突っ走って行こう。ジル様? まぁ、うん、ギャグれたらいいよね……?
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