日光を使える存在を育成しよう。
というか日光という対魔人用決戦兵器の事を考えよう。
対魔人用に生み出された日光だが、彼女の全盛期というか活躍は、GL1000年に発生する魔王戦争が最大だ。そこで勇者に握られた日光はカオスを握ったガイと共にジルに対抗し、そして魔王ジルを倒す事に貢献した。それ以降は歴史の表舞台から消え、再び出現するのは健太郎―――つまりは魔王リトルプリンセスの恋人の手に渡る時であり、これは魔王ガイに挑んだ人間のパーティーが保有していたものが、健太郎に渡る事である。そしてこの時発生したのが、
今までの所業に罪悪感を覚えたガイが健太郎に無防備に姿を晒し、攻撃を受けて殺されるという展開である。
ガイ、お前正気か……? と今更言いたくなるようなことでもある。後悔するならそもそも魔王に関わるんじゃねぇよ、と。だが同時に、魔王の血というモノがどれだけ人生を、人間の精神を狂わせるものなのか、それを理解させるものでもあった。ただ、まぁ、そこから日光の役割は散々な物だ。どことなく常識人が抜けていない事もあり、異邦人である健太郎とリトルプリンセスの子守を続ける。その上で【戦国ランス】で健太郎が魔人化するもずっと使われ続ける。
そう、完全に無駄に使われているのである。
世界で二つしか存在しない、対魔人・対魔王特攻武器である二振りの内の一つ。
それが完全に腐っているのである。いや、まぁ、リトルプリンセスの子守は必要だったのかもしれないが、それはそれで別の存在を配置すればそれだけで解決する問題でもあるのだ。そう考えたら完全に日光の居場所が腐っている。余りにも勿体ない。勇者に使わせるのだってエスクードソードがあるのだから無駄に決まっているのだ。だったら普通に、剣の戦闘技能を保有している長命の存在を用意するか、それを生み出せばよいだけの話だ。
この場合特殊変異体のモンスターでも構わない。
悪魔や天使の場合、種族差でそもそも《無敵結界》が通じないので腐る。なので理想なのは人間だ。それも不老の呪いをかけられているもの。或いはカラーでもいい。その場合は俺がみっちり世代交代を監視しながら聖刀使いの家系でも作ればいい。そうやって日光を扱う事に特化した人間を世代交代の果てに生み出す事を目的としてもいい。
どちらにしろ、日光を使える存在と言うのを探す必要があった。ただそういうのを走り回って探すのは流石に無駄だ。故にこういう探し物のプロフェッショナルの力を借りる事にした。
つまりは悪魔だ。
「久しぶりに来たぜ悪魔界……!」
ナイチサによって瀕死に追い込まれた時以来の悪魔界来訪だった。アレ以来大量の魂が悪魔界に送られてきた影響で、三魔子やラサウム等といった主要の悪魔は大きく力を付けたという話だった。まぁ、ナイチサが人類死滅率50%とかいう快挙を達成してしまったのだからさもありなん。というか今更だが、50%到達とはいったい何千万人、いや、億単位で死亡したのだろうか? そして減った魂の総量はまたルドラサウムが増やしたのだろうか?
ちょっと、そこら辺は気になる。
とはいえ、人間牧場によって現在の人口は爆発的に増え、ナイチサが魔王をやっていた頃よりも減って、そして同時に無造作に殺されている。命のスパンとサイクルが大幅に加速している―――悪魔側も、正史よりもその強さが増していると表現しても良いだろう。定期的にウチの里から悪魔になったカラーが供給されるし。
そんな事もあり、悪魔は結構身近なお隣さんである。数千年前の悪魔との約定もある他スラルと個人的に契約している件もある。そういう事で割と悪魔界という場所にはこないものの、身近な存在と自分は考えていたのだが、
悪魔界に到着して最初に見かけた悪魔に話しかけようとしたら絶叫しながら逃げられた。次に見かけた悪魔に話しかけようとしたら、その場で失禁しながら腰を抜かし、腕で体を引きずりながら逃げ出した。
「あ、あっ、悪魔、き、金髪の悪魔……!」
「悪魔なのはお前らだろ」
「殺される……殺される」
「大量虐殺だ!!」
「ドラゴンが来たぞ!! 助けて! 助けてぇ!」
「……」
悪魔界の入り口近く、そこで足を抱え、体育座りしながら混乱し、勝手に発狂し始める悪魔たちを眺める。口でるーるーるー、と軽く歌を歌いながら、勝手に奈落へと逃げるように飛び込んでいく姿を見て、うん、と頷く。悪魔連中がどうやら、ドラゴン・リアリティ・ショックを発症していたらしい。流石にこの流れはクッソ失礼なんじゃないか? と思いながらも何も言えなかった。生きる事に絶望して新たに奈落へとダイブする悪魔の姿を眺めつつ、体育座りのままじっとする。
そこに見た事のない悪魔が近づいてくる。白髪に青と白の露出の多い悪魔だった。
「ねぇ、貴女あのドラゴン・カラーでしょ。レガシオ様から姿を聞いているから直ぐに分かったんだけど……何をやってるのかしら?」
「いや、流石に見られただけで発狂して自殺ダイブされると傷つく……」
「あぁ、うん……そう……」
俺にだって、傷つく時もある。特に逃げ出す時の顔がガチの恐怖の表情だった場合は、俺、そこまで怖い……? とちょっとだけショックを受けてしまう。だけど、うん。評価が高いのはペンシルカウぐらいだよね、それ以外だと基本的に暴君だし、大暴れしている存在だし、扱いでは魔人とそう変わらないよね、うん。
「……うん。流石に目の前で失禁しながら逃げられたら傷つく」
「……そ、そうね」
でもなぁー。原因は間違いなく数千年前に暴れた自分が悪いんだよなぁ。少なくともやらかしたという自覚だけはあった。だって間違いなく悪魔界初の大量虐殺イベントだったし。でも、まぁ、その果てにスラルを助けられたのだから、最終的には良いだろう。まぁ、しゃーない、しゃーないと自分に言い聞かせる。だけどやっぱ普通に傷つく。
「仕方がない。二日酔いのショックは迎え酒でなんとかしろ、という言葉がある」
「聞いた事がないわね」
「つまり迎え虐殺でショックを乗り越えよう」
「成程、噂通りね……だけど止めて。ほんと止めて。特にあの噂の猫人間は」
「マギーホア様は全体的な違反項目多すぎて翔竜山からほとんど出られないから……」
マギーホア、動き出せば間違いなくこの大陸で最強生物を名乗れるだけの実力があるのだが、それでも強すぎるあまり、常に監視されている生活でもあったりする。俺がマッハ=ハーモニットに監視されている様に、別の手段で常にマギーホアは監視されている。つまり人物レベルのバランスブレイカーに対する監視である。俺がまだ、そこら辺ラインをわきまえているので許されている部分があるが、
マギーホアの場合、出れば勝ててしまう。
だから大陸の騒動に対して出勤する事そのものが禁止されている様なもんだ。なので出来る事と言えば翔竜山でスパーリング相手をするぐらいで、最近はコーチングにもハマっていたり、スポーツでドラゴン達と遊んで時間を潰したりしている。マギーホアも大分面白くなったもんだと思う。歌とかスポーツとか、いろいろやって翔竜山での文化的生活を繰り広げている王様の姿は面白い。
まぁ、それでも味方でいてくれるだけ、心強い。何かがあった時、マギーホアが居てくれるという事の安心感は凄まじいのだ。俺達の王様が健在だからこそドラゴンも、種族全体として理性を保っているし。
まぁ、それはともかく、
「悪魔に一仕事して貰いたいんだけど……えーと」
「フィオリで結構よ。それで……報酬はどうしてくれるの?」
「は? 俺が報酬を支払うとでも思ってるの?」
「《リターン》」
気づけば悪魔界から追い出され、大陸どこかの野原の上で尻もちをついていた。ルドぐるみを召喚しつつその上に座り、座ってから倒れ、そしてごろり、と腕を投げ出すように全身をルドぐるみの背中に埋もれるように倒れ込んだままふよふよと地面から数メートルだけ浮かんだ状態でんー、と声を零した。
「やっぱ悪魔には頼れないか」
基本的に悪魔は仕事に忠実だ―――だがビジネスだ、連中は対価がないと働かない。可能であればこの大陸で《剣戦闘Lv2》かLv3を保有する生物のリストを作ってくれー、と頼む所だが、やっぱりあの様子を確認する限り、無償労働なんて頼むのは難しいだろう。レガシオもちょくちょく屋敷に遊びに来ては飯を食って帰るぐらいには仲が良いのだが、それでも仕事の規模が大きくなると、それを請け負うのは難しいだろう。
「んー……」
発想は間違ってないんだよなぁ、と思う。
「やっぱ俺が日光を使うしかないかー……?」
まぁ、義務ックスで終わらせればいいし。そう思いながら視界の端へと視線を向ければ、マッハが地面からゆっくりと生えてくるのが見えた。
「やっぱやめよう」
そう言葉を出すと地面の中へとマッハが沈んで消えた。
「マギーホア様に持たせるか」
マッハが神々しい光を発しながら地面から上がってくる。
「やっぱ止めよ」
そして再び冬眠に戻った。
「次の春までしっかり眠ってるのよ……じゃねぇよ。俺が真面目に日光を使ったらアウト判定なのかこれ? いや、ペナルティ範囲なのか。段々と線引きが辛くなってきたぞぉ」
まぁ、自分が人類側に対する特大なバランスブレイカーである事は自覚している。だからこそ、なるべく静かに舞台の裏で動いているのだが、表舞台に立つような道具を本気で運用するのは禁止―――いや、違うか。どちらかというと、
「俺が自力で突破手段を見出す事を楽しみにしてるのか、ルドちゃんが」
地面からサムズアップが突き出て来た。最近マッハも細かい芸を覚える様になってきたので周りで超越者共の芸人化進んでない? と思いつつある。でも、まぁ、それを笑って見られる様になったのは、間違いなく自分が余裕を得たからなのだろう。こうやって色々と困っているものの、それを苦しく思う事は一つもない。出来る事、出来ない事、それを一つずつ自分で解決して行くのは、
なんだかんだで楽しい。
「ま、今度天上に向かった時、チートアイテムで無双しました、じゃあ伝えるには面白くないしな。それなりに頑張ってなんか武勇伝を語る内容も必要か」
そう言って諦める事にしつつ、さーて日光さんの事をどうしましょうかと悩む。やっぱり、勇者に運用させるしかないか? 都合よく《剣戦闘Lv2》を持っている人間を俺一人では見つけられるとは思えないし。とりあえずウチの里で振るうだけの才能を持っている子を探すべきだろうか?
……悩みどころである。
そう思った所で、
「お―――姉さん、こんな所に居たんだ」
「ん?」
知っている人の声に振り向きながら視線を向ける。その先に居たのは簡素な旅装に身を包んだ、黒髪に赤いクリスタルのカラーの姿だった。妹のカラーであるハンティの姿におぉ、と声を零してからルドぐるみから降りて、
―――迷う事無く目の前の大地を蹴り上げた。
ハンティの姿がそれに飲み込まれ、通常の生物であれば間違いなく一瞬で消し飛ぶような一撃。一人を殺すにはオーバーキルとも表現できるだけの破壊力を前に、クリスタルから第三の目を開き、右腕に竜鱗を纏いながらルドぐるみを握った。
「次俺の前でその姿になってみろ。ばらばらに引き裂いて無限に殺し続けてやるぞ」
「失礼、まさかここまで激怒するものだとは思わずに」
粉砕した大地の中から、多少の土煙を被りつつも、無傷の姿が出現した。その姿は黒いスーツに身を包んだ、長い黄色い顔が特徴的な存在であった。心の底から謝っている事を感じさせる言動を前に、多少の怒気が薄れる。とはいえ、相手の姿を見て、その存在を知っている者からすれば、安心する要素は欠片もない。
「……個人的な疑問なのですが、何故私の変身を即座に看破できたか、それを聞いても宜しいでしょうか?」
ぺっ、と横に唾を吐き捨てながらルドぐるみを握ったまま、中指を突き立てる。
「
「臭い、ですか」
「そう、魔人の体に流れる魔血魂の臭いだよ。どれだけ姿を隠しても、どれだけ姿を変えても、対峙すればそれだけは隠せない。直ぐに魔人だって解る」
「成程、噂に違わぬ超人ぶりに感服しました―――」
それでは、と魔人は言葉を置きながら、優雅に一礼を取った。
「ジーク、魔人ジークという者です。突然の無礼を失礼します、ですが……」
ジークは言葉を置き、懐に手を伸ばし、そこから一枚の招待状を取り出した。
「我が主、魔王ジル様からの招待状を届けるためにこうやって参りました」
ジークが取り出した招待状と、そしてその言葉を聞き僅かに、今まで凍り付いていた歯車が動き出すのを感じていた。
GM三超神は日夜ちゃぶ台を囲んでレギュレーションとエラッタ内容について議論を続けている……!
ウルちゃん様が嗅ぎ付けているのは正確には魔血魂じゃなくて魂なんだけどね。ルドちゃんと200年も一緒にあれば臭いぐらいならドラゴン技能合わせて解ってくる。そして大体の魔人尾魂は魔血魂の影響で血の匂いが酷い。
という訳で、呼んでますよウル様。