設定は本編と異なります。エロなしです。
ブラックリストに乗る女
「おい、あの女よくね?」
昼下がり。チャラい恰好の若い男数人が女を物色していた。逆ナンからのホテルは当たり前。所謂遊んでるタイプの若者たち。その日もいい女を見つけようと町中を歩き回っていた時、極上の獲物を見つけた。
店の壁に寄りかかるように携帯を弄る若い女。服の上からもわかるスタイルの良さ。FREE SEXと書かれたシャツに包まれ、ノーブラなのだろう乳首を浮きだたせた大きな胸。ホットパンツに包まれた超安産型の尻に、むっちりとしながらスラっとした脚。顔もグラビアアイドル顔負け。今までこれほどの凶悪なスタイルを持った美女は見たことがない。
だがFREE SEXと書かれたシャツを着ていてこれほどの美女だというのに、誰一人として声をかけようとしない。それだけではなく、周囲の人々は皆彼女の姿に怯えるように足早に去っているようにも見える。
「ん?どこの女?」
「あれだよあれっ!あの店の壁に寄りかかってる女っ!」
男が指さした女を見て他の男達は凍り付き、一気に血の気が引いていく。
「ちょっ、おまっ、あの女は駄目だっ!」
「や、やべぇ、あの女――だ。この街にいたのかよ……」
「さ、さっさと行こうぜ」
「な、なんだよお前ら……。あんなにいい女なんだぞ!?声かけてしっぽりとシケこもうぜ。つか名前知ってんのか?知り合いか?」
他の面々の反応が理解できない。なぜだ。あれだけの女は見たことがない。あの女に欲情しない奴はホモだと言えるくらいのレベルだ。
「あ、あの女は――っていってよ。伝説のAV女優なんだ」
「それだけじゃねぇ。あまりの淫乱ぶりに男共を腹上死させまくってAV業界も風俗業界も永久追放されたって話だ」
「職場の男を平然と喰っちまうからどこの職場にもブラックリストにのってて、どの仕事にも付けねぇって言われてるぜ」
「す、数年前にホームレスの集団死亡事件あったろ? 実はあの女がレイプ被害者装って全員腹上死させたって噂が流れてる」
「う、嘘だろ……? ま、マジか……?」
彼らの口から次々と出てくる話に、声をかけようとしていた男は徐々に血の気が引いていった。その事件は聞き覚えがある。ホームレスの集団が女を強姦しようとして全員死んだという事件。死亡者数は100を超え、中には陰茎がねじ切られたような遺体もあったとか。
「お前みたいなやつがホイホイ声かけて見ろ。ホテルに連れ込んだと思ったらベッドの上で死体になってるぜ」
「つかあの女は『絶対に声をかけちゃいけない女』とか『関係を迫ってはいけない女』ってことで世界中で有名だぞ。オマエなんで知らねぇんだよ!」
「半グレやヤクザですら持て余すくらいだもんな……。どんだけヤベェんだよ……」
「わ、わりぃ。た、助かったわ。と、とっととここから離れようぜ!」
一刻も早くここから立ち去りたいがために、早足でその場を離れていく男達。その姿を女は、がっかりした表情で眺めていた――
「今日も収穫なし……か。はぁ……」
夕焼けが射し込む街。私は携帯を仕舞い、帰路に着く。FREE SEXのシャツを着て、明らかにヤレる女の恰好をしているというのに、誰一人として寄ってこない。声をかけようとしても、逃げられる。SEXしたいが為にこのような事をし始めて数年。一年の大半をこのように過ごし、結局なにも得られずにトボトボと家に帰る日々。
「夕飯の支度しなくちゃ……」
家に着くと、服を着替えてまず洗濯物を取り込む。飼っているペットに餌をやり、夕飯の準備に取り掛かる。娘と二人暮らしな為、量多く作らなくていいのがせめてもの救い。夫は結婚式の夜、初めてのSEX……初夜で私が半殺しにしてしまった次の日には単身赴任が決まり、翌日には出て行ってしまった。もう出て行って数年、連絡は一度も来たことがない。
話によると、初夜の翌日――職場に現れた新人の女性社員と互いに一目惚れし、2人で海外に赴任したとか。しかもあちらで式をあげ、すでに子供もいるという話だ。事実上の離婚状態。働き手がおらず、私はどこの職に就くことも叶わない現状、貯金を切り崩して生活していた。貯金は一生遊んで暮らせるほどの額はあるけど、何よりSEXがしたい。しかし、どんなに『お金出していいからSEXして』と言っても誰も見向きもしない。
闇サイトに私の個人情報や住所、連絡先まで隠すところがないほどの情報を書いたというのにも関わらず誰も訪れない。それどころか、私が件の元AV女優だということが拡散してしまい、異性からは恐れられ、同性からは軽蔑の目で見られるようになってしまった。御蔭で私の携帯にある連絡帳には娘と現役時代の知人数人と10名程度しか載っていない。
「ただいまー!」
「おかえり、結衣」
私が
私としては1人は子供が欲しかったし、父親なんて別にいいけど。2人目は正直いらない。はっきり言ってSEXの邪魔だし、孕んだら孕んだで流産SEXして殺してしまえばいいとまで思うレベルだ。
「ママー、今日の夕飯なに?」
「今日は……結衣の好物にしよっかな~って」
「ホントっ!? やったぁっ! ママ大好きっ!」
愛娘に抱き着かれながら、父親も、母親も知らない私にとって唯一の家族と過ごす日々。そんな不満がありながらも、ささやかな幸せを感じていた日々がある日一転してしまうことになるとは、私は知らずにいた――