夜中…緊急案件が入った。衣服を調え、かなめを置いて、リビングルームへ向かった。
「凪、直ぐにアイと共に向かって。データはアイへ転送して置く」
「何が起きたんだ?」
「プライベートジェットが墜落したのか、予定時刻になっても羽田に着かないって」
それは緊急だな。自衛隊や警察は夜明けにならないと動けない。まして、首相が失脚したので、政局は不安定だし。
俺は、装備を整え、アイに載った。
「アイ、テイクオフだ!」
『了解。飛行計画書に基づいて、逆に飛んでみます』
「頼む」
アイは飛び立った。漆黒なる世界へ…
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北海道から羽田への飛行計画書。搭乗員はパイロット、所有者の孫、その恋人、ガードが1名とある。積み荷は?
「香さん、積み荷は?」
『お嬢様の旅行の荷物くらいのはず…あれ?おかしいな、重量が重すぎるなぁ』
飛び立つ前に、積み荷の重量を量って、記録することになっている。
『なんか、ヤバい物で積んでいたのかもな…リョウに情報屋を当たらしている。追加情報が入り次第、知らせるよ』
知らず知らずのうちに、運び屋にされることがある。空港職員になりすまして、プライベートジェットに積み込む。個人所有の為、内容物の検査は無い。有るのは、最大積載量の検査だけだ。なので、空きのある機体に載せられるケースが有るらしい。
飛行計画書によると、海沿いを飛ぶことになっていた。だけど、レーダーでの消失地点は山沿いである。ハイジャックの末の墜落か?
レーダーによる消失地点のデータが送られて来たので、そこへ急ぐ。現場周辺の山は、熱探査装置で反応があった。何かが燃えたようだ。それも広範囲で。赤外線カメラで、動く物が無いかをチェックしていると
『ロックオンされました。ミサイルが来ます』
はぁ?ロックオン?空自に連絡していないのか?
「回避しろ。相手の所属をチェックしてくれ」
『了解!』
チャフと呼ばれる囮を撒きながらエレベータアップするアイ。
「香さん、撃たれたよ」
『こちら、安室。成田の管制に到着した。撃たれただと?空自へ連絡はしてある』
「安室、チャンネル切り替える」
『了解』
傍受されにくいチャンネルに切り替えた。
「安室、所属は空自じゃない。また来た…」
どっから撃っているんだ?機体が見えない。
『潜水艦から撃ち込まれています』
はぁ?どこの国だよ。
「安室、潜水艦から狙われている」
『なんだって…』
「反撃していいか?」
『俺の一存では…』
安室の困った声。だけど、こっちが危ない。
「安室、反撃する。こっちが危ないし、乗り組み員も危険だ。アイ、位置を特定したら、リニアガンで反撃だ」
『了解です』
何を積まれたんだ?おいおい…だが、チャフを撒いたことで、敵が撃って来なくなった。その変わり、軍用ヘリが5機飛来してきた。ライトも付けずに…
「アイ、カウンターで落とせ」
『了解です』
赤外線カメラの映像をチェックしていく。微かに光が見える。銃撃戦が地上では行われているようだ。
窓を開け、対戦車ライフルを構えた。空気の振動…来る…そこへ、2発撃ち込む。1発はミサイルに、もう1発はヘリにだ。遠くで大きな火の玉が二つ見えた。敵の僚機の姿も見え、そこに撃ち込む。戦車の装甲を粉砕するリニア式のライフルである。ヘリなんか柔らかいもんだよ。大きな火の玉が見え、また僚機を発見し狙撃する。
「アイ、敵の空軍はいるか?」
『ステルスがいるかもしれません』
可能性は捨てきれない。夜明けまでが勝負だろ。明るくなれば、敵の正体が判明するから、敵は逃げるはずだ。夜明けまで3時間もある。根気戦か?
「アイ、麓で降りられる場所を、探してくれ」
『了解です』
「安室、自衛隊に顔って効くか?」
『多少はなぁ』
「三沢のレーダーでなんかわからないか?」
『確認してみる』
「地上で銃撃戦を確認した。地上のバックアップに向かう」
『了解!』
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地上…真っ暗である。ライトなんか付けたら、狙撃して下さいって感じだよ。空気の振動を頼りに、山を登っていく。赤外線ゴーグルを付け、道無き道を登っていく。
「大丈夫か?」
日本語が聞こえた。要救助者か?
「僕を置いて行け…彼女を頼む」
「そんな訳には…あぁ、そうだな…」
この声、知り合いの声に似ている。
「クッキーか?」
声を掛けた。
「うん?まさか…ジョンかっ!」
元相棒の朽木三郎、通称マッドクッキーのようだ。
「状況はどうだ?」
「要人は無事、要人の彼氏は…そっちは?」
「俺一人だ。空を得体の知れないのが飛んでいる。積み荷はなんだ?」
「積み荷?そういえば、知らない木箱があったなぁ」
「それ狙いだよ」
「あぁ、疑似運び屋か…」
クッキーは事態を把握したようだ。彼らの元に着くと、要人の彼氏は、出血が酷い。ダメだな、これは…動かせないぞ。
「麓にヘリがある。そこまで行くぞ」
「彼は?」
お嬢様が、彼氏を指した。
「保たない。かわいそうだが…」
「なぁ…彼女を頼む…」
男はパイナップルを持っていた。一般人では無いようだ。
「クッキー、お嬢様を背負え。俺がガードする」
「あぁ、頼むぜ、相棒♪」
クッキーとはアフガンで出会い、コンビを組んでいた。短い間ではあったが。同国の者の同士、息も合い、気心も合った。
空気の鳴動…狙撃か。俺がそんなこと、許さない。スナイパー達を狩っていく。
「あの人も、傭兵?」
お嬢様が、クッキーに訊いた。
「あぁ、俺の知る限りナンバーワンの傭兵だ」
俺の知る限り、ナンバーワンはリョウだと思う。
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無事にアイに二人を収納した。問題は…積み荷か…
「クッキー、墜落地点を覚えているか?」
「あぁ…あの山の向こう側だ」
赤外線カメラで見る限り、火の手は無い。どうやって、持ち出すんだ?処分で有れば、火の手は上がると思うのだが。