※この作品はR-18です。

ルドラサウム転生異聞録   作:てんぞー

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XXX年 ターントップ

GL30年

 

大陸状況報告

 

≫≫≫≫≫≫≫≫

 

 大陸全ての国家が粉砕され、そして魔王ナイチサによって減らされた人類の数がこの時点で完全に補充され、また魔王ナイチサによる東部オピロス壊滅前を超えるだけの人口に届く。人類最大最悪の暗黒期と呼ばれる時代がこれより始まった。魔王ジルによって生み出された人間牧場は大陸の主要都市を潰す事で土地を生み出し、その代わりに設置された。これによって大陸の主要国家に人間牧場が建設、それぞれの魔物兵の才能を見極めた上で部署や役割を生み出し、そして人間の完全なる家畜化を開始した。家畜の人間と奴隷の人間。大きく分けてジルが生み出したのは二種類の人類だった。ひたすら繁殖と交尾、そして虐げる為の人間。残りは労働力、そして虐殺に使う為の人間。麻薬を使ってナイチサ時代の人間を使い潰す事で四六時中交尾させ、出産した赤子を魔法によって保護する事で死亡率を引き下げる。安定して子供を産む環境を整えながら母体を使い潰し、増えた人間に洗脳教育を施し、優秀な素質を持つ者を殺して、生命力の高い者を残す。これによって生命力の高い無能な人間だけを残して、再び交配。一種の無能だが体力だけはあるサラブレッドの生産という方向を作った。

 

 

GL50年

 

大陸状況報告

 

≫≫≫≫≫≫≫≫

 

 人類に光はない。新たな魔人が誕生する。異世界の扉を開いて連れ込んだ住人を魔人にして配下を増やす。各地に存在する人間牧場をそれぞれの魔人に管理を分割させる。それぞれの魔人はそれぞれ趣味が違う。それ故に人間牧場に魔人特有の特色というモノが生まれてくる。一つの牧場に対する人間の数、そのノルマのラインをキープしているのであればあらゆる欲望を牧場内で満たす許可を魔王ジルは出した。それによってそれぞれ違う種類の悲鳴と絶望が人間牧場に満たされ、人間牧場の運営が続く。バリエーション豊かな絶望をジルは求め、満たしていた。

 

 

GL80年

 

大陸状況報告

 

≫≫≫≫≫≫≫≫

 

 人類に希望の光は見えない。

 

 

GL100年

 

大陸状況報告

 

≫≫≫≫≫≫≫≫

 

 人類に―――変化なし。希望はどこにもない。

 

 

 

 

 雪が降っている。その中を腰に剣を差して、ルシアと共に歩いている。

 

「流石に冬になると寒いな」

 

「何か羽織られますか?」

 

「いや、魔法で温めてるから問題ないわ」

 

『じゃあなんで寒いとか言い出すんだよお前……』

 

「いや、だって気分味わいたいじゃん? 冬って。だからとりあえず寒い、つってみる」

 

『ほんといい加減な女だよな、お前……』

 

 照れる、と笑いながら地平、雪が降る白い世界の中に、空が闇で包まれていても見える灯があった。つまり、文明の光だ。その方向へと視線を向けながらモッズコートの位置を軽く調整する。流石に北方、ヘルマンの辺りに来てまで薄着をする事は出来ない、インナーにロングパンツ、シャツもちゃんと今は着ている。しかしインナーは強制的に乳袋な感じになる、相変わらずエロいよな、と思う。まぁ、それはともかく、

 

「ルシア、どうだ?」

 

「地図を確認する限り、アレが恐らくその牧場となります。違った場合は更に西へと行く必要がありますね」

 

「この俺様が顔を出すっつうんだから、居なきゃ殴り飛ばすぜ」

 

 頼りになるメイド―――じゃない。堕天エンジェルナイトだ。ここしばらく、連れ回すルシアの恰好をメイド服で固定しているせいか、メイドとして完全に認識してしまっていた。やばい、これじゃケッセルリンクの事を何も言えないじゃない。メイド服以外の何か、コスチューム的なのを考えないと駄目ではないのだろうか、これ。まぁ、それはともあれ、

 

 目的地へと向かって大地を踏み進めていく。使われなくなった道路には雪が積もり、歩くたびにざく、ざく、ざく、と足音を足跡と共に残していく。真っ白なキャンバスに自分だけの痕跡を残す様に歩いて行きながらヘルマン冬の夜に、人間牧場の一つへと向かって行く。ジルの配下である魔人の一人によって管理される牧場へ、迷う事無く進んでいく。

 

 ヒラミレモンを取り出して齧る。

 

 齧る。

 

 特に効果がある訳ではないのだが―――齧る。

 

『しっかし人類は本当にどこもダメだったな』

 

「牧場は魔物将軍の管理から魔人の管理へと移行、時折人間狩りによって隠れ里の人間から繁殖用の人間を確保、ですね」

 

「人類を詰みにしない様にしてんだな、それで」

 

 態と野生の人間を残した上で、狩ってるのだ。かつてのカラーが狩られたように。それを人間相手に繰り返す自分の重ねた歴史の汚点をそのまま叩きつけているのだ。良くもまぁ、そこまで悪知恵が働くもんだと思う。教えたのは俺なんだけど。懐かしい、神の悪意に関して教えたのも俺か。結局のところ、魔人によってそれぞれの牧場を運営管理し、異なる地獄を演出する様な発想を生み出したのが俺か。

 

 そうやって昔の事を思い出している内に、未来ヘルマンの人間牧場へと近づいてきた。道路の果て、牧場―――というよりは街に近いのだが、その入り口に居る魔物兵を見た。此方を見て、何かを言おうとして、髪色を見て、そして額のクリスタルを見た。

 

「ケイブリス様に連絡しろ! 今すぐ! 心の準備をしてください、と!」

 

「ケイブリス様が失禁しない様にお伝えするのだ!」

 

 そう言って牧場の門番をしていた魔物兵が走って逃げだす。その姿を見て、人差し指を口で咥えた。

 

「……」

 

『その……お前、魔人相手に何をやったんだ……?』

 

「ケーちゃんの事は気に入ってるから楽しく遊んでいただけなんだけどなぁ……偶に窓から投げ捨てたり」

 

『鬼かこいつ』

 

「昔は鬼畜女王とか諸国には呼ばれていましたとか」

 

『鬼畜女王とか』

 

「黒歴史だからやめて。お前も」

 

 爆笑している剣を引っ張り出すと、掲げてそれを投げる準備をする。

 

「あんまり笑っちゃうと悪魔界の果てに手が滑るぜ()()()……!」

 

『完全に故意じゃねーか!』

 

 アレフ―――元勇者。今ではエスクードソードに宿った元勇者の魂。魂を感知する魔法に対策する為に、コーラという存在の目を騙す為に、エスクードソードのシステムそのものに組み込まれた魂となった。そのおかげでテレパシーの様に秘匿した会話を送る事が出来るものの、【カオス】や【日光】の様に、自分から何かをするという特殊な力を持たない。

 

 文字通り、喋って記憶するだけの存在になった。

 

 一度は止めた。

 

 だが永劫に次の勇者を育てる為、支える為と決めたアレフはエスクードソードの一部となった。一度、エスクードソードの回収の為にコーラが来た時は施した仕掛けには気付かず、俺が無駄にエスクードソードを保有しているから回収しようとした。

 

 なので再び大陸からコーラを投げ捨てた。史上初、神を大陸から投げ捨てた女パート2。

 

 どうせ、この1000年は、GLが続く間はエスクードソードをコーラに渡した所で、勇者の誕生から死亡までがジルと人間牧場によって完全に管理されてしまっているのだから、持たせるだけ無駄なのだ。だとしたらエスクードソードを弄れるだけ弄って、隠せるだけアレフの魂を隠す事が大事だ。その為には高位の技術系技能持ちのメインプレイヤーの協力が必要なため、それを探して歩き回っているというのも今の活動の一つだった。

 

 それ以上に、今はケーちゃんを探していたのも事実だが。

 

 北の果て、辺境の人間牧場をひっそりと管理していたとか流石ケーちゃん、と言いたくなるような状態だった。それでも部下にまで俺の事を伝えて見つけ次第報告して心理的ショックに備えるって、俺はなまはげか何かかよ。いいぜ、お前がそういうつもりだったら俺も一切の遠慮はしないからな、ケーちゃん。

 

「ま、とりあえずケーちゃんに会いに行くか」

 

『お前のその謎の繋がりに関しちゃ俺は驚くしかねぇーわ』

 

「今生きている人々の中では最年長の部類でしょうから……」

 

「そこまでだ」

 

 年齢の話は止めろ。止めろ。マジで止めろ。

 

「……まぁ、行くか」

 

 よっこいしょ、と声を零しつつ、軽く屈伸運動をしてから体を伸ばし、クラウチングスタートから―――一気に飛び出す。

 

ケーちゃ―――ん!! 遊びに来たぞぉ―――!!

 

 全速力で牧場に飛び込みながら声を放てば、牧場のどこからか悲鳴のような気配を感じた。良し、ケーちゃんあっちだな? 迷う事無く魔人特有の気配へと向かって全速力で雪を蹴り飛ばしながらダッシュする。そこに俺が近づいている事を証明するような笑い声を付属させる事を忘れない。ケーちゃん、ここだよー、数百年ぶりに遊びに来たよー、とアピールする。

 

 通りすがりの魔物兵がドン引きしつつ逃げ出している。

 

「アレがケイブリス様が言っていたやばい奴の中のやばい奴……!」

 

「ケーちゃん! やばい奴の中のやばい奴が遊びに来たぞ!!」

 

『鬼かよこいつ』

 

 ふははは、と笑い声を零しながらケーちゃんの気配がする牧場の中にある、ひときわ大きな建造物―――恐らくはケーちゃんの屋敷の前で足を止め、そのまま扉を開けて中に入る。キャンドルによって屋敷内部には光が灯っているが、どことなく汚れているというか、血の染みを感じさせるものがある。ここも再利用されている建造物なのかもしれない。

 

「ケーちゃーん! どこだよー! 俺が来たから歓迎しろよー! ……あ、性臭。こっちか。逃げても無駄だぞー! フハハハー! ケーちゃんとの絡みは気分が若返るなぁ!」

 

 ドラゴンの姿でブイブイ言わせてた時を思い出させるからケーちゃんは好きだ。あの頃の馬鹿な自分に戻れるようで。そんな事を考えながら臭いを辿る様に屋敷の奥へと進んで行けば、元々はダイニングホールかなんかだった部屋に両手で頭を押さえ、隅っこの方で丸まろうとする、体の大きくなったリスの姿が見える。なお、部屋には10名を超える壊れたような女の姿が転がっている。

 

 女どもは全員幸せそうな表情で壊れている。

 

 当然だろう、そういう風に教育されて、そういう風に生まれて、そういう風に育ったのだ。何の疑問もなくオナホールとしてその人生を終わらせただけだ。それを見たアレフが機嫌を悪くするのを感じた。この先、こういう光景が1000年続くから慣れるだろうけど。

 

「ケーちゃーんみーつけーたー」

 

「僕リスだよー。ケーちゃんなんて知らないよー。きゅぅー」

 

 このやり取り、1000年以上も前にやった覚えがある。なつかしさすら覚えるやり取りだった。しかしケーちゃん―――いや、魔人ケイブリスは昔のまあるい、サッカーボールの様なリス姿から、比較的に大きく、屈強な肉体を形成する中間の様な、背の高いリスの様な姿に変身しつつあった。真面目にあのリス姿からここまで成長したのだから、ケイブリスの執念には言葉を失う。

 

 とはいえ、

 

「おう、古い友人相手にしらばっくれるとは良い度胸だなケーちゃん。さっきまで女を犯していたお前の威勢はどこに消えたんだよ!!」

 

「お前の名前を聞くだけで萎えるに決まってんだろ」

 

 無言でケイブリスに中指を突き立ててやる。それを見て、ケイブリスが諦めたような溜息を吐きながら、トボトボと部屋の隅から此方へと歩み寄ってくる。既にどことなく、瘴気を本当に薄くだが、纏っている気がする。ケイブリスは強くなっていた。もはや蹴り飛ばせば吹っ飛ぶようなサッカーボールは卒業していた。

 

 人間を虐殺し、低位の魔人であれば殺せるぐらいの力を得ていた。媚びて、媚びて媚びて、それで逃げ回って生き延びようとする必要はなかったが、そのスタンスに変わりはなかった。安心感さえある。

 

『こいつが……魔人ケイブリス、なのか?』

 

 そう、と心の中で言葉を送って返答する。一番付き合いの長い魔人。そして一番気に入っている存在でもある。ケイブリスは根本的に自分では勝てない存在を即座に察する。そしてその相手に対してはひたすら媚びる。そこにプライドなんてものは存在しない。そして生き延び続けてケイブリスは強くなる。その為だけに生きている。

 

「ククルククルの背中は見えてきたか?」

 

 その言葉にケイブリスは反応を僅かに止めた。その姿を見て、溜息を吐く。

 

「おいおい、ケーちゃんよぉ、お前はククルククルみたいになりたいって理由で強くなろうとしたんだろ? 忘れてる訳じゃないだろ?」

 

「はぁ? 俺様が忘れる訳ねぇだろ、そんな事実。女犯してる暇があるなら俺様はもっと強くなる為に努力するぜ……おう、そうだったな。そうだよな……」

 

 ケイブリスは短くそう呟くと、もはや完全に女たちに対する興味を失っていた。ふむ? と呟きながら首を傾げる。初心を思い出せたのだろうか? だとすれば僥倖だ、ケイブリスにはライバルとしてどこまでも強く、もっと強くなってもらわなければ困るのだから。魔人最強の座、それは絶対に揺るがない領域であってほしいのだ、俺としては。

 

 この先―――どう未来が変質しても。

 

 ケイブリスは魔人最強でなければならない。

 

「そういう割にはお前は楽しそうな顔をしてねぇな」

 

 昔の様な、一切媚びのない口調を取り戻しつつ、ケイブリスは遠慮のない言葉を此方へと向けて来る。

 

「ナイチサ相手にキレてたお前はもうちょっと顔色が良かったぜ」

 

 ケイブリスの遠慮のない言葉にそうだなぁ、と小さく笑ってしまった。だから、まぁ、と小さく笑ってしまった。

 

「ちょっと疲れているかもしれないなぁ、俺も」

 

 もう、生まれてから2500年だ。2500年間も生きてきた、この大陸で。それだけの困難と試練と変節を迎えて来た。そしてそれでもまだ未来に届かない。これから900年のGLと、1000年のGIが待っている。まだ、俺が未来に到着するまで2000年という時間が待っているのだ。つまり、今まで経験した時間とほぼ同じなだけの時間を経験しなくてはならない。それなのに何度も打ちのめされ、自分で人生を狂わせるところを見せて、そして生み出した惨状の結末を見ている。

 

 正しいかどうかなんてはどうでもいいのだ。

 

 迷いはない。これは義務なのだ。やらなくてはならないのだ。

 

 それでも、

 

「長く生きるのも楽じゃないね」

 

「は、これは本当にあの化け物魔王がお前を先生に仰いでたのはマジらしいな。だけど考えてみれば納得だな。お前の様なキチガイが教えなければナイチサを超えるような化け物も生まれてこないだろうしな」

 

 いいぜ、とケイブリスは口を開く。

 

「コックの連中はか、かか、カカカ、カミーラさんとジルが気に入ったから連れてこれなかったけど、その弟子連中なら連れて来てる。飯にしながら久しぶりに話をしようぜ」

 

 そう言うケイブリスにはなんというか―――少し、余裕が見えた。

 

 或いは強さだけではなく、その心も一回りこの時を経て、成長しているのかもしれない。どことなくだが、此方に対する恐怖の様なものを何時の間にかケイブリスは向けてきていない。昔は軽口を叩いても、どことなくその気配は残していたのに。

 

 ケイブリスも少しずつ、成長しているんだ。強さだけじゃなくて。その事実に少しだけ驚かされつつ、数百年以上の時を埋める事にする。

 

 誰もが変わっていく。そのままではいられないのだ。




 ケーちゃんとの関係はただ単純に魔人とカラーという訳ではない。

 この二人は出会う度にお互いの初心を思い出させている。原初の願いを思い出させるので、勢力等を超えた個人的な関係が存在している。たぶんウル様が一番仲の良い魔人はこいつ。
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