※この作品はR-18です。

ルドラサウム転生異聞録   作:てんぞー

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925年 OMIAI

 晴天の空は邪魔だった雲を吹き飛ばして無理矢理快晴にした。

 

 暗雲などいらねぇんだよぉ! という勢いで空を無理やり青空にした所で、対魔軍城塞都市ククルの一角、司令部近くのガーデンには今、多数のテーブルと男女の姿が見え、テーブルの上には料理が乗せられていたり、近くではレクリエーション用のスペースが、そして此方のテーブルには大量に媚薬を用意して、その上で近くの宿は複数抑えてある。

 

「あーあーあー。テステステス。拡声魔法良し―――」

 

 《科学Lv0》技能で作成したお手製マイクに拡声魔法を吹き込みつつ、それがちゃんとガーデン中に声を広げるのを確認し、よし、と声を零した。椅子から立ち上がり、テーブルの上に片足を乗せつつ、小指を立ててマイクに声を吹き込む。

 

「いよぉぉし! お前ら!! セェェ―――ックスする相手には困ってないか!? 恋人はいるか? いる訳ねぇよなぁ……そういう奴らしか集めてねぇからなぁ!!」

 

 中指を突き立てながら集まった30人余りのグループを挑発すると、ブーイングと中指を突き返される。中々にイキの良い連中ばかりだった。こうやって素直な反応を示せる辺りが割と好感触だよなぁ、と思いつつ、集められた連中を見る。基本的に男女同数のグループだが、ここに集まっている連中は全員、共通の特徴がある。

 

 まず人生のパートナーがいないという事。次にそれを探し求めている、という事。そして同時に高レベル技能保有者である事。数万単位の中から1%なので、ぶっちゃけ数百人という規模で全体からすればいるのだが、その血を絶やさないためにお見合いを開催しているのである。

 

 偽・ねるとん方式で。

 

 まぁ、多少は自分で探す努力をした方が、こういうカップリングは満足できるものだ。ただでさえ命が軽いこの時代、なるべくお互いに愛しているという相手でカップリングしてくれることが大事なのだ。そういう訳で、カップリングパーティーを開催する。ここに参加している人間は、自分の子供、孫が魔軍と戦う事を覚悟し、その為に人生を捧げる事を決めた連中ばかりだ。

 

 だったら最後まで、笑えるように生活できるようにするぐらいには、サポートしてあげたい。そういう訳で、納得出来るパートナー探しの場でもある。まぁ、何かをするにしても、なんであれ、幸せな方が全体的にいいよね、と思う。自分に関わらない所だからこそ幸せになっておくべきだ、というか。

 

「そういう訳で最初は立食パーティー! 見た目が気に入った奴と話して来い! ビビってる奴にゃあ春は来ないぞ! 終わった後はレクリエーションも待ってるから、ここで突撃出来なくても安心しろ!」

 

「なお此方、初夜で絶対失敗しない媚薬セットです」

 

 ででーん、と口でルシアが言いながらテーブルに積まれた媚薬の山を示した。それに一瞬だけドン引きする者も出てくるが、

 

「姉御―! 俺だー! 結婚してくれー!」

 

「なお俺が欲しいという奴は」

 

 ガーデン横の空き空間を見せる。そこにはステッキ装備済みのマギーホア、シャドーを始めているスラルの二人が見えた。その背後ではゆっくりと運動を繰り返すドラゴン精鋭数体の姿が見え、視線が集まるのを見てからサムズアップを器用に前足等でアピールしてきた。

 

「アレと戦って貰います」

 

「やってやらぁッ―――」

 

 意気込んで突撃した直後に吹っ飛ばされた。合掌。

 

 という訳で他に突撃する馬鹿は居ない様なので、そのまま、普通にカップリングパーティー―――というかお見合いを開催した。これがお見合い作戦である。普通に人生のパートナーを探し、結ばれて、幸せに子供を作ってもらう、というだけのプランである。軽くパーティーが始まれば、テレビの司会でもないのだから、しばらくは暇である。息を吐きながら椅子に座り、両足をテーブルに乗せて伸ばしながらくつろぐ。

 

 ふぅ、とそれで息を吐く。

 

「……ま、少しでも多くが幸せな方が良いよな」

 

 少しでも多くの幸せを。それが人類が目指すべき道なのだろう、と思っている。まぁ、結論から言えば無理なのだが。俺も根本では性悪説の信者だ。人間がそのままで良い方向に転ぶとは思わない。誰かが背中を押して、物事を良い方向に押してあげなければ、そういう方向に転がる事はないのだと思っている。悲しい事だが、それが人間という生物だ。特にこの大陸における人類はそういう風にデザインされている。

 

 そしてそれを止める様な事を、上の神々はしない。

 

 それに今も、どことなくルドラサウムの楽しそうな声が聞こえる―――この状況を楽しんでいる。厄介な子鯨だと思うが、まぁ、自分は自分の事をやるだけだ。とりあえずはジルの顔面にハッピーエンドを叩き込む為だけに頑張らなくてはならない。その前提として、ここの連中には幸せになって貰わなくては困る。

 

 幸せじゃない家庭に子供が生まれても、真っ直ぐ育たないし。

 

 ちゃんと、健全に、そして愛を持って育ってくれなきゃそりゃあ、こうやって頑張って人類を助けている意味がないんだ。だから幸せに、パートナーを見つけて頑張って、と思っている。なのに一部が真っ先にマギーホア&スラルに突撃してぶっ飛ばされているのが見える。果てにはチームを組み始めたけど一部がブレスで薙ぎ払われている―――アレ、女混じってないか。

 

「おーおー、女王ちゃんも人気ね。儂は折られても嫌だけど」

 

「流石に失礼ですよカオス」

 

 お見合いパーティーの司会者席にはカオスと日光の席も用意されている―――当然刀剣の姿で。武器として普段は振るわれてばかりいる二人に対する一種のご褒美というか、イベントというか、エンターテイメントだ。斬って殺してばかりだと滅入るだろうし。そういう意味では結構大事な事だったりするのかもしれない。この場にハンティとガイは居ない。ハンティは《瞬間移動》があるのでちょっと遠方へと遠征中。ガイは流石に見た目の威圧感が酷いので除外した。

 

 除外宣言を喰らった時のガイのショボーンとした姿はちょっと笑えた。あいつも、ああいう姿を取れるんだなぁ、と思わせるが、そういえば悪ガイの方が結構表情豊かだった。そう考えると善ガイにも悪ガイと同じような素質があるのかもしれない。まぁ、そんなガイは今はどうでもいい。

 

「俺に恋愛というもんは解らんでなぁ。好きと言われても答えようがない」

 

「うわぁ、なんか変な病気を患ってるみたいな発言したよこの人」

 

「カオス……カオス」

 

「へし折ってやろうかこの野郎……!」

 

 カオスを握ってぶんぶんと振り回すとカオスの方から悲鳴がいやーん、と聞こえて来る。それでひとしきり遊んでからカオスを解放し、再び座りなおす。まぁ、俺は恋愛とかいいのだ。そういうのに興味ないし。周りの素敵な人たちが幸せになればいいし、

 

「俺個人は母親になるつもりはなくても、何千人と生まれ、育ってきた子供たちを見てきたしな。それと遊んだり触れ合ったりしているだけでだいぶ幸せだよ。だから俺は恋愛はいいや。ペンシルカウのカラー全員が俺の子供の様なもんだよ。そしてこれから生まれてくる、この都市の子供たちも全員俺に取っちゃ子供の様なもんさ」

 

 そうやって生まれ、育ち、老いて、結婚して、幸せになって、新しい命を産んで、次へと託しながら去って行く―――そういうサイクルをもう、何千と眺め続けている。ペンシルカウで何千という命が生まれ、転生していくのも眺めている。だけど結局のところ、最終的には俺が置いて行かれるのだ。そして俺が置いて行くのだ、命という流れに。だからいい、と思う。

 

 恋愛をするのは俺にはちょっと難しい。

 

 だから周りの人たちが幸せになれればいいとも思う。

 

 自分へと向けられる好意には鈍感じゃないから解るけど、それでもそれに応えるつもりは今のところはない。それに応えられるだけのものが自分にある訳でもないのだから。無責任に好きならしゃーない、と受け入れる様な情けない奴になるつもりもない。誰かを好きになり、応えるという事はその人生を背負う事だと思っている。

 

 生きている間だけじゃないのだ。

 

 そいつが死んだあとも、行った事も、その全てを一緒に背負い生きていくのだから。

 

 そう簡単には応えられない。

 

「ま……俺は眺められるならそれだけで幸せだよ」

 

「……その中に……貴女個人の幸せは?」

 

「あるよ。ちゃんと、ね。流石に自分の幸せを考えないって所からは卒業しているよ」

 

 ここ数百年の間に、と言う言葉は付け加えない。流石に年上の見栄があるので。しかし、こうやってエターナルヒーローの二振りが揃うとは中々面白い状況だと思う。確か魔王戦争が終わると、日光は行方不明になるのだったっけ? 行方不明の間は何をしていたのか、ちょっと気になる。何せ、日光自身は人間に変身して歩き回れるのだから、その気になれば自分の足でユーザーを探せた筈だ。

 

 と、マイクを取る。

 

「お前らー、別に見つけられなくてもいいんだぜ? その場合はチャンスがあったのに掴めなかったふにゃちん野郎共って俺が未来まで語り継ぐからなぁ!」

 

「勘弁してくれよー!」

 

「それはあんまりだぜ!」

 

 そう言いながら笑っているし、楽しそうに話し合っている姿も見られる。お見合いパーティーという趣旨で集まっているのだから、自然とお互いがお互いを意識している。そこまで変な茶々を入れなくても、これは自然とくっつくかな? と見てて思える。まあ、悪くはない景色だった。

 

 こんな風に、平和に誰と誰がくっつくか、好きになるか、そういうのを考えられる時代が来ればいいのだが……魔王というシステムが存在する限りは少なくとも、難しいだろう。

 

 やはり、巨大魔血魂との戦い―――【血の記憶】との戦いが必要なのだろうか……?

 

 その為には大怪獣クエルプランとの戦い等が必要になるが……今更、それが発生するかどうかも怪しい。あぁ、いや、そうか、神が大怪獣になればそれはそれで解決するのか。その場合はALICEちゃんに食わせるか、

 

 或いは―――。

 

「んー……」

 

 自分の指先を持ち上げ、眺める。僅かにそこに神々しい黄金の光を集めてから、それが集まる前に霧散するのが見えた。まだちょい、完成には遠い感じがある。なんとか、ジルと戦うまでには俺も最終奥義の一つや二つ、完成させたい所だった。

 

 少なくとも、今の状態で魔王ジルとの決戦が始まった所で、勝利する事は難しかった。

 

 俺、ハンティ、ガイ、マギーホア、スラルまでは決戦パーティーには確定している。ここに対魔人、対魔王に特化したカオスと日光が装備されて入る。これで軽くシミュレートしているものの、結果は他の魔人が戦闘に合流する事での敗北だ。

 

 根本的に魔人に対応できる人類が少なすぎる。

 

 少なくとも決戦部隊が魔王と戦う時に、他の魔人の介入をさせずに戦うだけの才能と能力を持った連中が必要だ。そしてそれが今は足りていない。レベル70はあるであろうLv2戦闘技能保有者や、純粋なLv3戦闘技能保有者。そういう存在が今はもっと、必要だ。最低で100人から200人は決戦部隊として欲しい。もっと増やせるなら増やせるだけだ。

 

 その事を考えたら効率的に繁殖させるのが一番なのだが、

 

 ……やはり、そういうことをさせられずに居た。

 

 甘いなぁ……と思う。だけどここを曲げてしまえば、そりゃあもう人間じゃなくて、畜生や家畜に対する行いだ。既に人類を駒の様に動かしているのだから、これが個人的にぎりぎりのラインだと思っている。

 

 しょうがないのだが。

 

 それでも、まぁ、幸福を祈る様に、頑張るしかないのだ。

 

 苦笑しながら人類の幸福を祈った所で、

 

「うおおお、だけど俺は姉御が好きなんだ!! あのクリスタル蒼くしたい!! 蒼くしたいのぉ!!」

 

「ふんっ!」

 

 また馬鹿が吹っ飛んだ。そしてそれを助け起こす子がいた。そんな風景を見て、小さく笑い、そうやって馬鹿をして、助けられる様な日常がこの先にある事も祈る。

 

 ……いや、祈るだけじゃダメなのだ。作っていかねばならないのだ。その為には出来る事を自分が一つずつ、手を出して行く必要がある。何せ、現状、魔王と戦って勝てる見込みがないのだ。最低でも0%を1%に作り変える程度の努力はしなくちゃならない。

 

 たぶん、そこが一番大変なのだろうが。

 

「あぁ、なーんでこんな世界に俺は産まれちまったんだろうなぁ……」

 

「それ、儂も思ってる。女王ちゃんと違う世界に生まれたかった」

 

「カオス、少々恐れ過ぎでは?」

 

「いや、だって定期的に儂を削って軍事転用できないか試してくるんだもん。トラウマになるわ」

 

「ごめんね。欠片もごめんだとは思ってないけど」

 

「儂でもほんと苦手」

 

 日光の呆れたような、苦笑するような溜息を聞きつつ、人の営みがこれからも続く事を祈った。




 という訳で人類繁殖計画(愛)

 人類の幸せを祈るウル様。視点が段々人間卒業している気もするけど。
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