※この作品はR-18です。

ルドラサウム転生異聞録   作:てんぞー

83 / 172
950年 食券 人類

「ル!」

 

 ルドぐるみのスイングで一人が飛ぶ。ルドぐるみの中に仕込んだ魔法が吹っ飛んだ後の人間がソフトランディングできるように調整してくれる。なので吹っ飛んだ人間は空に打ち上げられながら、その姿を観戦者が距離を測る程度の事が出来る程度には、余裕がある。

 

「ド!」

 

 そのままもふんもふんと顔面に叩き込んで、手裏剣の様に吹っ飛ばしながら次に斬りかかってくる連中の顔面をヒットして吹っ飛ばす。回転しながら飛んでいく連中が壁に衝突するのを確認せず、体を大きくスウェイさせながらそのままバッターヒットで吹っ飛ばす。もふん、と音を立てながらヒットされた瞬間に幸せそうな表情を浮かべている。うん、その気持ちはよく解る。

 

「ラ! サ! ウ―――ムッ!」

 

 そのまま連続で前衛を吹っ飛ばす。全員が吹っ飛んだ所で、後衛の魔法使いたちが晒される。その中で一番手の早い子が詠唱を終わらせている。自分の様に極限まで魔法を適応改造しまくっている奴や、或いは《魔法Lv3》による魔力の暴力で忘れがちだが、本来の魔法は詠唱が必要とされる程度には高位の技術だ。知識、経験、魔力の三つが揃う事によってそれを発動する事が出来る。俺は魔力が多少足りなくても、ドラゴンとしての力を応用したり、極限まで個人用にカスタマイズする事で本来は発生する詠唱等を大幅にカットしている。だが通常の人間はそうではなく、

 

「《白色破壊光線》!」

 

「なんで最初にそれを選んだ!」

 

 複数放たれる破壊光線をルドぐるみで叩いて粉砕し、そのまま接近して魔法使いたちをルドぐるみで一人、また一人ともふり倒す。とはいえ、英才教育が効いている影響でルドぐるみを叩きつけようと接近しても、即座に手元の武器や防具でカバーに入ろうとする動きが見える。魔法が使えるから魔法だけに専念させるのではなく、ちゃんと戦士と同じだけの体力をつけるように訓練している彼らは、ちゃんと接近された場合の対処も個人で出来るように調練されている。

 

 とはいえ、自分の様な超越者相手には流石に難しい。

 

 全員、顔面にルドぐるみを叩き込んでダウンさせる。

 

「全滅判定! 全員回復しつつ集まれー。戦犯会議するぞー」

 

「はぁーい……」

 

「負けたー……」

 

「あー、今日こそは一発叩き込む予定だったんだけどなぁ」

 

「がっはっはっは! ガキ共が! 俺から一本取るにはまだまだ早いぞ」

 

 笑いながら吹っ飛ばされた人類勇士たちが起き上がる。年齢は大体15歳前後の連中ばかりになる。つまりは【第二世代】の子達だ。25年以降のお見合いから生まれてきた、人類の最前線を引っ張る子供たちも既に950年になった事で立派な大人になっている頃なのだ。人間の成長というものは早いもんで、もう既に人類の中でもトップクラスの実力を発揮するだけの力を見せてきてくれている。後数年もすれば確実に人類最高峰のクラスにまで成長するだろう。それが50人以上存在している。一度に全員を相手するのは流石に無理なので、一定数のグループの面倒を見て、ローテーションを組んでいるのだが、

 

 みんな、強く、そして逞しく育ってきている。

 

 蒔いた種が芽吹き始めている。

 

 そして既に、早めに生まれて育った、20になって愛を育んでいる子達も居た。【第三世代】の種も撒かれている。段々とだが、人間がその血を濃く、色濃く次世代へと繋げているのが解った。魔人が動き出すまであと30年が存在する。予想外に早い出産と結婚、世代交代、その事を考えると魔王戦争開始までに【第四世代】まで到達出来るのかもしれない。そんな事を考えつつルドぐるみを放り投げて、何時も通りその上に座り込む。

 

「さぁ、戦犯会議始めるぞー。皆で話し合って今日の戦犯を洗い出せー」

 

「せんせー! 戦犯が最初から決まってます!」

 

「簀巻きにしたよー!」

 

「でかした!」

 

「石板いっちょはいりまーす!」

 

「っしゃあ! 戦犯ゲットォ!」

 

 戦犯が正座させられ、その膝の上に石板が載せられ、そこに加重が追加された事によって足に食い込む。ぐおおお、と正座を維持したまま戦犯が頭をいやいやと振っているが、その顔には爽快感が見える。やっぱ人類って馬鹿だわ、と思える。でもそういう人類だからこそ愛しいんだよなぁ、とも思えてしまう。そう思いながら戦犯に拷問を始めつつ、戦闘が終了したので会議を始める。

 

「んじゃ、何が悪かったのか、何をするべきだったのか、話し合おうか」

 

「ウル様のレベルが高すぎる」

 

「俺は強くて当然なんだよボケ。次」

 

「俺が!! 胸にダイブしたくて! 前に飛び出した事が悪いでぇ―――す!!」

 

「過重5倍」

 

「あっあっあっあっ」

 

「なんでアイツ幸せそうな表情しているんだ……あ、リカバリーする上で後続の俺達がちょっと焦ってしまった事が原因かなぁ、って」

 

「悪くないぞ。別段突出した個が突っ込んでいく事そのものは珍しくないぜ。寧ろトップクラスの連中だったらそれぐらいは普通にやる」

 

「……破壊光線系統じゃなくて、1節や2節で詠唱を終えられる素早く、制圧できる魔法を放つべきだったわね……」

 

「後は妨害系の魔法かなぁ……」

 

「グッド。ここら辺の使用感覚は経験しなきゃわからない事だ。実戦じゃその失敗が命取りになるからな。失敗出来るうちに失敗して学んでおくのは悪くはない。うっし、次だ」

 

 気になった事、思った事は小さなことでもいいから口に出して意見を言い合え、と言う。目の前に疲れながらもやる気を見せて座り込んでいる子供たちを見る。話し合っている姿を確認しつついいな、と言葉を口にする。

 

「お前らはまだ若い。まだ15そこらだ。魔人が動き出すのは980年、こっから30年先の話だ。そしてどう足掻いても990年までには決着がつく―――解るか? お前らが積み重ねて生き残ろうとすりゃあ、40年生き残ればお前らも55だ。まだ生きていられる年齢だ。頑張ればこの戦争の終わりは生きて迎えれるんだ。だから努力だけは忘れるなよ」

 

 それが一番大事な事なのだから。

 

 そう伝えれば少年少女たちが拳を握り、頷き、そしてもう一戦を頼み込んでくる。無論、それを否定するような理由が自分には存在しない。生き残る為の、勝利する為の努力ならどこまでも付き合う所存だった。たとえ、そこに思春期の子供らしい、いい所を見せたいなんて理由が混じっていても気にしない。

 

 笑いながらそれを受け入れる。

 

 

 

 

「はい! お疲れ様! 今日はここまで! 次回までに問題点を洗って改善する方法を考えておけよ!」

 

「うーっす……」

 

「はーい……」

 

 ルドぐるみに腰掛けながらぼろぼろのドロドロになって訓練場に倒れている子供たちの姿から視線を外し、その入り口の方へと視線を向ける。そこには人の姿が見える。今日の訓練に参加した子達の親だ。迎えに来たのだろう。ルドぐるみの上で胡坐をかきつつ、子供たちを指さし、回収していいぞ、とサインを出すと歩いて近づいてくる。

 

 26年に子供を産んだとして、その時が20代だとすれば、既に40代後半から50代に入っている。おじさん、おばさんと呼べる年齢に入った第一世代の人類の勇士たちが自分の子供たちを迎えに来ていた。未だに戦場では現役であるものの、この20数年間の間、一緒に戦場を駆け抜けてきた相手が自分を置いて、先に老いていく光景は、

 

 何度見ても、嬉しくも、悲しいものだった。

 

「また派手に負けたな、アレッサ」

 

「こ、今度は勝つから……あ、やっぱ一発ぶち込むだけで……」

 

「揉めた?」

 

「揉めない」

 

「とーちゃんの悲願を叶えろよ……!」

 

「親子2代で何ウルトラ不敬かましてんだよ」

 

「えー、だってー」

 

「あんないい前人未踏のおっぱいあるなら飛びつきたいじゃん? あ、こら、蹴るな! 蹴るなよ! なんだよメリー! いきなり蹴り出してよー!」

 

「馬鹿! ほんと馬鹿!」

 

 その何でもない、普通の姿を見て苦笑を零しながら、軽く手を上げて振って、訓練場を後にする。自分もそこそこいい汗を掻いたし、風呂の準備でもルシアにさせるか、何て事を考えながら訓練場を出れば、

 

 近くの広場でまだ鍛錬を続けている姿が目に入った。JAPANの武士で―――既に、年齢は60代に入りつつあった。髪は白く染まり、顔にもしわが増えている。それでも刀を手に、ひたすら何度も何度も、同じ動作を繰り返している。鍛錬する様に同じ動作を繰り返し、

 

 繰り返し―――勝つ為に、強くなる為にまだ、鍛錬を続けている。

 

 30年前に同じ会議場で罵り合っていた彼の相方は、既に死んでしまったのに。

 

「む、これはウル殿」

 

「おう、精が出るなミツヒロ」

 

「いやぁ、まだまだで。俺も頑張っていますが、それでも最近の若者も結構良い物が揃っていて。とはいえ、死ぬ時は戦っている時と決めているので、まだまだ刀は振るうつもりですがな」

 

 かっかっかっか、と武士が笑う。髭を生やし、歳を取り、昔はあったような勢いは、静かな闘気の様なものへと入れ替わっている。だがそれでも活力は変わっていない。言葉遣いは成長する事で変わり、人からの見られ方や、人への接し方は変わっても、それでも根本的な戦士である部分に変わりはなかった。

 

 だがそんな姿を見ていられるのもそう長くはない。

 

 後10年も生きる事は出来ないだろう。

 

 上半身をはだけさせながら刀を振るっていたJAPANの武士は刀を納刀すると、片手を顎へと当て、髭を擦る。

 

「昔の俺は、ウル殿を見て長生きするというのは、なんて羨ましいものかと思ったものでしたが―――いやぁ、長生きはするもんではないですなぁ、これは。迎える悦びと、見送る悲しみはこう、言葉にはし辛いものがありますな」

 

「そうだな。お前も、すっかりしわが出てきたなぁ……お前を見送る日も近そうだ」

 

「うむ。その時は息子と孫を宜しく頼み申す」

 

「任せろ。魔軍との最前線に叩き込んでやるから」

 

「うむ」

 

 侍と軽く言葉を交わしながら別れを告げ、そこから城塞都市内部をルドぐるみに乗ったまま、道路を進んで行く。日が暮れ始める時間帯、対魔軍城塞都市ククルを進んで行く姿は自分一人だけではなく、他にも鍛錬を終えた者や、仕事帰りの姿が目撃出来る。或いはシフト故にこれから出勤する姿も目撃出来る。そう言う姿が歩きながらルドぐるみの上に座っている此方の姿を見て、笑いながら手を振ってくる。

 

「ウル様こんばんわ」

 

「おう、お疲れ。足引きずる様だったら医務室に早めに行っとけよ」

 

「ウル様帰りっすかー?」

 

「雛鳥共の調練だよ。明日はお前のガキの面倒を見るから脅迫しとけよー」

 

「お疲れ様ですウル様!」

 

「おう、お前もな! 今日は東区の焼き鳥屋が新メニューを出すつってたから試すと良いぞ」

 

 通りすがる人たちに挨拶をしながら、司令部へと戻って行く。そこには見覚えのある顔が多い。普段から良く接しているというのもあるが、俺がちゃんと、一度は接した事のある奴を覚えようとしているから、というのもある。俺の意思で、俺の命令で、死んでもらう連中なのだから。

 

 俺が覚えておかないと、余りにも報われない。

 

 だから覚えて、使い潰す。

 

「……」

 

 ルドぐるみに乗って、司令部にそのまま戻るのを止めて、飛行する。そのまま高度を上げて司令部の上の方まで移動し、屋根の上まで移動するとそこで飛行を停止し、軽く、城塞都市全体が見渡せる位置まで移動した。

 

 そこから夕陽色に染まる城塞都市の姿を眺めた。

 

 整備された区画にククルククルの亡骸を利用して建造された、移動型の超堅牢な防壁。爆発的な人口増加に合わせ、都市ククル内部では年々スペースを確保する為に上下に都市を広げて建造して行く様に拡張されて行き、一つの巨大な山の様な姿へと変貌し続けている。だがそこに生きる人々は、全員が必死だ。

 

 こうやって夕陽の時に街を眺めれば、人々の姿が良く見える。

 

 子供を連れて晩御飯を食べに行こうとする家族や、親子で剣を振るって戦い方を教える姿、明日の計画を話し合う姿や、仕事が終わって酒場へと向かおうとする姿が良く、見える。

 

 既にここはひとつの大都市としての姿を生み出していた。ランス、そのシリーズには記されていない、そして未来まで確実に残るであろう、闘神都市よりも遥かに巨大で、人類の力を集結させた決戦用の都市が。

 

「―――今更怖くなったのか?」

 

 背後に気配を感じる。マッハの気配だが―――言葉的にはハーモニットだろうか。だからその言葉に小さく笑いながら答える。

 

「そりゃあ怖いさ。俺が努力すればするほど、段々と未来が変わってくるんだ。そうすれば俺が保有している情報のアドバンテージなんてなくなってくるんだ。暗闇の中をランプなしで歩き回れって話だろうからな」

 

 振り返る事無く、答えつつ、苦笑する。

 

 だけどそれが当然の事なのだ。

 

 未来を知っている。知識がある。

 

 だけどそれは誇る事なのか? そりゃあ違うだろうよ、と思う。

 

「与えられたものに甘えてのうのうと生きるだけの存在にはもう、なりたくはないよ。怖いけど……それでも同時に、自分でも知らない世界が広がっているんだと思うと、それが楽しみでしょうがないさ」

 

 だから、だろう。

 

 俺が冒険を好きになったのは。

 

 まだ知らぬ大地、知らぬ出会い、未知の出来事。それを求めていたのだ、心が。自分の知らない、新しい出来事や物事を求めていた。それを見るのが楽しいという事を知っていたから。

 

 だからその楽しさを教えなくてはならない。

 

 生きるだけで、割と人生は楽しいという事を。

 

 それを、今も必死に生きている人類の勇士が、その生活の中で、自分に伝えてくれる。この夕陽の色に染まった都市の色と、黄金色に輝く人間たちの魂の輝きはどこまでも美しく、

 

 そして見ていて飽きない景色だった。

 

 神々を除けば……今、この時代でのみ、自分だけが眺める事の出来る特権だった。




 食券で人類勇士を選択。まだまだ未来はあるし、前の連中も残ってる。それでも世代交代は必須で、そうすれば自然と一緒に戦っていた奴も。

 最終的に戦争の肝は数にあるから、人類が強くならなきゃどーしようもない。とはいえ、人類も停滞期を超えて歩み出している。

 まだまだ食券。次はだーれだ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。