「うっし―――いいか、魔人には《無敵結界》が存在する。だから俺達の攻撃は一切通じない」
クリスタルの森、魔人メディウサを迎撃する為に集めたカラー・ガードたちを集め、率いながら言葉を発す。軽く脅すつもりで言葉を吐いているが、それでも恐れるような様子を見せるような子はいなかった。結構肝が据わってるなぁ、と思いながら言葉を続ける。
「だけど例外はある。言える奴いるか?」
「神魔相手には《無敵結界》が発動しないという事ですね?」
「あと純粋な衝撃等に対する遮断を行わない事です」
「お、ちゃんと勉強してるみたいだな」
そう、《無敵結界》には幾つか抜け道が存在している。神魔には通じないのが一つ。もう一つは物理現象に対する耐性がないという事だ。つまり物理法則によって発生する衝撃等に対しては《無敵結界》の範囲外である事が確かだ。それ以外にも《無敵結界》の抜け道は存在する。だがメジャーなのはこの二つだろう。最も魔人に対して攻撃を通しやすい手段でもあると覚えておくと良い。木の根を越えながら声を零せば、
「ハンティ様から覚えておいて損はないと教えられましたから」
「元々メディウサから逃げてきてペンシルカウですからね、魔人に対する憎さとは別に、もう二度と逃げないで済む様に知識も伝えています」
「よしよし、良い子だ。賢い子は嫌いじゃないぜ。という訳でだ、お前らの攻撃がクソヘビに刺さらなくても気にするな。衝撃自体は発生するんだからローテーション組んで、衝突時の衝撃が重い攻撃だけをピックアップして連打しろ。それだけでメディウサなら問題なく抑え込める」
そこまで簡単な話ではないが、そこに俺と堕天AKが加われば話は変わる。恐らくだがこの戦力ならぎりぎり殺せる範囲までメディウサを持ち込めるとは思っている。ただメディウサを殺した所で問題もある。既に【魔血魂】を1個保有している以上、これ以上増やすのも問題だし。
ともあれ、
「重射をローテーション組んでやれ。相手が前に出ようとしたら《粘着地面》で足止めしろ。それ以上の事は考えなくていい」
それ以上の事は求めない。足止めさえ完了すればそれで十分なのだから。寧ろここで完全に殺せてしまった時の方が問題でもある気はする。まぁ、それはともあれ、既にメディウサ撃退の為の動きは始めている。カラー・ガードの部隊と2人の堕天使を連れてクリスタルの森を進んで行けば、
「あら、逃げずに立ち向かってくるなんて勇敢ね」
森の一角で、あっさりとメディウサとエンカウントする事に成功した。胸元を大きく開けた女の姿をした、ヘビさんの魔人だ。そのスカートからは陰茎の代わりのヘビが生えているのが見える。確かクリトリスが変形しているんだっけか? アレで女を犯して殺すのが趣味とかいうクソみたいな変態だ。
「ようこそ、魔人メディウサ。こんな所まで楽しくピクニックかな? ただ悪いけど、ここから先はメンバーシップオンリーなんだ。悪いが帰って貰おうか」
冒険者ルックに重力斧を生み出し、それを真っ直ぐメディウサに向ける。だがメディウサは恐れる事無く微笑む。《無敵結界》があるから平気だと思っているのだろう。
「そういう勇敢な事を言う子を悲鳴に染め上げるのが楽しいのよね」
メディウサが嗜虐的な表情を浮かべ、どうやって俺を犯して殺そうか、というのを考え始めている。流石魔人、慢心しまくっている。勝てるつもりでいるな? まぁ、当然だ。それが普通だ。完全に舐め切っているメディウサが両手を広げ、その猛禽類の様な爪で此方を捉える準備を始める。それに合わせ、足で軽く地面をタップする。
「外道め。我らの主に対して不敬だぞ!」
「私だって寵愛を貰った事がないのに図々しくありません!?」
「寝言は寝て言え」
「あら、まだ赤いから受け入れた事はなかったと思うけど、根本的な経験がないのね? これはこれで楽しめそうだわ」
うーん、この完全に勝ちを確信している言動、実に殺したくなってくる。重力斧を肩に担ぎ、魔法を放つ為に準備に入ったメディウサを見て、カラーと堕天使たちが戦闘態勢に入った。そして頭上をドラゴンが飛んで行き、外へと向かって飛翔した。それに気にする事無く、メディウサは慢心を見せていた。
「さて―――やるか」
「《火爆破》」
「そらよ、っと」
放たれたメディウサの魔法を斧の一振りで薙ぎ払って炎を斧の内側に取り込む。超圧縮の重力の塊である重力斧だからこそ出来る芸当でもあった。それによってメディウサが放った《火爆破》を無力化した。そしてそれに合わせ背後のガード達が一斉に射撃を行う。
「はっ、無駄だ。人間の攻撃が通じるものか」
笑いながら《Fレーザー》を放ってくる。四つの追尾する炎の閃光が迫ってくる。《魔法Lv1》が放てる最高位の魔法でもある。それを前に再び自分が踏み出す。背後のカラーたちを守る様に斧を振るい、四つの炎を全部斧で切り払って飲み込む。食いつくした炎が斧の中で渦巻く様に輝くのが見え、黒い重力斧が赤く輝き始める。だがそれを防衛するだけの虚しい抵抗と見るメディウサが見下したまま連続で魔法を放ってくる。
堕天使の姿に警戒していない。
成程、理解する。
―――こいつ、《無敵結界》の穴に気付いてねぇな?
そう理解した瞬間、ここで殺せる。それを確信した。
……こいつ、生かしていた所で意味あったっけ?
「―――止めろ」
「はっ!」
「ほう?」
言葉と共にガード達が《粘着地面》とデバフ魔法を放つ。それは《無敵結界》では防げない魔法であり、足を止められたメディウサが苛立たし気に魔人特有の馬鹿みたいな魔力で薙ぎ払う。《業火炎破》をメディウサが魔人ブーストによって得た能力で薙ぎ払った。凄まじい範囲を炎と爆発が満たし、それが一帯を森さえも飲み込んで破壊しようとする。
「《ファミナルス・レイ》!」
踏み込みつつ広い範囲に重力と光の攻性結界を生み出す。それは広がる炎を大地へと引き寄せて、飲み込みながら足元だけを燃やし、延焼するのを阻止する。その光の中で、メディウサは必殺技を受けながらも無傷のまま、次の魔法を放つ為の準備を行っている。
だが加速する。真正面から黒腕を生やしつつ、二斧流へと切り替えながら、
《斥力障壁》で《Fレーザー》を正面から受け止めた。僅かに体が炭化する。だがそれに気にせず、そのまま正面からメディウサに組み付く様に斧を二本とも叩きつけた。凄まじい衝撃に周辺にクレーターが生み出され、それがメディウサを押し込む。殺しきれない衝撃がメディウサの体を硬直させ、そこから重力による過重を与える事で動きを封じる。だがそれでメディウサがダメージを受ける要素は一切ない。
「無駄だ」
《無敵結界》が存在しているからだ。故にメディウサは慢心している。陰部から生えている白蛇がちろろろ、と舌を伸ばしながら足に巻き付き、体を上がってくる。
「どれだけお前が抵抗しても無駄だ。それなりの実力があるらしいが、可愛らしい努力だ」
「可愛らしい努力かどうかは、これで経験してみろ、っと―――!」
斧を消す。メディウサに組み付く。加重を自分に与え、重量をそれだけで10倍に引き上げる。その変化にメディウサが驚きながら体勢を崩し、その間に組み技に持ち込む様にメディウサの体を大地へと叩きつけ、その姿が落下するとガード達から《粘着地面》により、姿が固定される。確実に《粘着地面》に叩きつけたのを確認してから、無理やり組み付いた白蛇を体を痛めながら剥がし、剥がれた生皮をドラゴンの血で活性させる様に修復していく。
「良くやった。殺していいぞ」
声に出して体を飛ばしつつ、許可を出す。それと共にルシアとアステルが動き出す。今までは傍観に回っていたルシアが槍を、アステルが弓を抜き、それを地面から体を剥がすメディウサへと向ける。
「ふん、この―――かはっ」
そしてメディウサの喉に矢が突き刺さった。まだレベルが低い為か、その反応は鈍い。そして何故、《無敵結界》が貫通されているのか。それをまるで理解できない、という様子の表情をメディウサは浮かべていた。だがそれを気にする事無く二本目の矢が喉に、三本目が胸に刺さった。そしてルシアの光槍がメディウサの胸を貫通した。
「ばか―――」
「囀るな。主を愚弄した罪をその命で贖え外道」
「ウル様に寝技を持ち込まれるとか羨ましい……!」
「ちょっと?」
言葉が軽いも、その間もルシアとアステルの攻撃が止まらない。初めて攻撃を受けたというショックの間に更に攻撃が続き、体に槍と矢が増える。それを信じられないという様子で避ける力さえ失い、体に武器を生やしながらメディウサの体から力が抜けて行く。
「ま、あぐ、あ、ぅ、ま、待って、うそっ」
「囀るな」
ルシアが股間と繋がっている蛇を切り取った。
アステルが矢を目に叩き込んだ。
開いている口の中に槍を差し込んだ。
助けを求める手に矢が刺さり、それが大地に縫い付けた。
槍を腹に付き刺して臓腑を抉った。
魔人という存在、その《無敵結界》を無視して攻撃する事の出来る神、或いは天使であり、堕天したエンジェルナイト、堕天使のルシアとアステルはもはや、1000年近く魔人と戦う為に訓練された堕天使の中では、トップの実力を誇っているペアだ。冷静に、そして的確に、
確実にメディウサが死ぬ瞬間まで、喋ろうとする言葉を魔法かもしれないと警戒して、確実に殺して行く。命乞いをする姿を無視して喉を、口を、体を削いで確実に命を磨り潰す様に殺して行き、
完全な死体へと変える。
最終的に、そこに残されるのは【魔血魂】のみ。それがつまり、何よりも魔人メディウサの死を告げるものだった。ゆっくりと歩いて近づき、メディウサの魔血魂を手に取り、それを軽く手の中で転がしてから、もう二度とお前の人格が外に出れないように、何時かリトルプリンセス辺りに初期化して貰うからな、と脅す様にそれを睨んだ。
そして振り返る。
「良くやった、俺達の勝利だ」
その言葉に参戦したガード達が一気に沸き上がった。喜ぶ様に抱きしめ合いながら跳ねまわる奴もいた。その姿を見て微笑ましく思いながらも、少しだけ困ってしまった。手元の魔血魂を眺め、こいつの処遇に関して、そしてもう一つの魔血魂に関しても困る。いや、場合によってはケイブリスルートでジルへと流す事も可能なのだが。それでも、
「魔人メディウサ、倒して良かったのでしょうか?」
「ウル様、魔人側の戦力を削る事に関しては消極的でしたよね」
ルシアとアステルがホバーしつつ近づいてきた。その言葉に頷いた。
「メディウサは石化能力もあるし結構警戒してた奴なんだけどな―――予想外にレベルが低かったんだな、こいつ」
まぁ、人間牧場で家畜を嬲ってるだけじゃレベルは上がらない、という事なのだろう。特にそれが魔人という怪物であれば。だからこそ、真面目にレベルを上げて準備していた此方が虐殺する形になってしまったか。まぁ、こいつが生き残ってアレフガルドを見つけて、それでペンシルカウでメディウサダークされても実際に困る。それにこいつが生きていた所で発生する事件は他の魔人でもどうにかなる。
……どうにかなるよな?
大きな出来事で関わるのは魔人リズナの誕生ぐらいだし。アレも別段、誕生しなくてはならない、という話でもない。
「……ちと悩むけど、殺せる時に相手を殺しておくって判断は間違ってない……筈だ」
間違ってない筈……その筈だ。今度は、間違いのない選択肢を選んだ筈だ。悩ましいけど。それでも報復が来なくなる。アレフガルドが居ない。その事を考えたらこれで選択肢は正解だった筈だと思う。だから、そうする。
それでいいんだよな、ルドラサウム―――?
「ウル様、お疲れのようですから。ヒラミレモンと蜂蜜のジュースでも戻って飲みましょう」
どうやら心配させてしまった様だ。ははは、と笑いながらそうだな、と呟く。
「そうだな、これで終わ―――あっ」
終わりじゃねぇわ。
「あぁぁぁぁぁ!? 馬鹿を人間牧場に送り出したの忘れてたぁ―――!!」
実の所、LPの時並みにメディウサが強いか、アレフガルドとのコンビだった場合を想定した二重に作戦を展開していたのだ。つまりまずは正面からぶつかる囮の此方の部隊。それがメディウサとアレフガルドを引き付ける。その上でドラゴンを含めた打撃部隊でメディウサの人間牧場を強襲、
牧場を人質にメディウサを退かせる作戦だったのだ。下がらなきゃ破壊し、ジルからノルマを達成できない様にするぞ、という風に。そうでなくても、一度牧場を人質にしてしまえば、後はまたドラゴンで牧場を燃やし尽くす事を脅迫材料に出来たのだ。
だけどメディウサが死んだ。
アレフガルドが居ない。
つまり牧場に戻って馬鹿を追い払う奴が居ない。
「しまった、牧場を特に潰すつもりはないのに馬鹿トカゲならそのまま全焼させるぞ……!」
「最後に綺麗にオチが付きましたねウル様!」
「うるせぇ! 全速力で馬鹿を引き上げさせに行くぞお前ら!」
人類に光未だ無し。だがその中に一つの驚愕の事実が生まれる。魔人同士の殺し合いをジルは黙認している。その為、一部の魔人は自分を高めるために他の魔人を殺し、それで生まれた魔血魂を魔王ジルはリサイクルしていたとされる。だがそうやって死亡する魔人とは別に、ついに人類の手によって殺害される魔人が出現した。
一度は歴史に出没し、その姿を消したカラーの女王、ウル・カラー。大陸中央部、カラーの楽園である【ペンシルカウ】の女王として君臨する支配者は襲い掛かってきたメディウサを殺し、そして同時に支配していた人間牧場を跡形もなく焼き払った。本当の意味で埋没していた歴史の影から、女王のカラーが出現した時でもあった。人類でも魔人を殺せる。その手段がある。そして魔人には勝てるかもしれない。家畜になっている人間にそれを理解するだけの知性はなかった。だが隠れ住む人々の中に、魔人を憎む人間の中に、魔人と戦える女王の噂が広がる様になった。
―――そしてそれは当然の様に、魔人を、魔王を殺そうとする者の耳にも届く。
魔人は殺せる。
その事実が意味を持つ時は、まだ先の事になる。
だが魔人を殺し、一切容赦のない報復を行うカラーの女王。人間牧場に居る魔物、人間の全てを虐殺したその女王に対する名が明確に刻み込まれたのはこの瞬間であった。
お前の蛇当然0点だから。
それにしてもメディウサに対する殺意だけでここまで感想伸びるとかお前ら本当にメディウサ殺したかったんだなぁ、って思う。それとちょくちょく設定について訂正入るの、ランス設定広すぎて間違える時あるんで助かってますわ。
それはそれとして、ついに確定で歴史に魔人さえもぶち殺した挙句報復で牧場丸ごと一つ消し飛ばしたやべー女王として記録される。