※この作品はR-18です。

ルドラサウム転生異聞録   作:てんぞー

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900年 冒険

「そんじゃ、ちょっくら冒険に数十年出てくるから、勝手に死亡扱いにするなよ」

 

「えーと、その……大丈夫……なのですか?」

 

「留守の間はお任せください」

 

「しっかりとウル様のベッドは私が守りますね!」

 

「アステルの魔の手からベッドルームをお守りします」

 

「失せろレズ共、どれだけアピールしても俺には無駄だぞ」

 

 アステルの顔面をアイアンクローで捕まえて挟むが、苦しそうな幸せそうな声を放っているから、このMレズ娘には何をしても無駄なような気がする。そう思いながら今の執政官であるエア・カラーに対してしっかりと、俺が死なないという事を教えておく。帰って来てまた墓石に蹴りを入れなくてはならない事だけは勘弁して欲しい。まぁ、そういう訳で再び冒険に出る準備を整えていた。というか整え終わっていた。

 

 服装も旅装に着替え、ジーパンにビキニのトップス、その上から半袖と腰までの茶色のジャケット、という着慣れた格好だった。上半身の露出がやや多いかもしれないが、風を感じられる格好の方が好みなのでこれでいいのだ。何時も通り首から下げているゴーグルもそこにある。その上で浮かべているルドぐるみの横に乗る様に座り、横から足をだらーん、とぶら下げる形で浮かんでいる。腰のポーチも度重なる改良で内部が拡張されており、色々と突っ込んである。旅、そして冒険に必要な物は全部揃えてある。

 

「とりあえずGL990年までには絶対に戻ってくるから。それまで屋敷の管理宜しくな」

 

「解りました。お帰りをお待ちしております、ウル様」

 

 俺が本当に死んだ場合、スラルを通して連絡がこっちに来るだろうし、一々後の事を考える必要もない。そういう訳で、さっさとルドぐるみを浮かばせて、そのままペンシルカウを去る。ゴーグルを装着して目に入る風を避けつつ、心地よい風を受け、前そうしたように北へと向かって飛翔する。

 

 最初に向かう場所は決めていた。

 

 ホ・ラガを探しに行くのだ。未来においては豪雪地帯に塔を構え、そこに引きこもっているのがホ・ラガだ。故に其方へと探索に向かう。無論、翔竜山を通り過ぎる辺りで馬鹿トカゲ共に中指を突きつけて行くのを忘れない。それだけで結構はしゃぐ馬鹿な連中で、途中まで飛んでついてくる。その姿をルドぐるみの背に腰かけた状態で眺めつつ、そのまま翔竜山を囲むクリスタルの森を抜けて北へと向かう。

 

 相変わらず鬼の様に寒いこの地域に入ったら魔法を使って体を温めつつ、降り注ぐ雪をゴーグルと、シールドを張る事で遮断する。そしてそんな環境でも一切影響なく、新品同然のふわふわもふもふを維持するルドぐるみは流石創造神の産物である、としか言えなかった。おかげで飛行したまま眠れそうだよなぁ、と思う。

 

 そんな事を考えつつ北方の寒冷地帯を抜ける。まだヘルマンという国家が出来る前なんだよなぁ、と思いながら飛翔し、変わりゆく大地を眺めながらそのまま北方の豪雪地帯に入る。ここにはホルスの戦艦も存在していたりするが、個人的な縁のない場所でもある為、近づく事はしていない。

 

「おー、冬将軍だ。そういやいたな」

 

 豪雪地帯に存在する魔物の一種だ。此方には気付いていないので、経験値を貰う為に上から重力球を叩き込んで圧殺しておく。消し潰れた冬将軍の姿を確認してからそのまま飛翔する。豪雪地帯の吹雪はそれはもう、激しいものだが、重力と風による二重の障壁を重ねればそれだけマシになる。それでも視界は悪いので、それだけはどうしようもない。吹雪いている間に来たのはちょっとした失敗だったかもしれない。

 

「まぁ、平気なんじゃけどね!」

 

 この程度で止められるウル様ではないのだ。

 

 熱の魔法をちょっとだけ出力を上げつつ、そのままルドぐるみの背に乗って豪雪地帯の空を飛び回る。地上ルートであれば間違いなく遭難、地獄を見る様な場所ではあるのだが、寒さに耐性を持ったドラゴンで、それも飛行しているのであれば、そこまで辛い環境ではなくなる。空から探せば大抵の生物や地形の影響は受けない上に、魔法で吹雪から身を守れるからだ。

 

 そういう訳で、ホ・ラガ探しが始まる。恐らく、誰かを探す上で一番楽な方法でもある。もし、正史通りに進んだのであれば、ホ・ラガは神に全知を求め、そしてその結果絶望して不老不死のまま、永遠に人界から自分を隔離して生き続けるだけの存在となっているだろう。つまり、日光の在処も知っている筈なのだ。故にホ・ラガから話を聞けば探すという手間もなくなる。ショートカットである。

 

 そのつもりでホ・ラガを探し始める。

 

「―――見つからん。あのホモどこに隠れやがった」

 

 だが見つからない。豪雪地帯を西から東へと渡って、時折ケーちゃんのジョバ芸を見る為だけにルドぐるみでテロしに行くが、それでもホ・ラガは見つからない。更に1年、念入りに豪雪地帯を探すが、解ったのはホ・ラガの魔法と痕跡はあるものの、肝心の塔が見えないという事実だった。それを理解した事で、《ゲートコネクト》を応用した空間探査魔法を放てば、

 

 異界にホ・ラガが一時的に避難しているのが解った。塔と自分の位相をズラす事によって、俺が届かない領域に逃げたのだ。流石全知の《魔法Lv3》である。やろうと思えば大体なんでもできる。

 

 あのホモめ、俺から逃げやがった。この俺が許すと思うなよお前。

 

 心の中で強くルドストライクを顔面に叩き込んでやる事を硬く誓った所で、ホ・ラガを使った日光探索を行う事を諦めた。探査術式は行えるが、異界への接続等に関する魔法に関しては、根本的にレベル不足の問題だ。魔王クラスの魔力があればLv2でもどうにかなるかもしれないが、基本的に異界関係の魔法はLv3の特権だ。手を出せる領域にはない。となると、ホ・ラガは諦める必要がある。

 

 となると、別の方法で探す必要が出て来る。

 

 日光の確保は絶対だ。一発叩き込んで《無敵結界》を破壊してから武器を切り替えて良し、或いは《剣戦闘Lv2》辺りを持つ奴に持たせて、戦闘運用するのも良し。どちらにしろ、魔人戦力と正面からぶつかる時、日光がないと戦うというステージに上がる事さえ出来ない。カオスを持つガイと、日光が勇者に流れ着く運命を信じてもいい。だがそれよりも、自分から動く方が遥かに面白いに決まっている。

 

 故にホ・ラガを諦めてから豪雪地帯を抜ける。

 

 俺がプランナーだったら、絶対にカオスや日光がメインプレイヤーの下に流れ着く様にするだろう。なぜならそれは《無敵結界》を破る唯一の手段なのだ。ここで探すのにスラルの手を借りるという手もある。というかその方が恐らく、手っ取り早いだろう。なぜならそういう探す事に関して物凄い能力を発揮できるのが彼女だからだ。

 

 とはいえ、一々頼っていては対等な友人とは言い辛いし、困った時に頼るだけにしておきたい。

 

 そういう訳で豪雪地帯を抜けて、東へと向かう事にした。

 

 即ち、JAPANである。

 

 刀ならJAPANにあるだろう、という滅茶苦茶安易な考えであった。それに時間はなんだかんだで89年もある。そこまで焦る必要はない。そういう訳で進路を真っ直ぐ東へ、天満橋の方へと向かって飛翔する事にした。

 

 

 

 

「昔から賑わってんなぁ、ここは」

 

 天満橋へと久しぶりにやってくると、相変わらずの賑わいが天満橋では見られた。ルドぐるみに腰掛けながらふよふよと浮かびつつゆっくりと天満橋の前に広がっている、小規模の歓楽街に入って行く。人類の暗黒期のさなか、この天満橋だけは旧時代の様な繁栄を見せている姿は、ちょっと不思議だった。装着しているゴーグルを引きずり降ろして首に装着しつつ、周辺を眺める。昔、ハンティと来た頃よりも賑わっている様な気がする。

 

 周囲を見渡し、どっかに見た事のある顔がねぇかなぁ、と思いながら姿を探せば、

 

「お、こりゃ懐かしい顔じゃねぇの」

 

「お? おぉ! お前まだ生きてたのか!」

 

 声に導かれる様に視線を向ければ、昔天満橋に来た時やっていた、浴衣を購入した露店がまだそこにあった。店主の姿も変わらず、片腕だけはだけた着物姿を見せていた。片手でキセルを抑えつつ座り込んでいる姿は、昔からまるで老けていないのが解る。

 

「いやぁ、久しぶりだねぇ、藤原の時代からだからざっと1000年ぐらいか」

 

「ここまで長生きする人の子は―――あー、いや、やめておくか」

 

「そうそう、野暮ってなもんよ。俺は謎のJAPAN人、姉ちゃんは謎の長生きカラー。それでいいじゃねぇの」

 

 まぁ、それでいいだろう。正体はなんとなくだが察せたし。ルドラサウムと恐らく、一番長い時間を接したプレイヤーだからこそ、感じられるものもある。だからこれ以上は良いだろう。それよりも、と、座ったまま店主に近づく。

 

「俺が知っている頃の天満橋よりも発展している様に見えるんだけど、どーなってんだこれ」

 

「ん? あぁ、1回はGLに入って色々ぶっ壊されたけどな、今のこの天満橋そのものが魔人の領地ってもんよ」

 

 知ってるか、と店主は聞いてくる。

 

「剣豪魔人ムサシ、ってんだけどよ」

 

「あー、知ってる知ってる」

 

 俺が横流しした魔血魂で生まれた魔人だし。まさか横流しした魔血魂で、更にJAPANが苦しむとは思いもしなかったけどね。だけど天満橋を見ている限り、結構ここら辺は発展しているのではないだろうか? と思えていた。少なくとも、人間牧場の様な陰鬱さがここにはなかった。

 

 確か魔人ムサシは武芸者などと戦う事を至上とし、その上で女子供には手を出さない魔人らしい。その上で黒部とも戦っている。その余波で県が一つ潰れたりするも、積極的に人類という存在へは敵対しない魔人という話だった。

 

「で、えーと、魔人ムサシがどうした?」

 

「いや、ここらの温泉を気に入って、守ってくれてんだよ。ただ飯ただ酒、後は温泉。それ以外は大陸とJAPANの移動を禁止しているだけで、天満橋で商売やっている分には目溢ししてくれてんだよ、ムサシ」

 

「へぇー……」

 

 ジルは魔人ムサシに対して何も言わないのだろうか? 正史に存在していない魔人である分、行動原理や対応みたいなもんが不明だ。だからちょっと興味がある。純粋に強さだけを求める魔人。

 

 ……ケーちゃんみたいだなぁ、とは思わなくもない。

 

 あぁ、だが似たようなジャンルにまだいないけど魔人カイトもいたな、と思い出す。

 

「まぁ、その代わりJAPANから出ようとする武士や大陸から逃げ込もうとする戦士とか皆殺しにされているけどな。JAPANもJAPANで、実力のある奴はムサシに殺されまくってるから、抵抗できるようなやつも残ってねぇ。だけど強い奴が育ってないと、ムサシの相手が出来るようなやつが育ってないと黒部から自衛する為の魔人が居なくなるからな。必死に子供を産んで、それを修羅に育てて、それをムサシと戦わせているってのが今のJAPAN……主にこっち方面の現状だな」

 

「修羅道かよ」

 

「間違ってはねぇわ」

 

 日本でもJAPANでも、九州方面は修羅道になるのが歴史の流れという奴なのだろうか……。史実よりもJAPANの魔境具合これ、上がってないだろうか? 大丈夫かなぁ、未来。そう思いつつもちょっとだけ、その魔人ムサシと言うのに興味が出てきた。武芸者殺しの魔人。ちょっと、戦ってみたい欲がある。噂によれば何でも、人間と戦う時は常に《無敵結界》を外しているとの事だし。

 

 と、そうやって謎のJAPAN人と魔人の話をしていると、天満橋の方から歓声が聞こえて来る。どうやら、何らかのイベントが発生しているらしい。

 

「お、丁度良かったな……決闘が見れそうだぜ」

 

 促される様に天満橋の上へと視線を向ける。

 

 そこには編み笠を被り、袴姿の浪人の様な恰好をした男の姿が見える。編み笠の下から伸びる髪はだらしなく伸びており、闇に溶けそうな蒼色をしている。腰には刀を数本差しており、その向こう側に相対するのは、甲冑に大太刀を装着した武士だった。

 

 その構え、体の軸のブレなさ、そしてゆっくりと動く体の流れ、それがレベルではなく技量を積んでいる人間の物だというのが解る。甲冑で表情が見えないが、年齢は……二十代ぐらいか? 若い。それを魔人ムサシは正面から相対する。刀に片手を置き、抜刀居合を放てる型を保っている。

 

「世界観違くない?」

 

「これがJAPANが数百年蟲毒で魔人を殺す為に鍛え上げた結果だよ」

 

「レベルじゃなくて技量で殺そうとしてるよこの人たち……」

 

 少し見てない内に何があったの? と思いながら眺めれば、ムサシが動いた。対応する様に武士も前に飛び出した。素早く踏み込んだムサシの斬撃が完全に入ったように見えて―――武士が片腕の甲冑で刀を受け、僅かに食い込む前に体を滑らせながら、刃を甲冑の側面で受け流して行く。体を下げながら刀を甲冑に滑らせ、

 

 そのまま大太刀を下から差し込む様に流し上げる。

 

「なんだぁアレェ……レベルがたけぇ」

 

「今回のは活きが良いのが来たな」

 

 と、跳ね上げられた大太刀の上に足を乗せた。それで体重を乗せて振り上げを回避した。その反応に二人が同時に武器を手放した。

 

 ほぼゼロ距離、神速の居合合戦が始まる。

 

 武士も魔人も、第二の刀へと手を伸ばし、ゼロ距離から必殺の一撃を放つ。滑り出し、武士が勝る。だが後出しの為に魔人の動きに一瞬、溜めが入った。

 

 先に入った武士がそれを察した。足を後ろへと下げようとして、魔人が笑みを浮かべた。

 

 武士が下がりながら斬撃を入れようとして、しかしそれで力が抜ける。後出しの刀の方が力が入り、

 

「あっ」

 

 刀と刀がぶつかる。だが魔人の方が巧みだ。溜めが入った分、力も乗る。そして後出しから溜めで加速させ、それが接触した刀に食い込んだ。

 

 そして振り抜かれた。

 

 武士の胴体が真っ二つに切断されて、ズレながら落ちる。

 

 その姿を見て、ムサシは刀を振るい、血を払い落としながらそれを納刀した。それによって戦闘は終了した。天満橋の向こう側から人がやって来て、死体を布で包んで回収する。そこに【天志教】の僧侶の姿も見える。魂が恐らくはこれで悪魔界へと回収されるのだろう。ひでぇハメ技だ。

 

 だが……それよりも困ったことがあった。

 

「どうすっかなぁ……」

 

「ん? JAPANに行くつもりか? ムサシは女子供には興味を示さないぞ」

 

 いや、そうじゃなくて、と声を零す。

 

 溜息を零しながら、天満橋の此方側へと戻ってくるムサシの姿を見た。それを見物していたり、商売にする人間が大いに盛り上がっている中で、

 

 ムサシが腰に差している物を見た。

 

 そう、

 

「プランナー君、こういう的確な嫌がらせはほんと得意だよなぁ……」

 

 剣豪魔人ムサシの装備している二本目の刀。

 

 それが―――【聖刀日光】であった。




 もー、だからプランナー君は糞なんだからー。あとあのホモは何時か燃やす。

 という訳で正史には存在しなかった日光装備の魔人、修羅の国が更に加速してしまったJAPAN、そしてその魔人からなんとな日光を奪う事を考えるウル様。どうやって奪う? 正々堂々? ランス君式で騙す? そして手に入れた後のオーナー登録は……?

 お前も夜空の星になれ(ルドぐるみでかっ飛ばす
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