---テレサ・テスタロッサ---
珍しく私をデートに誘うジョン。その顔は何か疲れ切っていた。
「テッサ、二人きりになりたい」
まだ、出来ない。いや出来ないと思うんだけど、いいのか?私をアイに搭乗させて、テイクオフさせたジョン。どうもヤル訳では無いようだ。ちょっと残念。
「どうしたの?」
「テッサに頼みがある」
私に頼み?二人きりになったってことは、重要な頼みなんだろう。いつもの殺してくれでは無い頼みのはず。
「テッサの望むように、もう俺はテッサか、かなめに殺される事を、夢見ないことにした」
それは一安心である。私の望みを叶える気になったようだ。
「その代わり、船に戻り、ある目標を破壊して欲しい」
え…それは、最終の敵を見つけたってこと?復讐の旅路の最終局面か…
「わかった。頼んでみる。でも、私は引退した身。可能かどうかわからないよ」
そいつを倒さない限り、彼は私の元へは来てくれないだろう。
「ミスリルには正式に依頼した。だから頼む」
ジョンが真剣な眼差しで、私を捉えてくれている。
「正式な依頼なら、叶うと思うけど…どうして、私に?」
「テッサに、撃って欲しいから」
それは、指揮所に私がいて、私が命じるってことだ。だけど…
「何度も言うけど、私は引退したのよ」
「大丈夫。みんな、暖かく迎えてくれるよ」
ジョンは何か確信があるようだった。
「ミスリルには代金を送金してある。テッサには戻って来たら、望みを叶えてあげるよ」
望みを叶えてくれるんだ…これで、添い遂げられるんだ…ようやく、決心してくれたんだね♪
「わかったわ」
幸せになるには困難が憑き物かな。
◇
作戦決行の前日、メリッサと共に、昔の職場であるTDD-1「トゥアハー・デ・ダナン」という戦略級の潜水艦に乗り込んだ。船まで、ジョンがアイで送ってくれた。頑張らないとダメだな。
「作戦海域へと潜行します」
潜り始めた船。レーダーにはアイの機影が遠くへと飛び去っていく様子が映し出されていた。レーダーに気を取られていた私に、現在の艦長であるリチャード・ヘンリー・マデューカスが、制服を手渡して来た。
「これを着て下さい。大佐の部屋は、永久保存されています」
私の部屋が保存されているのか?狭い船なんだから、使い回せばいいのに。うれしいやら、なんか複雑だ。手渡された制服へ、保存されている自分の部屋で着替えた。あれ?現役当時の黄色い制服だし。着替え終わると、指揮所に戻り、現艦長に訊いた。
「私、引退して、既に民間人なんですが…」
「いえ、我々にとって、大佐は大佐です。さぁ、艦長席へどうぞ」
戸惑う私。民間人になった私が座っていいのか?現艦長と副官に促されて、艦長席に座った。目の前には懐かしい風景が見える。
「いいか!大佐を罠にかけた奴らを、一掃することに協力をする。作戦海域に入り次第、周囲を探査しろ」
発射したのが、この艦だとバレるとマズい。目標物は民間のビルであるらしいから。なので、監視されないように、位置取りをするようだ。
「作戦海域に入りました」
「直ぐに着弾誤差を計算させろ」
「はっ!」
現艦長が、立ったまま指示を出していく。
「着弾誤差は20秒、10メートルです」
問題無いレベルだ。
「発射まで、後11時間です」
「1番から4番まで、装填完了しました」
目標地点へは、ロフテッド軌道を指示してきたジョン。目標地点では、ほぼ真上から着弾する。
「タイマーをセットしておけ。他の部隊と連動だそうだからな」
他の部隊…ミサイルの直後に、間髪を入れずに同じく真上から、アイが爆弾を投下するらしい。ICBMは目眩ましにするようだ。そうなると、アイからの投下は、バンカーバスターか?
そして、運命の時を待つ…
「発射しました」
「直ぐに作戦海域を出て、日本近海へ向かえ。大佐を送り届ける」
「了解!」
これで、ジョンと添い遂げられるんだ♪