---工藤新一----
後になって考えると、その日の俺は、俺では無かった気がする。俺にしては浅はかで、うかつな行動であったと反省をしている。取り返しの付かない失敗…俺が俺に戻った事による嬉しさと、健全な高校男児としての行動が、探偵としての俺の行動が出来なかった原因かもしれない。
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朝目覚めると、俺は俺の家にいて、俺は俺の姿に戻っていた。はぁ?どうして?姿見で確認すると、俺は俺で無く、俺は槇村になったようだ。胸には大きな傷跡があったのだ。
これは…偽槇村として、蘭と…悪魔の囁きが俺の心を揺り動かした。
取り敢えず、この姿のまま、蘭の前に出ると、俺?槇村?どっちとして認識するのだろうか?そのことに興味を覚えてしまった俺は、服を槇村風にコーディネートしていく。開襟シャツで胸の傷をチラ見せして…いざ、出陣♪
蘭の家に近づくと、丁度蘭が出て来た。
「あれ?槇村さん?今から行こうと思ったのに…わざわざ迎えに来てくれたのですか?」
久しぶりに見る蘭の笑顔は、眩しい。こんな笑顔をアイツには見せていたのか?槇村に嫉妬している俺。
「蘭と、ちょっと…」
「私とちょっと?あぁ、久しぶりにですか?こんな日なのに?」
「こんな日だから」
こんな日って、何だ?そう、普段の俺なら、この謎に挑んで失敗を回避していただろう。だけど、この日は久しぶりの蘭に発情していた。そう健全ではあるが、正常な思考では無かったのだ。
「そうなんだ。うん、じゃ行きましょう」
蘭に手を引っ張られて、俺はどこかへ連れて行かれた。
---マッキー---
蘭が約束の時間に来ない。何か良からぬことでも起きたのか?コンビーフサンドを、麗香のビルの厨房で作っている。安室、麗香、深雪、かなめ、ひたぎ、香、芽衣、明日奈、詩乃が手伝ってくれ、予定の個数も完成間近である。
「蘭ちゃん、遅いわね」
香さんも心配していた。安室が、どこかへ連絡をしている。職場の仲間に様子を見てきてもらうようだ。
「心配するな。あの蘭ちゃんだぞ」
って、安室。そうだといいんだが…不二子、テッサまでやられたんだぞ。心配でしょうがない。
予定の個数が完成して、サンドイッチを俺の車に乗せ、深雪とともに会場へ。会場に着くと、エルザのマネジャーと共に、サンドイッチを所定の場所まで運び、帰路に着いた。帰路と行っても、車は住処ではなく、蘭の家に向かっている。心配でしょうがないのだった。
---工藤新一---
シャワーを蘭と浴びながら、愛を行為で実感していた。だけど…
「うん?あれ?」
ビリッ!
胸に痛みを感じた俺。
「え!なんで…まさか…新一なの?」
胸の傷跡のイミテーションを持っている蘭。その時、蘭が力を込めたことと、俺が驚いたことで不幸なことが起きてしまった。俺は蘭の中で大量に溜まっていた物を放出してしまったのだ。
「えぇぇぇぇ~!ちょっと、何をするの?何で、出すのよ…今日は危険な日なのに…」
狼狽えている蘭の目に涙が溢れていた。
「槇村さんなら嬉しいって思ったのに…なんで新一なのよ~!ふざけるなよ…」
ドン!
蘭の怒りの鉄拳を食らった俺は、意識を飛ばしてしまったようだ。
意識が覚醒すると、蘭の姿は無く、全裸の俺だけがシャワールームに倒れていた。
---マッキー---
安室の店へと急いだ。蘭の家の出入りを監視カメラで記録しているからだ。
「安室…どうだ?」
「工藤新一だ…お前に成りすまし、蘭ちゃんとどこかへ出掛けたようだ」
記録映像に残る工藤新一は、俺の姿にそっくりであった。胸元の傷跡を見せるように開襟シャツを着ていた。
「なんで、高校生の姿なんだ?」
俺は、志保へ連絡をして、製造した薬の紛失が無いかを確認した。
『どうした?何か遭ったの?って…あれ?2本足り無いわ』
2本盗まれたようだ。そうなると最低48時間は、俺の姿になれる江戸川コナン。
「志保、監視カメラの映像はどうなっている」
『うっ!消されている上に、停止されているわ。内部にスパイがいるようだわ。えっ!後で連絡をするわ』
通話が切れた。何かが起こったようだ。
「安室、解毒剤が2本盗まれたようだ」
「あの少年には盗めないなぁ」
「協力者がいるようだな」
「あぁ」
---工藤新一---
蘭を探し回る。どこへ行ったんだ?蘭の家に行くが、蘭もおっちゃんもいなかった。どこにいるんだ?
蘭の家を出て、他の場所を考える。そうか妃先生の家か。確か、母さんもいるはずだな。気が重いが、妃先生の家へと向かった。
妃先生の部屋のあるマンション前で、インターフォンを押すが応答が無い。う~ん、居留守か?勝手知ったる他人の…暗唱番号を押して、マンション内へ入った。そして、部屋経向かう。部屋の前の呼び鈴を鳴らすが、応答は無かった。ふと、ドアノブに手を掛けると、鍵は掛かっていない。おかしい…用心をしながら、部屋へと入っていく。部屋の中には、誰もいないようだ。だが、玄関には母さんと妃先生の靴がある。ベッドルームには服がおいてある。その代わりパジャマは無い。これは、寝込みを襲われ、何者かに攫われたのかもしれない。
「おい!大人しく手を挙げろ!」
安室さんの声…だが、いつも聞く声では無い、緊迫したような声である。
「言われた事が出来ないのであれば、迷わず撃ち抜くぞ」
槇村の声…殺気が籠もっているような声だ。俺は言われた通り、両手を頭上に挙げた。
「よし、ゆっくりと振り向け」
ゆっくりと、背後を向いた。そこには拳銃を手にした安室さんと槇村がいた。
「蘭をどこにやった…」
槇村の声は震えている。怒りに満ちあふれているようだ。
「俺も探しに来たんだ」
「俺に化けて、蘭と出掛けたことは、わかっているんだ。どこに連れていった?」
槇村も安室さんも、俺をいつでも撃てるように構えたままだ。
「ラブホだ…そこで蘭とトラブルになって、蘭の一撃を食らって伸びている隙に、蘭が消えたんだ」
安室さんが、銃を構えたまま、どこかへ連絡をしている。
「槇村さん、どうしましたか?」
高木刑事の声。俺達の様子を見て、固まっている。
「わっぱを掛けてくれ」
槇村が高木刑事に指示をすると、
「はい…」
指示に従う高木刑事。槇村は何者だ?なんで、刑事に指示が出来るんだ?俺は人生二度めの手錠を打たれた。
「槇村さん、彼の身柄はウチで引き取っていいですか?」
「取り調べには参加させてくれよ」
「わかっています。ほら、一緒に来い!偽槇村!」
俺の立場は、そういうことなのか…
---マッキー---
公安が調べた結果、供述したラブホの部屋のゴミ箱から、胸の傷跡の偽物は見付からなかった。
「どう思う?」
安室に訊かれた。
「わからない。だが、蘭もそうだが、英里と有希子も攫われたと思う。工藤新一は駒として使われたんだろう。誘拐は計画的だが、アイツの自供はボンクラだし」
そんな俺に、更なる衝撃的な知らせが届いた。
「なんだと…テッサが自殺しただと…」
スマホから聞こえる志保のパニクった声…俺は、医療センターへと急いだ。
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集中治療室にいるテッサ。ベランダから身を投げたそうだ。顔は潰れていたそうだが、奇跡的に命は助かったらしい。
『こんな屈辱は無い…ジョン、骨は宗介の隣に埋めて テレサ・テスタロッサ』
病室にあった遺書…どんな屈辱なんだ?テッサの部屋の監視映像を確認しようとするが、既に削除されていた。内部に、敵がいるようだ。
なんで、テッサが…どんな不利な状況でも、決して諦めない鉄の女だったのに…
そんな俺を更なる衝撃が襲った。
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高級湯屋から有希子と英里を買ってきた。スグに医療センターへ搬送した。どうして…蘭もなのか…俺が悪いのか?俺が関わったから…
医療センターの待合室で、有希子達の検査結果を待っている。
「そんなに思い詰めないでください」
俺に寄り添っている深雪が声を掛けてきた。
「思い詰めるだろ?俺に関わったせいで、一体何人の女性が…俺を苦しめる為に…くそっ!」
うっ!
いきなり深雪が俺の顔を胸の谷間に埋めた。
「そこで、心を落ち着かせてください」
確かに落ち着くが…考えろ…俺に恨みを抱いている奴をだ。う~ん…数え切れない程いそうだ。どうするかな。
「検査結果が出ました。今までと同じ成分の薬剤を検出できましたので、現在、壊死しかねない箇所を切除中です」
「再建修復の目処は?」
「もう少し時間をください」
再建修復出来る可能性に掛けるしかないようだな。
---冴羽リョウ---
公安の安室と共に、俺に呼び出しが掛かった。会談の場所へ二人で向かった。そこは口の硬い事で知られている料亭であった。呼び出したのは、安室によると、公安の影の管理官だそうだ。
「すまないねぇ。ここくらいしか、秘密を保持できそうな場所がなくてな」
サングラスを掛けた中年の男性が、既に待っていた。
「四宮凪に親身になっている二人に、話して起きたいことがあるのだ」
凪が原因なのか…アイツが帰国して、何かが動いた気がしていた。
「まず、10年前の戸籍消失の件だが、あれは相続権の喪失が狙いだ」
相続権の喪失?アイツは何かを相続する予定だったのか?
「凪の本当の両親は、凪自身は知らない。彼は、四宮家に生まれてすぐ、養子に出されたのだよ。世間体の為にな」
本当の両親は、立場がある者なのか…
「彼の父親は私、七草弘一だ」
安室の顔から血の気が失せていく。いや、俺も鳥肌が立っていく。七草弘一…警察を裏で操るといわれている、この国のフィクサーと噂されている人物である。裏の世界でも有名である。七草家には手を出すなと。
「認知はしている。その為に、凪には酷い目を遭わせてしまった」
サングラスで目元が見えないが、父親らしい顔をしているのだろう。
「母親は、予想は付いていると思うが、四葉真夜だ」
凪がよく利用している医療センターの院長にして、FLTの会長である女帝である。ちなみな七草家も四葉家も財閥であり、その富は計り知れない。
「何故、養子に?」
俺は真相が知りたい。真相無くして、凪を護り切れない。アイツを護ることは、今は無き槇村の意志の継承だと思うから。
「四葉と七草の両方の血を持っている。いずれ、狙われると思ったのだ。彼には、普通に育って、普通に生きて欲しかった。勿論、困った時は手助けを惜しまないが…それが裏目に出たのだ。手元にいないから狙われたような物だ。まして四宮の子供であったが為に…」
そうか…凪もそうだが、四宮夫婦に狙われる要因があるのか。
「四宮夫婦は何者ですか?単なる牧場の経営者夫婦では無いですよね?」
カマを掛けてみた。
「さすが、冴羽リョウだな。気づいていたのか…あぁ、単なる牧場の経営者では無い。父親の方は入り婿で、母親の方が四葉家の遠縁の者だ。父親は元々交配の研究をしていた。美味しい牛肉を作る為にな。母親の方は、そんな彼を支援していた。彼女も研究者であり、再生医療を研究していたのだ。特に交配に必要な器官の再生、修復、再建を研究していたのだよ」
今回の事案に当てはまる。彼女の研究結果があれば、冴子達は治るかもしれない。
「そんな彼らに目をつけた集団がいた。交配により産まれでる者の才能を、コントロール出来れば、よりよい未来が来ると思っている連中だよ。そして、必要では無い遺伝子を持つ者の性欲を消化する為に、リビングダッチワイフを研究していた」
見えなかったピースが埋まっていく。
「再建医療技術を応用して、生きている者と同様のダッチワイフが作れれば、性犯罪も減り、良いことづくめだと思っている。その為に名器と呼ばれている者達のデータを収集しているようだ」
その為に冴子達は…
「これだけは言っておく。凪に関わったから、襲われたんでは無い。彼らに要望を出した人物がいただけだ」
そういうことか…
「だが、結果的に凪は追い込まれているが」
「そこが問題だな。君達に、凪を護って欲しい。凪の片親として依頼したい。頼めるか?」
「俺は…依頼が無くても凪を護りたい」
安室が言葉を噛み締めるように宣言をした。
「もし、護り切れない場合、この世界はたぶん終わると思う。それだけの殺戮をやりきる技量は持っているから」
あぁ、そう思う。アイツとは戦いたくない。
「俺も、凪を護りたい。敵にしてはいけない存在だと思う。アイツは自慢出来ることはしていない。だけど、間違っている殺しはしない」
「ありがとう…」
「で、敵の正体とヤサは?」
「この国の捜査機関をもってして、皆目わからない。神出鬼没な奴だ。まして、アジトなんかの見当もつかん。研究開発しているくらいだから、大規模な土地が必要なはずだが、それらしい場所も見付からない」
う~ん…凪より先に見つけないと、大変なことになりそうだな
---マッキー---
医療センターで、犯人探してをしているが、見付からない。見舞客、通院患者に成りすましている可能性が大である。
「志保、完成まで、後どのくらい掛かるか?」
「48時間まで持続して、その後、元に戻る原因がわからないのよ」
化学式と経過データを見比べている志保。彼女を見ていて、脳裏にある言葉が舞い降りて来た。
『二度あることは三度ある』
って…三度目も二度目と同じ。では四度目は?三度目までは拒否をされ、四度目は拒否を諦める?いや、慣れていって、そういうものだと思うか?
「志保、今何度目の摂取だ?」
「4回目よ」
「45時間以降のデータを取ってくれ」
「何か閃いたのね。わかったわ。検査チームに依頼するわ」
これで何かがわかればいいなぁ