※この作品はR-18です。

ルドラサウム転生異聞録   作:てんぞー

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200年 クリスタルの森

 それから、100年ほど大陸を彷徨ったり、JAPANに向かったりした。目的は各地の人間牧場の様子を確認したり、知り合いの魔人の所に顔を出す事だったりする。ガルティア、ケッセルリンク、ケイブリスをハブったカミーラと二人でのお茶会とかもした。それとは別に新しく生み出された魔人というのも確かめたりもした。その果てに、ジルが作った魔人も1人、下級程度の強さだったので殺す事もあった。大陸は完全に光を失っていた。ジルという暗黒が完全に大陸から光を奪っていた。人間牧場は管理され、そして隠れ住んでいる人間たちはその惨状を知りながら、どうにもできずに光を消して暗闇の中、明日がある事を祈って細々と生き続けている。

 

 そんな大陸の風に染まっていないのがJAPANだった。JAPANには人間牧場が存在しておらず、戦国時代を継続していた。その為、身内で常に殺し合っている状況だった。

 

 ここに魔人黒部が投入される。つまり黒部ダークである。

 

 投入された魔人黒部は1年に1度、一つの地域に居る人間を虐殺し、完全制圧する。そして翌年に隣の地域へと移動し、そこを虐殺する。ひたすらそうやって虐殺を繰り返しながら1年1年、死亡した人間が再び出産されるのを待ってから行動し続ける。大陸の様な人間牧場は経営しないも、発狂している黒部で最大限恐怖と絶望を常にまき散らし続ける方法を選んだ。

 

 それでもJAPAN内部では戦国が続く。

 

 あいつらの精神状態おかしいよ、とはひっそりと接触出来た月餅の言葉だった。そら魔人なんてもんが暴れまわっている中で戦国タイム継続しているのだから当然の言葉だよな、と納得できるリアクションだった。ある意味、人間以上にまだ、悪魔の方が正気かもしれないという事実にはビビるしかなかった。やっぱりJAPANは魔境だわ、あそこ。あいつら身内で殺し合う事に躊躇しないもん。

 

 そんな訳で100年ほど大陸とJAPANをうろうろした。それに合わせ、堕天AK部隊の筆頭であるルシアのレベリングも行った。色々と旅をして、見せて、覚えさせて、経験させて、未来の為に戦力として育てる為であり、旅の影響でレベルも、そして技量も磨かれてきた。

 

 そしてそろそろマイホームが恋しくなった所で、大陸中央、実家のあるクリスタルの森へと戻ってくる事にした。

 

 

 

 

 200年ぶりに戻ってきたクリスタルの森は入り込んだ瞬間からうん? と首をかしげたくなるような違和感を感じさせた。踏み入れた瞬間から方向感覚が狂う様な、そんな妙な感覚が襲い掛かってきた。ホームグラウンドに踏み入れたのに知らない場所へと踏み入れたような感覚。その違和感にあぁ、と声を零した。

 

「結界か、これ」

 

「どうやらしばらくいなかった間に結界が敷かれているようですね」

 

「みたいだな。だけどこれなら突破できるな」

 

 伊達や酔狂で異次元魔法理論を研究していた訳ではないのだ。結界抜けならそこまで難しくはない。流石に空間関係の魔法は高位魔法扱いなので両手が必要になる。左肩から黒腕を生やし、二本の腕を揃え、それで両手で印を結ぶ様に形を作った。2500年間魔法研究しているドラゴン・カラーの称号は伊達じゃない。伊達ではないのだ。年季の入った研究者がどれだけ恐ろしいか見せてやろう。

 

 という訳でサクッと印を結び、術式を構築し、魔力を消費して完了。

 

「よし、これでおしまい」

 

 左腕を消して歩き出すのをメイド姿のルシアが並んでついてくる。

 

「流石の手際ですね」

 

「まぁ、破壊や解除じゃなくて結界を擦り抜けるだけだったら難しくはないからね。ほら、ルシアもうちょっと寄った寄った」

 

「あ、はい」

 

 ぴたり、と素早くルシアがくっついてくる。心なしかそのくっつき具合に遠慮がない気がする。まぁ、いいや。そう思いながら結界抜けの魔法を維持し、そのままクリスタルの森の中を何時も通り進んで行く。飛んで入って行くのもいいのだが、森の中の方から人の気配を感じる。このまま飛んで入ったら迎撃されそうな予感があったし、面倒なので地上ルートを選ぶ。まぁ、結界を無視さえしてしまえば中に入るのはそう難しくはない。二人はちょっと範囲を広げるので面倒だがこうやって密着さえしてしまえば問題ない。結界で迷わせて無限ループを構築しているようだが、そういうのは通じない。《ゲートコネクト》の術式と構築を知っている以上、そう簡単に空間系魔法で俺を超えられるとは思わないべきだ。

 

 正しいルートが存在するのだろうが、それを無視して何時も通り真っ直ぐ自分の家への道を突っ切って、

 

 そしてその先に広がっている景色に言葉を失った。

 

「……なにこれ」

 

 クリスタルの森を抜けた先に広がっているのは自分の知らない景色だった。草のカーペットはそのまま、大きく改築された自分のログハウスは屋敷となっており、その周辺にスペースを開けてからかつて自分が住んでいたログハウスの様な家がそこら中にあった。ただし自然と調和されており、水の流れる音などが聞こえる。どうやら態々川を作ったらしい。空間魔法を使って川を繋げている気配、これが出来るのは《魔法Lv3》だろう―――という事は間違いない、

 

「ハンティだな? 後ルシア、もう離れても良いから」

 

「失礼しました」

 

 名残惜しそうにするなこいつ。そう思いながら頭の裏を掻き、周囲を見渡し、溜息を吐く。

 

 ―――【ペンシルカウ】だ。

 

 つまりカラーの里。未来にまで続く、LPまで続くカラーたち最大の隠れ里になる。確かGL中に設立されたのは知っていたが、まさか留守の間に完成されていたなんて知りもしなかった。まぁ、200年も開けてりゃあさもありなん、というものだろうか。流石に予想外の風景に、溜息を吐いてしまった。そしてそうしている間に、目の前の空間に飛び込む姿が見えた。

 

「金髪のカラー……女王様ですね!」

 

 水色の髪に額のクリスタルはそれがカラーである事を示した。弓を装備しているのは一般的なカラーの武器だ―――基本的に、カラーは弓の技能を保有しているからだ。それが数人、迎える様に、喜ぶ様に声を零している。だがそれはそれとして、

 

「女王は廃業したから」

 

「お帰りをお待ちしていました!」

 

「ハンティ様とインデックス様がお待ちです」

 

「いや、俺女王は廃業したから―――廃業したからぁー……」

 

「女王! 女王! 女王!」

 

「空で笑ってるトカゲ共うるせぇぞ!!!」

 

 空では帰還を察知したドラゴンが数頭、女王コールをしながら爆笑しているので、カラーガードに引きずられながら片腕で空の馬鹿共めがけて《ガンマ・レイ》を連射する。それを女王コールを続けながら馬鹿達が回避する。お前ら、その無駄に高いスペックを本当に無駄に使ってるなぁ!

 

 そんな事で引きずられ、改築されてしまった我が家へ。普段の小さかったログハウスはどこへと消えた。今では立派な屋敷へとその姿を変貌させていた。カラー・ガードにそのまま屋敷の中へと拉致られると、屋敷の中に見覚えのあるカラーの姿と、そうではないカラーの姿が見えた。

 

「や、久しぶりだね姉さん」

 

「やぁ、愚妹。俺の素敵なログハウスはどうしたんだ」

 

「いや、まぁ、アレは……うん……」

 

 久しぶりに顔を合わせる黒髪のカラー、ハンティは申し訳なさそうに視線をそらし、頬を軽く掻いている。どことなく男らしさのある仕草なのは俺の影響を受けてしまっているのかなぁ、なんてことを思ったりする。そんな言い辛そうなハンティの代わりに、ハンティの横に立つ水色の髪の、普通のカラー、珍しく短髪の彼女は申し訳ありません、と頭を下げた。

 

「不在の間に住居やその周辺に手を入れた事をお許しください」

 

 そう言ってカラーは頭を下げた。その姿を見て、いや、と声を零す。

 

「ここに住んでるのは事実だけど別に俺の土地って訳でもないからな。ここに住むんだったら別に、俺は歓迎するよ。数千年前はここにはたくさんのカラーが居たしな。昔みたいな景色を取り戻せるってなら俺は特に思う事もないさ……ただ、何があったんだ? 俺が留守の間に。えーと……」

 

「インデックスです。インデックス・カラー」

 

「インデックスちゃん」

 

 インデックスは申し訳なさそうな表情を浮かべた。

 

「カラー狩りを魔人メディウサが始めたんです」

 

「あの糞ヘビかぁー……」

 

 メディウサ、クソみたいに性根の腐った魔人だ。あのランス君がレイプする事無くそのまま殺すというレベルで不快感の塊の様な女だ。それだけであの女がどれだけクソなのかが伝わるだろう。陰部からヘビを生やしたメディウサはそれを女体の中に突っ込んで、凌辱しながら苦しめて殺すというのを娯楽に楽しむ生粋のサディストの変態だ。アレが生きている事で得をする様な生物は一つとして存在しない。だけど納得する。メディウサだったらジルが放置しているから、という理由でカラーに手を出すだろう。

 

「メディウサがカラーの里を探し始めて襲撃を始めたからね、全員で集まって身を守れる場所に一番大きな里を作ろうって話になったんだ。姉さんに話そうかと思ったけど留守にしてたしね。マギーホア様の許可を貰ってここにカラーの里を作ろうって事にしたんだ」

 

「ですが、その……」

 

 ハンティの言葉を引き継ごうとしたインデックスは話辛そうな表情を浮かべてから、

 

「……魔王ジルがここに来まして」

 

「今なんて?」

 

「魔王が来たんだよ、魔王が。マギーホア様が追っ払ってくれたのはいいんだけど、姉さんが保存してた黄金の像四つを持って逃げられちゃったよ」

 

「あと家がその戦闘の余波でですね……」

 

「あぁ……なんとなく解る……」

 

 片手で額を抑えながら頭痛を抑え込み、息を吐く。ジルが来てた。ここに。しかも黄金の像をピンポイントで狙って。だが俺とは会わなかった。何故だろう? 何故俺が居ない時に来たのだろうか? ジルだったら魔法で俺を見つけ出すことぐらいできるだろうし、ケイブリスは100%保身のために俺と会った事をジルに伝えていただろうに。

 

「……」

 

 考えた所で答えは出ない。溜息を吐きつつ、聞いた話を纏め、で、と声を零す。

 

「家を建て直したのか」

 

「はい、女王に相応しい住居を!」

 

「その女王ってのは―――おい、ハンティー?」

 

 ハンティ、微妙に笑っているのが解るぞ。いや、今完全に笑った。笑いながら思い出す様に話を口にする。

 

「周辺諸国に鬼畜女王って呼ばれてたじゃないか。鬼畜女王ウル! 悪のカラーの国の女王! 人類を奴隷にし! そして苦しめている! 姉さんノリノリで鬼畜女王だぞー! って飛び込んで兵隊蹴散らしていたじゃないか」

 

「黒歴史だから止めてくれよ……」

 

 今思い出してもあの時代の出来事は頭痛くなるのだから―――いや、それでも、まぁ、楽しかったのは事実だが。

 

「だけど政治にはもう二度と関わりたくはないんだよ」

 

 中指を突き立てる何時も通りの姿にハンティは笑い声を零した。

 

「あぁ、いや、姉さんがほら、象徴的な女王をやればいいから、実際の政治とか判断は別のカラーにやらせればいいから。この【ペンシルカウ】は平和に引きこもってカラーが暮らす為に私とインデックスで考えていた案なんだ。翔竜山の麓ならドラゴンも多いし、変な奴らや魔人も寄って来れないからね―――なんかマギーホア様まで偶に遊びに来るし」

 

「マギーホア様も来るんだ……」

 

 ま、まぁ、マギーホア様も一応生物だから、若い女性に囲まれて癒されたい時があるのかもしれない。ほら、カラーって美人しか存在しない種族だし。だけどそんなキャバクラ気分を味わう竜王って俺ちょっと嫌だな……。やっぱり今のイメージは脳内から消しておこう。

 

「いや、だけど偉さじゃ俺もハンティも変わらないだろう」

 

「いや、姉さん正式に女王やってたし丁度いいでしょ」

 

「お前、めんどくさい部分だけ俺に投げるつもりだな」

 

 その事実に気が付いた瞬間、ハンティの姿が消えた。

 

「あ、こら! ハンティ! 《瞬間移動》で逃げやがったなお前! 流石に卑怯だぞそれは!! おい! ハンティ! ファック! 戻って来い! ハンティ―――!」

 

「これから宜しくお願いします、ウル女王陛下。象徴としての女王が居るのといないのでは種族としてのまとまりが変わってくるのと、この時代における心の支えになるので、お願いします……」

 

「ぐ、ぐぐぐぐ……!」

 

 歯ぎしりしつつそう言われると断り辛い。何か、適当に逃げるだけの言い訳を考える。

 

「ほら、俺外出の回数と時間長いし」

 

「実務には関わらないので問題ありませんね」

 

 言い訳を思いついた瞬間、それをインデックスが笑顔で斬り捨てた。こいつ、全力で言いくるめる気であると、その笑顔に張り付いた迫力に理解してしまった。こうなったら出せるだけ言い訳を全部出しきるしかない……!

 

「腕が一本足りないし」

 

「私がウル様の腕となって支えます」

 

 黙れルシア。バックスタッブ止めろ。その女王へランクアップ的なキラキラする目の光を止めろ馬鹿。女王とか言う罰ゲームは人生で一度きりで十分だと何度言ったら解るのだお前ら。

 

「ハンティが居るし、あっちに任せよう! な!」

 

「ハンティ様も始祖様としては非常に頼りになりますが、トップとしての資質が低いので……」

 

 うん、ハンティもバリュー的なものは強いのだが、根本的に人の上に立つという資質を持っていない上に、どちらかというと体を動かしている方が性に合っている兵隊タイプなのだ。本質的に無理なのよね。うん、知ってた。

 

 冷や汗が背筋に流れるのを感じていると、インデックスがにっこり、と笑みを浮かべた。

 

「仕事を頼む事はしません。象徴としての女王です。実際に実務や方針を決めるのはその世代のカラーの仕事になります。舵取りがおかしくなった時や、間違えそうなときに叱ってくれる、そういう存在であってくれればいいんです」

 

「要求が増えてるじゃねぇか全く……」

 

 溜息を吐きながら頭を軽く掻く。俺が女王になると将来的なリセットの誕生とかどうなってしまうのだろうか? まぁ、ご意見番的なポジションだから問題ないか、と判断しておく。ちゃんと里の方針を決めるカラーは別にいるらしいし。

 

 面倒だけど……これぐらいならいいか、と判断しておく。この里の維持は未来にとっても必要な事だし。だからこれに関しては諦める。しかし、

 

「ジル―――俺を避けてるのか?」

 

 何故? 何故態々避けるのだろうか? それとも俺の思い違いだろうか。考えても出てこない疑問に対して溜息を吐く。このところ、過労で倒れそうなぐらいに歩き回っている。しばらくは【ペンシルカウ】と名を変えてしまった我が家で、しっかりと休む事にする。

 

 この時代は……疲れる。




 鬼畜女王復活ッッ!

 システム的には永世女王とかいうトップの下に、里長が来るのでフルとかが来るのはこのポジションっすなー。

 やったね、ずっと鬼畜女王って名乗れるよ。
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