しっかりと変わるのは次話から
──シオン達、SSレート《悪夢》を召喚し終え、《
完全に日は沈み、満ち足りた月と星の光が地上を照らしており、街灯のない道ではそれだけが唯一の光源となっている。
そんな中、俺は俺の家がある街から近く場所にある田舎町──クロネの屍兵の襲撃予定地となっているひとつだ──を歩き回っていた。この辺りはフランと事前調査に来たときに、人間を襲う場所に候補にあげた道のひとつだ。
この道をまっすぐ行ったところには個人が経営している学習塾があり、今ぐらいの時間になると講義を終えた中学や、居残って勉強していた高校生達の帰宅に使用されている。しかし皆で仲良く帰るといったことは稀で、そのほとんどがひとりで帰路を辿っている。
ちんけな田舎町であるためか不審者を見かけることが全くないことから、住民もその事実を知っていながら咎めてもいないらしい。俺としては非常に助かるが、保護者としてそれはどうなんだと思わなくもない。
っと、やっと来たな。
「すみません」
「……はい?」
俺が声をかけたのは俺より10センチほど身長が小さい学ランを纏った少年だ。この辺りの高校はほとんどブレザーであるため、中学生だろう。現に俺が2年ほど前まで着ていた物とほとんど同じであるし。
一瞬不審がっていたようだが、ほとんど同年代であることと俺の全身を見て目に見えて安心している。うんうん、もしかしたらカツアゲされるんじゃないかと怯えたんだよな。
そんで俺の黒髪にきっちりと着た制服、眼鏡をかけている風貌を見て安心したんだよな。うんうん、わかるぞその気持ち。俺達と同年代でくすんだ金色に髪を染めてる奴や制服を着崩して着ている奴って素行が悪い人間だってイメージあるもんな。
俺は顔を綻ばせて少年に話しかける。
「月森塾、という場所を知りませんか? 友人にこの辺りだと言われて探しているのですが」
「月森塾ですか? 月森塾ならこの道をずっと真っ直ぐ行ったところにありますけど……よければ案内しましょうか?」
おぉ、この少年なかなか紳士的だぞ。
でもそういうことを言うのは、こんな野郎じゃなくて可愛い女の子に言った方がいいと思う。あいにく俺は女性趣味だし。
「いえ、お気持ちだけ受け取っておきます。今日は月が明るいですけど、遅い時間なのには変わりありませんし、ご両親が心配なさるでしょう」
「いえ、それならいいんですけど。……っと、そうだ。最近、お兄さんくらいの年頃の方の行方不明が多発しているそうです。この近くではないし、行方不明の人達はお兄さんとは正反対の素行の悪い人たちばっかりだそうですけど。念のため気を付けてくださいね」
「わざわざありがとうございます。君も早く帰ってご両親を安心させてあげてくださいね」
はい! と元気に返事をして俺とすれ違い、俺に背中を向ける名も知らぬ少年。瞬間──俺は少年を蹴り飛ばす。
「──ッ!?」
突然の衝撃に悶絶する少年。ただ事態がわからず困惑している彼を俺は、強化された身体能力で押し倒し、彼の身体に馬乗りになる。
「何が──ッッ!?」
少年が悲鳴をあげる空いた両手で彼の喉を締め上げる。人体の柔らかさと唾液が喉を通っていく感覚、そして暖かさが伝わってくる。
「──俺が不良っぽい外見に見えないから油断したな? 駄目だなぁ、少年。見知らぬ人は最大限警戒するって学校で習っただろう」
「がっ、ぁぁ…………」
塾がない日は運動部にでも参加していたのだろうか。身長は俺には及ばないものの、腕はここ2年体育の時間を除きほとんど運動していなかった俺よりも太い。素の状態ならば筋力は彼の方に軍配が上がったのだろうが──俺には能力などの恩恵がある。能力を得る前の俺の筋力に相当する物攻の値は7だったため、この少年を10と仮定し現在の俺の物攻の値──39に《身体能力増強Ⅱ》の効果が合わさり実数値は50。5倍もの筋力で押さえ込んでしまえば抵抗できないのも道理である。
俺は《目星》と《聞き耳》を併用して周囲に人がいないか確かめる。……うん、いないな。少なくとも能力を保持していない人間が俺を見つけられる距離に人の気配はない。なら血が付着するリスクも背負う必要ないし──このまま締め上げるか。
俺が全力で力を込めると──頸骨を折ったような感触がした。そのまま抵抗していた身体もだらりと垂れる。念のため彼の下半身に向き、鞄の中に入っていた武装を取り出し、その柄らしき部分で睾丸をぶん殴ってみるも──うん、反応なし。死亡したと思って間違いないだろう。
『経験値の取得を確認。
能力熟練度が一定値に到達。
能力《演技Ⅰ》を取得』
よし、死亡確認っと。俺は彼を背負い、川の上に架けられた橋の根本まで行き死体を放り投げる。そこにはここを今まで通った者達の死体──14の死体が転がっている。
そんなところに置いておいてバレないのかと思う方もいらっしゃるかもしれないが、普通の人間はまず橋の根本なんて見ない。それに加えて今夜は満月だ。
満月は地上を明るく照らす反面、影のあるところはより闇を濃く深くさせてしまうのだ。1900年代、満月の夜に乗じて多くの人間を殺してきた殺人鬼がいたが彼もまたその事を利用していたのではないだろうか。
それにしても《演技》かぁ。確かにここ数日、不良っぽく振る舞ってみたり先程は真面目な学生君をイメージしてやってみたがそれがまさか能力になるとはねぇ。さて、もう23時に迫ろうかという時間だ。学生は流石に全員帰ってしまっただろうし、ここらで場所を帰るとするか。その前に《演技》の効果でも確かめてみるかね。
《演技》:『演技をする能力。自身の演技力に補正が入り、相手の読心系能力の結果を偽装することができる。効果はレベルに依存』
…………とんだ当たり能力だったぜ。ステータスもそうだが、心を読まれると俺にとっては非常に不味い。だがこうやって相手の読心系能力を偽装することができれば、相手に思考を悟られないことが可能。『偽装』というところもポイントが高い。心を読むことを防いでしまえば相手に警戒されてしまうことは間違いないが、内容を偽れば相手に警戒されることなく情報戦の面で有利に立てる。これはレベルをどんどん上げていきたいな。……まぁ、優先順位は《隠蔽》のレベルを5まであげる方が重要なんだが。
「──随分と暴れてるねー、イツキ」
「……テュフォンか」
俺の背後──死体の丘に座ってこちらに手を振っているのは、山伏の装束に身を包んだ金髪の少女。背中にある自身の身体をすっぽりと覆えそうな金色の翼が印象的な彼女はテュフォン。俺の《
「どうした? なにか問題でもあったか?」
「ううん、特に問題は起こってない。私の持ち場の近くにいた人間は殺しちゃったから死体の運搬を始めちゃおうと思って。それで皆のところを回ってるとこ」
今夜、屍兵の材料を調達しているのはラルルとフラン、テュフォンそして俺の合計4人だ。クロネは屍兵を創造するために繁華街の外れにある廃工場に待機、シオンはテュフォンと一緒に行動していた。
──俺やフランの攻撃手段は大体ナイフや槍を使用しての刺殺だ。そして刺すという手段は攻撃した箇所から武器を引き抜かない限り、溢れる血液の量はごく少量のため衣服が血で濡れるという事は攻撃した際にはほとんど心配しなくていい。むしろ殺した後に武器を吹き抜いたときこそが注意するときだ。臭いは《清め液》で消した。
俺は血液に濡れないようにエリマキトカゲの襟のようなものをナイフの柄と刃の境目ほどに取り付けることによってそれを防いだ。そしてフランは刃の部分の温度を上昇させる事によって体内を火傷させ、止血すると言っていた。
ラルルはただぶん殴るだけだから出血という心配はほとんどしなくていい。ただ『力加減を間違えちゃって人体に風穴開けちゃったぜ!』という事態にならないことを祈るばかりだ。
しかしテュフォンの場合は違う。彼女の攻撃手段は魔法で作られた暴風の剣、それを振るうことによる斬殺だ。そのため吹き荒ぶ風の剣が大量出血を巻き起こしたりするし、彼女の風が遠くまで血の臭いを運んでしまう可能性もある。
臭いは上空に打ち上げることによって防げるが、それによって発生した暴風に、辺りを赤く染める鮮血を隠し通すことはまず不可能だ。
故にそこをシオンの《認識操作》や《幻術》で誤魔化すという寸法だ。嗅覚を操作し血の臭いを感じ取れなくし、天に向かう暴風は《幻術》で偽りの景色を周囲の人間の脳に送ることによって異変を感じ取れないようにするという寸法よ。
本当はテュフォンに《清め液》を持たせればよかったんだが……あれ、《
シオンの能力で代用が利くアイテムと、シオン達と月とすっぽん並みの差はあるものの一般人相手なら十分すぎるほどの戦力10。どちらにDPを使うべきかは火を見るより明らかだろう。それにあと30分も経てばお役御免になるし。
「シオンは?」
「私が死体の運搬始めるって言ったら『適当な男でも捕まえる』って別行動。たぶん今頃、ラブホで死体でも作ってるんじゃないかな」
「……女とセックスしようとしたら殺されるって大分間抜けだよな」
しかもヤる前に殺されるので救いようがない。南無三。
「それじゃ、アタシは行くね」
「おう。しっかり頼むな」
頷いて、テュフォンは死体の山に魔力の糸を絡ませ《神足通》で転移する。瞬間、積み上がっていた死体の山は消え失せ、そこには死体に潰されていた雑草だけが残る。
「──ふぅ」
俺は思わず溜め息を吐いた。
俺が先程殺した少年を含め、今日この道で襲った人間全員は特に罪のない──学校などでいじめなどを行っていれば知らないが──人間達だ。本来はあと1日や2日……もしかしたらそれよりもっと生きられたかもしれない人間達。
今日塾に行ってしまったから。22時から0時の間にこの道を通ってしまい俺に目をつけられたから。そんな理不尽な理由で殺されてしまった可哀想な人間達。
そんな善良な市民を殺したというのに俺は──微塵も罪悪感が沸いてこない。《悪夢》に殺されるよりも一思いに殺してやっただけ感謝してほしいとまで思う始末。これが精神が《悪夢》側に寄っていくということか。
──いや、もうなってしまっているのか。
「にしても──いつバレた?」
聞き流していたが、あの名前も知らない少年曰く、素行の悪い人間が行方不明になるというのは騒ぎになっていたことらしい。今日は夜に良いコンディションで動くために、朝から昼にかけては爆睡していたため学校には行っていない。その時に注意喚起でもされたのか?
しかし俺はシオンのハニートラップに引っ掛かるような、下半身の欲求だけで動き回る能無し社会不適合者共しか釣っていない筈なんだがな。……いや、その中に適度に連絡を取り合うなりしてた、そこそこの良い子ちゃんでもいたのか。
クソが。クズはクズらしく生きろよ、そのせいでこっちが迷惑被ってんだろうが死んでしまえ。あっもう死んでたわ。
それに騒ぎになっているのは『素行の悪い人間が行方不明になっている』ということのみ。誰が──つまり俺及び俺の陣営が殺ったことはバレていないし、ここ近辺では警察によるパトロールも行われていないところを見るに、行方不明になった繁華街で警備を強化しているのか。
しかし、フラン達を創造したあの日からあの繁華街では死体調達を行っていない。テュフォンの《神足通》によって活動範囲を格段に広げることができたからだ。
故にその行動は徒労に終わる。
俺のような一般的な高校生──もう30人を超える人間を殺害してきた時点で一般的とはとても言えないが──は捜査線上に上がりすらしないだろう。あってマスメディアの街頭インタビューくらいだ。
「人間じゃない奴の仕業だ、なんて考えるはずもないしな」
警察は『その犯行を人間によるもの』という大前提を据えて調査を開始する。だからその事件が『一切の制限なく転移する』という非科学的な《能力》を持った者の仕業とは考えないのだ。最初からこの世界に《能力》という概念があったのなら話は別だが。
それにしても……、
「暇だ」
時間の都合上、この道を通るような物好きはまずいない。そしてシオンは人を狩るべくラブホへ、クロネは廃工場で《傀儡屍兵》の生産。テュフォンはその屍兵を所定の位置に設置と仕事があるが、俺とラルル、フランは非常に暇だ。
こんな深夜で祭りもないから人も超少ないし。
とりあえず《隠密行動》を発動して、橋の根本に待機。それから零時にタイマーセット。そんで──ネットでも漁ろ。
ピピピピ……とスマホからアラームが鳴ったことで俺はネットサーフィンから戻り、周囲を見渡した。ここからは野良の《悪夢》が出現するので一切の油断ができない。中には《隠密行動》を看破してくる敵もいるかもしれないため、警戒を一段階引き上げる。
『一定条件の達成を確認。
《夢幻迷宮創造》が解放。
能力《夢幻迷宮略奪》《異形化》を習得』
って、ここで新しい能力を習得するのかよ。
《夢幻迷宮創造》は以前に概要を閲覧した際には使用不可となっていたため、それが使用可能になったということなんだろうが習得した2つはちゃんと見ておく必要がある。
名前:ヒムロ・イツキ
レベル:17
種族:人間族
職業:《悪夢の綴り手》《密偵Lv.6》
称号:《大量殺人鬼》
HP:55(+5)/55(+5)
MP:56(+6)/56(+5)
物攻:39(+11)
物防:37(+11)
魔攻:16(+1)
魔防:35(+3)
敏捷:41(+22)
器用:36(+13)
JP:10
SP:5
《迷宮創造》《迷宮略奪》《能力賃借・悪夢》《悪夢創造》《悪夢強化》《異形化》
能力
《隠密行動Ⅳ》《聞き耳Ⅲ》《目星Ⅲ》《隠蔽Ⅴ》《危険感知Ⅲ》《逃走Ⅳ》《ナイフ術Ⅳ》《応急手当Ⅱ》《身体能力増強Ⅱ》《殺人術Ⅲ》《急所突きⅡ》《追跡Ⅰ》《不意討ちⅠ》《演技Ⅰ》
《夢幻迷宮略奪》:『自身以外の《夢幻迷宮》を支配下に置く能力。この能力は《異形化》を発動していなければ使用不可』
《異形化》:『自身を異形へと変貌させる能力。全ステータス倍加、自身の従属下にあるSSレート悪夢の能力を同時に使用可能。1日に4時間発動可能であり、途中で解除することは不可能。再度使用するためには20時間のインターバルを有する』
……うーん。
《夢幻迷宮略奪》は非常に魅力的だ。敵対する《悪夢の綴り手》、その《夢幻迷宮》を支配下に置くことができるというのは勢力拡大には必要不可欠なことであるし。だがもうひとつの能力──《異形化》がなぁ。
強いのは強い。間違いなく強い。シオン達SSレート悪夢の能力を同時に使用することができるというのだから、俺個人の戦闘力は飛躍的に上昇する。何気に全ステータス倍加もでかい。ただ──使い勝手が非常に悪い。
これが一日の間に合計4時間発動可能であり、制限時間終了後20時間のインターバルを有するだったらよかったのだ。しかし中断できないというその一点が能力の価値を貶めている。まぁ、バランスは取れていると言えば言えるんだが、ゲームじゃあるまいしそんなバランスなどくそったれである。
なのでこの能力はどうしても勝てない敵──なおかつ逃走不可な場合に使用しよう。しかし実際に使ってみなければわからないこともあるため、ショッピングモール襲撃時に試験的に使ってみるか。
──ここで俺の《危険感知》に反応があった。次いで豚の鳴き声を野太くしたような音が《聞き耳》によって入ってくる。場所はここから約15メートル先、こちらに向かってくるな。
俺は橋の柱の根本からそちらを伺う。ここの辺りは障害物と呼べるものがないため、その正体をしっかりと視認することができた。
──それは人と豚を足して2で割り、そこに気持ち悪さを加えたような見た目をしていた。
体長は2メートルほど。全身は厚い脂肪によって覆われ、胸の肉は垂れ下がり、腹はでっぷりと出ている。手には伐採した木そのものを武器としたような棍棒が握られているが、それに赤黒い液体が付いていないことからその棍棒は未だ武器としての役割を果たしていないのだろう。
ぶひぶひと喚きながら、獲物を求めるその姿は餌を求める豚そのものだ。見た目はこちらの方が醜悪だが。
──オーク、かな?
俺は自分の知識の中にあるその姿と敵の姿でちょうど合致するものを見つけた。
オーク。それはドワーフ、エルフなどに並ぶファンタジーライトノベル定番の存在だ。大体は女騎士とセットになり、その騎士を凌辱する役割を持っているのだが今回その相方はいないようだ。
ひとまずこの距離で俺に気付いた様子は見せない。
ならばこのまま隠れ、俺の眼前にある道路を越えた辺りで背後から迫り首に向かって刃を突き立てる、でどうだろうか。流石に2メートル近い巨体に武器付きの化け物相手に真っ正面から戦う気にはなれない。
これまでの人間とは違い、間違いなく能力持ちだろう。ならばその詳細がわからないうちに挑むのは愚策だが、そもそも発動させなければ問題ない。
《隠密行動》《ナイフ術》《急所突き》《不意討ち》という必殺仕事人スタイルで仕留めてくれるわ。ちなみに《不意討ち》は敵が自分に存在に気づいていない場合、最初の攻撃の威力に1.5倍になるいう効果を持つ。強い。
俺は息を潜め、オークが俺の前を通りすぎるのを待つ。そしてその瞬間が来たとき──、
「──ッッ!!」
俺は跳躍し、オークのうなじに相棒──幾人もの命を葬り去ってきた安物の包丁を突き立てる。
《不意討ち》の効果でダメージ1.5倍、急所ダメージでさらに上昇、《ナイフ術》によってナイフ使用時のダメージを上昇──能力を発動していない状態での攻撃とは比べ物にならない攻撃によってオークが断末魔をあげ……倒れた。
『戦闘の終了を確認。
《悪夢購入》に
一定条件の達成を確認。
称号《悪夢殺し》が追加』
頭の中で響くアナウンスを聞き、ようやく俺は息を吐いた。深く刺さったナイフを引き抜くと、青黒い液体が俺の腹にかかった。幸いなことに醜豚人の血液は人間のものと違うのか、独特の鉄臭さはしない。これで臭いによって《悪夢》に感づかれるのではないかという懸念は消えた。
ひとまずこれでこれから行う奇襲作戦に支障はでないな。
習得した能力でもわかる通り、俺は敵の不意を討ち、急所に一撃を叩き込み殺すという暗殺者的なスタイルを得意としている。しかしその逆にその不意討ちで仕留めきれなかった、もしくは奇襲に失敗したなどで戦闘に持ち込まれた際には俺の能力は激減する。
──戦いにおいて重要なのはいかに自分の得意なことを相手に押し付けるかって何かの漫画で読んだが、痛感する。事実、明らかに攻撃防御で俺の方が劣っていたであろう敵をこうやって仕留められたわけであるし。
レベルが俺よりも遥かに上な敵は勿論として、索敵能力に優れた敵、群れで行動する敵には絶対に喧嘩を売らない。三十六計逃げるに如かずというありがたい言葉に従い脱兎のごとく逃げ出す。
そしてその逆の相手は積極的に仕留めていこう。取りあえずは──、
『5SPを使用して能力《地図Ⅰ》を取得しますか? 残存SP5』
取得っと。
この能力は名前の通り周辺の地図を正確に思い浮かべられるようになる能力だ。
最初はただの地図だけだがレベルを上昇させていくと、範囲が広がるのはもちろん建築物の概要や食料の有無やレーダーのように敵の正確な位置や概要まで理解できるという驚異の性能を持つ。もはや地図の範疇に収まっていない。
今はレベル1だから本当にただの地図──それでもかなり助かるが──だが、《危機感知》《目星》《聞き耳》などの能力と組み合わせれば、十分索敵もこなせるようになる。これで敵の不意討ちを完全に防ぎ、自分からは奇襲し放題という夢のプランが実現できるようになった。
さて、張り切ってどんどん殺していくとしようか。