21時劇場 「けものお水」 1話
この現代日本においてジャパリパークの存在は、慎重に隠れされていたが、
たつき監督によるドキュメンタリー「けものフレンズ」によって広く国民に知れ渡ることになった。
それからしばらくして富士山が大噴火し、大量のサンドスターを放出したことにより、
日本中に大量のフレンズが誕生していった。
最初は国宝並みに優遇されていた彼女たちも、10万人を超えたあたりから
「人権」を与えるように世論が動き、
いまでは外国人を見かけるより、フレンズを見かける事が多いほど
生活に溶け込み自然な存在になっていた。
権利があれば義務もある。「労働」をすることになったフレンズたちは
ありとあらゆる職種へどんどん進出していった。そんな今の日本の物語である。
彼は暇だった。名は「としあき」という。失業手当を使い果たし、そろそろ行き詰っていた彼は、
習慣のように夜の繁華街を歩くのが好きだった。ここからは彼に語ってもらおう。
俺は焦っていた。収入が尽きて未来が見えない今でも、下半身の誘惑には勝てない。
出会いは求めるもの。軽いお兄さんとしての性分は、いくらお金に困っても変わらなかった。
夜明け近い深夜、最近大人気の、フレンズとお酒が飲める店が立ち並ぶ
「フレンズ横丁」の近くにあるコンビニのイートスペースで、無料Wi-Fiをつかって暇をつぶしていた。
金払って楽しい時間をすごすことはできないが、こういう町の喧騒が好きだった。
ぼんやりしていると、コンビニ店員と誰かがモメていた。
あの見た目…フレンズだ!
「お客さん困りますよ、ここで寝たらダメです。」
優しく説得する店員を、そのフレンズはうなだれながら手で追い払っていた。
「お客さんは常連だからボクも困るんですよ…酔いつぶれているなら誰か呼んでもらえませんか?」
その子は酔いつぶれていて、誰かを呼ぶことすらままならないようだった。これはもしかすると、
いや、あの真面目な店員のために俺が一肌脱ごう。
「あ、この子は俺の知り合いなので家まで送ります」
そう言って酒臭いフレンズに肩を貸す。もちろん知り合いなのは嘘なので、
曖昧な彼女の話を聞いて、家まで送ることにした。
本当に酔っているようで、住所を聞き出すのが大変だったうえ、
ふらつく足が危なっかしくて、彼女を守るように抱いて歩く。ついた家は簡素な2階建ての借家だった。
彼女のポケットから鍵を取り出してドアを開けベットに寝かせる。これでもう大丈夫だろう。
帰ろうとしたが、彼女は俺を抱きしめて離さなかった。
「帰っちゃヤダ」と言い酒臭い息を俺に浴びせながら
しばらく黙っての胸元に顔を埋めている。俺も抱き返すと、彼女も答えるかのようにギュッとしてくる。
そのまま俺たちは抱き合い、鼻が当たる距離で見つめあい、
当たり前のように唇と唇が合わさる。
「君、なんて名前なの?」
「私はヒグマ…」 それが最初の出会いだった。
俺とヒグマちゃんは、唇を会わせたまま、抱きあいながらベッドに倒れこんだ 続く