---谷口 はるみ---
全裸になってガウンを着ろって?医療関係者達の目付きがイヤらしいのだが。問診を終え、全裸での身長、体重測定って…私達は女囚では無いのだが。ガウンの布地は薄い。透けて見るのでは無いのか?これを着て、外にあるレントゲン車へ行けって…皆恥ずかしさから顔も耳も朱く染まっている。柚子がいれば、文句を言っただろうな。芽衣が消えた日に、柚子も消えた。どうしたんだ、あの二人は?まさかの駆け落ちか?
レントゲン撮影…なんだろうか?悶悶としてきた。医療関係者達の視線で、濡れてきた気がする。こんな場所で、醜態を晒すわけにいかない。
「谷口はるみさん、MRT検査へ行ってください」
え?両腕を拘束され、抱えられるようにして、隣の車両に連れ込まれた。ベッドに横になり、輪っかを潜る…なんだろうか、朦朧としてきた。夢うつつな感じである。
その後、全身にジェルを塗られていく。エコー検査だという。お尻に内視鏡を入れられ、膣にも何かを入れられた。腰が勝手に動く。なんだ、これは。
新しい理事長が私を抱き、胸を弄っている。下半身に感覚は無いが、腰が動いている。数名の医療関係者達に、身体中を弄られ、検査機器で弄ばれ…意識が飛んでいく。
---マッキー---
レントゲン車に乗り込んだ人数と、降りた人数が合わない。どこに行ったんだ?重なってみえるMRT車に載せられたとしても、その周囲には降りた生徒の姿は無い。
「おかしいなぁ。どこに行ったと思う?」
安室に訊かれた。そんなことを言われても…双眼鏡は視野が狭い。
「どこかに保管か?あのMRT車って装置が載っているのか?」
「あれ自体が保管場所か?」
「クッキー、作戦決行だ」
『らじゃ』
無線機で相棒にゴーサインを出した。生徒の無事を優先である。
「何をやらかすんだ?」
安室が苦笑いしている。
「あの会員制のバーの入口を、アロンで接着した。あの扉からの出入りは出来ない。で、ビルの屋上にある排気設備を停止させて、特殊な気体を流し込むんだ」
「特殊な気体?」
「無色透明で無害な気体だけど、この特殊レンズを通すと、色が見えるんだよ」
特殊レンズの嵌まった眼鏡を安室に渡した。俺もその眼鏡を装着した。排気出来ない気体は、地下街に充満し、地下街と繋がっている地上の隙間から、湧き上がるはずである。それを見つけ、突入するのだ。
「冴子のチームにも、その眼鏡を渡してある。上空からアイが監視もしてくれている」
言っている傍から、校庭が色づきだした。発生源は、MRT車の下だ。あそこに搬入口があるようだ。
『安室班へ突入せよ、MRT車両の下の地面を確認せよ』
安室が無線で指示を出した。
周囲から湧き出た黒服の一団が、脇目を見ずにMRT車両に群がっている。
『こちら冴子。見つけたわ。住所は…』
冴子はアイに搭乗しており、上空から指示を出している。一般の家が色づいているらしい。そこが、管理者の家だろう。冴子のチームが現場へ向かったようだ。
じゃ、俺達も♪
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安室と二人で、医療関係者らしき奴らと教頭を捕獲していく。理事長代理が見付からない。逃げたのか?あの車両の下には、エレベーター仕込まれていた。車両から、地下街へ、商品を搬送したようだ。
そのエレベーターを使って、俺達も地下街へ降りていく。あぁ、俺は変装しないと、高級湯屋への出入りが禁止になっちゃう。
エレベーターは、あの店に直結していた。そこは商品の管理倉庫のようで、料理教室で使っていた巨大冷蔵庫が搬入されていた。
俺と安室、そしてクッキーで、地下街を制圧していく。俺は冷蔵庫の中を調べた。そこには、今日入荷したばかりのピチピチの女子高生が、仮死状態で保管されていた。知り合いもいる。柚子のダチのはるみんだ…
「ますい!凪、戻って来い!」
遠くで安室の声がする…
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目が覚めると、冴子が添い寝をしてくれていた。
「ここは?」
「私の部屋…凪君が用意してくれた麗香のビルの中にある部屋よ」
あぁ、そう言えば、記憶に有るような、無いような。
「俺はどうしたんだ?」
「覚えていないのね…」
冴子が哀れむ様に俺の頭を優しく撫でている。
「覚えていないなら、いいのよ。想い出さないで」
俺は何かをやらかしたのだろう。相当酷いことを…
「俺は、どうなんたんた?!なぁ、冴子…」
「どうもならない。凪君は凪君よ。ねぇ、1ラウンドして。再生された下腹部を試したいの」
再生されたのか。卵巣以外は…俺は冴子と濃厚に1ラウンドプレイした。
---冴羽リョウ---
安室の話では、凪の怒りが爆発した瞬間、アイツは化け物になったらしい。まるで、エンジェルダストを投与された人間のようになり、味方以外の奴らを次々と…獲物がいなくなるまで化け物状態で、獲物がいなくなると、普段の凪に戻り、意識を喪失したようだ。冴子の話では、その間の記憶が無いらしい。
不完全な細胞は活性化をアイドリング状態で保持しているようだ。スイッチが入ると活性化した細胞が蠢き、スイッチが切れると不完全な細胞にバトンが渡されるイメージのようだ。活性状態の凪は、銃弾が意味を為さないくらいに、強化されているらしい。これを良い方向と取るかどうかだな。
「どうするんだよ、リョウ」
香に訊かれた。だけど…
「どうにもならない。凪は凪だよ。俺達には裁く権利は無い」
だから、終着駅はテッサかかなめなのか。アイツ、気づいているんじゃ…
「まぁ、イザとなったら、俺とお前で、凪を仕留めようぜ」
って、ルパン。その顔は哀しそうだ。ルパンにとっても弟のような存在らしい。
「で、何か掴めたか?」
「盗めない物は無いはずなんだが、この件の情報だけは盗めないでいる。どこに保管されているんだ?」
ルパンにも協力をして貰っている。情報が少なすぎるのだ。まず、構成員がわからないので、情報の在処すらわかっていないのだ。
「安室!お前の子飼いの名探偵はどうなんだ?」
工藤新一のことだ。
「彼も、情報が少なすぎると言っている。彼が言うには、工藤優作との接点を調べてくれって」
工藤優作かぁ…凪の父親でもある。アイツはどう関わって居るんだ?まだ、意識が戻らないので、事情聴取が出来ていないキーマンではある。
---マッキー---
はるみん達を連れ、医療センターに戻った。意識が戻らない生徒達を見て、芽衣と姫子に衝撃が走っている。
「なんで、こんなことに…」
「志保、薬剤を全て押収したから、分析を頼む」
「わかったわ。解毒剤の作成を急ぐね」
「かずえは、このマイクロカプセルの中身の分析を頼む」
「これが、悪魔の薬ってことね。まかせて」
俺は、工藤優作の元へ向かった。
「深雪、コイツをメディキュボイドに設置してくれ」
俺と一緒に医療センターに来た深雪、指示を出した。
「まさか、仮想空間で、尋問ですか?」
「他に手が無いだろ?これ以上、犠牲を払いたくない」
「しかし…」
「禁止されているのか?誰にだ!」
「いえ…今設置したします」
深雪は何かを隠しているようだ。まだ、深雪の産んだと言う子供に会っていないし。あれから、何ヶ月過ぎたんだ?
「なぁ、俺達の子供に会っていないんだが…」
はたっと、動作が止まる深雪。触れちゃマズいことなのか?
「お前、本当に産んだのか?」
「産みました…元気に育っています」
「名前はどうした?」
はっとした深雪。
「産まれた子供名前を知らないんだけど…どうしてだ?」
「それは…」
首筋に衝撃を感じた。くそっ!意識を狩り取られたのか。
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意識が戻ると、テッサの部屋にいた。俺がメディキュボイドに設置されたようだ、
「何、やってんだかぁ」
テッサが呆れている。
「そうだな…俺は何をしているんだ」
テッサが俺の隣に座った。
「言えない事の中に真実があるんじゃないかな」
って、テッサ。俺と深雪の子供か?それが真実ってことか?それの意味することは?
そうか…そういうことか。叔母に送り込まれたのか、深雪は。俺の子供を得る為に…
「結論は出たみたいだね」
「何の為に俺の子供が必要なんだ?」
「う~ん…情報が少ないから、わからないよ」
そうだよな。俺にもわからない。そもそも、叔母は本当に味方なのか?
「疑心暗鬼の時は、動かない方がいいよ」
「だけど…これ以上の犠牲は…」
待てよ…
「なぁ、テッサ…最期にお前の元を訪れる。俺の願いを叶えてくれるか?」
目を見開いて俺を見つめるテッサ。
「出来ないって言ったでしょ!あきらめなさい」
「なぁ、頼むよ…テッサにしか頼めない。かなめの手は血で汚したくないんだよ」
「う~ん…人生最初で最後の共同作業が、ケーキカットて無くて、ネックカットなんてイヤだよ~」
俺に泣きすがるテッサ。だけど、
「テッサ…必ず、テッサの元に戻る。だから…」
「だって、死んだら一緒になれないよ。ねぇ、私の願いはどうしてくれるの?」
テッサの願いか…叶えてあげたい。
「わかった。テッサの願いを叶える。だから、俺の願いも叶えてくれ」
「ズルい…ズルすぎる…あんたの願いを叶えた時点で、私の願いは消えるんだよ。分かっている?」
そこが問題である。どうすれば、いいんだ?これが一番の難問である。
コンコン!
誰かが訪ねて来た。ドアに向かい、応対するテッサ。テッサが訪問者を中に入れたようだ。
「私に話があるそうだな、息子よ」
工藤優作が部屋に入って来た。
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「息子?俺はお前の息子では無い。四宮凪だ!」
言い切った俺に、笑顔を向けてきた優作。どういう意味だ?
「そうか、真実に辿り着いていないのか」
真実?俺の工藤新一がソックリな件か?他人の空似では無いのか??
「何が知りたいんだ?」
「ナイトバロンは誰だ?」
「これはストレートだな。いきなりゴールを訊くとは」
表情が全く崩れない優作。
「そうだな。ライヘンバッハの滝と言えばどうだ?」
「ジェームズ・モリアーティか?」
名探偵シャーロック・ホームズの宿敵で、ホームズと一騎打ちの末、ライヘンバッハの滝で死んだ架空の人物である。
モリアーティか…その言葉の響きには懐かしさがある。
「四宮守明がラスボスか?」
俺の父親の名前を出した。
「なかなか良いセンスだな。殺戮者にしておくのは、おしいなぁ。彼とは学生時代に親友だったんだよ」
そこが接点か…見付からない訳だ。
「彼は組み合わせに興味を持っていて、配合の研究者になったんだ」
組み合わせ?
「人間は膨大な数の細胞を組み合わせて構成されている。彼は、そこに興味を持ってしまったんだ。彼の妻は、君も知っている通り、大病院の娘で、再生医療の研究をしていた。その二人は偶然出会い、結婚をしたんだ」
俺の両親がなんなんだ?
「彼と彼女の間には、女の子が生まれた。組み合わせに興味を持っていた彼は、違う男性との間に男の子が出来るのかを知りたくなったんだよ」
他の男性と母さんが…俺の父親は誰だ?
「だけど、彼の妻は、他の男性に抱かれる事を拒否をして、彼はパンドラの筺を開けてしまったんだ」
パンドラの箱?この世界に災いを撒き散らす箱だよな?
「彼は極秘資料を盗み出し、悪魔の所行を行ってしまった。彼の妻の細胞で精子を作り、私の細胞で卵子を作り、その二つを受精させたんだ」
まさか、俺の両親って…
「そうして試験管で作り出されたのが、君だよ。四宮凪君♪」
そんな…工藤優作が母親だと…
「そうそう、司波深雪さんが、君に私を会わせたくなかったのは、真実が君に伝わるのを恐れてだよ。彼女には感謝した方が良いぞ」
深雪は知っていたのか。その上で俺との間に子供を…計画的か…
「更に君を狂気の世界へ誘おうか。君は四宮凪のクローンだよ」
あぁ、それは知っていた。俺は存在しちゃいけない存在である。だから、ケリを着けたら、消える予定だ。
「彼の狂気の為せる業だよ。本物では無く、クローンを世の中に出すと、どう世界が動くのかを見たくなったらしいんだ」
あんなに優しかった父さんが…元凶なのか…
「私に宛てた手紙に書かれていたから、事実だよ」
事実なのか…くそっ!テッサが俺に抱きついてくれている。これ以上、俺が壊れないように。
「表の世界では、家畜のブリーダーとして名声を手にして、裏の世界では交配無しで人間を作れる神として君臨していた。使い捨ての兵士を生産出来ると噂が広がり、戦争をしている国々から、招聘をされまくったらしい」
待てよ?人間を作りだしたとしても、直ぐには成長しない。即戦力にはならないはずだ。なのに、何故?
「考え込んでいるのか?もしかして、成長のことか?」
「あぁ、そうだよ。細胞増幅器で細胞の成長が加速出来るのは、胎児までのはずだ。即戦力になんかならない」
「何を言っているんだ?君は経験しているだろ?そこにいる彼女のおかげで」
はっとして、身震いを始めたテッサ。まさか…赤子にエンジェルダストか?
「正解に辿り着いたようだな。そう、エンジェルダストだよ。まさに天使の贈り物であった。赤子達が、敵兵を殺戮していく。心臓が耐えられなくなると破裂していく。地獄絵図だよ。そんな風景を見た敵兵は精神を病んでいく。そして、彼は結論を見いだし、違うことに興味を持ったのだよ」
違う事?
「小松原の親父が提唱した性犯罪の無い世界だよ。彼はコレに目を付けた。彼の妻を巻き込んで、彼は性犯罪を無くす研究を始めたのだ。そして、産み出されたのが、リビングダッチワイフや、リアルオナホールなどの性処理道具だ」
そんな…母さんまで…
「だけど、小松原息子達が悪でねぇ。証拠隠滅の意味でクローン体の処分を依頼されたのに、後々強請る材料になるからと、実物を処分したそうだよ。これには、彼は怒りを覚え、小松原と決別しようとしたそうだが、妻を人質に取られ、小松原の息子達に使われるようになったそうだ」
俺は…どうすればいいんだ。
「約束守るから…」
テッサが俺の耳元で、震える声で囁いた。