---マッキー---
アイに起こされた。目的地に着いたらしい。目の前はオレンジ色をした球体が…
『これより、太陽の引力圏に入ります。なるべくダメージをもらわないように、角度を調節して、落下します』
そうか、ここで焼却されるのか…焼却灰は、あの青い星には届かないだろうな。
「アイ、今まで、ありがとう」
『いえ、これからも、いつまでも一緒にいられます。凪様の細胞の灰を、私の金属物質が包む筈ですから』
そうか…アイと永遠に一緒にいられるんだな。アイと俺はゆっくりと太陽に引き寄せられていく。
『最期のデータを送信します…』
アイの声が聞こえ、アイが解け始めた。
---冴羽リョウ----
俺もそうだが、ルパンも宗介も、時計の針を気にしている。何も予定日を合わせないでもいいだろうに。妊婦達が一斉に分娩室に連れ込まれている。陣痛が起きる時間も一緒って…律儀過ぎる、アイツは…
「おっぎゃ~」
赤子の声、一斉に立ち上がる男性陣。誰の子だ?分娩室のドアが開き、芽衣が子供を抱いて出て来た。
「誰の子ですか?」
宗介が訊いた。
「冴羽さん、おめでとうございます。冴子さんの子供ですよ」
って、俺に赤子を手渡して来た。どう、抱けばいいんだ?柚子が抱き方の指導をしてくれた。そうか、首が座らないとダメって言われたような。
「芽衣、香は?」
「あぁ、帝王切開しています。処女懐妊なので、膜がジャマで、赤ちゃんが出られないみたいで…」
芽衣が苦笑いしている。あぁ、アイツ、交わらないで入れたのか。俺に遠慮して…律儀すぎるだろ?
俺は赤子を抱いて、手術室の方は移動した。
「冴羽さぁ~ん!赤ちゃんは置いていってください」
柚子が俺を追って来た。あぁ、冴子に返すのか…母乳タイムかな?俺も吸いたいんだけど…
---工藤新一---
時計の針ばかり気にしている俺…今日は1日だけ保釈された。子供達との面会日だから。ようやく俺の裁判が始まり、もうすぐ判決が言い渡されるが、留置日数が懲役日数を超えているので、安室さんによると釈放の可能が大らしい。
後、5分もあるよ…待ち合わせの時間まで…
「お父さぁ~ん」
ナミちゃんが走ってきた。その後には、乳母車に子供を二人乗せた蘭の姿が見えた。
「パパ」
「トト」
様々な呼び方で呼ばれる俺。まぁ、悪い気はしない。
「槇村さん…いい?今日は槇村さんよ!」
蘭に念を押された。
「あぁ、わかっているよ。で、ナミはどこに行きたいのかな?」
「安室ちゃんのナポリタンが食べたい♪」
親子だ。アイツと好みが一緒だし。まぁ、アイツのお陰で俺は、蘭と並んで歩ける幸せ。まぁ、いいか。
---四葉真夜---
神様、後一度だけ…奇跡を起こして下さい。あれから既に5年以上も経過している。
時間になり、細胞増殖装置を開ける。ダメだ…また失敗だ。スライム状態の生物が生まれた。こんな姿じゃダメなのよ…
あの時、凪が吐血した際の内容物を保存して、そこから、凪のクローンを…クローンのクローンは難しい。ただでさえ不安定な細胞である。それを増殖するので更に不安定になる。どうすれば、あの子は帰ってくるの?
「叔母様…」
深雪が声を掛けてきた。
「あなた達のした行為は許さない。凪の大切な者を手に掛けるなんて…その上、嘘の報告?有り得ないわ」
「叔母様、それは軍部の命令です」
って、達也。そうだけど…わかってはいるんだけど…だけどねぇ。心情的に許せない行為である。
「ねぇ、どうすれば、凪は帰って来るの?あなた達、軍部からデータを取ってきなさい!」
「軍部でも、そんなデータは無いです。四宮ラボが殲滅され、研究資料が無いんですから」
守明はこの国の軍部に雇われていた。少子化に悩む、この国の兵士の増強を依頼されていたようだ。それは、小松原の目指す方向とは違うのだけど。その守明の配下だった司波兄妹。許せない…そうか…こいつらを使って…こいつらの調整された細胞で不安定な細胞を…
◇
その夜、凪の夢を見た。凪の隣には知らない女性がいる。
『叔母さんにも、サプライズプレゼントを贈りました。役立ててくださいね』
くったくのない笑顔の凪は、知らない女性と共に、オレンジ色の壁に消えていった。
そこで目が覚めた。凪は言っていた。私にサプライズを…どこに?あの女性は誰…彼の周囲の女性で顔を知らないのは…そうだわ、人工知能のアイ…まさか…
研究室にある、アイのバックアップデータに目を通していく。有った!これかしら。私の知らないフォルダーがある。『スライムより』ってフォルダー名…私の失敗を見ていたのかしら。久しぶりに、表情筋が緩んでいく。笑顔を凪に見て欲しいから。どこで見ているの?ねぇ、凪…
そのファルダーを開くと、膨大なデータが入っていた。これは…、量子化されたデータ?凪のかしら?うん?アイのも有るみたいねぇ。
その日以来、そのデータを人工頭脳の記憶領域へ入れる為に、記憶データへ変換する作業を始めた。それと並行して、調整された細胞を使い、不安定な細胞の安定化実験も繰り返していく。
償いをさせる為、司波兄妹にはドナーになってもらった。彼らの細胞を使い、細胞の安定化実験を繰り返していく。
そして、遂に…