意気消沈してそれから数か月ほどカラーの森に引き篭った。経験値がそこそこ溜まっていたのでセックス中だった同胞に頼んでレベルアップの儀式を頼み、レベルアップをさせて貰った。おかげでレベルは38にまで上がった。これ、ドラゴン全体から見て高いのか低いのか全く分からないという弱点があるものの、まぁ、レベル上がったんだしそれでいいんじゃないかなぁ、という適当さがあった。まぁ、そもそも一種の燃え尽き症候群的な物を感じて、体を突き動かすような衝動が一時的に消えているというのも事実だった。
早くドラゴン滅亡しねぇかなぁ。そうすればチンコとか諦めがつくんだけど。
とはいえ、まだ余裕があるのじゃしょうがない。ここは正攻法を目指す事にするしかない。つまり魔法を通して自分を性転換させるという手段だ。
性転換を行える神殿が実はこの世界のモロッコという場所にはある。だがそれはJAPANが生まれた後の話だ。今はまだ大陸の一部となっている。それに神殿そのものが存在しているかも怪しい。探せばあるのかもしれないが、なんとなくだが神様がそんな楽をさせてくれない様な気がする。なので正攻法として魔法を使った手段を頑張ってみる事にした。
SS歴、つまりは魔王アベルの次の魔王である魔王スラルの時代、ケッセルリンクというヒューマン・カラーがスラルを守る為にナイトとして、男に性転換したという話である。つまり魔法による性転換はアリなのだ。寧ろ女体に生やすよりも簡単なのかもしれない。ただ、この場合ケッセルリンクが魔人化の影響で能力を大幅に強化されていた、という事実がある。
まぁ、ドラゴンと人間のスペックってまるで違うし、スペックのごり押しで何とかなるだろう。そんな精神で周りではアンアン言っているカラーの森、教科書を取り出して魔法の勉強を今更始める。冒険に出る前の1年間はちょくちょく勉強したが、それでももう一回基礎の方から勉強し直す。
まずこの世界における魔法の定義。
魔法とは術者の体内で生成される【魔力】と呼ばれるエネルギーをそれぞれが特殊な方法で変換する事によって発現する現象になる。これは何らかの力を借りるのではなく、完全に独立した個人個人の力を運用するものであり、この魔力そのものは大体個人の才能に左右される。つまり生まれた時点で大体、魔法の才能というものが決まるのだ。これの解りやすい形が魔法技能である。
《魔法Lv1》もあれば魔法という分野に関しては十分才能があり、勉強すればレーザーと呼ばれる魔法の中でもかなり使いやすく、高威力の術を覚えられる様になる。《魔法Lv2》になってもメインで使う魔法だ。そして《魔法Lv2》になれば属性の系統としての最上位の魔法に属性は相性の良いものに限られるものの、手を出す事も出来る。なおこれらの魔法を全て節操なく使えて連射できるのが《魔法Lv3》という領域である。
これらの簡単な見分け方は保有魔力だ。その為、魔法技能だけは最も簡単に判別できる技能だと理解されている。こればかりはほとんど先天的な才能なので上げ幅はどうしようもない。一部、裏技で魔力を跳ね上げる事も出来るらしいが、ここでは関係ない。
そして自分は、魔力内包量的に《魔法Lv2》はあると言われている。これは性転換の魔法を使ったケッセルリンクと同じレベルになる。つまり俺も頑張ればケッセルリンクと同じ魔法を使える可能性があるのだ。
相性の問題があるが。
ともあれ、生まれたばかりでの1年という短い時間では、あまり勉強も出来なかった為、改めて自分の適性やらなにやらを調べる為の準備をする。無論、同胞たちは今でもクレイジーに乱交パーティー中なので話にならない。お前ら日常がセックスかよというレベルで煩い。まぁ、それでもセックスの数は減ってきている。明らかにカラーが妊娠できていないからだ。もうちょい先になれば明らかなカラーの出生数の少なさに気付くだろう。
カラーとは神が悪魔や天使を補充する為に作った種族だし、規定数揃えばもう妊娠して増えたりできない様になっている。
便利な種族だ。
「えーと……Lv0でもできる魔法は基本的に術式を暗記するだけでオッケー、と」
つまり《火の矢》や、《氷の矢》、《ライト》等の初級魔法だ。と言ってもLv0だと魔力が足りないので拳を作って殴った方が強いレベルの魔法だ。Lv1の魔法技能を持った存在が使えば、普通に殺せるだけの破壊力を出す事が出来る。魔法技能をLv2で取得しているのであれば、
「《火の矢》! 《氷の矢》! 《雷の矢》! 《ライト》! 《アンコク》! お前ら少しは静かにセックスしてろ! うるせぇんだよ!!」
カラーの森は放火するもの。ランスもそう言っていた。なので適当に森の一角を爆破しつつ、自分が初級魔法を全て問題なく使える事を確認した。ただし、体から抜け出る力―――つまり魔力、それが属性によってやや違う様に感じられた。一番コストが軽く感じたのは《ライト》を使った時だ。つまり光系統の魔法だ。自分も吐き出すブレスは熱の混じった光線系のブレスだ。鱗の色を見て解る様に、やはり光系統の魔法が相性が良いのだろう。
それとは別に《アンコク》の消費魔力も少なかった。とはいえ、ちょっと感覚が違っていた。闇系統……亜種? たぶんそっちの方に適性があるのかもしれない。そこは要チェックなのだろう。
それと比べ他の属性は《ライト》が消費1に対して他は消費1.3程度。使えなくはないが、効率を求めるなら光系統と闇系統に絞るのが良い感じだろう。まぁ、魔法技能のLv2は文字通り天才と呼べる領域だ、雑に勉強したり研究してもガンガン習得できるレベルなので属性違いでも頑張ればどうにかなる。とはいえ、基本的に《魔法Lv2》があるのであれば上級の《レーザー》系統とLv2からじゃないと使えない属性最上級の魔法が使えればいい。
このドラゴン用
「ま、俺様なら《黒色破壊光線》もその内使える様になるだろうけどなっ!」
天才だからな……、と軽く自画自賛でモチベーションを回復しておく。誰も煽ててくれる人というかドラゴンがいないので、根本的に自分一人でなんとか満足できるように頑張らなければならないのだ。
「まぁ、でもドラゴンの体の頑丈さを考えたら純粋な攻撃魔法よりも支援魔法を覚えた方がいいんだよな」
ドラゴンの鱗は本当に硬い。自分の金ぴかの鱗とか、ある程度の魔法抵抗力が備わっているので、威力の低い魔法であればそのままカットして無力化出来る。上位のドラゴン程こういう特性が強いので、《ドラゴンLv3》のマギーホアとかはもう、物理と魔法、両方面からの抵抗力が凄まじいだろう。それに基本的にドラゴンにはブレスがある。
ぶっちゃけ、詠唱に口と両手を取られるのであれば、その間に口からノータイムでブレスを放った方が早く、強い。自分も最近は飛躍しつつある自分のスペックから、ドラゴン技能に関しては《ドラゴンLv2》あるんじゃないかなぁ? とは思っている。肉体的なスペックの高さ、角の立派さ、そして鱗の輝き具合からそれぐらいのレベルあっていいんじゃねーかと思っている。
とはいえ、この時代、バランス崩壊しているのでLv2技能とか腐るほどばら撒かれているのだが。
「んー、支援魔法はやっぱりあんまり発達してないなぁ……《ジャクタイン》とか《ストップ》とか存在してないなぁ……」
他にもランスシリーズでは出現してた各種、バフ系統の魔法が
「バリアか魔法バリアがあれば楽なんだけどなー」
って、いつの間にか脳が戦う為の事を考えていた。頭を横に振りながら思考を本筋に戻す。
神様には勝てない。
神様を殺してはならない。
それだけの簡単な話だからだ。
神様―――それも上位、一級神とも呼ばれるレベルの神となれば時間停止、時間逆行、レベルリセット、技能剥奪なんて事は呼吸をする様に出来てしまう。その為、メインプレイヤーで殺す事は不可能と言われている。
しかし、遠い未来、間違えてランス君が一度だけ、神を殺してしまった時があった。
その結果、世界が消えた。
そう、神を倒せば世界は終わるのだ。テレビのリモコンでテレビを消す様に。だから神は勝てないし、倒してもならない。だから強くなろうと考える事も、抵抗しようと考える事自体が愚かしい。そういう方面に思考を巡らせる事自体がおかしいのだ。だからあー、と声を零し、爪先で軽くこめかみを叩き、教科書を確認する。
「基本的に魔法を行使するのに必要な燃料は魔力。後は術を発動させるのに必要な術者による正しいイメージ、術式という形を記憶する記憶力、そして魔法を発動するトリガーとしての詠唱か……」
つまり燃料が魔力。
変換する為のソフトが脳。
そしてそれをプロセスするのが詠唱。
そしてアウトプットが魔法。そう考えると割と簡単に理解できそうだなぁ、とは思う。思いっきり現代風の捉え方だが。それでも既存の概念に取り換えて考えてみればより分かりやすい。つまり重要なのはプログラム部分である術式、そしてそれを出力させる為のキーである詠唱だ。Lv2もあれば燃料部分は問題がない。重要なのは、魔法というプロセスそのものに関する知識だ。
こればかりは本来、時間をかけて解明しながら集積して行くものだ。それが研究というものであるのだが―――まぁ、天才だからなんとかなるだろう、というノリでまずは《矢》系統の魔法の暗記している術式を燃やした森の地面に描く。
空を並べて、法則性を見出す為ににらめっこを始めようとすれば、
「ねぇ、何をしてるの?」
「ん? 新しい魔法を作る為に既存の魔法術式の法則性を見出そうかなぁ、って」
「それって面白いの?」
「見つけ出すと見ろ! 凡人共! これが才能によるインフレを経たドラゴンの力だ! 崇めろ! そしてこの法則を見つけたのはチンコを探し求めたドラゴンなんだぞ! って一生歴史に残せる」
「そ、そうなんだ」
幼い竜の声がした。振り向けば、おそらくはまだ生まれたばかりの幼いドラゴン・カラーが首を傾げながら此方を見ていた。まだ翼も小さく、それでは空を飛べないだろう。片手でこっちにおいでおいで、と呼びよせる。
「どらどら、お姉さんが暇潰しにチビちゃんに魔法でも教えてあげよう」
「いいの?」
「こういうのは一人でやるよりも教えながらやった方が解るもんだからね。おチビちゃんも気にしなくていいーよ」
あまり、狂ってばかりだと本当に狂ってしまいそうだし。僅かに正気を失う程度、それだけでいいのだ。それ以上は必要はない。この微妙な匙加減、実に難しい。そう思いながら横に振り向き、ブレスを吐いて近くで騒音セックス被害を出している連中を吹っ飛ばす。
「おねーちゃん今のは?」
「騒音公害に対する我が国での対処法だよ」
じゃ、勉強しましょうねー、と横に子ドラゴンを並べ、地面に他の術式も描いていく。時期的にはそろそろカカカ、カミーラさん! も生まれていそうなんだよなぁ、と思いつつあ、そうだ、と思い出す。
「おチビちゃん、俺様は歴史にウル・カラーという名前を世紀の変質者として残す予定だけど、おチビちゃんの名前は?」
「ハンティ・カラー!」
「ハンティちゃんか、可愛い名前だねー」
その名前を笑顔で頷きつつ、冷や汗を掻いていた。
―――
ドラゴンはAV歴に入ってから急激な雌の出生率の低さに悩まされる。そしてその時にカカカ、カミーラさんが生まれる。たぶん、もう既にこの段階でドラゴンのつまらなさを感じて盛り上げる為の仕掛けを施していたのだと思われる。種族でカミーラを取り合う様に。
というわけでハンティちゃん来たよ。魔法Lv3持ちとかいう化け物。