※この作品はR-18です。

ハイパーVR合戦   作:やまのお

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その2 HVR

 

「竜人ってなんだ? スラブ神話に出てくるズメウとか、そういう奴か?」

「あら、貴方達の世界では私達竜人はそう呼ばれているのですね」

多分一般的な呼称じゃないけどな。てか神話上の存在が目の前にいるなんて半信半疑なんだがな。

「!? ミネバ後ろ!」

悠長に話している場合じゃなかった。ゾンビ共はまだ三匹残っていたんだった。

その内の一匹が牙を剥き背後から彼女に飛び掛って来ていたのだ。だがーー

「不躾な方々ですね」

ミネバの白い尻尾がゾンビの全身に絡みつき、絞めあげられ軋み出す。

「お話している最中に襲おうだなんて」

鉄をも握り潰さんとする程の絞力の前にゾンビの体は圧し潰され、口を塞がれ叫ぶ事さえままならないまま黒い煙となり消えていった。

だがその直後に背後から5…いや6本のナイフがギラリと光り彼女の背中を狙って飛んでくるのが見えた。あいつら、知能失くしてそうななりでそんな芸当使ってくるのかよ!

ミネバ危ない! そう叫ぼうとした瞬間。彼女の尻尾が鞭の様にしなり、高速で飛来するナイフを全て叩き落とした。

「グギャァァァァァ!!」

気付けば飛んで来たナイフは、投げつけた主である筈のゾンビ二匹の顔面に針山の様に突き刺さっていた。ミネバはナイフを叩き落としたんじゃない。跳ね返していた。

ゾンビ達は悲鳴を上げながら真後ろに倒れ、煙となって消えた。

「これで、一息付けますね」

さっきまでゾンビに襲われていたとは思えない程に、穏やかな様子で彼女はそう言った。

あれ? 心なしか、さっきまで彼女の全身が光り輝いていたのが無くなったような気がした。

「あ、あんた。さっきまで光ってたのは、俺の気のせいか?」

「気のせいではありませんよ。暗い所での戦闘ですからね。自らに微量の電気を纏わせていました。そうすれば敵の注意もこちらに向きますし」

な、なんだこの娘……。唐突に現れるわ、自分の事を竜人だとか言うわ、尻尾だけでゾンビ共を全滅させるわ、オカルトの類としか思えん事やるわ。見た目は可憐な少女なのに。超常現象の集合体じゃないか。

「なんだか、信じられないと言ったご様子ですね」

彼女は俺の仕草か、手に持っている長方形の物体から放たれる灯りで照らされた俺の表情を見てか、俺の不可解という心理を察した様だ。

「なんなら触ってみますか?」

えっ? えええ!?

ミネバは俺に尻尾を差し出した。

「え? 本当にいいのか? 俺、男なんだが……」

「見れば分かりますよ」

い、いくら異形の部位とはいえ、女の体に触るなんて……ドキドキするわ。そういや俺、被験体にされてから女の事を妄想する。なんて事すら忘れていたな。思春期の頃に戻ったかの様な小っ恥ずかしい気持ちが湧き上がってくる。緊張するが、ここはよし!

「触らせていただきますっ!」

「あらあら、そう張り切らなくても」

張り切ってたか俺? 緊張のあまり自分がどんな様子でそれをしていたのか自覚すらない。

俺は彼女が差し出した尻尾にそっと手を触れてみる。

しっとりとした感触。掌の中でそっと動く彼女の尻尾。ミネバはその尻尾で俺の腕に絡みついて見せたりもした。

この感触。本物だ! 作り物じゃない!

「へ、蛇を仕込んでるとか、そんなんじゃないよな?」

「あら、疑い深いのですね」

うむ。我ながらくどいと思う

「なら、これでどうです?」

ミネバは俺に背を向け、尻尾の付け根に指差してみせた。

尻尾はしっかりと尾骨の辺りから生えてきているのが分かる。俺は付け根の周りを触る。この辺りになると流石に丸太の様に太い。そして硬い。強靭な筋肉が詰まっている様だ。こんな華奢な女の子には似合わない程に逞しく大きい。まさにファンタジーや神話の世界の竜の物だ。

「あ、そうそう。念の為言っておきますが」

なんだ? 何を念押しするって言うんだ?

「尻尾以外の所を触る様でしたら、絞めますよ」

険しいトーンで彼女は言った。

「しねえよ!」

嘘です。ドサクサに紛れて尻尾の近くの場所を触ってみたいと一瞬思ってしまいました許して下さい。

「そういえば、名前を聞いてませんでしたね。貴方のお名前は?」

「閼伽井雄徒(あかいゆうと)だ。」

名前か。他人に名前なんて久しぶりに名乗った気がする。

彼女に聞かれるまで自分の名前なんて忘れていたくらいだ。

「いいお名前ですね。とても力強い響きです。きっと良いご家庭に恵まれたのですね」

「家庭……」

その言葉を聞き、俺は胸の奥が締め付けられる様な思いがした。

「俺……実は長い間家族に会っていないんだ……。18歳の時に人攫いにあって、気がつけば人体実験の被験体生活さ……」

18歳の頃、大学には落ちたがバイト先は決まり、高校卒業。バイトしながら浪人して、将来行く末を決めようとしていた頃。余暇を利用し外出していた時、突然黒服の男たちに変な薬を嗅がされ昏倒させられ、目が覚めれば何も物が無い丁度ここと同じ様な真っ白な天井と壁の部屋に連れて来られていた。それからと言うもの俺は薬物や妙な手術の実験動物としての毎日を送り今に至る。ただ夢も希望も無く苦痛に耐え来たるべき死に備えるだけの日々を

「何で……俺はこんな目に会うんだ……くそう……」

それが当たり前になり、ずっと看過する事が当たり前になっていた自らの境遇を今になって恨む思いが溢れ出してくる。

「なんて酷い事を……」

ミネバは苦虫を噛み潰す。

「なら、ここで出会えた事は貴方にとって不幸中の幸いかも知れませんね。」

ミネバは慰める様に言った。

「どう言う事だ?」

「こんな所は早く抜け出してしまいましょう。私が手助けします」

ミネバは胸高らかに堂々と言った。彼女の自信は虚勢ではない。あのゾンビ共を軽々と倒した勇猛さ。それでいてこんな得体の知れない状況でも常に落ち着いた立ち振る舞い。彼女の言は実力に裏打ちされたものである事は想像に難くない。

「善は急げです。さ、私の手に掴まって」

「ちょ、その前に少し待ってくれ」

彼女の手を取る前にやる事がある。俺は手の長方形物体の灯りで周りを照らしながら。あるものを探し出す。

「あったあった」

床に転がり落ち血に塗れた拳銃を見つけた。スタッフが持ってた銃だ。

「それは何ですか?」

ミネバが問いかけてくる。俺が拾い上げた物が何か分からないのだろうか? 神話の世界の存在の彼女にとっては俺が常識と思うような代物は理解の外なのだろうな。

とは言っても俺も実物の銃を触るのは今回が初めてなんだけどな。

「これはピストルって言う武器だ。こうやって……」

適当な所に銃口を向け構える。

「この引き金を引くと、バーン!! ってな」

俺は撃つ仕草をして、反動で後ろに仰け反る真似をする。実際に発砲はしない。

「そうするとここのシリンダーって部分に入ってる鉛弾が時速数百㎞の速さで飛んでいくって武器なんだ」

スタッフの拳銃はリボルバー式。俺は回転式弾倉を指差してミネバに説明した。

「へえ、面白い武器ですね。実際に撃ってみないのですか?」

「弾数に限りがあるからな。こいつは六発しか撃てない。さっきみたいな奴がまた出て来ないとも限らないからな」

被験体監視の為のもんとはいえ、どうせ持たせるなら十五発入るオートマチックでも持たせとけよ。この状況下では六発は心許ないと、我ながら手前勝手な事を思った。

まあ、目の前の強くて可愛い竜人少女がいれば、杞憂かも知れないが。

他にも落ちているリボルバーがあるが、両手が塞がっている上に俺が着ている服にはポケットが無い。恐らく囚人に着せられる物と同じだ。妙なもの隠せないようにってか。とことん嫌な扱いだ。

このままでは弾の予備すら確保出来ない。それならばと思い俺はスタッフの遺体から防護服を奪う事にした。確かポケットがあったはず。こんな服着てるよりも安全性もあるだろうしな。

俺は近くの遺体に屈み込み、持っているものを一旦床に置き防護服のチャックを下ろす。

「なにやってるんですか!?」

それを見たミネバが声を張り上げて俺に近付いてくる。無理もない。道理的に考えて今やっている事は不謹慎この上ないからな。

「あんたの言わんとしてる事は分からんでもない。でもこれはサバイバルだ。綺麗事は言ってられーー」

「そうじゃありません! そこを離れて! 危ない!」

「えっ?」

彼女の言葉を聞いて咄嗟に身を後ろに引く俺。

「う、うわぁぁぁぁぁぁ!」

スタッフの衣服の下から突然、気味の悪い形状をした何かが俺の顔目掛けて飛び掛かってきた! 俺はビビって目を瞑る。が、同時に空気を割る電撃音も鳴り響く。

目を開くと俺は何ともなく、その謎の物体は黒焦げになり床に転がり落ちていた。

「なんだこれは……」

蜘蛛か? いや、その動体からはミミズのような物がいくつも生えている。こんな気持ちの悪い生き物見た事がないぞ。

! スタッフの遺体に目をやると悍ましい光景を目の当たりにした。チャックを下ろして露われた胸元からは……

その異形の生物が人間だった者の胸を食い破り、ミミズ状の触手を不気味に畝らせ、無数に蠢いていた。

ゴクリ……俺は気味の悪さのあまりに冷や汗を流す。

人間の生の臓物などを見るのは初めてじゃない。被験体生活の過程で人の死体や臓物を抜き取られる様だって見てきた事もある。それにすら慣れてしまった俺がこれ以上怖気がするような物なんて見る事は無いと思っていた。だが目の前にあるこの奇怪な光景は……そんな俺の肝をも震えさせた。

「生物データ。<寄生虫パラサイド>非現実生命体。HVRによる転移生物」

女の声。ミネバか? いや、彼女の声じゃ無い。声のした方を見ると、俺が床に置いた長方形の物体があった。

「フィクションゲート<DL>分布の虫型生命体。人間及び動植物の生体、遺体問わず寄生し、宿主の時間を掛けて宿主の養分を吸い取り、やがては完全に支配下に置く」

喋ってるのって、もしかしてこのよく分からん機械か? こんなもんが喋るとか、ますますどうなってるんだ?

「お前一体何者なんだ?」

奇妙な感じだが、そこの機械に問いかけてみた。

「初めまして。私はイリス。HVR対応多機能携帯端末<HYPER PHONE>内臓の人工知能です。以後よろしくお願いします」

さっきから不可解な事の連発で頭がこんがらがりそうだ。

「なんでもいい! 今の状況手っ取り早く教えてくれ!

さっき突然現れた化け物は!? それでこのへんな虫はつまりどういう奴だ!? HVRってなんだ!?、ハイパーフォンって!? で人工知能って!? そして何で竜人が現れた!? 簡単に教えてくれ!」

「HYPER PHONEは10年前から一般発売され、今や大衆的生活用品となるまで普及した次世代携帯電話の現在開発中の研究者専用機密モデルにして、Hyper Virtual Reality(ハイパー・バーチャル・リアリティ)機構特化型モデル。

同機構はVRと現実世界の境目を繋ぎ、往き来可能にする事を目的とした機構です。

ここに出現した人間以外の者達はVRと現実世界が繋がった事によって出現した者とみられます」

「VR? 仮想現実の事か? テレビゲームとかそういう奴? 俺はその手の物には疎くてな」

「正解。 テレビゲームを始めとする人間の創作物。古くは中世の芸術絵画に神話。それらの物は妄想や想像の類では無くこの世界とは異なる次元に存在する世界の記憶や意思が人間にメッセージを送信し、それに導かれた人間がその世界の形や人物を描いて行く物なのだ。と翌檜晨哉(あすなろしんや)という学者が発表した学説が端を発し……」

「だからそういう難しい前置きはいいから! 要はバーチャルのもんが現実に出てくるようになったって事でいいのか!?」

「その通りです」

「なるほど。そういう事でしたか」

ミネバがイリスの説明を聞いて何かを察した様に頷く。

「雄徒さん。言い遅れてしまいましたが私はその原因を突き止め、この事態を収束させる為にこの世界にやって来た異世界の住人です。

異界同士は本来違いに干渉せず分かたれるべき存在。境目が無くなれば互いの世界に災いをもたらします。丁度今のここの様な出来事がもっと大きな範囲で」

「だーもうわぁーったからぁ! 話は後にしてくれ! 唐突にあれこれ言われても分かんねーよ! 兎に角今はさっさとここから出ようぜ!」

簡単な説明求めたらかえってややこしい話になって来た。いい加減煩わしい。難しい事考えるより先を急ぐ方が賢明だと思った。まあ、この防護服奪うのは諦めるわ。血に塗れてる程度なら我慢出来るが寄生虫だかなんだか知らないがこんな変な生き物がウヨウヨしてるかも知れんような服なんて流石に着たくないわ。ん? 防護服? そういや何でそれ着てるのにこいつ寄生されてんだ? ふとした疑問が頭の中に引っかかった。こいつもあのゾンビに殺されてるから傷口から寄生虫が入り込んだのかも知れないが。

そう考えていると部屋が急に明るくなり、至る所に突然落雷が走る。雷は部屋に残された全ての遺体を一人も漏らさず焼き尽くしたのだった。

「ミ、ミネバ……なにやってんだ?」

彼女の突発的な行動に俺は呆気に取られた。

「全ての寄生虫を始末しました。直接確認しなくても禍々しい気配で全ての遺体に紛れている事は分かりましたから。残しておけば万が一の時に厄介な事になるかも知れませんからね。強い力は感じませんが、得体の知れなさは私が今まで見てきたどの魔物よりも感じましたから」

まあ確かに。とはいえ結構乱暴なやり方にも俺には思えたが。

「えーとミネバさん? もしかしてあんた。虫が怖いの?」

「ななななっ!?」

あれ、茶化したつもりで言ってみたが、さっきまで凛としたていだったのにヘンにきょどるな。もしかして図星かな?

「何を言っているのです!? 誇り高きクロード家の長女で竜人たるこの私が、む、虫如きに恐れを成すなど……」

堂々と構えた才色兼備の貴婦人というイメージだった彼女がこうも動揺してるの見ると、妙に可愛いな。

「そーだよなぁー。どっかの良家の娘さんっぽい竜人様が、虫なんかでなぁー」

「ひっ!?」

俺は虫の死骸を拾い上げ、彼女の顔に近づけてみた。あー、虫如きで過剰に怖がる彼女みると、竜人なんてとんでもなく強そうな神話の存在でもやっぱ女の子なんだなぁーってホッとするわ。そしてそんな彼女の様子をみると、虐めたくなってしまった。

あ、虫の触手がピクリと動いた。奇跡的にも撃ち漏らしていた模様。その様に気付いた彼女の表情が青ざめていく。

「イヤァァァァァ!! 虫ィィィィィィィ!!」

ズドゴォォォォォォォォン!!

 

今、この部屋の中でこれまで彼女が放った雷の中でも、最も強力な稲妻が、虫ごと俺を体を覆い尽くしたのだった。




最後の方、原作のミネバはこんな性格ではない筈です。
完全に自分の趣味で変な設定付けてしまいました。てへぺろ☆(・ω<)」
人気投票や性能では今や過去の人かも知れませんが。
私の中では彼女こそが黒猫さいかわです。
筆者が龍娘が好きなだけなのもありますが。

今回初登場二次創作キャラ

寄生虫パラサイド 原作:遊戯王
※雄徒(主人公)目掛け飛び掛かって来た異形の虫型生命体。
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