※この作品はR-18です。

ルドラサウム転生異聞録   作:てんぞー

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エターナルヒーロー Ⅱ

「さ、飲め。そして食え。人間の一生は短いんだ、美味いもんを食えるうちに食っとけ」

 

 笑いながら女王より料理が振る舞われた。案内されたダイニングには冒険者たちを歓迎する様に料理が並べられ、一番最初にそれに食いついたカオスが夢中になって食べ始めた。それを見たブリティシュが手を伸ばし、それから冒険者たち全員が歓迎の料理を口にしていた。外の世界の粗食で慣れてしまっていた5人の冒険者たちに、カラーの里で食べる事の出来る美味は舌への刺激が激しく、ホ・ラガでさえ言葉を失ってテーブルの上に広げられる料理に手を伸ばしていた。カオスに至っては無言で食べ、そして酒に手を伸ばし、飲んでは食べて、ひたすらそれだけに集中していた。普段はひょうきんな姿を見せている者が筆頭で無言で食べている姿が、ペンシルカウの中と外でどれだけ差があるのかを物語っていた。

 

「これは……」

 

「そうそう、天ぷらだよ。個人的には塩で食べるのが好きなんだけどね。もしかして嫌いだったか?」

 

「いえ、まさかこんなところで故郷の料理を食べられるとは思わなかったので……」

 

 JAPAN産の料理が並べられている事に日光は驚きつつ、それを箸で取って食べる。へんでろぱをスプーンで掬いながらブリティシュもどことなく上品に食べて、しかしある程度己を自制し、頭をカラーの女王へと下げた。黒いドレスに隻腕の女王は片手に果物を握り、それに齧りつきながら吸っている様で、それ以外は口にしていない姿がブリティシュの目には、特徴的に映った。

 

「これだけの歓待、感謝します女王」

 

「そう硬くなるな、ちょっと久しぶりに気合入れて料理したのは本当だけど、材料に関してはそこまで珍しいもんじゃないからな」

 

「これが、ですか?」

 

 ホ・ラガが驚きながら料理に使われている材料を確認している。食べる手を緩めずに、しかし使われている材料に驚く。その多くが現在の人類では中々手に入らないものが多い。当然ながら隠れ潜んで暮らしている都合上、おおっぴらに活動する事が出来ないのが人類の状態となっている。

 

「ウチは畜産と農耕をジルが出て来る前からやってるからな。ペンシルカウが出来てからは空間を広げて農地も増やしたし、人口もある程度計算してやってるから、無節操に数を増やさなければ自給自足でどうにかなる様にやってるんだよ。外界と関わりを断って生活するには必要な事だし」

 

 そう言って女王が果物に齧りついた。興味があるのであれば都を管理している者に話を聞けばいい、と言う。

 

「俺は防衛には手を貸すが、政治には関わらん」

 

「かなりの知恵者と見ますが、それはなぜでしょうか?」

 

「ホ・ラガの奴、珍しくかなり下手だな……」

 

「まぁ、相手を考えれば当然なんでしょうけど」

 

「だな」

 

 ホ・ラガの珍しい姿にカオスとカフェは軽く面白いものを見るような目でホ・ラガを見てから、再び食べるのに集中した。カオスとカフェも、知りたい事はあるが、立場が明確に上の相手に対してどうやって喋ればいいかという教養に欠けていた。そもそもまともに話せるという気がしていなかった。その為、そこら辺をリーダーであるブリティシュと、頭脳担当のホ・ラガに投げていた。

 

 そんなホ・ラガの問いに対して、女王ウルが答えた。

 

「いや、めんどくせぇし」

 

「親近感湧いた」

 

「カオス、来る前は1000年物のババアとか言ってたくせに……」

 

 呆然とするホ・ラガのリアクションや、カオス達の反応を見て、女王が笑う。ここまでその姿を見れば、厳格という言葉からは程遠い人物であるのが冒険者たちにも伝わった。寧ろ、人物としては馴染みやすい方になるだろう。それに話を聞けば、これが彼女の手料理だという事実も―――それはそれとして、隻腕でどうやって料理をしたのか、というのは各員の疑問に残るが。だがそれを気にする事無く、

 

「真面目に答えると長寿の種は短命種と比べて思考が凝り固まりやすいからな。長生きすればするほど古く、馴染みのある考えに固執しちまう。俺もそこは変わりがないからな。その年代における必要とされるもので政治ってのは変えなきゃならないのに、追いつける気もしねぇし。だから若くて頭の回る奴に任せればいいんだよ、政策とか方針とかは。俺の様に古い奴はそれで失敗した時にケツ持ちしてやれば」

 

 そう言って苦笑する女王の姿をホ・ラガはどことなく尊敬の眼差しを込めて成程、と納得する様に頷いた。ただ適当に放り投げている訳でもない、という事だった。そこまで考えて都―――というよりはもはや一つの小国家に近いペンシルカウに干渉していないのは、大したものだと評価できる。特にこの時代、国家なんて形が一つも残されていない中ではなおさら。

 

「あ、おかわり頼んでいい?」

 

「カオス!」

 

「いいよ、いいよ。気にするな。まだまだあるから。腹いっぱい食っていけ。美味しいご飯は心の栄養だからな。美味しいもんを食えばそれだけで幸せってもんさ」

 

 それからしばらく、冒険者たちを歓迎する手料理が振る舞われ続けた。

 

 

 

 

 これが本当の美食というものか、とエターナルヒーローの5人組は女王に振る舞われた料理を食べ終わって感想を抱いた。清潔な食器、管理された食材、最後まで火の通された魚、端ではなくちゃんとした肉のステーキ、食べた事のないソースの味、故郷の高級料理。もう、一生分の美味を食べたのではないか、と思ってしまう程に5人は出された料理を食べつくしてしまった。カオスに至っては顔面からテーブルに顔を叩きつけ、今にも吐きそうな表情をしながらもデザートに出ているうはぁんをしっかりと片手で掴んでいた。

 

「カオス、食べられないなら」

 

「駄目」

 

「ちょっとだけ―――」

 

「駄目」

 

「ちょっと―――」

 

「駄目。儂が食べる」

 

 その景色を微笑ましいものを見る様に、女王が果物を片手に、それを時折齧りながら眺めていた。ブリティシュも食べ終わった所で紅茶を出して貰い、その香りを楽しみつつ再び女王に頭を下げた。

 

「改めて、ここまでの対応をありがとうございます」

 

「何度も言うけど気にするな。これぐらい、ここじゃ特別って訳でもない。ここで暮らしてればこれぐらいは珍しくないよ」

 

「まるで楽園だな……」

 

 ホ・ラガの言葉にカオスとカフェが深く頷いた。これだけ美味しいものを食べる事が出来る上に、カオス達男には嫌がらないカラーであれば孕ませる許可まで貰えているのだから、楽園と言えばまさにそうだった。まるでここだけ、大陸そのものから切り離されている様な状況になっている。この世の場所とは思えない程だった。

 

「で、だ」

 

 と、女王が再び果物に齧りつつ、言葉を放ってくる。

 

「お前らの様に優秀な奴が遊びにくる分には俺も歓迎するけど……別に、遊びに来たって訳じゃないんだろう? どれ、このお姉さんに一つ、聞いてみろ」

 

 本題に、先回りされた。にやにやと笑みを浮かべる女王の姿はどこか、無邪気に見える。だがホ・ラガとカオスだけは直感的に、既にこの女王が自分たちの欲しがっている情報が何か、というのを知っている様に感じられた。それを知った上で反応を楽しんでいるという姿の様に思えた。姿が美しく、そして話しやすい性格をしていても、その本質がどことなく人から外れている事実を5人は敏感に感じ取っていた。そしてそうやって向けられる反応を楽しんでいるのだ、というのも理解出来てしまった。

 

 根本の部分では人間とは違う。その性質の片鱗が見えている。

 

「では―――」

 

 と、ブリティシュが声を置いたところで、

 

「魔人をどうやって殺したんだ」

 

「カオス!」

 

 ブリティシュの声に被せる様に、カオスが声を放った。それに日光が叱る様な言葉を放つが、女王はそれを笑って流した。

 

「俺自身は殺せてないよ。ただ《無敵結界》には穴がある。神魔にゃあアレ、通じねぇんだよ。だからウチじゃ魔人を普通に殺せる堕天したエンジェルナイトを戦力として組み込んでる。後は《粘着地面》や衝撃が発生する攻撃で動きを拘束して、慢心している間に結界の通じない奴でざっくり、って感じだな。これで殺した」

 

「―――」

 

 帰ってきた返答に冒険者たちの口が止まった。だが即座に復帰したカオスが再び口を開く。その瞳には濃い憎悪の色が見える。

 

「人間で殺す手段は!?」

 

「カオス! 流石に失礼だぞ!」

 

「ないぞ」

 

「―――」

 

 カオスの態度を気にする事もなく、ちゅぅちゅぅ、と果物を齧って、軽く中身を吸いながら女王が返答した。食事も果物だけで済ませているようで、出てきてからそれしか口にしていなかった。ただし態度、返答ははっきりしたもので、あっさりとカオスの言葉に答えた。

 

「魔人を人間が殺す手段はない。欲しいのなら神に祈るしかないだろうな」

 

「……」

 

 魔人に対する憎悪を瞳に映したまま、カオスが息を吐き、椅子に深く、座り込んだ。一瞬の返答で、人類ではどう足掻いても魔人には勝てないというのが証明されてしまっていた、そして同時に、女王の発言によって求めているものが理解されている、という事実も理解出来てしまった。それを女王の側から切り出すつもりはなく、反応を見て楽しんでいるのが見える。

 

 ある意味、悪趣味だった。

 

「ウル女王陛下」

 

「なにかな」

 

 反応の一つ一つを楽しむ様に視線を向ける女王に対して、ブリティシュが口を開いた。それを当然の様に女王が受け止めた。小さな静寂の中で、ブリティシュが言葉を選びながら、口を開いた。

 

「僕達は、とある使命を果たす為に神への謁見を求めています」

 

「それで?」

 

「……神への謁見、その場所が叶うとされる【神の扉】。その場所を求めています。もし、知っているのであれば是非とも教えて貰いたい」

 

 ブリティシュのその言葉を受けて、しばらく無言をウルが保った。焦らす様な、その反応を見るのを楽しむ様な、そんな様子を見せていた。だがふと、小さく息を吐き、そして笑った。

 

「アレを求めるか……」

 

「知っているのですね」

 

「一応、アレへの道を管理してるのは俺だからな。ジルに黄金像をパクられる前は俺がアレを使えない様に管理してた」

 

「それは―――」

 

 つまり、知っているという答えであった。どこにあるか、どう使うか、それを知っているという人物でもあった。だがウル・カラーという女王が見せる底の知れなさは、ある意味、そういう事を知っていてもおかしくはないと思わせるだけの迫力が存在していた。ただし、その事を語る女王は、

 

 どこか、疲れている。

 

 カオスの目にはそう映っていた。

 

「北だ」

 

「北か……!」

 

「北方、東部にマルグリッド遺跡ってのがある。その地下1階、隅の方に隠される様に神の扉が存在している。その祭壇に正しい順序で黄金像を4つ並べれば扉は開く。その先にある試練を乗り越えれば神は謁見を許すだろう」

 

「そんなところに……」

 

 女王の口から出た言葉に驚きと安堵の息が出て来る。彼らとしても、これは最終目標である魔王の討伐に繋がる、最も重要な情報の一つだったからだ。それがあまりにもあっさりと女王の口から出て来るものだから、少しだけ肩透かしだと言われれば、そう感じる者も居た。だがブリティシュは純粋に感謝している様子を見せていた。

 

「儂らにあっさりと教えるんだな」

 

「隠した所で意味はないしな」

 

 その後に続く言葉を女王は口にする事無く黙り、椅子に背を預けながら果物を齧った。

 

 女王がそうやって向ける視線の中には羨ましさ、痛ましいものを見る視線、そしてどうしようもない、疲れが今度こそ、誰の目にも映っていた。見た目は若々しく、そして美しい存在であるのに間違いはない。だがそこで冒険者たちを見つめる視線には、どうしようもない疲れが見えた。

 

「ウル様、そろそろ休まれてはどうでしょうか」

 

 それを察してか、今まで無言で控えていたメイドがそう声をかけた。それに反応し女王があぁ、と声を零した。

 

「それもそうだな……」

 

 そう声を零し、女王が席から立ち上がった。そして去って行く前に、振り返る。

 

「明日……神の扉まで案内をしよう。抜けるには魔人のテリトリーを幾つか抜ける必要があるしな。だから休むも遊ぶも好きにしろ。部屋はこっちで手配しておく。それ以外に何かあるならウチのメイドに言っておけ」

 

 あぁ、とそれで、言葉を区切り、視線を出口へと向け、歩き出しながら言葉を残した。

 

「最低限、覚悟だけはしておけよ。神と会うって事は全てを失うって事でもあるからな」

 

 最後に、耳に残る呪いの様な言葉を残し、女王の姿が消えていった。その姿が消えてから、日光が口を開いた。

 

「成程、超越者とはああいう存在に相応しい言葉ですね」

 

「最も長く生きている女王……底が読めないな」

 

「ま、儂はこれから外に出てセックスだけどね」

 

 カオスの言葉に緊張の空気が抜けて行く。何時も通り呆れの視線を向けられるカオスはそれを受け止めつつ、嫌な予感を感じ取っていた。だがそれを口にする事はない。日光も、ホ・ラガも、ブリティシュもカフェもどことなく嫌な予感を感じていた。

 

 最後に聞かされた言葉、そこにどうしようもない不吉な予感を感じさせていた。

 

 それでも、もはや止まる事は出来なかった。

 

 エターナルヒーロー最後の冒険は、もう既に始まっていた。




 エタヒ無料で読めるのもっと早く知りたかった(一人称とか修正しつつ

 でもパラレルだしいいよね!

 他人から見た鬼畜女王様パートⅡ。どう足掻いても怪物。人間じゃないし、人間性足りてないし、一日中ヒラミレモン齧ってる。助けてジルえもん。

 という訳で神の扉へ。エタヒの試練始まるよー。
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