夜、ステレスモードで病院の屋上に着陸した。事前に安室へ知らせ、承諾も得てある。俺は、蘭の部屋へ向かった。
寝いている蘭。寝顔…久しぶりだな。蘭の手を握る俺。
「誰?えっ…来てくれたんです…」
手の平の感触だけで、何故かスグに俺だと分かった蘭。
「蘭、久しぶりだな」
上半身を起こして、俺の傷跡を愛おしく撫でている。
「でも、私…」
「迎えに来た」
蘭の唇に俺の唇を軽く重ねた後、蘭に付いているチューブ類や電極類、針などを抜いた。そして、蘭をお姫様抱っこをして、屋上へと向かった。屋上に着くとアイへ蘭を載せる。後部ハッチには深雪と志保が待機していてくれ、俺から蘭を受け取り、電極や針を適切に装着していった。
「アイ!テイクオフだ」
『了解です』
そして、蘭を医療センターへ、極秘理に転院させた、
---工藤新一---
蘭の見舞い…だけど、肝心の蘭がいなかった。あんな身重な身体で、退院は有り得ない。ナースセンターで、蘭のことを訊いた。
「毛利蘭さんですか?あぁ、転院されましたよ」
転院?
「どこにですか?」
「言えません」
「俺の家族です」
「個人情報は、真実の家族にしか伝えられません」
どういう意味だ?
「俺の子供が入っているんだぞ!」
「だから何だ?」
安室さんの声。とても冷たい。振り返ると安室さんがいた。
「確かに子供達の父親は君だろう。だけど、ソレが何だ?孕ませただけで、家族って言うのは語弊が有るんじゃないのか?」
それはそうだが…
「悪いけど、彼女の身柄は、別の病院に委ねた。だから、迂闊には教えられない」
「それはどういうことだ?」
「言葉通りだよ」
安室さんが立ち去る。俺は後を追うが、途中で見失った。くそっ!
---マッキー---
蘭の部屋は大部屋にした。同じ部屋には英里と有希子が眠っている。
「お母さん、おばさん…」
「眠っているだけだ。死に至る状態では無い」
「ありがとうございます。私の為に…骨を折ってくださって」
「ほら、頭を上げろよ!お腹に負担になるだろ?」
「でも…この子達は…」
目に涙を溜める蘭。
「ナミ…妹か弟だぞ」
娘に伝えると、嬉しそうに蘭のお腹に耳を当てたナミ。
「元気で産まれるといいね」
ナミの言葉で、笑顔になっていく蘭。
「いいの?」
俺に恐る恐る訊く蘭。
「ナミはいいのか?」
判断を娘に委ねる俺。
「うん♪だって、私の弟か妹だよね」
嬉しそうなナミ。蘭にはナミの事を話してあった。俺の知らなかった俺と姉の間に出来た子供だと。
「そう…ナミちゃん…ありがとう」
ナミを抱き寄せようとする蘭。
「ダメだよ、お腹に負担になるから!」
ナミに諭された蘭が苦笑いを俺に向けてきた。
---工藤新一---
俺はおっちゃんの元を訪ねた。
「何をしにきたんだ?」
俺の顔を見るなり、機嫌が悪くなるおっちゃん。
「蘭はどこに転院したんだ?」
「はぁ?言える訳無いだろ?」
「なんでだ?!俺の子供が一緒なんだぞ!」
「お前の子供?何を言ってやがる!何度でも言う。お前は蘭にどう責任を取ってくれるんだ?」
責任…
「蘭を幸せにする」
「はぁ~?お前と一緒になったら、蘭は幸せには成れない。それは、お前もわかっているはずだよな?まだ、嘘で固める気か?!出て行け!このレイプヤロー!」
そこまで言われる筋合いは…だけど、俺は退散した。おっちゃんの怒りの意味が、理解出来たから。だけど、蘭に会いたい。どこに行けば会えるんだ?
----マッキー----
料理の授業…例の件の捜査で仕事の大半を断ってくれた香さん。だけど、この仕事はダメだったらしい。
「では、今日はコンビーフの作り方です」
芽衣にリクエストされてしまった。生徒会長として、この学校内に、あのコンビーフを広めて欲しいと…
「肉は、四宮牧場の肉を使います。この肉は通販でのみ販売しています」
叔母が芽衣のリクエストを受けて、『四宮牧場』というブランドを立ち上げてくれ、この学校の生徒限定で通販で販売していくれることになった。コンビーフセットを注文すれば、1週間位で作れるとは思う。
「このスープを寸胴に入れて、肉を煮込んでいきます」
熱心にメモを取る学生達。芽衣の宣伝で、受講生が増えている。基本、特別授業で、希望する受講生に教える形式であるのだ。
「で、1週間休み休み煮込んだ肉がこれです。これを肉繊維に沿ってバラして完成です」
完成したコンビーフを使ったサンドウィッチを受講生達に振る舞う。
「え!何コレ…」
「コンビーフってこんなにおいしいの?」
「そう…美味しいのよ♪」
絶賛の声に反応する芽衣。ちなみに俺の料理助手は柚子である。
「これって、バターとマヨネーズも教えないとダメでは?」
って、柚子。そうなるとパンもかな?
こうして、今回は大盛況な授業になった。
放課後…
「先生、小淵沢に引っ越されたんですか?」
って芽衣に訊かれた。
「いや、誰に聞いたんだ?」
「今朝、食材を積んできたから…」
あぁ、授業で使った食材か。
「あの…夢を見ても良いですよね?」
「夢?良い夢は見た方がいい」
そろそろ引き際の気がするが、契約期間が満了していないらしい。ここで、突き放すとまた百合に戻りそうかな…俺には心理戦は向かないと思う。
「はい♪」
笑顔で抱きついて来た芽衣。どうすればいいんだ?
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住処に戻ると、笑顔の香さんが
「マッキー依頼が来たんだが…ガードの依頼だ」
仕事を減らしたのに、新規で受けたのか?例によって、資料の束を渡された。
依頼主は名取 かずえ。元T大研究所に在籍していた博学な免疫学者である。恋人が生物兵器の開発に関わり、秘密保持の為に殺害され、その恨みを晴らすために、フロント企業に潜入中で命の危険を感じ始めたとある。
「元々リョウが担当だったんだが、ちょっと問題があって…」
「問題?リョウの好みでは無かったのか?」
「いや、好みだったんだが、生物兵器が問題なんだ」
「何?」
「殺人蜂」
「刺されたの?」
「次は無い…」
蜂は2度目に刺された時、アナフィラキシーショックに陥ることがある。
「依頼主って免疫学者だろ?どうにかならないのか?」
体内の免疫システムによるアナフィラキシーショックであるから。
「マッキーは、蜂は大丈夫だろ?」
「まぁ、子供の時、頻繁に刺されたけど、問題は無い」
「そういうことだよ」
ポンポンと肩を叩かれた俺。決定なのか…
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依頼主との待ち合わせ場所へ、愛車ビートルと共に向かった。
「君が槇村君?」
大人の女性に声を掛けられた。どこか冴子に似て無くも無い。リョウの好みだと思う。
「そうだけど…まぁ、載って」
助手席に載せた。
「で、最終的にはどうしたいんだ?」
「殺人蜂の開発、製造を阻止したい」
医薬品会社喜田川産業が、生物兵器メーカーのフロント企業だそうだ。
「なぁ、免疫システムのプロか?」
「そうだけど…」
「この案件が終わったら、頼みがある」
「何?」
「免疫系が壊れた者たちを、助ける手助けをして欲しい」
「どういう症状なの?」
美和子のカルテと英里のカルテを見せた。
「こんな薬剤が有るの?」
「あぁ…解毒剤が見付からない。身体システムは昏睡を選択して、今も眠り続けている」
「う~ん…わかったわ。協力する」
かずえをリョウに預け、依頼を熟す。喜田川産業の研究所へ入り、研究所で殲滅活動を始めた。そんな俺に殺人蜂が放たれた。俺に針を刺す蜂達。蜂って針を刺すと死んじゃうんだよな。全部が全部では無いが、役目を終えた蜂達が次々に命を落としていく。
「何?効かないだと?」
「あぁ、エンジェルダストも効かなかったんだよ♪」
「エンジェルダストが…お前、ジョン・スミスか?」
軍需産業界では有名な話らしい。エンジェルダストを投与されて、生き残っている者は、2名しかいない。俺とリョウだ。リョウは禁断症状に苦しみ、俺は異常性が増しただけだった。
「俺を知っているってことは、いけない武器を売る死の商人かな?」
防弾ガラスの向こうにいるようで、走り寄った俺は弾かれた。だけど、俺のリニアガンを舐めるなよ。連射モードで、ワンホールショットをして、防弾ガラスを粉砕する。銃弾の衝撃には耐えられるが、隕石並の衝撃には耐えられないガラス。そもそも、リニアガンの弾は、先端が銃弾の様に丸く無く、尖っている為、防弾ガラスには強いのだった。
ガッシャン!
粉々に飛び散る防弾ガラス。死の商人にナイフを振り上げた俺。
「おい!そこまでだ!」
安室の声…
「あとは、こちらで引き取る」
「依頼主の生命は守られるのか?」
「こんな企業、認め無い。だから、安心をしろ」
俺は安室のチームに後を託し、その場を後にした。
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痛い…かずえがピンセットで針を抜いてくれている。
「なんで、こんなに刺されているのか?化膿したらどうするの?」
針を抜いた箇所には消毒薬が撒かれていく。
「あの毒が効かないことにビックリよ。あなたの免疫システムを研究したいわ」
単に鈍感なだけって、誰かに言われた。テッサだっけ…遠い昔なので定かでは無い。
「これで、全部抜けた筈」
「筈なのか?」
「残っていれば化膿するから、わかるわよ」
化膿待ちって、なんだかなぁ~。
ここは小淵沢の医療センターの処置室である。かずえは、ここに就職してくれた。
「同僚が出来て嬉しいわ」
って、志保。志保はデータのかずえに見せた。
「う~ん、これは…この成分を排除できないのね」
志保の化学知識をもっても、分からない成分が神経伝達を、ブロックしているようだった。
「じゃ、後はよろしく」
「どこへ行くの?」
かずえに訊かれた。
「救えない女の元だよ」
「救えない?」
不審な顔をしたかずえが付いて来た。俺達はテッサの元へ…
「彼女は?症状が違うの?」
「自殺したんだ…顔面が潰れてしまった。脳も損傷している」
「自殺?」
「あぁ、この病院のベランダから飛び降りたそうだ」
俺はもう、テッサを見守ることしか出来ない。くそっ!
「悲観して?」
「屈辱を感じてだ。そろそろ行く。後は頼む」
俺はその場を後にした。そして、帰る前に、もう一部屋訪れた。蘭の部屋だ。
「お父さん♪」
ナミが突進してきた。俺は身体全体で受けとめる。腰に来そうな衝撃。元気でよろしい。
「どうだ?具合は?」
「たまに蹴られるんだよ~」
ナミが嬉しそうにプンプンしている。
「ナミちゃんがいてくれるから、安心していられるわ。母さん達もいるし」
未だに目覚めない英里と有希子が横たわるベッドを見つめる蘭。
「そうか…」
「どうですか、お仕事は?危ないことはしていませんか?」
「あぁ、注意はしている」
「気を付けて下さいね」
蘭の額に軽く口付けをして、ナミをモフモフしてから部屋を出た。
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「はぁ?刺され捲った?」
香さんが驚いている。そんな彼女の前に、取り出された針の山を置いた。
「こんなに刺されて、ピンピンしているのか?」
「まぁ、鈍感ですから♪」
「で、やったのか?」
リョウに訊かれた。
「いや、研究を優先してもらう。そんな気分になれないし」
「そうか…」
「何か進展はあった?」
「無い…なぁ、敵が2つの勢力って感じがするんだが…」
2つの勢力?
「あぁ、どうも被害者の関係性が見えないんだ。で、複数の勢力が、どちらかを真似たと考えると、辻褄が合う気がするんだよ」
模倣犯?
「蘭ちゃん、妃先生、工藤有希子は模倣犯だと思える。冴子、佐藤刑事、不二子、テッサ、メリッサは犯行グループとか」
「確かに…あの3人がわからなかったんだよ。毛色が違う人種だしね」
巻き添えでは無く、ターゲットだったのか…そうなると、模倣犯は、アイツだ!
「犯行グループの方は、動きが有りそうだぞ」
リョウのアンテナに何か掛かったようだ。
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1つ引っ掛かることがあったので、テッサの部屋に入った。う~ん…壁一面、窓にも…なんで俺の写真で埋め尽くされている。ダーツの的にしているのか?
本棚、机を調べるが、手がかりが出て来ない。ゴミ箱はどうだ…あった♪ショップからの招待状である。俺の疑問…テッサがなんで買い物に行ったかだ。買い物に興味無い女だったから。いや、俺と一緒に買い物へは行くけど。
このショップは、女性物の服屋か…香さんに見せてみた。
「うん?ここって、人身売買組織のフロント企業だよ。まさか、テッサちゃんは潜入捜査していたのか?」
そして、あんな身体に…でも、なんでテッサに招待状が?
「これって、招待状だよね?どういう基準で送られてくるの?」
「確か…依頼のあった女性だったかな。でも、この組織はもうリョウが壊滅させたけど…なぁ、リョウ!」
「うん?どれどれ?あぁ…ここはもう無いぞ」
「ルートは?」
「ルートか…それは、不明だ。地下に通路があったはず」
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俺はその店へ行ってみた。営業はしている。別の売買組織が入居したのか?マンホールから地下道へと侵入していみた。倉庫らしき場所、見張りの者達がいたので、音を立てずに命を狩っていく。倉庫を調べると、生きている女体を数体発見した。安室へ連絡…スマホは圏外だな。電波の入る場所まで戻り、安室へ通報した。
しばらくすると、安室達がやって来て、一緒に倉庫へと侵入した。
「あぁ、行方不明事件の女性達だな。ここに保管されていたのか」
って、安室。
「じゃ、ここは頼むよ」
「生き証人も頼むぞ。死人からは聞き取れない」
「考えて置く」
俺は地下道を進んでいく。これって、どこに繋がるんだ?しばらく歩いていると、鉄の扉を見つけた。用心しながら開けると、どこかの駐車場に出た。ここってどこだ?ここから物を運び出したのか?
「あれ?工藤君じゃない。どうしたの?」
知らない女性に声を掛けられた。誰だ、この人は…
「ちょっとねぇ、捜査中だよ」
新一になりきる俺。どこまで保つかな?
「捜査?警視庁の地下駐車場で?」
ここって、警視庁なのか…エゲツない場所から搬送していたのか…これは見付からない訳だ。
「あぁ、あの鉄の扉は?」
「機械室へ行く扉よ」
機械室?そんな物は無かったが…扉を開けて中に入る女性。
「あれ?機械室じゃない…なんだ、ここは?」
「おかしいと思わない?地下通路になっているんだよ」
なにかを考え込む女性。警察関係者かな?
「ねぇ、構造図と設計図って、見られるかな?」
「う~ん…そうね、気になるねぇ。これは…よし!見に行こう。庶務課にあった気がする」
女性に付いていく俺。
「宮本警部補、何用ですか?」
庶務課で声を掛けられた女性。警部補なのか。
「この建物の…いや、地下駐車場の設計図有る?」
「有りますが、どうしました?」
「機械室だと思っていた場所が地下通路だったのよ」
「え?地下通路?あったっけ、そんな場所?」
設計図を出してくれた。それを3人で見ていく。だけど、あそこは機械室になっていた。
「あれ?なんで?」
「そもそも、何の為の機械室なんだ?」
「確か、スプリンクラーなどの制御だったはず」
配管図を見る。配管は逆サイドの部屋に向かっている。
「こっちが機械室のようだけど…」
駐車場からは入れないようだ。
「あれ?由美さんどうしたんですか?」
目暮班の白鳥刑事がやってきた。
「いや、工藤君と警視庁にまつわる謎を、解明しているところだよ」
「工藤君?」
俺と目が有った。軽く頷いているが…
「なんか意味が有るんですね、工藤君♪」
俺と認識した上で、工藤新一として扱ってくれた白鳥刑事。