人類最大都市の建造が開始された。GLに建造された未来にまで残されるこの都市は魔王城と相対する為に生み出された、人類最大最強の城塞都市として設計された。《建築Lv2》や《科学Lv2》、人類が保有する最高峰の頭脳を集め、協力し、1からデザインされた都市は魔軍と正面から戦い、魔人が襲い掛かって来ても耐えられる事を想定して建造されるものだった。その材料に選ばれたのは数千年前に死亡し、そして今もなお朽ちない、原初の魔王ククルククルの亡骸だった。魔王とやり合うのなら魔王を利用する。人類らしい発想から全長4.7㎞の魔王の肉体を利用した城塞都市の建造が開始された。
人類と魔軍の間で拮抗が続く。とはいえ、この拮抗も魔軍側における重要戦力、魔人が人類側を攻撃しないという点が守られているからこそ続く拮抗だった。現在、魔人と魔王は魔王城に引き篭っている……というよりは戦争準備の為にハンデを取っている状態だった。人類がその準備期間中は動く事もなく、牧場の経営も人類への襲撃も、全ては魔物兵と魔物将軍、大将軍のみに任せるように努めていた。魔人とは違い、これらの存在には《無敵結界》が存在していなかった。《無敵結界》を破壊する手段である【魔剣カオス】と【聖刀日光】が存在しても、魔人に対応出来るかどうかという話はまた別の事である為、この人類が力を蓄える時間は実に有用であり、魔軍と人類が力を拮抗させられる数少ないチャンスでもあった。
それ故、人間は対魔軍反撃拠点を構築する為に資材などを集中させて行き、そして周辺にある、魔軍が使えそうな拠点や人間牧場の破壊に神経を集中させる。それによって構築中の拠点に対して攻撃を行う魔軍の数を減らし、相手が攻め込む為の場所を減らす為だ。魔人や魔王が動き出す前に、魔人からすらも守れるような人類最大の都市を生み出すべく、人類は勢力を集中させた。
「馬鹿な……何故ここまで接近を感知できなかった!?」
「答え合わせはあの世でなっ! ぶちかませっ!」
「《火炎流石弾》!」
言葉と共にLv3の魔法が放たれた。《ゼットン》すら超える激しい炎が巻き上がり、それが一瞬で魔物将軍と魔物兵を飲み込んだ。だがそれで動きを止めず、人類の精鋭魔軍討伐隊が続けて攻撃を重ねる。数万人と存在する人類の中から、選ばれたLv2技能や恐ろしいほどに修練を積んだLv1技能の保有者、それらばかりを集めて構築した、現状の人類軍が有する事の出来る最強クラスの部隊、それが相手の混乱が収まるのを待たずに一気に攻撃を開始した。
ハンティの《火炎流石弾》が先陣を切り、それを追いかけるように《白色破壊光線》や《Fレーザー》、弓による必殺技などの遠距離必殺技が一斉に発射され、相手の構築中だった陣地を吹っ飛ばす。土嚢も完全に吹っ飛ばし、地形そのものを崩しながら500は存在していた魔物兵を一気に混沌に叩き落す。
そしてその影で、近接技能持ちで一気に切り込む。自分が正面に立ち、ルドぐるみを右手に握りつつ、それを頭上で掲げて回転させながら跳躍、それを一気に振り下ろす、
「ウル―――あたたたたーっく!」
「ぐっ、援軍を呼べっ! がぁっ」
叩きつけるように上から放った《ウルアタック》が魔物将軍とその周囲を巻き込んだ。それでも耐えきった魔物将軍の姿に追撃する様に後ろから討伐隊の仲間たちが飛び出る。それぞれが突撃や攻撃を繰り出し、攻撃を加速させながらそのまま、必殺技と奇襲によって崩壊した魔物将軍の戦列を食い破って、破壊する。そして仲間たちの攻撃が魔物将軍を貫き、その腹に収めたブレインとされていた少女を引きずり出した。
「回収完了っすよ姉御!」
「よっし! 将軍を討ったら逃げるぞ! 合図を出してドラゴンに空爆させつつ撤退! スカーレット!」
「《いないなーい》」
《マジシャンLv2》技能を持つ子が範囲の隠蔽を行う。魔軍討伐隊の姿がそれによって周囲からは見られなくなり、魔物兵たちから見られなくなる。その前に空へと一発、《黒色破壊光線》が放たれる。それによって空爆隊への合図が終わる。魔物将軍が居なくなって混乱した残された数千の魔物兵の部隊に対して、空から一方的にドラゴン達が空爆する手はずになっている。
「撤退! 撤退ー!」
「巻き込まれる前に逃げるぞー!」
「急げ急げー!」
「あんまり離れちゃうと見えちゃうよー」
のんびりした声に多少苦笑を漏らしつつ、奇襲によって死亡し、そして崩壊した魔物兵たちの戦線を見た。ちゃんと魔物将軍を始末出来ているのを確認してから素早く戦場から逃げるように駆けだす。空に、合図を見かけたドラゴンの集団が飛翔しながら迫ってくるのが見える。
これで北部戦線も一時的に安定するだろう。
「北部戦線はこれで叩けたな? 西部戦線はどうだ」
「其方は私が潰した。寒冷地帯からの援軍はJAPAN軍が叩いた」
「良し、これでしばらくは時間が稼げるな」
建造中の人類最大都市、その中央司令部の一室で、ペンシルカウから引っ張ってきた円卓の上で今、出来る事を終わらせた安堵にふぅ、と息を吐きながら上半身を倒した。円卓に突っ伏しながら息を吐いた。解っていた事だが、定期的に魔物兵も魔物将軍も補充される状況はかなり苦しい。まだまだ、人類連合は未成熟だと表現するしかない。5年間の建築と建造、これによって城塞都市の中央部分だけは完成された。その背後に今は農園等を建築し、籠城戦に移行した場合は都市の分の食事を都市の生産だけで賄う事が出来るように準備している最中だった。
根本的に、ククルククルの亡骸を材料として建造しているこの都市の目的は魔人の襲撃に対して防衛できる防衛力を保有する事だ。正面から魔人の攻撃を受け止めつつ、それを釘付けにする為の場所だ。だから外に頼らず生きていくだけの設備、環境を整える必要がある。城塞型のコロニーとでも表現すべきだろうか?
ククルククルの亡骸を使うのは
まぁ、それでも今の問題はノンストップで魔王城方面から補充される無限の魔物兵と魔物将軍の問題だ。
とりあえず、最前線は焼き払った。人間牧場を意図的に襲撃して人類を10%削り、エスクードソードを【逡巡モード】で発動させている状態になる。これで勇者が誕生すれば即座にエスクードソードを振るわせる事が出来る。それに合わせ、人間牧場はなんだかんだで拠点になってしまう。牧場を補給地点に此方へと攻め込まれても困る。それに人間牧場の家畜人間たちは存在するだけでデッドウェイトになる。
面倒を見る余裕も、そしてそれを相手にする余裕もない。
なら牧場も人間も纏めて焼き払った方が効率がいい。だが迷う事無く実行すれば鬼畜扱いだ。同郷や上の方は解ってくれるし、同じ部隊で戦う仲間は解ってくれるが、結構下の方では恐れられている、と聞くとショックだ。まぁ、それでも人類が勝つ為には取れる手段を取るのだが。
小太り代表―――エヴァンスの計画通りに都市建造は進んでいる。これがGIの聖魔教団のいる時代であれば、計画に闘神都市化計画を組み込めたのだろうが、流石にそこまで望む事も出来ない。取り合えずはレッドアイ対策に魔法システムを使わない、乗っ取っても意味のない防衛体制を構築する必要がある。ただマンパワーにも限界は存在している。そう考えるとちょっと頭がヒートアップしそうだ。
そこら辺は《戦略》や《政治》連中に任せるしかない。そういう人材は必死に集めたのだから、仕事をしてくれ。
「ふぅー……とはいえ、数か月スパンで数万単位の魔物兵が補充されるのは流石に辛いな」
ガイもその言葉に頷いている。ガイも最近は調練が出来ず、魔物兵と魔物将軍の軍団を相手にするのに出ずっぱりだ。それでも流石魔人と言うべきか、その姿に疲れたような姿は見えない。
「今はまだ対応出来ているから良いが、これに魔人が加わるとなると少々厳しくなってくるな」
「それまでにどれだけ人類軍を強化できるか、って所だな。今のまま軍団戦を繰り広げてもぶつかって蹂躙されるだけだからな。それまでは将軍と隊長の暗殺と、崩壊した所をドラゴンの空爆でどうにかするしかないな……」
「将兵が揃ってないのも問題か」
せやな、と呟きつつ体を持ち上げて頷くと、会議室にノックが入り、扉が開く。視線を向ければ、黒髪のカラーの姿が―――つまりはハンティの姿が見える。
「姉さんとガイにお茶貰ってきたよ。少し飲んで頭を休めたら?」
「……なんだその表情は」
「うわ、すっげぇドヤ顔」
どうだ、俺の妹は気が利くだろう。感謝して飲めよ、とドヤ顔をガイと、壁に立てかけてあるカオスへと向けると、一人と一本から妙なリアクションが向けられる。ドヤ顔を見せて何が悪い。美女のドヤ顔だぞ、ご褒美だろうがお前ら。カオスのナイワー、って表情はムカつくので後で折る。
「ともあれ……魔人が動き出す前にどうにかせねばならん。その対策を含めてな」
「魔人レッドアイの寄生対策。魔人アイゼルの洗脳対策。魔人ケイブリスの恐瘴気対策……他にも対策いるんだよなぁ……あー……頭おかしくなりそう」
「《瞬間移動》で殴れたら楽なんだけどねぇ」
「間違いなくジルはそれも想定しているから、王道で回避が出来ない。正面突破が一番なんだよなぁ、このケースは……」
「それまでにどれだけ人類が積み上げられるか、それが問題だ」
人類の進化のペースの問題。どこまで人類が積み上げられるか、という速度の勝負だ。この戦いはある意味、人類の限界を試す戦いでもあるのだ。どれだけ人類がその底意地を示す事が出来るのか、という事の。
今はまだ、自分やガイ、ハンティ等の特級戦力でサクッと暗殺しながらドラゴンで空爆するという戦術も取れるだろう。だけどこれは魔人が動き出すまでの問題だ。魔人メガラスが動き出せばそれだけで制空権を奪われるし、魔人ラ・バスワルドが動き出せばそれだけで特級戦力を集中させる必要がある。ガイでさえラ・バスワルド相手には絶対に勝てない、と言っているのだから。
下戸だから酒を投げればいいんじゃないか、とでも思うだろう。
そんなものが届く前に諸共、周辺の空間を消し去って臭いも存在も全部消し飛ばす。だからそういうものを持ち込むだけ無駄らしい。流石破壊神としか表現出来ない強さだった。
魔人が動き出せば。トップ戦力は魔人を迎撃する事に集中する必要が出て来る。
「となると魔軍との衝突は、人類側に任せる必要になってくるからな……」
ハンティが持って来た茶に口をつけて喉を潤しつつ、呟く。最終的に魔軍の魔物兵、魔物隊長、魔物将軍クラスは人間たちだけで戦う必要が出て来る。今、精鋭部隊に参加しているのは人類側の戦闘隊長、将軍候補の人間ばかりだ。一緒に戦場に出て対魔軍戦術を肌で覚えたら、次の世代へとそれをブラッシュアップしつつ継承する為に頑張っている。
彼らの子供や孫が、人類と魔王ジルとの最終決戦で暴れるのだから。
彼らは今、継承する為のものを生み出している。
ここで踏みとどまり、生きていく事を決めたのだ。
その事には感謝しかない。人類の問題ではある。だけど同時に、俺個人の問題でもあるのだ。だから気分的には人類を俺の事情に巻き込んでいる様な気分だった。いや、【ひつじNOTE】を見られたのは俺の過失だ。この戦争は俺が原因で始まった事なのだから、実質的に戦犯は俺だ。
絶対に口を割らないぞぉ。
絶対にだからなぁ!
「まぁ、とりあえずは【第一世代】を俺達でなんとかダビスタするしかねぇ」
「人間牧場とは逆の発想か」
「ちっと邪悪に聞こえるけどな、戦うのが【三世代】になる事を考えると、戦える人間が欲しい。感触だけど今の連中だと……」
「難しいだろうね」
ハンティの言葉に頷く。
人類トップ勢力の平均最高レベルが50前後だ。実はこれ、かなり厳しい数字だ。魔人を1体2体相手するぐらいならこれでもいいが、
「最高レベルが
「少なくとも大量の魔人と戦いながら切り抜けられる実力を得るには、私たちを前に出したとしても、それぐらいのレベルは必要か……」
「私が今162、姉さんが221、ガイが今138だっけ?」
これだけあればぶっちゃけ、魔人の3人ぐらいは余裕でぶち殺せるだろう。だがそこから一気にペースダウンする。そしてラ・バスワルドと戦う事になれば、そこでジルと届く前に死亡するだろうと思っている。割と真面目に、人類側に高レベル、その上で高レベル技能の保有者が欲しい。
ジルが牧場を使って無能な人間を量産している様に、
此方は有能な人間を掛け合わせて、もっと強い人類を次の世代に残そうという計画である。
だが、
「無論! 繁殖という概念はダメ! 愛は大事! LOVE! 愛が人類を救うのだ……! 愛のないセックスは人類判定ではないッッ!」
「女王ちゃん、偶に儂でさえ真顔になる様な事を突発的に言うよね」
カオスにサムズアップを向けつつ、宣言する。
「故に俺様は宣言するぞ、第一回、未来を救うのはお前、超OMIAI作戦を……!」
拳をぐっと握りながら大作戦を口にしながらそれをガイとハンティに宣言すると、ガイが視線をハンティへと向け、
「……何時も、こう……こうなのか?」
「割と」
「……そうか」
「儂が初めて見た時はもうちょっと犯してみたい感じあったんだけどなー」
「お前らこっち見て言えよ。おい。もふるぞ」
ルドぐるみを浮かべながら脅迫すると、それに反応する様にルドぐるみの目がぴかーんと、光る。それを見たハンティとガイが僅かに距離を空けるが、お見合いに関してはネタではなく、ガチなのだ。なるべく強い子供を残して貰わないと、次の世代の戦いで、困るのは人類なのだ。
無理矢理は無論、させない。だが多産は推奨される。それだけ次世代が富むからだ。そして足りない食料や資産に関しては、腐るほどペンシルカウで溜め込んでいるので、それを放出する事でどうにかなる。
そういう訳で―――ハイパー、お見合いタイムを開催する事にした。
人類を育てようねー。
基本的な戦術はランスが運用したトップを狙って落とす物に、その後、混乱したのを空から安全に爆撃する事で再編成される前に叩いて完全に潰すという形に。魔人が出る前であれば、制空権の心配はないし、迎撃を指示する魔物将軍も居ないので、恐らくは最前に近いかと思われる。
たぶん。
次世代を残すのも立派な仕事。