---四宮守明---
もうすぐ、小松原の親父の考えていた世界になるはずだ。リアルオナペットが完成し、売れ行きも良いそうだ。アレと交わった男性の生殖能力は破壊される。二度と精子は作れなくなる。女性の方は市中に撒いたクローンと交わることで、女性しか産めなくなる。恋人としかしない、普通に生きている者達は、今まで通りであるから、性欲の強い奴らだけ、一掃できるだろう。
勝ち誇った私のスマホに着信のようだ。応対すると凪だった。どうやって、この番号を入手したんだ?
「どうしたんだ?今更なんだ?」
『宣戦布告だよ。お前は育ての親だが、生かしておくことを止める』
「どういう意味だ?」
『お前…栄依子に手を出しただろ?』
栄依子?記憶に無いなぁ。
「誰だ?そいつは?」
『四宮ショッピングモールに、アクセサリーを卸していた女性だよ』
あぁ、あのミルク娘にしたやつか。その後、死蝋人形になったようだが。
「凪にしては、熱くなっているな」
『あぁ、俺の中学時代を覚えていてくれた、大切な友人だからな』
「お前の存在を覚えてくれたのか。その程度で大切だと?」
今更、何を言っているんだ?この局面で…私の勝利は揺るぎないのだ。この四宮タウンは、破壊不能の要塞だしな。
『あぁ…そうだ。悪いか?』
「悪くは無い。お前の価値感だしな」
クローンの価値感は、意味不明だな。まったく…
『俺は、お前を消す!』
何を言っているんだ?破壊不能の要塞にいる私を?何を寝ぼけたことを言っているんだ。
「消す?ここは天空の城壁に護られているんだぞ。狙撃は無理だぞ」
『あぁ、真横からはな』
うん?横方向では無いのか?下から狙撃は出来ない。そうなると上からか?レーダーには、爆撃機も、ヘリ程度の機影すら、何も映っていない。はったりのようだな。
『なぁ、ゼロポイントって、レーダーに映らないんだよな?』
凪が妙な事を言った。映らない?そんなはずは…あっ!真上か?
「おい!レーダーの範囲を広げろ!」
高高度からの爆撃か…
「周囲に電波障害が起きますが」
「かまわない」
部屋にいる部下に命じた。どうだ、これで映るか?って言うか、ゼロポイントから狙撃って、無理だろ?
「モリアーティ様、ICMBがロフテッド軌道でゼロポイントに着弾します」
何?テッサを使ったのか?司波兄妹が、あの女を確実に仕留めなかったのが、敗因か?
「対空砲で撃ち落とせ!」
「ゼロポイントでは無理です。真上には撃てません!」
『どうしたよ?随分とあせっているな』
私は凪の虎の尾を踏んだのか?
『あぁ、後、蟻の巣も駆除する』
地下に展開する研究、製造施設を破壊するのか?
「それこそ、無理だよ。この四宮町だけでなく、隣接する街の地下にも拡大しているんだぞ」
『だから、何だ?俺には蟻達がどうなろうと知らない。駆除するだけだ』
マズい…コイツ、キレているのか?他人を犠牲にしても、やり遂げる覚悟のようだ。
「おい、ケイブに閉じ込めてある天使達を解放しろ!研究者達を避難させ、研究施設に誰も入れるな。研究資料はすべて、クラウドに保存だ!」
「はっ!」
瀕死のオナペット達を保管してあり、こういう有事の際には、エンジェルダストを投与して、ガーディアンにする準備は出来ている。
『親父、サンキュー♪データは全て貰った』
何だと…
「凪!貴様、何をしたんだ?」
『ハッキングしてあった。クラウドに転送したら、俺のクラウドに転送するようにしてあり、転送したデータは削除させて貰う。あぁ、今、センターホストをハッキングした。システムを弄ぶ』
「大変です。四宮町全域が停電です」
くそっ!レーダー網も、侵入者用の探知センサーを無効化か。
その時、頭上から衝撃が襲って来た。着弾したようだ。だけど、これくらいでは、このビルは全開しない。エレベーターで階下へ逃げようとするが、停電で動かないようだ。じゃ、階段で…
『今のは囮だ。次が本命だぞ♪』
階段を降りている俺に、凪が嬉しそうに言った。ICBMが囮?では、本命は…私の意識はそこまでだった。崩れ落ちるビル、崩壊に巻き込まれ、吹き抜けから地上へと落下していく私。最期に見た物は、頭上から落ちてくる無数の爆弾だった。
◇
四宮センタービルは、最上階から崩れていき、ビルのあった部分には、クレーターが生じていた。