「―――JAPAN、源ライコウ、酒呑童子を借り受けた【聖刀日光】にて完全討滅する事に成功した。この恩と事前の契約に従い、これよりこのライコウ、【撃滅隊】に参加させていただきます」
「よく来た。お前の事を待っていたんだ」
JAPANが生んだ《剣戦闘Lv3》と《弓戦闘Lv2》に《槍戦闘Lv2》、これに加えて《陰陽Lv2》まで保有する、
20代の男はJAPAN武士風の袴姿に甲冑を軽く装着している、人間時代の日光の様な恰好をしている。その功績は、自分は日本でも聞いた事のあるものであり、この男が成し遂げた事はその伝説に近い。JAPANという土地だけはどうやら日本とある程度歴史がリンクしている様にも感じられるのだが―――まぁ、そこは置いておく。鍛えられた肉体を持つ、男は、弓、槍、瓢箪、そして日光を装備した状態で膝をつき、そして深々と礼を取った。
「参戦遅れ、誠に申し訳ありませぬ」
「あぁ、いや、遅れて来る理由は解っていたから参戦してくれるだけ嬉しいよ、こっちとしては」
「えぇ、おかげで後顧の憂いなく参陣出来ました」
日光がライコウの鞘から言葉を送ってくる。現在の日光のユーザーであり、そして日光も同じJAPANの武士であれば、と使われている。日光の貸し出し理由は純粋に、《剣戦闘Lv3》に見合うだけの武器がなかったのと、それをフルスペックで扱える人間が欲しかったという二つの理由であり、JAPANでは妖怪王黒部が魔人となってJAPANから離れた後から、妖怪たちの無秩序な環境が構築されている。それを片っ端から殺して回っているのがライコウだった。
彼が一種の妖怪たちに対する抑止力としてJAPANに存在していた。そりゃあ妖怪を片っ端からソロでターミネイトするようなキチガイがいれば妖怪共もビビるに決まっている。
だけどその中でビビらなかったのが酒呑童子だ。妖怪の軍団を結成し、それをやっぱり、ライコウがターミネイトしに行った。お前のその殺戮者精神は正直怖い。
だが今日までそれを達成する事が出来なかった。それは純粋に武器の問題であり、ライコウの技量について行ける武器が存在しなかったからだ。だがそれが今、漸く日光によってカバーされた。魔剣や聖剣と並ぶクラスの切れ味に、再生する事が可能な武器だ、Lv3技能持ちが振るうには十分過ぎる得物。それで酒呑童子を忍び込んでタイマンで暗殺してきたらしい。
そういう事でJAPAN最強の妖怪ターミネイター、ついに参戦する。
日光ユーザーがこれでカオスマスターと揃った。人類の手にバランスブレイカー級の《無敵結界》除去手段が全て揃った事でもある。これによって、漸く本格的な魔人戦を繰り広げる事が出来る事でもあるのだ。何よりも国境を此方で掌握する事には成功した。再び前線基地を確保した為、再構築しながら陸路を開拓する事が出来る。まだ超特急で突っ込んでくる魔人黒部と妖怪大津波があるが、ライコウであれば攻略の鍵を見出す事も出来るかもしれない。
このタイミングで戦力を補充出来たのはまさに行幸だ。
割と困っていた時なので本当にこのタイミングの合流は助かった。
「して―――総大将殿、その……姿はどうなされたので?」
「あ、やっぱり気になる?」
そう言う自分は今、椅子に座っている。だが
幼い、と。
「ちょっと禁術の代償で若返っちゃった」
どうも、ロリウル様始めました。
若返りました。そりゃあ、もう、見事に。神魔モードというか、悪魔要素はなくてドラゴン要素を使っているのでどちらかと言うと神竜モードとも言うかもしれないが、その制御に使っているのはガイから教わった禁術で、その一部を組み込んでいたのだ。つまり行使するならそれなりのリスクや反動があるという訳でもある。ただし使えばスペック的に上級魔人とタイマンで殴り合えるだけのものが出せるし、《無敵結界》も無視出来る。リターンを考えれば悪くない結果だとも言える。ただ困った事に、その副作用が若返りだ。
だから一時的に若返るという形でその効果が表れた。ガイの見立てだと最低で半年間、長くて1年間は9~10程の子供の姿のままになるとの話らしい。
「うーむ……なんか新鮮だ」
自分の部屋の姿見で、若返ってしまった自分の姿を改めて確認している。術の反動で若返った自分の姿は子供の姿にまで若返っているのだが―――そもそも、ウル・カラーには子供と呼べる時代はなかった。生まれたらドラゴンで、幼竜時代は存在していたのだから。だから人間の姿で若さを見せるのは、正直かなり新鮮な気持ちで自分を見れる。結構、面白い体験だった。服装もそれに合わせた幼さに似合うドレスに変えている―――うん、まぁ、新鮮な気分だ。
上級魔人ソロの代償と考えればいいだろう。
「問題はしばらくは戦えないって事だけだな」
若返りの影響で魔力以外が大きく減退しているのも問題だ。レベルが下がった訳ではないが、それでも筋力や体力が落ちた事は前線で戦う上では大きな問題だ。今までの様に率いて戦う事は、少なくともロリの間は無理だろう。それが半年も続くと考えると、少々辛い。作戦行動を取るとして、俺抜きで進める話になる。いや、まぁ、俺が居なきゃ勝てないって状況というか状態が最悪なのだから、いっそいい機会なのかもしれない。俺抜きで作戦行動取れる様になって貰おうか。
全部終わったら雲隠れする予定だし。
「ま―――しばらくの間は政務とかに集中すればいいか」
政治技能を持っていないのにガンガン政治をやる羽目になっている現状には少々物申したい事もあるが、まぁ、それは放っておく。とりあえず普段は鍛錬だか作戦行動と取っているが、この体ではまともに戦う事も出来ないし、しばらくは錆付かない程度にルドぐるみをスイングしていればいいだろう。
それよりも今は監視しなくてはならない奴が居る。
「そんじゃ、様子を見に行くか」
ルドぐるみはそっちに大人しくさせるために渡してあるし。早く返して欲しいものだ。そう思いながら幼女の体では歩くのが遅いため、数センチ程床から浮かび上がって移動する事にしている。
すいー、と浮かんだまま移動しつつ扉を開けて出て、そのままホバーの様な状態で移動する。現在のククルには自分の家とでも呼ぶべき屋敷が住宅街にある。今はそこで寝泊りする生活が続いている。流石に毎日、ペンシルカウとククルを往復するのが面倒だから当然と言えば当然だ。そしてそこには自分の他に、ハンティや従者たちが住んでおり、今はもう一人、ゲストが住んでいる。
それを確認する為に部屋を出て、廊下を通って移動する。神か悪魔であれば瞬間移動で即座に移動できるから楽でいいなぁ、なんてことを考えつつ移動し、そしてゲストルームの前にまでやってくる。
「ふぅー……」
その前で足を止めて、溜息を吐く。
今ここにはラ・バスワルドが泊っている。
他に預けられる存在が居ないし、ガイはラ・バスワルドを捕獲したと言ったら次の日から最前線に引きこもり続けた。ラ・バスワルドの面倒を見るなら黒部の相手をした方がまだマシらしい。一番最初に押し付けようとしたガイが逃亡したのがちょっとした予想外だったが、まぁ、それは置いておく。
このラ・バスワルドが暴れ出した所で、抑え込めるのはソロで完全に制圧出来る俺か、禁術使用前提でのガイのみになる。ポンコツであっても、相性ゲーに持ち込まない限りは上級魔人としてのスペックを誇るラ・バスワルドは根本的にソロで放置してれば、それだけ国が滅ぶような存在だ。だからやはり、どうにかするのは俺かガイの仕事になり、
そのガイは逃亡した。
だから俺が面倒を見る羽目になる。
「はいるぞー」
声を放ちながら扉を開けて、ラ・バスワルドを泊めている部屋に入る。幸いというか、ラ・バスワルドは戦うという行いそのものが面倒らしく、命令でもされない限り戦う様な事はしたがらないため、目覚めて破局を連射するような事はなく、ルドぐるみさえ預ければ大人しくしてくれている。ただその代わりに恐ろしいポンコツぷりから、定期的に様子を確認しないと面倒なのがアレな奴だった。
だからこうやって様子を見に来た所、
「んっ……はぁ、あ、来たんだ……んっぁっ……」
扉を開けた視界の中で、ラ・バスワルドはベッドの上でルドぐるみを抱いていた。
ただし、抱き着きながら腰を―――というか下半身を押し当てる様に、やや前後している。その様子を見てから、ラ・バスワルドへと視線を向ける。
「なにやってんのお前」
「えっ……? んっ……なんか、こうしたら……んっ、気持ちいいのが解ったから……はぁ……体が何か火照ってきちゃって……何故か解らない?」
「嘘だろお前」
ラ・バスワルド、性知識ゼロの状態でルドニーという全く新しい、不敬さが恐らくは瞬間最大風速で更新されてしまったスタイルを生み出してしまった。流石の俺も、ポンコツ神が知識皆無で創造神の人形を相手にマスタベーションに励んでいる姿はあまりにもショッキングすぎて、何も言えなかった。反応出来ない間にもラ・バスワルドがそれが自慰だという事を一切理解せずに腰をルドぐるみに擦り付けている。
心なしか、ルドぐるみの表情がバッテンになっている様な気がする。
ALICEでさえやらなかったのに―――ALICEでさえやらなかったのにっ!
「嘘だろお前……」
片手で顔を押さえながら呟き、
「え、何が……あ、ここきもちいい……」
「そうじゃねぇんだよこの、ポンコツ!!」
「んっ……あぁ!? 返しなさいよー!!」
召喚する事でルドぐるみをラ・バスワルドから無理矢理取り上げる。それをラ・バスワルドが取り返そうとするが、遠慮なく顔面にスイングを叩き込んでベッドの方へと押し返す。流石の俺もルドぐるみをこんな使われ方をするとは思いもしなかった。大丈夫だろうか? ……よし、ルドぐるみに愛液は付着していない。何時も通り、パーフェクトなもふもふ状態だ。心なしか、ルドぐるみ君の表情も安心している様に見える。
「ちょっと! 今いい所だったの! こう、なんというか、ピリピリしたのが広がって、背筋にびり、としながら広がる様な……」
「止めろ。それ以上はほんと止めろ。国諸共消されかねないから黙って窓の外を見ろ」
「……え?」
そう言って、部屋の窓を指さしながら見る様にラ・バスワルドを示せば、窓の外の風景が一変している。屋敷の外の風景ではなく、窓の外は何時の間にか天上に繋がっており、その向こう側でALICEが浮かべている剣をぎゅんぎゅんと音を立てながら生物には知覚不可能な速度で振るっている。振るわれながら分身する斬撃の軌跡がそのまま空間を切り裂いている様にも見えるし、その横で腹を抱えながらマッハが呼吸困難で静かに息を引き取っていた。
どこからどう見ても完璧なおこ状態である。
「……」
それをラ・バスワルドが目撃してから、無言になり、静かにベッドを降りたら床を這って、四肢をついた状態で此方の背後に隠れて来た。
「え、なに。私なんか悪いことした?」
「創造神を性欲発散の道具として使って怒られない奴が居ると思ったの……?」
「……えっ、誰がそんな事をしたのよ!?」
こいつ一回死ぬべきなんじゃね? と思いながらも窓の外の姿が何時も通りの、屋敷の庭へと変わって行く。あぁ、良かった。ぎりぎりセーフ判定貰えたようだ。うん……最後までイってたら確実にアウトだったよな、と確信する。
そう思いながら後ろに隠れるラ・バスワルドへと視線を向ける。
「なんでお前生きているだけでそんなに問題を起こすの……?」
「わ、私が悪いんじゃないよ。私に教えない世界が悪いのよ」
「お前さぁ……」
ガイが逃げるのもこれは当然なのかもしれない、と初めてあの魔人筆頭に対して心の底から同情した。そして前線からアイツが帰ってきたら絶対に押し付けてやると鋼の意思を持った。再びルドぐるみに手を伸ばそうとする馬鹿ワルドの手をひっぱたきながら、幼女フットで馬鹿ワルドを抑え込む。
予想外の状況に直面して硬直してしまったが、
「おい、バスワルド」
「何よ。それよりもルドラサウム様のぬいぐるみをもうちょっと……」
「ジルが言った言葉は本当なんだよな?」
「ん? アレの事? もう何度も説明したじゃない」
「窓の外に放り出してもいいんだぞ」
窓へと視線を向ければ、両腕を組んだマッハが良い笑顔で浮かんでいた。それを見てラ・バスワルドが必死に足の下に隠れようとした。もう、本当に駄目だなぁ、こいつは……そう思いながらなんか、面倒を見なくてはならないという、ちょっとした母性本能をくすぐるものがあった。
ともあれ、
「で、もっかい」
「あぁ……いいけど」
ラ・バスワルドを解放した所で、彼女も浮かび上がった。そのままベッドへと戻り、やや不貞腐れる様に転がりつつ、此方へと言葉を向ける。
「ジルはこう言っていたのよ―――全力で戦い、敗北するまではあらゆる利敵行為を禁ずる、とね。大元の魔王命令はそんなもんよ。そして一度でも全力で戦ったら
「満足したから今度は変な事をせずに抱いて寝てろ」
「わぁーい!」
ルドぐるみを投げつけてもふらせつつ、浮かんだまま足を組んで、ラ・バスワルドの話を精査する。ジルが言っている寝返りとはつまり【決戦】であった出来事だ。将来の戦いにおいて、魔人レイや魔人シルキィは寝返り、人類側の味方をした。
……ここまで来ると、本当に未来の予行演習みたいだ。
ジルが全生命を滅ぼすと言ったのはポーズだったのか? いや、そうは思えなかった。本気で命を死滅させようとしているように思えた。だからそれは本気だ。だがこの予行演習の様な戦いもそうだ。本当に魔人を寝返らせられるなら、ケッセルリンクとガルティアをなんとか倒して、此方側に引き込む事が出来れば勝機が漸く見えて来るラインだ。
……どうにかできるだろうか?
そう思いながらラ・バスワルドへと視線を向けて、自然と腰を動かそうとしている馬鹿に全速力でドロップキックを叩き込み、窓の外へと吹っ飛ばしてやった。
色んな意味で、こいつからは目が離せない。
ルドニーの第一考案者。不敬ランキング最上位にランクインおめでとう。
お前どうしてこうなったの? と思いつつこういう風に独自にキャラ付けして行くのもまた面白い所。これでバスワルド加入扱いではあるけど。うん、戦闘中の扱いはガイに任せよう、な。
魔人討伐隊でもちゃんと運用できたし……。