いろいろ狂った少年が欲望を満たすために世界を創り、物語を作ります 作:黒椿
体育館にはすでに多くの
体育館の適当な隅っこで二人並んで立ちながら駄弁ることにする。
「それにしても、何でここに呼ばれたんだろうね?」
「分からない」
とはいえ、しゃべれる内容などたかが知れている。けど、それでいい。どうせ、この後すぐにその理由が分かるんだから。
僕の
『静粛に』
マイク越しによく澄み渡る声が響き渡る。たった一言で騒いでいた生徒たちが押し黙る。それを確認した女性は間を置いて話しはじめる。
『皆様、初めまして。私は
ロナの言葉に生徒たちは再びざわつく。あからさますぎてバレバレなんだろうが彼女は僕の
『単刀直入に申し上げます。この学校に在籍する女子生徒の皆様にはこれから『放尿バトル』に参加していただきます!』
ロナの宣言によって場はさらにざわついた。
ようやく始まったな。これが僕のやりたかったことだ。
僕は放尿プレイが好きだ。他の性癖に全く興味がないとは言わないが、一番好きなものが何かと答えられれば迷わずこれを挙げるだろう。理由はない。ただこのプレイが好きなんだ。
だから、僕はこの性癖を生かせる物語を作ろうと考えた。ついでに他の好きな性癖も叶えられるようにもした。そのせいで結構複雑なことになっちゃったけどね。
何はともあれ、宣言されてさえしまえばこっちのもんだ。あとは力業で僕の望む展開に持って行く。この物語を始めて早々にこうしなかったのには理由がある。単純に念のためだ。
何度でも言うが、僕は世界は創ったことがあってもそこにちゃんとした物語を描くのは初めてだ。だから、いろいろとミスをしてしまう可能性は高かった。実際、それらしき
それらを調整する時間がほしくて午前中まるまる使ったんだ。そして、午後に入って一拍置いてから始める。それが僕の計画だった。そして、それは何の問題もなく機能した。
僕の確信を裏付けるかのようにロナは言葉を紡いでいく。
『突然このようなことを申し上げられて皆様混乱されているかと思われます。そこでまずは我々の正体から話させていただきます』
ロナが右手を上げると後ろにさまざまな色のスーツを着た若い女性たちが現れる。人数はロナも含めて六人。いずれもきれいどころばかりが揃えられており、用意したのが自分とはいえ男の身としては思わず鼻の下が伸びてしまう。
『我々は『放尿プレイ促進委員会』という組織に属しています』
冷静に考えるとなかなかなネーミングセンスしてるな。けど、これくらい分かりやすい方が興奮できるからな。
隣を見ると奏がぽかんとした顔をしている。まぁ、いきなりこんな話されたらこんなもんでしょ。
女子生徒たちの混乱とは裏腹に話は淡々と続いていく。
『我々の使命はただ一つ。女性の放尿という素晴らしいものを世界に伝えていくこと。それこそが我々が生涯をかけて遂行すべき使命であり目標であると考えております』
真顔で声もマジだけど言ってる内容自体は常識外れにもほどがあるんだよね。現実世界では自然に委ねていたら絶対にこんな連中現れないだろうな。
『そこで我々は目標遂行への第一歩としてこの学校の皆様に放尿プレイをしていただく。そして、その素晴らしさをこの学校
そこでロナが熱のこもった目でこちらを見てくる。僕はそれに右手を上げて答える。ロナは一瞬うっとりとした表情になった後にまた真顔に戻って言う。
『これは重要な使命です。すでに学校側の協力は得ています』
その言葉に本日何度目か分からないが生徒たちがざわつく。ロナはマイクを強く握って言葉を続ける。
『この学校はお一人を除いて全て女子生徒であり、その容姿も一人残らず美しいという非の打ち所のない我々にとってのいわば理想郷です。この学校に通う生徒の皆様に参加していただければ、必ずや我々の大願への大きな一歩となるでしょう。是非とも、皆様の手で女性の放尿という宝を後進へと伝えていただきたいというのが我々の要望でございます。どうか、皆様のご協力をよろしくお願いいたします』
ロナは恭しく頭を下げる。他の委員会の女性たちも同様に頭を下げる。そして、彼女たちは舞台裏に姿を消す。
これで開幕の火蓋は切られた。あとは思う存分に動くだけだ。
にしても、想像以上に面倒だな。統合性をとるのは少し厳しいかな?
アイデアだけで行き当たりばったりになる可能性の方が高くなってきたけど、それもまた一興だ。
…… いや、マジで行き当たりばったりだな。思いっきり肝心なことを忘れてやがる。
僕の考え通り、案の定隣で真っ青な顔になって聞いていた奏がそのことを口にする。
「な、なぁ。放尿バトルをやってもらうって言ってたけど、それって一体何をするんだ?」
そう。さっきロナが説明したのはあいつらの正体についてとこの学校の許可を得ているということだけだ。それ以外は一切何も説明していない。
やってしまった。どうやら、ここの調整もうまくいっていなかったらしい。
「分からない。でも、あの人たちの言葉からすると女子に何かやらせて僕に何かを知らしめようとしているってことなのかな?」
「何を?」
「それが分かれば苦労しないって」
僕は奏に適当に答えながらも内心自分を戒めていた。
さすが長編。出来合いのキャラと背景だけで作ったなんちゃって短編などとは難易度がまるで違う。覚悟はしていたが甘かった。
午前中に気付けた範囲のバグに関しては調整できたけど、この分じゃまだ不備があるかもな。
やれやれ。何がこの調子ならすぐにでも本番に入っても大丈夫なんだか。調子に乗りすぎちゃったよ。
「でも、その方がやりがいはあるか」
「え? 何か言ったかい?」
「ううん。何でもない」
どうやら、思わず口に出ていたらしい。小さな声だったので何を言っているか聞き取れなかったらしい。訝しげな顔をされたが笑ってごまかす。まぁ、聞かれたところでどうとでもなるんだけど。
でも、ある意味これも面白いかもね。欲望を満たせればいいとはいえ、
とりあえず、隣にいる奏も含めた困惑している女子生徒全員に教室ででも彼女たちの話の詳細を伝えるとして……。待ちきれなくなってるのは事実だし、試運転も兼ねてさっそく今日の午後にでも取りかかってみようかな。
○○○○○
あれから、僕を除く生徒は釈然としない思いを持ちながらも教室に戻った。突然呼び出されたと思ったら、いきなりわけの分からないことを言われて誰もが困惑していた。そりゃそうだろう。僕も何も知らなかったら間違いなく混乱している。
中には怯えている女子生徒も見られる。彼女たちにはちょっと悪いことをしてしまったかな。でも、すぐにその恐怖や不安も払拭されるはずだ。
僕の計画通りにことが運べば。
実を言うと物語を作るということに関して僕は少し自信をなくしている。調整したとはいえ、何かしら問題は起こるだろうなとは思っていたけど、まさかあんなバグが起こるとは思わなかった。これは完全に僕のミスだ。
だけど、何も問題はない。多少のバグはすぐに修正できる。もし万が一致命的な破綻や矛盾があったって構いやしないんだ。僕が求めているのは完璧なストーリーじゃない。欲望を満たすための舞台なんだ。それを忘れてはいけない。
そう自分に言い聞かせながら教室に戻るとそこにはロナがいた。先ほど彼女たちを騒がせていた元凶が教室に何の用だと生徒たちは口々に呟きながらも身構える。
ロナは動じることなく教卓の上に立つと口を開く。
「先ほどは失礼しました。ここに来るのはさすがに躊躇したんですが、ある重大なことを説明をしていなかったことに気付きこうして戻ってきた次第です」
「あの……。あなたたちは私たちに何をさせたいんですか?」
控えめながらも皆藤さんがおずおずと右手を上げて尋ねる。
「それを説明させていただくためにこうして馳せ参じたのです」
言葉遣いは丁寧だが有無を言わさぬ口調に全員が黙る。ロナは淡々と『放尿ゲーム』について説明していく。
「まず、放尿ゲームとはその名の通り放尿をメインとして競うゲームでございます。ルールやゲームを行う場所などはゲームによって異なりますが、基本的に相手に先に放尿させた方の勝ちだと考えていただければよろしいかと存じます」
誰も口を挟まない。ただそのゲームが普通に考えれば、こんな場所で開催するなどとても容認されないはずのないものだというのは分かるだろうな。開催されるとしたらAVくらいのものだろう。
「大まかに言えばこれで全てでございます。他の教室にも随時ルールを説明していく予定でございますが、ルール説明をする教室に一番最初にこの教室を選んだのには理由があります。それは記念すべき第一戦をこのクラスで行っていただきたいのです」
突如投下された爆弾。この会話を普通に聞いていれば先ほどと同等、いや、先ほど以上の混乱が起きてもおかしくない。不安や不満が爆発することは必至だ。
だけど、もう彼女たちに不安や不満はない。今の会話の間に彼女たちはすっかり
これで誰からも文句は来ない。さっきまでの状態だと不満が爆発してちょっとした惨事になる可能性があったからね。ましてや、一発目をこの教室で行うと聞かされればなおさらだ。
最初からこの状態にしておけよと言われるかもしれないけど、それは無理な話。キャラを固めるために僕は彼女たちの自我をある程度の時間認めざるを得なかった。そうしないと、ただの人形がずらっと並ぶ奇妙な光景になってしまいかねない。本当に初めてってのは面倒だよ。ノウハウも経験もないから微妙に分からない。
二度目になったら少しは慣れるかな? でも、一度やりきればある程度分かってくるだろうし、二度目以降はここまで苦労することはないか。
何はともあれ、これで準備は整った。いよいよ開戦だ。
大事な大事な初戦。トップバッターとしてやらせるのは当然――。
次回、いよいよ始まります