明日奈に頼んで、メディキュボイドの資料を持って来て貰った。久しぶりに来た喫茶ポアロで、俺はナポリタンセット、明日奈はケーキセットをオーダーした。
メディキュボイド…まだ試作段階の医療用のフルダイブVR機器である。ベッドと一体化した箱形の筐体で、リアルでは肉体の損傷などで意識が無くても、脳が正常であれば、VR世界では意識体として存在出来る可能性がある。
「これを?」
「テッサに使う。成功すれば、他の者にも使ってみる」
深雪に連絡して、手配を依頼した。
『わかりました。至急手配をして、設営します』
「頼む」
ただ、現状の用途は終末医療用な点が問題か…まぁ、FLTに頼んで改良してもらえばいいか。試作段階なら、改良の余地が多いだろうな。
「ねぇ、凪さん…」
明日奈が何かを言いたげである。
「何?」
「あのね…私の友達がメディキュボイドの被験者なの。彼女の病名はエイズ…輸血で感染したそうなんだ。ねぇ、治るかな?」
哀しそうな表情の明日奈。その彼女は命の期限が決まったのか…
「免疫不全症候群か…」
専門家のかずえに連絡をしてみた。
『あぁ、認可前のアレでいけるはずよ』
認可前のアレとは、エンジェルダストの細胞活性化作用を利用した肉体の修復、強化薬である。量を間違えると、とんでもない結果になる為、認可は難しいらしい。
「明日奈…認可前の薬を試してみるか?」
「治るの?」
「わからない…だから、試すんだよ。どうする?」
「彼女と相談してみる」
現在、ALOの世界に彼女がいるらしい。
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後日、医療センターに2台のメディキュボイドが運び込まれた。1台はテッサ用、もう1台は既に紺野木綿季と言う少女が眠っている。
「じゃ、かずえ、志保、頼む」
「「了解♪」」
二人は木綿季に新薬を投与し始めた。万が一の為に、俺も同席している。治るか、化け物になるかのギャンブル薬であるから。
テッサの方は、少し身重になった深雪が、指示を出して、装置へ移動させている。テッサには取り返しの付かない申し訳無い事をしたと実感している深雪は、身を粉にして、テッサの為に動いてくれている。
新薬の投与後、木綿季の容体は安定方向である。免疫力が上がって来ている。新薬により、彼女自身の細胞が活性化しているようだ。
俺と明日奈は、ALOの世界へと旅立った。ユウキとテッサと意志の疎通を取る為に…
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予めテッサ似のアバターを作っておいたので、未来訪な世界で右往左往しているテッサを見つけるのは容易だった。
「どうだ?」
「うん…戸惑っているけど…ありがとう…見捨てないでくれて…」
「では、再会記念に…」
「え!ここでやるの?」
往来では出来ない。どこかのベッドルームだな。テッサ向けの欲望が、溜まりに溜まっているのだ。
「他の女性で放出していたんだろ?」
「テッサは別だ♪」
別腹のようなモノである。
「う~ん…それよりも…話したいことが山積みなんだけど…」
「感覚を思い出すのが先だよ♪」
アスナの家に、テッサを連れて行き、俺の部屋で交わった。
「うん、この感覚…」
久しぶりの高揚感に浸っているテッサ。ALOのアバターはGGOよりもましな全裸ではあるが、細部までは作り込めていない。割れ目の中にはポッチと穴しか無いし…ポッチは幾ら責めても大きくはならない、穴の内部は単なる筒状だし…だけど、それなりにリアル体へは、感覚刺激がフィードバックされているようだ。
「生きていた良かった感覚だよ」
それは良かった。
「で、なんで買い物に行ったんだ?」
「メリッサに誘われて…水着を買いに…」
うん?服では無く水着なのか…
「ごめん…ジョンも一緒で、買い物に行けば良かった。心配してくれてありがとう」
「心配していない。ただ、溜まっているだけだ」
「ふふふ♪私はジョン専用の肉便器かな?」
俺に陵辱されることを喜ぶ変態テッサ。ここで抜きすぎると、俺のリアル体が大変なことになるので、自重はする。で、これまでに話したかったことをテッサから聞き取っていく。
「そうか、彼女は、はき慣れないナースサンダルで、蹴躓いただけなのか」
アレは他殺未遂では無く事故だと知り、少し穏やかな表情になったテッサ。
「あの女が、ジョンの隣にいたので、心配だったんだよ」
そうか、心配してくれたのか。あんな身体なのに…
「私の顔は再建出来たの?」
「人工頭蓋骨に置き換えて、それなりに近づけたそうだ。まだ、包帯が取れないから、わからないけど」
「違う顔になっても、見捨てないで…ねぇ、ジョン…」
「のっぺらぼうでも、テッサなら見捨て無いよ。お前は、俺の何の価値も無い命を、見捨て無かっただろ?」
コイツが、エンジェルダストを俺に投与しなければ、俺は今ここにいない。
「覚えていてくれたんだ…嬉しいよ」
俺に抱きつくテッサ。う~ん…胸の感触がリアルと違う。もう少し小さく、筋肉質な体型だったような…
コンコン
ドアがノックされた。
「もう大丈夫ですか?」
アスナの声だ。
「あぁ、服を着て、そっちへ行く」
「わかりました」
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リビングへ向かうと、アスナ、ユウキの他、レン、ピト、シノン、リーファがいた。
「お久しぶりです」
って、レン。
「あぁ、ご無沙汰だな」
真っ赤になるレンとシノン。そういう意味で言った訳では無いのに…アスナが笑っている。
「ユウキ、調子はどうだ?」
「うん♪免疫細胞が活性化したそうだよ。ボク…まだまだ生きられるって」
泣き笑い表情のユウキは、嬉しそうだ。
「そっちは?」
アスナに訊かれた。
「それなり感じているようだから」
「そう、良かったわね」
「それよりも、GGOでイベントが有るんだよ。参加しない?」
って、ピト。コイツが絡むと碌な事にならない気がするが…
「どんなイベントだ?」
「BOB…タイマンバトルだよ」
あぁ、あれか…
「そうだな。テッサのリハビリの一環で参加するかな」
「彼女のリハビリ?」
アスナが不思議そうに訊いてきた。そうか、テッサの正体を知らないのか。
「コイツ、こう見えても、ミスリルの悪魔って言われている凄腕の傭兵なんだよ」
みんなの目にはテッサは、どう見えているのだろうか?
「リアルで傭兵…すげぇ~」
って、ピト。
「うん?ジョンの方が有名だよ。私は後方支援だから」
「ジョンって?」
アスナが不思議そうに訊いてきた。あぁ、本職の話はしていなかったっけ?
「コイツだよ。戦場ではジョン・スミスっていう殺戮者なんだ♪」
嬉しそうに俺の事を紹介するテッサ。だけど…なんだ、そのジョブは…もう少し言い方があるだろうに。
「え?凪さんの本職って、殺戮者なんですか…」
アスナ以下みんなが驚いている。どんな表情をすれば良いんだ、俺は…
「否定しないって、そういうことですか?」
レンに訊かれた。
「まぁ、戦場ではねぇ。殺さないと殺される世界だよ」
「リアルGGOの世界ですかぁ~?」
って、ピト。
「アレよりハードかな。一人で軍隊を相手にするから」
「軍隊と?」
みんな、あの映画のラストを想像してくれたのだろうか。
「軍隊って言っても1個師団とか1個大隊相手だよ、コイツの場合は」
って、テッサ。事実だけど、もう少し言い方があるだろうに。みんな引いているんですが…
「想い出した…ジョン・スミスってスナイパーハンターの?」
ピトがテッサに訊いた。
「そう、そのジョンだよ、このバカは♪」
なんで、俺の話を、そんなに嬉しそうに話すんだ…この女は…
「マジか…」
ピトですら顔から血の気が引いている。それ程の衝撃的な事実だったようだ。
「じゃ、半年くらいリアルで会えなかったのは、戦地にいたんですか?」
アスナが訊いてきた。
「まぁ、そんな感じだ」
戦地というか、傭兵集団やテロ集団の拠点巡りではあったけど…
「恐いよな。そんな奴は。みんなとは距離を置くよ。その方が平和だろ?」
俺はテッサと家から出ようとしたが、
「待ってください。どんな仕事でも、凪さんには傍にいて欲しいです。だって、私の事、シノンさんのこと、そしてユウキのことを助けてくれているじゃないですか」
アスナが俺にしがみついた。
「だけど、リアルな俺の手は、血で汚れているぞ」
「散々、捏ねくり回しているでしょ?今更なんですか?」
明日奈には、そんなに捏ねくり回していない。寧ろ香蓮とか詩乃の方が…
「私は凪さんが必要です。ですから、出て行かないでください。これからも、私を助けてください」
助けているつもりは無い。全て解決するまでが、仕事だから…
そして、GGOのイベントには、俺、テッサ、レン、ピト、シノンが参加することになった。
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GGOの世界へ…
「う~ん…なんかなぁ」
テッサのアバターがツルペタ系になっている。
「胸が無いって、こんなに視野が広いんだ…肩も軽いし、動き易いなぁ」
平板胸に感動しているテッサ。まず、銃を買いに行く。対地スティンガーを手にするテッサ。マジか…戦車なんかいないぞ…
「メインはこれだな。後はサブマシンガンがいいなぁ」
って、FN P90を手にした。コイツ、マジで戦争するのか?いや、レンと被っているが…
そして、練習に…魔物を狩っていく。対地スティンガーで一撃である。練習も何も無い気がする。
で、ナイフで俺と組手…最初はゆっくりで、徐々に早くナイフを重ねていく。
GGOの世界で戦闘意欲を発散できるようになり、リアルテッサの容体もすこしずつ改善してきた。俺以外が手を握っても、握り返すようになったようだ。
「リアル体の容体も改善してきているぞ」
「そうなの?もうすぐ、できるかな?」
「それは無理だよ。まだ修復が終わらないから」
秘部の修復がまだである。少しずつ再建をしているが、まだまだらしい。
「ペニスは握れそうだな」
「握るだけか…そうだ!メリッサをここに呼び込めないかな?」
メリッサか…どうだろう?
「リアルの世界にもどったら、検討しているよ」
「お願いだよ」
「あぁ…」
そして、戦闘リハビリを熟していく。
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イベント当日…メリッサがGGOの世界に舞い降りた。
「不思議な感じです。ここって、リアルでは無いのか…」
初めてのVR世界に戸惑うメリッサ。俺とテッサは順調に予選を勝ち抜いていく。テッサはメインウェポンを使っていない。決勝戦で初お披露目するようだ。
フカ次郎がプラズマバズーカなんて、とんでも無い兵器を手に入れていた。あれは、危険だろうって。回避する自信が無いんだが…
レン、ピト、シノンは知っている戦術で勝ち上がっているが、エヴァはソロ戦は不利なようで、敗退している。問題は、ピトのマネージャーのエムだな。戦車素材の装甲板を盾のようにして狙撃をしている。普通の弾丸では撃ち抜けない強度のようだ。まぁ、移動は出来ない固定要塞と思えば、戦術は簡単かもしれない。
「いいな…大佐が生き生きと戦っているし」
メリッサは、予選画面に釘付けであった。戦闘意欲が湧き上がり始めたようだ。
そして、戦いの舞台は決勝戦へと…
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転移した先は、山の中だった。透明になれるマントを羽織って、移動していく。どこかに知り合いがいないかを探しながら。見付からないまま、最初のスキャンタイムを迎えた。
う~ん…シノンが見当たらない。たぶん、あの洞窟地帯にいるんだろうな。俺を誘っているのか?テッサは俺とは逆サイドの住宅密集地にいるようだ。一番近い知り合いは…レンとフカ次郎のようだ。こいつら共闘しているのか?
姿を消して、レンに近寄り、マントの中にレンを引き込んだ。
「うっ!チートマントですか…え!この姿ではイヤ…リアルでしてくださいよ~」
レンを脱がしたのだが、その全容はQPちゃん人形のような出来映えだった。萎える…ダメだ、これでは…
「こうなっているのか…これはどうだ?」
何もない股間に指を這わす俺…
「うっ!感じます。ダメです…リアルな体が…リアルの時にしてくださ~い!」
うん?達したレンは死亡扱いになった。服装を調えてあげる。そして、マントの外へレンを出して、次はフカだな…でも、あれって、同じ体型だよな…う~ん…
次のスキャン…フカは距離を取ったようだ。レンがやられたので、何かを警戒しているのか?大丈夫だよ。お前は狙わない。リアル体も興味無いし。で、後近くにいるのは…ピトかぁ~
ピトまでもう少しって処で、ピトのいる辺りが爆発した。あれって、プラズマ弾か…レンをピトにやられたと思ったフカの反撃のようだ。アブねぇ~、巻き込まれるところだったよ。そうなると、シノンだな。洞窟地帯を目指した。
シノンの元へ向かう途中、エムが銃撃されていた。相手は対地スティンガーのテッサだな。あの戦車装甲板が粉砕されていた。驚いたエムの頭部が対地スティンガーで粉砕されているし。あれって、痛いんだろうな…
テッサとフカがヤリ合ってくれると、シノンと愉しむ時間が稼げそうだが…夢は途絶えた。シノンまで後少しって処で、シノンがいると思われる洞窟にプラズマ弾が…洞窟が消えていく…スキャン結果は、やはりシノンが消えていた。
残りは5名…俺、テッサ、フカ、何故かユウキ…後、知らん奴だ。遊ぶならテッサだが…フカはどこだ?あれ、潰していないと愉しむ時間が稼げない。
射程は1キロってところか?岩山の高い場所を陣取っているようだ。テッサはどこだ?って、ユウキが近くいる。ユウキは俺に気づいて接近してきた。この透明マントは、スキャンで場所が特定されてしまうのが難点である。プラズマ弾で弾幕を張ってきたフカ。透明マント対策だな。アレは…
「いたっ!」
しまった。ユウキに見付かった。足跡が残るのも難点である。マントをしまい、両手にナイフを手にした俺。
「来いよ、ユウキ♪」
ユウキの繰り出す剣をナイフで受け流しつつ、服を斬り刻んで行く。
「さすがですね。服だけを斬り刻むなんて」
余裕が見えるユウキ。だけど、俺はダッシュで逃げた。弾幕が降り注ぐのが見えたから。流石のユウキも、プラズマ弾の弾幕は避けられなかったようだ。
って、前からは対地スティンガーが飛んで来た。避ける俺。挟まれた。マズいって…普通、人間相手に使わない兵器に、挟まれているし…どうすんだ?チートなP38を手にした。
後からグレネードが飛んで来た。プラズマ弾は弾切れか?が、放物線を描く奴は、撃ち落とせない。タダひたすら、逃げる俺。フカの装備は、キラー俺って感じである。最初に消しておけば良かった。
放物線を描くフカの弾。俺の位置から見えない場所にいるようだ。アイツ、千里眼持ちか?的確に俺に近づいてくるグレネードの弾。
まずはテッサだな。スティンガーの弾は直進するので、位置は特定しやすい。あの弾は跳弾する心配も無いしねぇ。
ようやくテッサを見つけて、抱きついた俺。だけど、テッサの手には、丸い玉が…
「ふふふ♪ポチっとな」
テッサと無理心中した俺…優勝はフカ次郎だよ…
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「そんなに凹むなよ♪」
笑顔のテッサ。俺と心中出来たことが嬉しいらしい。
「むっ!」
レンが俺を睨んでいる。まぁ、腹上死に近いもんな。一旦ログアウトしたそうで、リアルな身体の秘部が、大変な事になっていたらしい。
「まさか、洞窟にプラズマ弾とは…」
シノンも凹んでいる。フカによれば、俺とシノンがしけ込んだと思い、入り口から奥まで見通せない洞窟を破壊しまくったようだ。
「シノンまで、もう少しだったのに…」
「させるか!」
う~ん、次回が有ったら、まずフカを消すか…あの武器は厄介だし。