※この作品はR-18です。

ルドラサウム転生異聞録   作:てんぞー

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981年 作戦フェイズ

「ラ・バスワルドから対処するか」

 

「正気っすか」

 

「いつ誰が俺が正気だって保証したんだよ?」

 

「自分から狂気を証明していくストロングスタイル……!」

 

 司令部、作戦室に【撃滅隊】の面子を集め、何をするのかを口にした。軍師のレビンは眼鏡の位置を調整しつつ、此方へと説明を求めるように視線を向けてきている。表情からして理由自体は解っているだろうが、納得の為に此方からの説明を要求している、という表情だ。まぁ、愚民に求められちゃったらウル様、ちょっと張り切って説明しちゃおうかなぁ! って気持ちにはなる。ほら、ウル様だし。まぁ、それはともかく、作戦室での話はとても簡単だ。

 

「アレ、うざい。落とさないと前線から踏み込むルート確保出来ねぇ」

 

「まぁ……それに尽きますよね……」

 

 滅茶苦茶簡単な話だ―――あの女神が存在する限り、魔王領への侵入ルートが存在しないという事実だ。全てはそれに尽きる。

 

「ここから国境までに軍隊を動かすとなるとそれなりの距離と時間を必要としますからね。その間に察知されるのも、邪魔されるのも問題ですからね」

 

「うむ。アレ邪魔だわ」

 

 ラ・バスワルドに張られている限り、此方は魔王領に対する大規模な軍事行動を取る事が出来ない。まぁ、満ち潮を待って海からルートも悪くないんだが―――そっちルートの場合、ケイブリスを相手にする必要がある。ジルめ、間違いなく俺がそれを嫌がるのを察してケイブリスを配置しているだろう。となると正面だ、正面以外道はない。ラ・バスワルドを倒して、前線基地を構築する。

 

 そこから黒部を突破し、ルートを確保する。これしかない。問題は簡単だ。

 

「バスワルドとの戦闘経験はねぇぜ。カムイの勇者をフルスペックで運用できねぇ」

 

「すみません……」

 

「気にするな。一回当たれば問題ねぇ」

 

 カムイの頭を撫でる。勇者になってから2年が経過し、今では15歳となった。地球であれば中学生とも呼べる年齢だ。このククルでも、戦場にぎりぎり出る事の出来る年齢になっている。15歳にもなると、トレーニングの成果が体に見え始め、まだ若さのある中に逞しさを感じる様になる。この少年も戦場に出て、一緒に戦う仲間の死を感じ取り、敵を殺し、そしてそれでも明日へと向かって行く事を経験した、勇者へと成長している。

 

 うん、可愛いもんだと思う、皆。

 

「そ、その、頭を撫でて貰うのは嬉しいんですけど、恥ずかしいと言いますか……」

 

「がっはっはっはっは! 遠慮なく撫でられろ撫でられろ!」

 

「哀れな……」

 

「同情するわ」

 

 まだ若いから子供らしく扱えばいいと思うんだけどなー。まぁ、1000歳にもなってない奴は大体子供に見えるんだが。それはともかく、勇者特性は初見の攻撃に対しては効果を発揮しないという弱点が地味に存在している。よって奇襲で殺す事も一応は可能だったりする。そしてラ・バスワルドは今の所()()()()()()()()()()()()()()()()()という驚異の魔人なのだ。彼女が破壊した、というのが解るのは緑と黄金の光が現場を喰らい尽くした痕跡が残っているからと、遠くからでもその極光を確認する事が出来るからだ。滅茶苦茶解りやすく破壊しているから解るのだが……だからといって、具体的な戦闘手段が解る物でもない。

 

 俺も1回だけぶつかった事はあるが、あれは逃げるだけだったし。

 

「―――魔人ラ・バスワルドか」

 

 壁の華として今まで沈黙を守っていたガイが口を開く。そこにハンティが視線を向けた。

 

「そいやアンタの元同僚だったよな。どうなの、魔人ラ・バスワルドってのは」

 

「そうだな……体だけなら最高なんだけど中身がまるで―――こほんこほん、失礼。俺の率直な意見をだな―――ごほんっ、失礼ッ!!」

 

 ガイの一人漫才を全員で眺め、しばし無言で見つめる。少し恥ずかしそうにガイが視線をそらし、こめかみを指先で叩きながら何やら魔法を使っているのが解る。無理矢理バッド・ガイの方を抑え込んでいるのだろう。本当にフリーダムだよなぁ、あっちの方は。自分は割と嫌いじゃない。

 

「……魔人ラ・バスワルドは元は神だった……その事に関してはそっちの方が知っているだろうし、経歴等に関しては省こう。元が元だっただけにラ・バスワルドにはすさまじいまでの破壊の力が備わっている。ジルが与えた仮想人格、今は一つの人格として完全に馴染んだそれは()()()()()()()()だ」

 

「人格が?」

 

 隊員の質問にガイが頷いた。

 

「ラ・バスワルドは元々魔王よりも恐ろしいほどに強い存在だった。そして魔血魂を与えられ、魔人となった事で()()()()()()()()()()()()()だ。それによって今のバスワルドは準魔王級の能力しか保有していない。いや、純粋な破壊という側面においてはある種バスワルドの方が上かもしれないな」

 

「元が二級神だからなぁ、アイツ……」

 

 つまり元は魔王にやや負ける程度でほぼ同格なのだ。そりゃあ強いに決まっている。しかも二級神は一級神の一個下のランクになる。一級神になると生物による討伐は不可能なラインになるのだから、それに準ずる存在になっているのが二級神でもある。弱いわけがない。

 

「ラ・バスワルドは日常的にはどう表現するかと言えば……うむ……なんだ……」

 

 ガイが困ったような表情を浮かべている。中々珍しい光景だった。

 

「どうしたんだ魔人の旦那?」

 

「いや……元同僚の名誉を守るべきかどうかを考えてな……」

 

 魔王城でぶっ倒れていたラ・バスワルドの姿を思いだし、俺も片手で顔を塞ぐ。昔、死国で見かけた時は間違いなく格好良かったんだけどなぁ、あの子……。想い出とは何時だって汚れるものだろうか。まぁ、ゴーサインをガイに出しておく。それを受け取ったガイは解った、と頷いておく。

 

「ラ・バスワルドは―――」

 

「は?」

 

 返ってくる言葉にガイは一瞬だけ、言葉を溜め、

 

「―――馬鹿だ」

 

「馬鹿」

 

「あぁ……それ以外に形容する言葉が見つからない」

 

 ガイが本当に困った顔をしていた。

 

「服を着るのは面倒だと全裸で徘徊する」

 

「全裸」

 

「そして裸を見られると逆上する」

 

「逆ギレ」

 

「そしてなんで服を着てないんだと頭を悩ませる」

 

「魔、人……?」

 

 それ以外にもガイの口からラ・バスワルドの残念エピソードが出て来る。下戸の癖に酒に挑戦してしばらく寝込む。魔王城で迷子になって泣いている姿を発見される。何もない所で転んだらそれを敵の攻撃だと思って魔王城を半壊させた。

 

 誰かがそれを名付けた。

 

 ポンコツ破壊魔人ラ・バスワルド。

 

「……居るのね、魔人にも徹底してダメな奴って」

 

 ガイがその言葉に深く頷く。だがそれで話が終わる訳ではない。事実、自分たちは既に知っている筈だ。ラ・バスワルドという破壊神が巻き起こした数々の破壊の痕跡を。ポンコツなだけだよ、で終わってくれないのが実に面倒な話である。だからガイが、そこからは真面目に話を続けた。

 

「だが魔人の名は偽りではないし、破壊という面だけに於いて最強という言葉も間違っていない。ラ・バスワルドには()()()()()()()

 

「スイッチ?」

 

「あぁ……自身に対する害意や多大なストレスを感知すると()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というものだ。つまりはジルが植え付けた人格を一旦眠らせる事でセーフティを外しているという事になる。本来の破壊の神として対象を完全に消し去るまで止まらなくなる。そしてラ・バスワルドがこれに失敗した事は今まで、一度もない―――だからアイツ、今も地味に処女の筈なんだよな」

 

「成程なぁ」

 

 ガイが一人漫才を始めるのを眺めながら、納得する。ラ・バスワルドの人格のオンオフを切り替える事によって、ジルはラ・バスワルドを戦闘では制御しているのだろう。ジルの事だろうから、あえてラ・バスワルドにポンコツ的な人格を植え付けている可能性もある。仮想人格を魔法で―――AI理論だろうか?

 

 そう言えば昔、魔道具にAIを搭載する事で動きを半自動化する研究を口にしたことがあった。

 

 ……アレがラ・バスワルドの人格構築に運用されたのだろうか?

 

「ごほん……ラ・バスワルドが本気を出すと()()()()()()()()()()()だろうな。彼女が操る力とはそういう類だ。生物の強度なんて関係なく、ただ単純に破壊して消し去るだけ。そういう存在だ」

 

「逆に言えばそのスイッチってのが入る前に殺しゃあいい、って事か」

 

「そういう事だ」

 

 ガイが頷くがそれ、そこまで簡単な話じゃないだろう、とも思う。スイッチは恐らく条件を満たせば自動的に入るものだろうと思う。攻撃すればそれに即座に反応して攻撃してくる可能性が高い。となると暗殺か奇襲も―――あぁ、対策されていそうで怖い部分がある。となるとこれは、もう、

 

「……一応、ラ・バスワルドの破壊の力が光属性由来の力ですので、なのでウル様の《UL体質》でラ・バスワルド相手に正面から戦うという手もあります」

 

「この場合、範囲広げて守るのに集中するから俺は手を出せないけどな」

 

 《UL体質》は極まった個人の体質だ。つまり俺もドラゴンという理不尽な生物としてのステージを登っている、という事の証でもある。ドラゴンとしての光と重力を操る力、それが成長した結果、光と重力に関する攻撃、干渉を自分の意思でシャットアウト出来るというものだ。それを魔法を使って生体力場として拡張する事で広範囲を《UL体質》でカバーする事が出来る。つまり、味方も《白色破壊光線》や《AL大魔法》から守る事が出来る。

 

 こうすれば破壊光や神光から仲間を守る事が出来る。

 

「とれる作戦は二種ですね―――ラ・バスワルド相手に奇襲してそこで仕留める。もしくは正面から我々で倒すか……」

 

 ガイの方へと視線を向ける。それを受けたガイは頭を横に振る。

 

「どちらも等しく難易度は高い。だがラ・バスワルドを倒す事はどこかでぶつからなければならない事でもある。その事を考えたら早いか遅いかだ―――何時も通り、私はお前の指示に従う」

 

 ガイが判断に困る様な事を言う。そしてすぐ横には目を輝かせながら任せてください、と言わんばかりの勇者が見える。室内の他の勇士達も、此方の判断を待っている様に見える。うーん、と黒腕を生やし、それで腕を組みながら考える。とれるルートは二つ、奇襲か正面突破か。奇襲する事に成功すればそのまま黒部まで殴りに行ける余裕がありそうだなぁ、と思える。でも魔人の撃破は間違いなく相手を警戒させる要素でもあるし、

 

 悩みどころではある。だがどれで判断するかと言えば、

 

ルート ラ・バスワルドを奇襲して倒す

 

ルート ラ・バスワルドを正面から倒す

 

「―――良し、正面から倒すか」

 

 決断を下した。ガイの話を聞く限り、今のラ・バスワルドは昔程ではないものの、それでも十分に脅威と言える性能をしている。神だった片鱗を引き継いでいるようだし―――このまま、奇襲したところで本当にそのまま殺せるか怪しい。だとしたら正面から戦って、勇者に経験値を積ませて、その上で撃破するのが最も勝算のあるやり方ではないのだろうか、と判断する。

 

 奇襲という戦術も、ハマる時にはハマるのだ。ただしラ・バスワルドという相手を考えると、消滅バリアみたいなのを張っていてもおかしくはない様に感じるんだよなぁ、と思う。その場合、なすすべもなくカウンターで消し飛ばされるというか。

 

 まぁ、そんな未来が見えたというか。

 

 【鬼畜王】であればラ・バスワルドは魔人化の影響で弱体化している為、まだ倒せたのだが―――それが此方でも通じるかどうかは解らないのだ。

 

 ジルが大きく動いた結果、既に本来の世界とは大きくその行方を変えているのだから。もはや【ひつじNOTE】を眺めるだけで解決方法を見出せるわけではなくなってしまった。まだ確かにこれらのメタを通した知識は通じるが、それでも今、ジルは明確にそれらの知識が通じない様な相手を使って攻めている。そして知識が通じる相手を、此方からメタを張れる相手を温存している。

 

 やや不安は残るが、それでもやらなくてはならない事なのだ。

 

 なら決断して、行動するまでだ。

 

「うっし! それじゃあお前ら出立の準備だ! まずはラ・バスワルドを釣り上げるぞ!」

 

「良し来た!」

 

「さて、それじゃ道具の準備でもしようかしら」

 

「相手は元神の魔人か。へへ、こりゃ期待できそうだな」

 

「光……なら闇属性が通りそうか? 色々と用意してみるか……」

 

 【撃滅隊】の面々が準備に入るのを確認しつつ、此方も軽く息を吐く。ラ・バスワルドの事を考えつつも、思い出すのは前にジルが零した言葉だった。

 

「……予行演習……予行演習、か」

 

 これではまるで【魔人討伐隊】の様だな、と誰にも聞こえないように呟きながら魔人ラ・バスワルドを攻略する為の行動を始める。




 という訳で正史には存在しなかった最上級魔人、ラ・バスワルドと戦おう。

 サイゼル体質を持ってるぞ! ハウゼル体質も持ってるぞ! 神のパワーもあるぞ! 魔人パワーもあるぞ!

 ぼくのかんがえたさいきょうの魔人とも言えなくもない。
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