※この作品はR-18です。

ルドラサウム転生異聞録   作:てんぞー

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98X年 戦況報告

石丸ゥゥゥゥ―――!!

 

うるせぇ! 邪魔だ! 死ね!!

 

 言葉と共に《ガンマ・レイ》を放った。重力砲撃が黒部を追いかける生まれては死に続ける妖怪もどきに衝突し、穴を穿ちながら消し飛ばす。だがそれは黒部の体から溢れ出す妖気によって直ぐに新たな妖怪を生み出し、埋められる。ファック、と叫びながら次の魔法を放つ為に距離を空ける。ガイが既に前に出てカオスを握り、《無敵結界》を破壊する為に出ている。だがただそれだけではなく、

 

 今、完全オープンなうし車に乗っている。魔法、射撃、砲撃が行える後衛戦士たちをオープン型の荷台のうし車に乗せて、戦闘行動を行っている。相手は魔人黒部。動く災害そのものである。ひとたび動き出せばオロチの牙から生まれた妖怪、黒部はその力を以て妖怪を自分から生み出す。本来の黒部なら不可能だ。だが魔人化し、その能力が鍛えられた黒部は、

 

 一人で、軍団の役割を果たす。

 

 つまり魔人黒部との戦いは、魔人黒部という軍団との戦いになる。少なくとも、黒部の背後に存在しているのは()()だ。黒部の背後には生まれたばかりの異形の妖怪が出現する。そしてその妖怪を踏み潰す様に妖怪が生み出され、それが無限に続く。そうやって災害としか表現できない魔人黒部と妖怪の津波が生み出されるのだ。それだけで黒部は人間を蹂躙出来てしまう。直接戦闘する事さえ難しい。それこそあのムサシの様なリーチ無視の攻撃が行えない限りは。

 

 だが幸い、魔人黒部は発狂している。発狂している為、敵味方の区別がつかず、一度暴走すると条件を満たしたものを発狂がある程度の小康状態に持ち込まれるまで、ひたすら暴れ続ける。だが逆に言えばそれは誘引できる相手でもある、という事だ。つまり、JAPANだ。

 

 JAPANの馬鹿共はやりやがったのだ。

 

 黒部の興味を、刺激する様子が何であるかを長年調べ続け、そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。やっぱ頭おかしいよJAPANは。なんで魔人をハメるパターンを作れてんだよおかしいだろ。そう思うが、

 

 ここでは有効活用させて貰う。

 

「―――硬いな」

 

 ガイが黒部に到達した。カオスを振るっての斬撃が黒部に叩き込まれ、音と共に《無敵結界》が割れる。そして一切足を止める事のない黒部の巨体と、その妖怪大津波にガイが飲まれそうになる瞬間、

 

 その姿が消えた。

 

「はい、回収完了!」

 

 直後、背後からハンティの声と着地の足音が聞こえる。作戦通り、ハンティがガイを《瞬間移動》で回収してきたのだろう。寿命設定が消えた魔人であるガイだからこそ出来るコンビネーションでもあり、

 

「《無敵結界》が消えたぞ! ぶちかませ! ゴーゴーゴー!」

 

 殺せぇ、と怒号が入る。魔人に対する殺意と憎悪は中々凄いものがある―――一部JAPAN軍の者が槍を手に飛び出して黒部に突き刺したら全力で走って戻ってきている。なんだあの変態いつの間にそんな珍種生まれてきたんだ? そんな事を思いながら黒部を国境方面から引き剥がす様に方向転換させ、

 

 違う方向へと誘導する様に、うし車を走らせ、その上から魔法や射撃武器を連射する。それが黒部の対処方法だ。そしてそれに従う様に大量に持ち込んで魔力回復用のアイテムや矢玉、異世界から持ち帰ってきた爆弾の類を使用して迫ってくる黒部の姿を爆撃しながら引き離そうとする。

 

 だが食らいつく。

 

 ひたすら食らいつく。発狂し、異形の姿を見せ、血の涙を流しながらかつての友との栄光を夢見て、石丸が死んだという事実から目を逸らして逃げ続けている。そうやって妖怪王黒部は魔人黒部として全てを蹂躙する。

 

「めんどくせぇ奴だ―――《ガンマ・レイ》ッ! もういっちょ! 更に追加! サービスだ!」

 

 連続で破壊光線をぶち込む。正面の空間に爆裂を起こしながら空気が揺れるのを感じ、自分以外にも《黒色破壊光線》や《白色破壊光線》が放たれて行く。それが間違いなく《無敵結界》を失った黒部の体にヒットし、穴を開けて貫通している筈だった。

 

 だがそれは即座に黒部の規格外の妖気によって埋められ、再生させられる。

 

「ファ―――ック! 心臓がぶち抜かれたらちゃんと死ねよ!!」

 

 中指を突き立てながら黒部の方へと向かってそれを見せる。だが当然のように黒部は発狂したまま、此方の軍団を追いかけて来る。めんどくさい敵だった。

 

「GL大魔法ぶち込んでやっても良いけど即時発動はクリスタルか覚醒前提だし、それ抜きにしても詠唱に時間がかかるし、となるとこいつの足を止めるのはドラゴン案件なんだよなぁ……」

 

「まぁ、ウチの馬鹿共だったら《無敵結界》さえなければ焼き払えるよね」

 

 問題はドラゴンに頼り過ぎると()()()()という事だ。トロンの二の舞という訳ではなく、あまりドラゴンの火力を頼りにしていると、人間がその強さに慣れてしまうのだ。そして火力をドラゴンに任せてしまう。そうするとドラゴンを封じられた時に、火力を一気に制限されてしまう事でもあるのだ。その事を考えると、極力こういう場面ではメインプレイヤーの力のみで切り抜けるのが理想的だ。

 

 人類の育成は続く。

 

 魔人を教材にする女王なんて、俺ぐらいだろうが。だが経験値稼ぎはこれが一番効率が良い。対策を練った上でメタを張って餌にするのが一番いいのだ。魔人は確かに強いが、それでも《無敵結界》抜きの話なら、純粋な強さは此方の方が上という部分もある。本当に大変なのは、魔血魂を与えられた事によって本来よりも遥かに凶悪化されたその能力等の方だ。

 

 たとえば魔人レイの《レイ体質》とか。

 

 この魔人黒部の妖怪大津波とか。本当の魔人の厄介さはそこにあるかもしれないと言える。今見えている黒部も、魔人化したことで不死性と軍団戦闘能力を獲得している。それに比べ、此方の面子は今回の作戦用に数百人増員しているだけで、そこまで数は多くない。

 

「はい! じゃあ軍師諸君! 作戦立案宜しく! 判断材料は俺とハンティの麗しい姉妹愛パワーで頑張れば倒せるけど倒れるぞ!」

 

「姉妹愛パワー」

 

 ハンティが後ろで笑っている。うるせぇ、姉妹愛はあるだろお前。振り返りながらハンティの頬を引っ張ってやりながら、並走するうし車に乗っている軍師連中に作戦を考えるように指示を出す。《戦術Lv2》が居るおかげで、自分が考えるよりも的確な指示を出してくれる味方がいるのは、実にありがたい話である。《ガンマ・レイ》を乱射して追いかけて来る黒部の足場を破壊し、走るスピードを無理やり削りながら距離を稼ぐ。うし車も無限に走り続けられる訳ではない。このペースで一日中付き合っていれば、そのうち、うしの方が疲れて潰れる。

 

「ここは逃げの一手ですね。ここで無理に黒部を討伐する必要はありません」

 

 軍師の言葉にブーイングがJAPANサイドから跳んで来る。そんなに戦いたいのかお前ら。そう思いながら軍師の言葉に耳を傾ける。

 

「その心は」

 

「このまま黒部を魔軍まで牽引してぶつけましょう。物資が節約できます。相手の戦力で相手の戦力を削れます。ついでに相手が行う黒部への対処法も観察できます」

 

「採用」

 

 サムズアップを向けて素早く続く指示を出す。現在魔軍による侵攻が行われている場所を地図で確認しながら、うしに回復魔法をかけて使い潰すつもりで走らせる。追いかけて来る黒部を確認し、距離を空け過ぎないように注意しながら―――レースを続行する。

 

 魔王城がある方角へと視線を向け、呟く。

 

「……これじゃあ、魔王城へのルートも作れねぇな」

 

 この時代、その決戦へと向けた準備を、これでは進められない。

 

 

 

 

GL980年

 

魔王戦争状況報告

 

≫≫≫≫≫≫≫≫

 

 魔王戦争、本格開戦。920年より続いている魔軍との衝突は魔人の投入によって本格的な様子を見せ始める様になった。これまでは拮抗状態にあった人類と魔軍の戦争も、魔人の投入によってその姿を僅かながら変えるようになった。60年間続いた戦いがついに、魔軍側からの動きによって変化を見せ始めていた。最初に投入された魔人は魔人レッドアイと魔人レイであるものの、女王ウル・カラー率いる【撃滅隊】の活躍により前線を突破する事なく魔人は追い返された。これにより人類には魔人を追い返すだけの戦力がある事が証明され、魔人を同時に二体、相手しながらそれを撃退するという偉業を刻む事になった。

 

 だがこれを受け、魔軍の動きは本格化された。魔人レッドアイと魔人レイが撃退された事によって魔王ジルの命令により、魔人メガラスが制空権を魔王領を中心に獲得する事となった。これにより、魔王領上空におけるドラゴンと魔人メガラスの間で壮絶な制空権争いが常に発生する様になる。《無敵結界》を擁する魔人メガラスを突破する方法がドラゴン達には存在せず、地上に降りてくる事のない音速で飛行し続ける魔人メガラスの《無敵結界》を突破する方法もなく、制空権は完全に魔人メガラスによって押さえられる。これにより人類側は魔王領内での制空権を完全に喪失する。主戦術であったドラゴンを使った空爆による残敵掃討が魔王領内では使用不可となる。

 

 また同時に魔王領内を不規則に徘徊する魔人黒部の姿が発見される。時折壊れたように咆哮する黒部は人間を見かけると、執拗に妖気を放出しながら追いかけてくるという性質を兼ね備えており、他の魔人や魔軍が近づかない事から、一種の独立した警備として運用されている事が理解された。魔王による制約か、魔王城から一定の距離の大地を縄張りとしているようで、そこに縛られたかのように徘徊しており、目標を見つけると大地を蹂躙し、敵味方関係なくある程度が狂気が収まるまでは永遠に追いかけてくるという、半自動的な存在に成り下がっていた。もはやそこに、かつて藤原石丸と大陸を駆け抜けた妖怪王の姿は見えなかった。

 

 故に地上と空、両面から人類は魔王城への道を制限されていた。人類には明確なタイムリミットが設定されている。それは勇者カムイが勇者としてのあがりを迎えるまでの時間になる。勇者という存在は最大戦力であると同時に、時限式の最強でもある。それ故に、人類の大戦略は自然と一つに集約される。なるべく勇者を魔王を倒せる状態にまで育成しながら、空、或いは陸を突破する方法を見つけ、精鋭部隊で魔王との戦いに決着をつけるという事になる。

 

 その為に一つ、制空権をメガラスから奪う事で、魔王城まで決戦部隊を空輸するという手段を得るか、或いは黒部を撃退する事で地上ルートを確保するか、という事が人類の課題として立ちはだかった。

 

 またそれとは別に、他の魔人も存在している。純粋に興味がないのか、命令を出されていないのか、或いは何らかの作業によって前線に出て来る事が出来ないのか、どちらにしろ、魔王ジルは歴代の魔王よりも大量の魔人を抱えている。故にまだまだ、出現した四体の魔人は魔軍が抱える、戦力の一部でしかない事を人類は認識しなくてはいけなかった。

 

 

GL981年

 

魔王戦争状況報告

 

≫≫≫≫≫≫≫≫

 

 魔人ラ・バスワルド強襲。ラ・バスワルドが最前線に登場し、援軍や救援要請が前線から届く前に、僅かな時間の間に人類軍が構築した前線基地の内3つを根元から抉り消し飛ばした。人類と魔軍の最前線を監視する基地が消失する。これにより、一時的に国境に存在する魔人に、魔軍に対する抑えが消える。そしてそのままラ・バスワルドが進軍を開始する。だがこの行動は人類の防衛が行われる前に撃退される。

 

 魔人となったブリティシュがここで、歴史の中で初めて登場する。

 

 《ガードLv3》を擁するブリティシュはラ・バスワルドが誇る消滅の神光を完全遮断しながら1対1で戦い、数日間の戦いの果てに引き分けて撤退へと追い込む。幼い外見の使徒を連れた魔人ブリティシュは魔王の絶対命令権に引きずられる事もなく、ラ・バスワルドを撤退させた。そこから魔人ブリティシュは人類軍と合流する事もなく、ラ・バスワルドとの戦いの直後、幼い外見の神官の使徒に支えられた状態で戦場から姿を消す。

 

 前年発覚した魔人の支配域、そしてその脅威に付け加えてラ・バスワルドという生きた殲滅兵器を前に、人類は明確に苦境へと押し込まれていた。魔王戦争、その開始は華やかな様に見え、

 

 事実は一つ―――まだ、魔軍は本気ではなかった、という事だった。




 空はメガラス。地は黒部。そして進軍用の陣地を構築すれば、それをバスワルドが破壊する。なおそれで終わらず機械などを頼った場合はレッドアイで乗っ取り、対策なしで大軍を並べるとアイゼルで洗脳して奪う。

 何をどう足掻いてもクソゲー。

 彷徨うブリティシュ。
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