※この作品はR-18です。

ルドラサウム転生異聞録   作:てんぞー

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11年

 AV歴11年。

 

 魔王アベルがカミーラを攫う。どうやらカミーラは運命の流れに乗る事にした様だった。これによって歴史は《ランス》と呼ばれる物語と同じ方向性へと進んで行く。もはやその運命の流れを変える事は出来ないだろう。始まってしまったのだ、

 

 【ラストウォー】が。

 

 この時期になると完全にドラゴンの雌が生まれなくなり、謎の奇病でドラゴン・カラー以外の雌ドラゴンも多くが死亡する。ドラゴン・カラーに生殖を求めるも、既に必要な悪魔や天使が揃っている為、ドラゴン・カラーが生まれてくる事さえもない。つまり、新しいドラゴンを産む事が出来るのは全ドラゴン中、カミーラだけになった。そしてそれを保有するマギーホアは正しく、ドラゴンの王となっていた。

 

 カミーラは王冠。欲しければ決闘にて我を討ち取れ。さすれば卿が王である。

 

 マギーホアはそう宣言し、100を超えるドラゴンの挑戦を受けて勝利した。そこには卑怯な行いも、逃げ隠れも存在しなかった。マギーホアはドラゴンの勇者として、そしてドラゴンの王として正しく君臨したのだ。その上でドラゴンを上手く統治している。邪魔が入らなければそのまま、この大陸を統一しただろう。

 

 だがそれに水を差したのが魔王アベルだった。

 

 ククルククルに()()()()トドメを刺したアベルはその返り血を浴びて魔王となり、そして通常のドラゴンを遥かに超える力を手に入れた。だが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()強さだったのだ。そう表現すればマギーホアがドラゴンという種族の中であってもどれだけ絶対的な存在なのかが良く解るだろう。そしてアベルはカミーラを欲した。つまりドラゴンの王冠を欲したのだ。

 

 自分がドラゴンの王として成る為に。カミーラを犯す為に。

 

 だけどマギーホアには勝てない。ならばどうする? その問題をアベルは王冠を盗み、攫う事で解決した。そう、アベルはマギーホアと戦う事を回避したのだ。自分ではあの竜王に勝利する事が出来ないと判断したのだ。そして実際、それは事実だった。アベルはカミーラに言う事を聞かせる為にカミーラを魔人化させ、その影響でカミーラは孕めなくなった。

 

 そして当然の如くその事実にマギーホアはキレた。

 

 そして大半のドラゴンもキレた。

 

 アベルもキレた。

 

 お前ら馬鹿じゃねーのとしか言葉が出ない。全員、面白い様に神が用意した悲劇のレールの上をムーンウォークで疾走していた。どこへと向かっているのか見えずに全力疾走しているのだから、これほど笑えるものもなかった。そして当然、そうやってカミーラを攫われたのであれば、それを取り返す為にマギーホアが動き出す。それを迎え撃つ為にこの10年近く、アベルが備え、育て上げた軍―――つまりは魔軍が動き出す。

 

 カミーラを取り戻そうとするマギーホア筆頭のドラゴン達。

 

 カミーラを防衛し、そしてマギーホアを殺す事で成り代わろうとするアベルを筆頭とした魔軍。

 

 この大陸に存在する二大勢力による戦争、【ラストウォー】が漸く始まったのだ。待ち望んだ悲劇の瞬間は近づいていた。もはやラストウォーが開始された時点でドラゴンの滅びのタイマーは始動してしまった。その事実に誰も気づいていない。誰も気付けない。まさかこの世界が苦痛を生み出す為だけに創生されたのだと、そんな余りにも邪悪すぎる現実を誰もが想像できないから。

 

 故に悲劇のトリガーは引かれてしまった。

 

 

 

 

 そしてそれを堪能できる最前に自分は居た。ククルククルの時は余りにも戦力不足であったため、どうしようもなかったが、魔軍、ドラゴン同士の戦いであればまだ多少活躍する場所もあった。この先、やりたい事を考えるとなるべく経験値を稼ぎたいというのも事実だった。ハニー等のモンスター相手では経験値が足りなさ過ぎる為、魔軍との衝突は絶好の経験値稼ぎの時間だった。

 

「ドラゴンの勇士達よ! 卑怯にも我らの王冠を攫った盗人アベルを許すなッ! 誇り高きドラゴンの姿を卑しき魔軍に見せつけろ!!」

 

 先導するマギーホアの言葉のドラゴンの咆哮が大空を満たす。正面には大地と空を埋め尽くすアベルの魔軍の姿が見える。だがその姿に対して恐怖を感じるドラゴンは一頭として存在しなかった。彼らは偉大なる王であるマギーホアに率いられる限り、敗北する事はないと確信していたからだ。そして同時に魔軍も、魔王の力によって強化された自分たちに敗北なんてありえないと確信し、ドラゴンの連なる咆哮に対して恐れる事もなく、立ち向かう。

 

 それがラストウォーの愚かな景色だった。

 

 破滅が待っていると誰も解らず、仮初の勝利と栄光を目指している。こいつら全員、楽しそうにしているけど将来的には諸とも粛清されるんだぜ? と思うと余りの未来の無さに笑えてくる。とはいえ、戦争は戦争だ。

 

 殺戮も楽しまなくてはドラゴンではない。

 

「ひゃっほぉ―――ぅ!」

 

 マギーホアの号令に合わせて飛び出し、空から大地へと向けて自由落下する様にダイブする。落下している間に魔法を発動させ、

 

「《加算衝撃》! 《高速飛翔》!」

 

 自分に支援魔法をばら撒いて大地に着地する。クレーターを生み出しながら正面に魔軍の姿を捉えて、そのまま、彼らが《ホルス》と呼ばれる宇宙人製の装備である程度武装されているのを確認する。おそらくは魔人メガラスから技術が流れたのかもしれないのだが、まぁ、どうでもいい事だ。

 

「がおー」

 

 可愛らしく吠えながらそのまま、支援魔法によって強化されたドラゴンの肉体で魔軍の先頭に衝突した。肉体が一瞬で音速を超えて、超質量と硬度を誇るドラゴンの肉体が、そのままただの鈍器として発揮される。交通事故によって魔軍を構成しているモンスターがミンチを超えて塵になって消し飛び、経験値ゲット、と心の中で呟きつつ、そのまま魔軍の中を加速した肉体で飛び込み、突き抜けて行く。

 

 大地を四足で走って駆け抜ければそれだけ魔軍の陣形に穴と線が生まれていく。敵が塵くずの様に散って吹き飛んでいくのだから楽しい。どれだけ雑魚を強化しようが、それがドラゴンという種族の暴力に届く事はないという現実でもあった。

 

「はいはい、《見える見える》」

 

 ぺかー、と光が走る。光るだけである。だがそれで態勢を整え直そうとする魔軍のモンスターたちの目が眩み、そして動きが一瞬停止する。その瞬間に他のドラゴン達がブレスやら突進で同じように魔軍を消し飛ばして戦線を確保する。これでアシスト点だな! と胸を張ると、近くにいるドラゴンが此方を見た。

 

「お前……チンコを狩るだけじゃないんだな」

 

「俺の必殺技はチンコが狩られたという結果だけを残すぞ。喰らいたいか」

 

「許して……許してください……!」

 

 無論、そんなものはない。因果逆行なんて神の領域の行いだから当然だ。逆に言えば神様なら因果逆行によるチンコ狩りも出来るという事である。そう考えると神様って実は凄いのでは……? と、錯乱しそうになる。でもあいつら基本的に生物を運営しつつ不幸にするためにしか力を振るわないから考えるだけ無駄だ、無駄。

 

 がっはっはっはっは、と笑う。

 

 楽しい、実に楽しい。戦うとドラゴンとしての闘争本能が満たされて行くのが解る。もっと血肉を、そして悲鳴を求めようと、敵を求める本能が沸き上がってくる。もっと殺したい、もっと強い奴と戦いたい。ドラゴンとして長い間封じ込められていた本能が沸き上がり、闘志と共に魔力が漲ってくるのが解る。

 

 あぁ、もっと手を抜いてだらだらと経験値を奪う程度の戦い方でいいのに、ドラゴンの本能が目覚めてしまっている。全身に力が漲る。気が昂ってしょうがない。

 

 殺したい。戦いたい。心行くまでの闘争が欲しい。

 

 狂気の檻に封じ込めていた本能が目覚めるおかげで、力が沸き上がってしょうがない。今まで道化を演じていたのに、本気になりそうだった。

 

「―――ほう、カラー程度かと思ったがどうやら見どころがあるようだな」

 

「あぁ?」

 

 聞き覚えのない声に振り向けば、横に空を飛ぶことのできない、地竜が並ぶのが見えた。どうやら自分よりも歳を食っている気配があるらしく、どことなく老成しているものを感じる。地竜は此方へと視線を向けるまでもなく、言葉を続ける。

 

「カラー共は怠惰だ。ドラゴンとしての本能を感じ切れていない。連中はドラゴンとしては欠陥品だ。だが貴様はどうだ。感じるのだろう? 闘争本能を。血の昂りを。血肉をまき散らす闘争を求めるその本能を感じるのだろう? 空を見よ、王が戦いを始めたぞ」

 

 言葉通り空を見上げれば、マギーホアが黒いドラゴンと―――魔王アベルとの戦いを他に、魔人化されたドラゴンを引き連れながら繰り広げるのが見えた。超高速でぶつかり合うルビー色と黒い閃光が大空を縦横無尽に駆け抜けながら衝突し合う。武力の頂点とも呼べる戦いが大空では繰り広げられている。アレに混ざるのは無理だと理解してしまうもの、どことなく、男としての魂が羨ましさを感じる。

 

「アレに感じ入るものがあるのであれば、貴様も戦場に立つだけの資格がある―――さあ、来るぞ」

 

 言葉と共に、魔軍の奥から何かが飛翔するのが見えた。

 

 白い残像を残しながら戦場を駆け抜けた姿は、数秒後に通り抜けた後の、最前線に立つドラゴンを必殺した。生物として最上位のスペックを誇る筈のドラゴン、それがまるで紙の様に千切れて死亡したのだ。しかもそれは通り過ぎた後の景色。殺してから死が追いつくまでに時間が必要とするほどの超高速、《ハイスピード》で動く残像が押される地上の魔軍を進める為に出現した。

 

 昆虫を人型にした様な姿に白色の肉体。

 

 それは歴史に刻まれた魔人の一人だった。

 

 最速の魔人、メガラス。異星人ホルスを魔人化させた存在であった。その速度、生物が到達しうる限界を超越したものを持ち、魔人だけではなく全生物を通して最速と言われるだけの速度を持っている存在であった。

 

 経験値を求めるだけであれば、別に、叩く必要はない。魔人化したドラゴンを狙えばそれでも十分美味しい思いが出来る。だがドラゴンとしての血肉は、メガラスとの戦いを求めていた。アレと戦え、そして闘争本能を満たせ、と今まで封じ込めていた強敵との戦いを前に、全力で訴えかけていた。

 

 肉体は雌になれども、まだまだ、魂は熱く燃える男だったらしい。

 

「くくく……そうか、昂るか。ならば言葉はもう必要ないな―――!」

 

 笑い声と咆哮を響かせながら地竜がメガラスへと突撃する。通常のドラゴンを超える巨体と硬度で、メガラスに相対する予定なのだろう。放っておいても良いのだが、いいのだが―――やはり、一時的な、刹那の熱狂に身を任せるのが恐らく、

 

 今は一番楽しい。

 

 どうせ滅ぶのだから、なるべく楽しまなければ損だ。

 

 だから地竜に続き、口を開きながら大きく跳躍し、大地を粉砕し、巻き上げながら言葉を放った。

 

「《粘着地面》!」

 

 メガラスの姿が残像となって消え、それが地竜に衝突した。その衝撃が空気を震わせながら、地竜の巨体を後ろへと押し飛ばした。その瞬間を狙って《粘着地面》が張られた砕けた大地を、尻尾の薙ぎ払いでメガラスの方面へと向かって散弾の様に叩き出した。広げられた《粘着地面》がネットの様にメガラスを捉える為に広がり、襲い掛かる。

 

 だがそれをメガラスが《ハイスピード》で大きく迂回し、回避する。同時に放たれる複数のブレスが地表と魔軍を焼くも、メガラスには掠り傷さえ生まれないどころか影を捉える事さえも出来ない。

 

「《ジャクタイン》! がっはっはっは! まだまだ妨害魔法のバリエーションはあるぞ! と、見せかけて《白色破壊光線》―――!」

 

 存在指定の必中魔法でメガラスの力を削ぎつつ、《白色破壊光線》を放つ。必中である魔法を前にはメガラスがどれだけ速かろうが関係ない。白い閃光がメガラスに届こうとして―――再び、《ハイスピード》で残像さえも消し去った。その後を《白色破壊光線》が追いかける。

 

 だが《ハイスピード》による超加速を前に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というありえない現象が発生していた。嘘だろお前、とメガラスの姿を見失った一瞬、

 

 目の前に、メガラスの白い姿がドアップで見えた。

 

「Oh……」

 

 言葉を続けられるよりも早く、メガラスの一撃が顔面に叩き込まれ、音速を超過する速度を乗せた一撃が体を持ち上げて吹き飛ばした。生まれて初めて感じる、ドラゴンの耐久力を超えるダメージに肉体が痛みを訴え、戦場の大地をバウンドしながら転がされる。それでも《ジャクタイン》の影響で即死は免れていた。

 

 大地に転がったまま、残像を残さず戦場を縦横無尽に駆け巡りながらドラゴンを虐殺し始めるメガラスの姿を見た。

 

「《無敵結界》なしであれなのかー……」

 

 そりゃあ人類も辛いわな、と将来の事を思い出し、考える事を止め、起き上がりながら咆哮を空に、他のドラゴン達の様に響かせながら起き上がった。非常に不本意だが、

 

 ありえない程に楽しい。殺し、殺されそうになるこの刹那の感覚が、ドラゴンとして生まれてきた本能の全てを満たすような感覚で、脳内麻薬がどばどば分泌されているのが解る。ラストウォー勃発にドラゴンの破滅を見たが、

 

 この果てに破滅するのであれば本望じゃないのか?

 

 そう思いながら戦場に戻って行く。

 

 これから45年間、魔軍とドラゴンの戦いは続く。

 

 そしてその果てにラストウォーは終結する。

 

 それが、ドラゴン終焉の時代となる。




 ラストウォー。ドラゴン最後の戦争だからラストウォー。ドラゴンは強すぎた。

 割とAV歴はサクサク進めて行く予定なので、ラストウォーもこれで終わりかなぁ、って感じで。次回は59年まで飛ぶかな? って。

 それにしてもメガラス様の事どうにかならなかったのか、ランス10は。メガラス様、その、もうちょっと活躍してくれたっていいじゃない……。
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