当然の様に身体能力に種族差の概念が存在する様に、
レベルにも種族による違いがある。今更という話でもある。人間はこのレベルアップが非常に簡単だ。割と簡単にレベルが上がる様になっている。これはレベルが上がれば上がるほど難しくなってくるのだが、それでも強敵との戦いや手合わせ、訓練などによってレベルが上がる。多くの種族の中でも、人間が一番レベルの上がりやすい存在でもあるのだ。だがそれだけではなく、この世界にはレベルダウンの概念もある。つまり鍛錬をサボっていると弱くなるのだ。どれだけ強くても、定期的に経験値を獲得していないとレベルが下がってしまうのだ。その為、適度な訓練が定期的に、レベルの維持には必要だったりする。人間はレベルが上がりやすい分、このレベルダウンも割と早い。数か月で60まで上がったレベルが10まで下がるというのがありえるからだ。
このレベルの上がりやすさ、下がりやすさというのは当然、自分、ドラゴン・カラーにも存在する。そしてドラゴンの様に種族値、或いは身体能力が非常に高い生物に関してはこのレベルの上がりやすさがかなり厳しく設定されている。当然なのだが、種族的に強い生物が簡単にレベルを上げてしまったら、それだけ能力がインフレしてしまうという問題がある。
創作ではこのインフレしたりオーバーフローした数値で神様に勝てるような夢のある展開があるが、この世界にそんなものはない。レベルというシステムに縛られている時点で、まぁ、二級神はどうにかなるだろう。実際、マギーホアがタイマンで二級神とタメを張っているし。もうこの時点で色々と生物としては超越した領域にあったりするのだが、これが生物の限界だ。そもそも数値という縛りの向こう側に存在する一級神や三超神になると、世界の生物である時点で絶対に勝てない様なもんである。
―――脱線した。
ともあれ、レベルという概念が重要なのである。これが高ければ、大体、神以外の生物はどうにかなる。たまーに女性だけをレベル関係なく虐殺する嫌がらせの様な生物が存在していたりするのだが、それを抜きにすればレベルは暴力である。故に、強敵と戦うのであればレベルを最大限上げていく事が基本である。
ここでドラゴン・カラーという生物の話をしよう。
肉体はヒューマン・カラーだが、そのベースとなっているのはドラゴンだ。その為、俺もハンティもレベル上げにはかなり苦労するし、数十年サボった所でレベルが大きく下がる事はない。だがレベルを上げるのが下がること以上に大変であり、種族的に強いゆえに雑魚を倒してもほとんど強くなれず、格上の存在と戦い続けるのが難しい。
LPにおいてハンティ・カラーという女が才能限界が1000もあると言われているのに、レベルが100すら超えていないのは、純粋に環境の問題である。ヘルマンではどう足掻いてもレベル60以下の人類しか存在しないし、それ以上の敵を求めるなら魔人ぐらいしか戦えず、それも絶対に死ぬ戦いになってくる。つまり、自分よりも格が上で、鍛錬に付き合ってくれる存在がレベルが高くなればなるほどいなくなる。そしてレベルの上がり辛いドラゴン・カラーという種族にとって、これは非常に難しい話である。どうやってレベルを確保するの?
それを基本的に、マギーホアと戦い、経験を積んで鍛錬して貰う事で自分は補う方法を編み出した。
そう、レベリングである。これは《決戦》における魔王の子供たちのレベリング手段を軽くパクった方法であり、純粋な技量や熟練度、経験が追いついてこない代わりにレベルだけを大幅にブーストするような手段であり、それだけを目的にした様な訓練でもあるのだ。とはいえ、マギーズブートキャンプを利用しても即座にレベルが上昇するという訳ではないのだ。ドラゴン・カラーという種族は滅茶苦茶レベルの上がり辛い種族である。その為、1から100までは比較的に早く、ブートキャンプでも上がる。
だけど100レベルを超えると話が変わってくる。レベル400を超えているマギーホアを相手にブートキャンプを行っても、この領域になるとレベルがあがる速度が一気に失速し、1年に1レベル上がるというペースにまで落ちるのだ。そしてこれが150付近からは更に失速する。ただ、まだヒューマン・カラーの姿をしているだけ、俺はまだマシな方だと言っても良い。
ドラゴン連中はもう100年に1レベル上がるとか、そういう領域だったりする。マギーホアに関しては今では1000年に1レベル上がれば調子が良いと言っているし。
そういう訳もあり、
「マッハ様、今レベルいくつだっけ?」
「125ですな。うーむ、この人類を軽く超越したレベル。担当レベル神としては実に誇らしい事ですなぁ」
「だけどこれじゃ足りないんだよなぁ」
ルドラサウム人形―――通称ルドぐるみを片手で全力でスイングしつつ、自分のレベルを確認した。125、まだ1年で1レベル上がる範囲だ。780年現在、このままのペースでレベルを上げていけば、800年には145レベル、900年には200レベルを狙えるラインだろうか……? ドラゴン・カラーとして優秀な身体能力と魔力を有しているので、同じレベルの人間よりも遥かに高いスペックを誇っている分、人間と戦う分には俺が有利だ。
だが根本的なスペックが狂っている魔人連中、それも100レベルを超える連中と戦う場合を想定したら、200レベルはないと安心できないのも事実だ。魔王戦争までには250レベル、300レベルを目指したい話だ。だが経験値の入りが昔の時代よりも悪くなっている気がする。たぶん、レベルアップの必要経験値周りにどっかでエラッタ入ったな? と思っている。
ルドぐるみをスイングしつつ、感触を確かめ、手にそれを馴染ませていく。感触はふわふわもふもふで、間違っても武器に使えるようなもんじゃないが、元々化け物染みたスペックを持つこの肉体を組み合わせれば、音速を超える事が出来れば大体何を握っても鈍器として立派に稼働する。問題は音速で振るいながらの魔力とLv3技能の破壊力に耐えられる装備品がない、というだけの事実で。神造の人形であるルドぐるみは見事、その要望に叶えてくれる。数百年、或いは千年という時間をかけて、モーデルの様な領域に到達したいと思う。
「まぁ、しばらくはマギーズブートキャンプにお世話だなぁ……少なくとも180はないと逃げ出せないし、ジルに会うのはそれだけレベルを取り戻してからになる、かな」
まぁ、最低限それぐらいないと逃げ出すのは無理だろう。ゲートコネクトの構成は覚えているから、今の正気な俺の脳味噌であれば、妨害で術式解体ぐらいはできるし。そう簡単には捕まらない……ソロじゃなければ。まぁ、誰かしら誘う必要は実際にはあるのだが、これ。
ともあれ、
ペンシルカウに復帰してから、毎日翔竜山に通いながらレベリングを行う。毎日ちゃんと翔竜山でマギーホアと戦わなければレベルが全く上がらないので仕方がない話でもあるのだが、翔竜山の馬鹿どもは遊びに行く度に楽しそうに迎えてくれるから、こっちも楽しくなってしまう。そういう感じでレベルを上げている今、なんとか200年間ルドラサウムとお話ししていた分のブランクを埋めていた。マギーホアと鍛錬する1日の時間は決まっている。それ以上やると明らかにオーバーワークで体を壊すからだ。そういう事情で直ぐにレベルを上げられない部分もあるのだ。
だから終われば屋敷の裏の自分の庭で魔法や技術研究を行っている。
ここ数千年はずっと魔法研究ばかりだったので、魔法メインのジル等の魔王には勝てないのを察しているので、最近は技術研究をメインにしている。つまりルドぐるみをどれだけ上手く使える様になるか、という話であるのだが、
思い出した事だ。
「あ、そうだマッハ様マッハ様、これ見てて見てて。最高にクレイジーな魔法を生み出したから」
「ほほう、またなんか頭がおかしいのを生み出したのであるな? 見せてみると良い」
言ったな? 言ったなお前?
屋敷の裏手の庭、広いスペースは足元が倒れても平気なように整備されている。正面、その大地へと向かって、むむむ、と片手を突き出しつつ、《メギンギョルズ》に蓄え込んだエネルギーを解放する。
「《神光》……!」
空から光が横薙ぎに払われた。それによって一直線の線が大地に刻まれ、そこから光る炎が燃え上がった。それを放ってからドヤ顔をマッハに突きつけたら、
「没収」
「あぁん」
蓄えたエネルギーを没収された。頬を膨らましぶーぶーと鳴いてマッハに対して抗議を送るが、滅茶苦茶呆れた表情と恐る恐るという表情で、マッハが此方に視線を向けていた。
「何故ルドラサウム様の神光なんてものを放っているんだ貴様は……?」
「マッハ様、素。素になってる。いや、ほら、200年間話している間にちょっとずつラサウムの真似してパクってた」
「この大陸でもっともクレイジーな生き物には認定するが、当然の没収だ」
「そんなー」
「恐らくこの大陸の上で、最も《無敵結界》を破る手段を与えてならぬのは貴様とマギーホアだからな。絶対に渡さんぞ」
あ、やっぱり意図的に《無敵結界》破る手段を此方に流してこなかったんだ。だがそう言われると何とか突破する方法を編み出したくなる。そう、Lv3技能があればあの糞性能の結界でさえ何とか突破できる可能性があるのだ。それを夢見てどうにかするしかない。幸い、新しく絶対に壊れない鈍器を手に入れたのだ、これを活用すれば現実的なラインなのだ。
だからルドぐるみの尻尾を掴んで、隻腕で全力スイングする。
「ルドストライク! ルドアタック! ルド人類絶滅フラッシュ!」
「うーん、大陸が消し飛びそうなネーミング」
しかも最後には魔法ギミックを組み込んだので、ちゃんと目が光ってフラッシュする。やっている事は単純に《見える見える》をルドぐるみを起点に遠隔起動しているだけなのだが。実際に絶滅フラッシュしている訳ではないのだ、残念ながら。
「この俺様の筋力と技術を振るっても壊れないルドぐるみは最高だなぁ!」
「この不敬・オブ・不敬」
この大陸史上、最も主神をネタにしている女として永劫語り継いでほしい。まぁ、そもそもメインプレイヤーでルドラサウムの事を知っているのは自分だけなのだから、他の誰かがネタにする事は出来ない。あぁ、そういえば知っているのは今ではホ・ラガもいるなぁ、と思い出す。アイツ、どうしてるんだろうか? エターナルヒーローはブリティシュが魔人化、他の連中に関しては散り散りになったらしいが。
「気になるのであるか?」
「あ、再びキャラ被った」
マッハーモニット状態から再びマッハに戻って、指摘してみるがガン無視される。ちょっとショックだなぁ、と思いながら考える。エターナルヒーロー。全知のホ・ラガ、そして唯一人類でも《無敵結界》を突破できる手段として存在する【魔剣カオス】と【聖刀日光】、それはエターナルヒーローであるカオスと日光が魔人を討伐する手段を求めた結果、プランナーによって変えられた姿である。
【魔剣カオス】に関しては既に確認されている。今では魔人になってしまったが、魔法戦士であったガイがジルと戦う為に手に取った武器がカオスだったからだ。そしてそれを今も握っている事をケッセルリンクを通じて教えて貰っている。
というか最近、ケッセルリンクに会いに行ったら妙に優しくされてしまった。何が原因なのだろうか……?
「……うーん、エタヒの連中共、ちっと気になるな……」
「正史の通り進むのであれば、確かホ・ラガは豪雪地帯に塔を立てて住まい、カオスは魔人ガイの手元に、日光は後の勇者の手元に、そしてカフェは美貌を与えられてひたすら犯され続けてる、であるな」
「まぁ、同情はするけど己の欲望を抑えられない人類が悪いね」
「欲望で溢れているカラーが何か言ってるであるなぁ!」
マッハ、なんか妙に辛辣じゃない? ルドラサウムと謁見してからなんか容赦なくなってない? きっと気のせいだよね、と処理しつつ、うっし、と声を零した。
「日光だけ回収するか」
「ほう、勇者の件はどうするのだ?」
「アレフを信じる」
エスクードソードの中に封印された、ナイチサ討伐の勇者を。【ひつじNOTE】を確認してしまえば、勇者の名前が正史とは違う。つまり俺が表側の世界で暴れた結果、生まれてくる人間と役割が変わってしまった、という事だ。こういうケースがこの先あるのかもしれない。だがそれを恐れていては何も行動できない。だから自分の積み重ねた事を信じて、日光は此方で回収してしまおう。
「信じる、都合の良い言葉ではあるが、逆に言えば盲目になるという事でもあるなぁ……」
此方の言葉に、楽しそうにマッハは笑ってから、姿をゆっくりと消していく。
「だが我輩は、個人としては味方であるぞ。何せ、これほど間近で見ていて楽しいメインプレイヤーも少ないのでな」
「まぁ、俺も飽きない人生をこれからは送っていくつもりだから、チャンネルは変えないでね」
「うむ―――目を離している内にまたゴッドフラッシュでもされたらたまらないのである」
クッソ、もう目を盗んで神光を盗む事も出来ないか。ルドラサウムが駄目なら今度はALICE辺りからパクろうかと考えていたが、この様子、間違いなく没収される流れだ。この際、神光を上位神から盗むのは諦めよう。
だって、ほら、ラ・バスワルドいるし。ボコって何とか力奪う事出来ないだろうか? でもこういう力を奪って、共有したり、繋がりを作る術ってのは大体体液の交換とかが必要なので、セックス前提の術だったりするので、自分とは相性が悪かったりする。まぁ、エネルギーを盗んで溜め込むだけでも可能なのだ。何とかなるだろう。
それに日光が回収できれば、考えなくても良い。
とはいえ、自分を究極竜という名前をモデルにネーミングしたのだ。
「こう、凄い光魔法とか、隕石とか一度でいいから落としてみたいよなぁ……家サイズの岩を持ち上げて叩きつけるぐらいなら余裕なんだけどなぁ……」
でもそれ、魔法じゃないし。困った話である。
とはいえ―――人生が段々と楽しくなってきた。900年まではレベリングに集中して、それが終わったら日光の回収を考えれば良いだろう。そうすれば魔人や魔王に対する攻撃手段にもなる。《無敵結界》が存在する限りは何も通じない。僅かな可能性を生み出す為にも、結界を破壊できる武器や手段は必要である。
ふぅ、と息を吐き、ルドぐるみの上に横乗りする。
「待ってろよ、ジル。顔面にハッピーエンドを叩きつけてやるからな」
その為にも鍛錬を続ける。
日々の努力は今まで、裏切った事がなかった故に。
次回から冒険再開。ジルを助ける為のアイテムを集めよう。名前だけでまだ出現していなかった新キャラも出るぞ。
ウル様で性的な行為があるか? って言われると本人が一番躊躇というかヘタレているので、身辺落ち着くまでそういう事は余り考えないかもしれない。初エロまであと一体どれだけ時間がかかるのだろうか、
そう思いつつルドぐるみの背に乗って冒険よー。