「姉さん、これはこうしたほうがいいんじゃないかな?」
「……おぉ、マジだ。そんなところよく気が付くなぁ。これが
「そんなものじゃないと思うんだけどなぁ」
将来、象徴的になるであろうその黒髪の様な色の黒い鱗をしたドラゴン、ブラックドラゴンのカラーであるハンティが魔法の術式や詠唱に関する新発見を行う。その内容はかなり高度で、自分も
最初は自分がハンティに魔法の基礎をあれこれと教えていたが、ある程度の法則が見えてくるとそこから引き継ぎ、あっさりと上級までマスターしてしまった。たった数年間、一緒に勉強しているだけで此方の数百年間分近い成長をするのだから、Lv差による才能の差というものはある意味残酷だった。とはいえ、彼女が見つけ出した理論や構築は自分でも理解できる範囲のものだったのがまだ救いだった。おかげで自分の技術に転用する事も出来た。
とはいえ、数年程度では魔法の深淵には全く手が届かない事も理解した。《白色破壊光線》と《黒色破壊光線》が撃てる程度には魔法に詳しくなったし、オリジナルの魔法の構想もちょくちょく生まれてきた。だがそれを現実に形とするには、まだまだ相当な時間が必要になるというのが解った。それも数年とか数十年ではなく、数百年という規模だった。
それだけ魔法という概念は複雑だった。
「でも姉さん、《ジャクタイン》や《加算衝撃》みたいな対象を指定する魔法は空間指定や放射による発動じゃなくて、存在を指定した魔法なんだよね。これらの魔法に使われている共有コードを利用すれば《存在を指定する》事による必中する魔法を作れそうよね」
「それ、魔法全部に流用すれば基本的に魔法全てを必中させられそうだな」
ハンティとそんな事を話し合い、マギーホアをターゲットに二人で力を合わせて《白色破壊光線》と《黒色破壊光線》を融合させて放ってみたら翔竜山が軽いテロ状態となってしまった。反省はしない。楽しければ大体日常はいいのだ。今は魔王アベルも引きこもって軍備を増強しているだろうし。そろそろ魔人メガラスを仲間にした所だろうか? もう既にカカカ、カミーラさんが生まれてそうでもある。
しかし困った。
ここまで魔法を頑張って勉強し、ハンティという《魔法Lv3》の持ち主がいても、性転換魔法という魔法への道筋がまるで見えないのだ。まぁ、現在存在している魔法のほとんどが攻撃魔法であり、支援魔法に関しては自分とハンティで実験ついでに生み出し始めた程度にしか存在しないのだ。性別や、肉体に作用するという効果を持つ魔法がまだ、生み出されていない。
つまり魔法文化そのものがまだ未成熟なのだ。そもそも魔法という概念そのものを研究する機関や体制が整ってないから当然である。自分は未来に関する知識があるからそれで過程をショートカットして結果だけを出して、そこから過程を導き出すという逆順処理でやっているから楽なだけであって、本当はもっと先の未来で苦労しながら見出す事ばかりだと思う。
とはいえ、こうやって研究を続ければ続ける程解る。
自分に性転換魔法を見出す事は、ラストウォー終結までには不可能だ、と。根本的に魔法の歴史の積み重ね、その知識、そして習熟が足りない。ハンティであれば数百年で出来るかもしれないが、自分のとなるとその倍以上は必要になるだろう。残念ながらこれが才能の差だった。
とはいえ、魔法の開発はソレ自体が楽しいので、余り文句が言えない。
久しぶりにこの数年間、頭を空っぽにして熱中してしまった。おかげでハンティともすっかり仲良し、適当な所で別れるつもりだったのが魔法の研究仲間となってしまった。まぁ、彼女は最後まで生き延び続けるから問題はないだろう。
「んー、ちょっと煮詰まってきたな。休みを入れようか。ちょっくら翔竜山でも見てくるか……ハンティはどうする?」
「魔法の研究を続けるよ。姉さんの求める性転換の魔法は馬鹿々々しいけど、それ以外は楽しいし」
「馬鹿野郎、男はハイパー兵器あってこそだぞお前」
「姉さん、私達雌だよ」
それが600年後には女になってるから不思議だわ。まぁ、それはともあれ、そろそろ新しいインスピレーション、というよりアプローチが欲しくなってくる。それを求めて最近では乱交がかなり減った翔竜山へと向けて翼を広げて飛んで行く。もう既にこの世界に来てから数百年と生活している中で、翼を広げて空を飛ぶことにも慣れてしまった。
生まれた当初は体にない感覚や、男の時とは違う排泄の仕方に戸惑い過ぎてまともに歩けなかったりしたのに、懐かしい話だった。
「ばっさばさー」
翼を広げて空を飛んで行き、翔竜山を登って行く。前までは大乱交の気配ばかりで近寄りがたい翔竜山も、今では本来の静かで厳かな雰囲気を取り戻していた。漸くか、と思いながら雲を抜けて翔竜山、ドラゴンの生息地にまで入り込む。岩肌の上で翼を休めているドラゴン達が時折、此方へと視線を向けては翼で口元を隠し、
「ウル・カラーだ……」
「チンコを隠せ、狩られるぞ……!」
「お、俺はまだ雌になりたくないぞ……!」
「ゆ、許して……許して……」
チンコを狩られるってなんだよお前。頭悪いのかこいつら。そっとポシェットからハイパー兵器(別売り)を取り出し、それをひそひそ話をしているドラゴンどもへと向けてやる。それを見たドラゴンが翼で顔を隠しながら震えてる。
なんだこれ。今、自分は何をやっているのだろうか……?
「……お前のチンコも奪ってやろうか……!」
「ひぇっ」
ドラゴンどもが羽ばたいて必死に逃げて行く。その姿を眺めながら笑いながら声を張る。
「がーっはっはっは! 逃げろ逃げろ! 逃げられるもんならなー! さーて! 今日は誰のチンコ狩ってやろうかなぁ! 俺は変な噂とか流されたら悪乗りするぞ……!」
翔竜山から凄い勢いでドラゴンの気配が消えて行く。そんなに俺が恐ろしいのかお前。いいぞ、そこまで本気にしているというのであれば俺も本気にしてやろうではないか。捕まえた奴のチンコを刈り取って、このハイパー兵器をケツの穴に叩き込んでやる。この俺に悪乗りする理由を与えた事をケツアクメを迎えながら後悔すると良い……!
「だ! れ! か! ら! 狩ろう! かなぁ!」
「貴様は何をやっているのだ……」
「あ、マギーホア様」
滅茶苦茶呆れた様子のマギーホアが上の方からやってきた。ハイパー兵器を握ったまま手を振ると、マギーホアが物凄い顔を顰めているのが解る。もう、その表情を見れただけで息抜きしに来た意味があったようなものだ。マギーホア様が同じ高度まで降りて来ると、手の中のモノを見て、そして此方へと視線を向ける。
「その……随分と立派なものはなんだ……?」
「はい、ハイパー兵器です」
「ハイパー兵器」
「黄金像揃えて扉に突撃したら面会拒否された上に顔面に叩きつけられた神々からのプレゼントです」
「面会拒否」
マギーホアが物凄いリアクションに困っているのが見える。うん、気持ちは解る。自分も数百年間の成果がこの別売りハイパー兵器一本だと思うとどうもやりきれない。だけどもったいなくて捨てる事も出来なかった。だから最近、ハンティと魔法の勉強をしながら新しい活用法を思いついたのだ。
「それは?」
「勉強中に
「お、おぉぅ……おぉぅ……」
言葉として表現できない表情をルビードラゴンが浮かべる。皆、終わった後は新しい性癖の扉を開いた様な顔をしてくれるから、まぁ、結果オーライなのでは? とは思わなくもない。幸せならもうそれでいいのだ。それはそれとしてチンコ狩りしてやろうか貴様ら、と密かに計画しておく。俺はやると言ったらやるドラゴンなのだ。
「うむ……まぁ……うむ……お前に対しては何て言葉を向ければ良いのか解らないな……」
「笑ってくださいよマギーホア様。道化やってんですから。笑えなきゃ生きてる意味がない」
「……」
笑わなきゃ生きてる意味がない。だから笑えるように動いているのだから、笑って欲しい。笑えるようにしないと、楽しくしていないと、頭を馬鹿にしないと直面してしまうから。だから笑って欲しい。クソみてぇだと。そしてそれを笑って欲しい。そうじゃなきゃとてもじゃないが耐えられない。だからハイパー兵器を大切にポシェットの中に保管する。
「これに関しては後世まで神々が夜中、寂しくなった時に使う伝説のハイパー兵器って歴史書に残して展示する予定なんですけど」
「王命での出版拒否は任せてくれたまえ」
「ここは俺が神様から承ったお宝を見せたのでマギーホア様が同レベルのお宝を見せてくれるのが筋というもんじゃないですか?」
「貴様は、何を、言っているんだ」
だってこれゴッドチンコだぜ。神が創ったチンコだぞ。それを見せたのならそれに釣り合う格のお宝を見せるのがドラゴンルールではないのだろうか? ここで拒否するなんてドラゴンの王としての格が疑われるのではないのか? あぁ、なんて心の狭い王なのだろうか! マギーホア! 実にみみっちぃ!
「……いいだろう」
軽く煽る様に言葉を放とうとすれば、しかしマギーホアは頷いた。
「その知識をどこから得ているのかは気になる所だが、恐らくそうやって話しかけてきている以上既に知っているのだろう。来ると良い。《王冠》を見せてやろう」
マギーホアがそう言って空へと昇って行った。アレ? 実は意外と気に入られてる? 首を傾げながらその姿を追いかける様に、翔竜山の頂上へと向かう。翔竜山の頂上はマギーホアの住処となっている。ドラゴンの大きく、鋭い手では細かい工作や作成などは行えず、雑な住居しか作る事が出来ない。だから物事を記録するにしても、巨大な石板に文字を刻み込む程度が限界なのだ。だから翔竜山の頂上も、そこにマギーホアが穴を開けて作った洞窟の様な住処が出来ている。ここがマギーホアの城……とでも呼べる場所になる。普段は侵入さえ許されない場所だが、マギーホアが案内してくれている為、今回は入れる。
許可が無くても入ろうと思っていたが。
「貴様の知っての通り、ドラゴンから近年、雌が生まれなくなった。凡そ8年前……ククルククルが死亡後の出来事だ」
もうそんな時から争いの火種を仕込んでいたのか、と神々の仕事の速さには呆れるしかなかった。
「その中で、一頭だけ異形とも呼べる、しかし美しい姿で生まれた同族がいた。彼女だけは雌のドラゴンを生む事が出来た。それ故に私は彼女を《王冠》と呼んでいる。このドラゴンの存続の希望であり、同時に私が保有する最も価値のある宝だ」
「年下の超若い子とがっつりしっぽりとかランス君以下ですね、マギーホア様」
「……?」
なおドラゴン的に割と早く卵を産める体になるので、若いから……なんて概念はあんまり通じない。ここ、非常に異文化。まぁ、ドラゴンって根本的に畜生だしそら仕方ないわな、という部分もある。
そんな事でマギーホアに連れられ、翔竜山の頂上、マギーホアの住処について行く。
そしてその奥の奥、魔法による結界が張られている空間の中へと進んで行く。絶対に逃がしはしないという意思を感じさせる厳重なロックをマギーホアの先導で越えて行き、その一番奥、おそらくはマギーホアの寝床である積み重ねられた深緑の葉で出来たベッドの上に倒れ込んでいる姿を見た。
頭から角を生やすところはまさしくドラゴンの特徴だ。だが鱗のない白い肌にしなやかな手足、ドラゴンという生物と比べてあまりにも華奢で細く、小さい。ドラゴンからすればドラゴンの特徴を持つ異形の存在として見えるだろうが、知識のある自分には解る。これが次世代型メインプレイヤー、つまりは【第三世代メインプレイヤー・人間】のデザインを一早く取り入れた存在である事を。
恐らくは
となるとルドフラッシュによってドラゴンは滅びるのではなく、エンジェルナイトによるドラゴン狩りで滅びる、という事なのだろうか? まぁ、何にしろ、魔人級の実力を持つエンジェルナイトが数千、数万という数で数百年間襲い続けて来るのだ、その地獄からは自分程度では抜け出しようもない。ルドフラッシュによって死んだほうがまだ楽だったかもしれないなぁ、と思いながらマギーホアの《王冠》を見た。
「彼女が私の最大の宝であり、《王冠》のカミーラだ」
「……」
ベッドに倒れ込むカミーラは憂鬱そうで、しかし絶望の色を表情に見せた状態でマギーホアを見てから、此方へと視線を向けた。今のカミーラはただの繁殖の道具だ。そこにカミーラの自由意思なんて欠片も存在していない。当然、王としてはマギーホアが正しい。個人の事情や心情を考慮した結果、国が滅べばそれはただの愚王なのだから。
とはいえ、家畜の様にただただ、繁殖させられるカミーラの存在には同情しかない。彼女もまた、間違いなく神々が生み出したシステムや争いの火種としての犠牲者なのだろう。
カミーラの無言のまま、見上げる絶望的な視線を見て、それからマギーホアへと視線を向ける。
「マギーホア様、マギーホア様、ちょっとかかか、カミーラちゃんと二人きりで話してもいいですか」
「……貴様なら傷つける事もないか。良いぞ」
「じゃあしばらく二人きりにして貰うお礼としてこれでしばらく遊んでてください」
マギーホアの手にハイパー兵器を握らせる。受け取ったマギーホアが物凄く微妙な表情を浮かべ、ハイパー兵器を軽く振ってみながら、振り返り去って行く。
「これでどうやって遊ぶのだ……」
俺も是非知りたいからマギーホアも新しい遊びを開発して欲しい。現在ハンティと念力っぽい魔法の開発を進めているので、ハイパー兵器ファンネル化計画もある。そうすればもっと遊ぶバリエーションが増えるんじゃないかなぁ、とは思っている。ただ、そろそろ神様に怒られそうな気配もあるので悩みどころだった。三超神クラスとなると感情が存在しないが、七級神とかのレベル神クラスになると連中、普通に感情とかがあるので、怒って殴り込んでくる可能性があるのだ。
まぁ、そういうエンディングはそういうエンディングで悪くなさそうだが。
ともあれ、マギーホアが去ったのを見てから、カミーラへと視線を向け直し、近づく。
「やぁ、かかか、カミーラちゃん。マギーホアの繁殖奴隷としての生活は快適かな?」
「……」
絶望に表情を曇らせたカミーラは、此方が軽い言葉のジャブを打ち込んでもまるで反応しない。まぁ、明らかにマギーホアのチンコが入るサイズの体してないもんね、カミーラ。人型、人間サイズなのに毎晩毎晩マギーホアのセックスペットさせられてちゃあそりゃあ心も壊れるか、と様子を見て納得する。
だから反応を示さないカミーラに言葉を贈る。
「絶望しているカミーラちゃんに朗報だ―――数年内に魔王アベルが君を攫いに来るぞ」
「……っ」
その言葉にピクリ、とカミーラが反応する。お、いいぞ、いいぞ、希望が目の端に見える。もしかしてここから抜け出せるのかもしれないという想いがカミーラの目の中には見える。このどうしようもない繁殖の為だけに生き続ける日常から抜け出せる事を望んでいるのが解る。
「魔王アベルには根性がない。あいつはマギーホアに勝てない。だからお前を攫いに来て、そして言う事を聞かせる為に魔人にするぞ―――そうすれば今度はアベルの夜のペットだ」
「あっ……あぁ……」
「だけど魔人になればもう孕めない。どれだけ犯されようとも孕む様な事がなくなる。解るか? お前が魔人になれば、もう、ドラゴンからは雌が生まれてこないんだ。ドラゴンという種族から未来が消える」
「……」
カミーラの瞳に迷いが生まれる。それを見て楽しく嗤う。そう、どうせ滅ぶんだ。それが未来の出来事なんだ。神様もドラゴンのハイスペックさには呆れているんだ。そして次世代のメインプレイヤーもおそらくは創造が始まっているのだろう。だとしたら少しでも一緒に破滅する奴を増やしてもいいだろう?
一人で破滅するのは寂しいもん。
「無論、君はこれをマギーホアに伝えてもいい。アベルの糞雑魚チキン魔王が攫いに来ると。俺からそれをマギーホアに伝えてもいいぞ。そうすればドラゴンは安泰だ。お前が繁殖奴隷として毎晩マギーホアに犯される夜が続くだけだ。チンコのサイズ合ってないから辛そうだけど俺には関係のない事だしなぁ?」
それも選択肢の一つだ。だけど、
「これを黙って、攫われる日まで準備するのも良い。そうすれば君はドラゴンを破滅させた大戦犯になる。だけど仕方がないよな? マギーホアがずっと酷い事をしてるんだからな。王様の責任だからドラゴン全体の責任になるよな?」
「―――」
言葉と共にカミーラの瞳に憎悪と殺意、そして希望が沸き上がるのが見えた。そうそう、その方が魅力的だと思う。折角、派手に暴れても良い、破滅するだけの未来が待っているのだ。
だったら馬鹿になって一緒に踊らなければ損じゃないか。
性転換も間に合いそうにないし。
だったら一人でも多く、破滅させてみたいじゃないか。思いつきだけど。マギーホアのあの高貴で、そしてドラゴンという種の事を想って頑張っている姿、
最高のタイミングで破滅させてみたくはないか?
「貴女は―――」
と、カミーラが初めて、言葉を発した。彼女へと視線を向け、
「―――まるで悪魔ね」
「誉め言葉として受け取っておくよ」
カミーラの言葉に笑みを浮かべ、笑い声を零す。あぁ、ドラゴンの破滅が見えてきた。後数年だ、後数年で破滅が始まる。魔王アベルの暴挙からラストウォー、魔軍の壊滅から統一国家トロンの樹立。
そして始まるドラゴンの終焉。
段々と滅ぶその瞬間が、愉しみになってきた。
カミーラさん無気力時代を誑かす悪魔の図。
破滅を前に、それを知って、それを前提に動ける狂人程恐ろしい物はない。神様的にはポップコーン片手にいいぞぉ! とガッツポーズするような案件なんだけどね。ほんと救いがねぇなこの世界!