※この作品はR-18です。

そっくりなアイツ   作:もっち~!

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08/17 指摘された部分を修正。エピローグ部分を追記。
02/25 誤字を修正


スタンド・バイ・ミー

---テレサ・テスタロッサ----

 

幸せな日々…かなめがいて、宗介がいて…私達の子供がいて。でも、何かが足り無い。何だろうか?忙しい毎日を過ごすあまり、何か大切な事を忘れてしまった気がする。

 

「どうしたの、テッサ?」

 

かなめに訊かれた。

 

「何かが足り無いの。それが何かがわからない」

 

「テッサは性欲が多いのかな?いいわよ。私の分を使っても」

 

いや、宗介と交わりたい訳では無い。ただ、宗介に抱かれると安心出来るというか。この喪失感は、宗介由来では無い気がするし。

 

宗介は、香さんの下で働いている。スィーパーとして、主に裏の仕事である。表の仕事は脳筋すぎて、苦情が多数になるらしい。

 

リビングに降りると、香さんが接客中だった。香さんの前に座る男女。どこかで見た事のある顔である。どこだっけ?

 

「あぁ、テッサ。今日から、うちに住み込みで働いてくれるそうなの。仲良くしてよね」

 

って、香さん。

 

「司波達也です」

 

「達也の妹の司波深雪です」

 

兄妹らしい。司波かぁ…どこかで聞いた事のある名前…どこだっけ…う~ん…そうだ!私を殺そうとした兄妹では無いか?

 

「そんな身構え無いでも大丈夫よ」

 

だが、しかし…油断は出来ない。うん?男性の方が近寄って来た。そして、私を抱き締めた?有り得ない。だけど、懐かしい気持ちになれる。なんでだ?

 

「テッサ、元気そうだな。う~ん、この胸の感触…あれ?垂れたのか?」

 

いきなり失礼なことを言う男…って、コイツに抱かれた覚えは無い。

 

「あぁ、出産をしたからか」

 

「お前!失礼だな!」

 

「そうだった。初対面だったな。忘れていたよ」

 

「お兄様、記憶がまだ、曖昧なんですか?」

 

あの女が笑っている。

 

--------

 

あの兄妹は同じ部屋のようだ。シスコンとブラコンの兄妹なのか?

 

「どうしたの、テッサ?」

 

かなめに訊かれた。

 

「新人の女の方は、以前、私を殺そうとした奴だよ」

 

「テッサを?でも、そういう人は、香さんが雇わないと思うけど」

 

そうなのだけど…警戒はしていないと。何をしに来たんだ?あの兄妹は…

 

「うん?帰ってきたのか?」

 

宗介が男の方に話し掛けている。あれ?知り合いだっけ?

 

「あぁ、だいぶ掛かったけどな」

 

「10年くらいになるか?」

 

「そのくらいかな。って言っても、この前目覚めたばかりで、戸惑っているよ」

 

目覚めたばかり?

 

「テッサには話をしたのか?」

 

「していない。覚えていないようだから、特に話さないで良い」

 

覚えていない?う~ん…つきあった覚えは無い。10年前と言えば、宗介との子供を…頭の中が真っ白になっていく。まさか…そんなはずは…顔がまるで違う…なんで?

 

◇

 

気が付くと、医療センターのベッドの上にいた。

 

「テッサさん、大丈夫ですか?いきなり、倒れて、ここに運び込まれたんですよ」

 

ナミちゃんが、説明してくれた。彼女は、ここでナースとして勤務していた。

 

「ねぇ、ナミちゃんのお父さんって、毎月面会日に来ている?」

 

「来ていますよ。養育費を払いに。って、私は今年で養育費の出ない歳になりましたけど」

 

今年で二十歳になったナミちゃん。そうか、毎月来ているなら、違うのか…

 

「どうしたんですか?」

 

「いや、いいんだ。気のせいのようだ」

 

「心配事があるのでしたら、話してください」

 

「そのお父さんは本当のお父さん?」

 

「うん?う~ん…蘭母さんがそうだって言っているから、その筈なんだけど、胸に傷が無いんですよ。まぁ、ここの修復技術なら傷跡の消去なんか問題無いから」

 

胸に傷が無い…偽物?そうじゃない工藤新一の方では?蘭さんと復縁したがっているし。置き換わったのか?

 

「ねぇ、変な事を言うけど…」

 

「何でも言ってくださいね」

 

「工藤新一じゃないの?その人…」

 

◇

 

翌月の面会の日、ナミちゃんに付き添いで、彼に会いに行った。と、いっても医療センターへ彼が来たのだが。蘭さん家族は、ここに住み込み、彼女は事務の仕事をしているのだ。

 

「ナミ、どうしたんだ?そんな恐い顔をして…」

 

「あなたは工藤新一さんですか?」

 

一瞬狼狽えた彼。それを私もナミちゃんも見逃さない。

 

「そうなんですね。お父さんに成り代わったのは、お父さんを殺したのですか?」

 

「おい、待て!おい、蘭、なんか言ってやれよ!」

 

「だから…言ったでしょ?私が彼と子供を作らない理由を!新一が、まさにそれだったのよ。アンタは、ナミちゃんのかわいがり方がぎこちなかったのよ。気づいていなかった?」

 

やはり、工藤新一だった。

 

「私のお父さんはどこよ!お父さんの偽物さん…10年も騙していたなんて…ねぇ、捧げた物を返してよ!」

 

捧げた?私と蘭さんが、この男の悪事に気づいた。

 

「新一…最低ね!ナミちゃんと寝たの?」

 

「いや、一緒に寝るって言われて…まぁ、血も繋がっていないし…蘭は相手をしてくれないしなぁ」

 

「そんな…お父さんだと思ったから…捧げたのに…」

 

ナミちゃんがハサミを手にした。そして、工藤新一に身体ごとぶつかっていく。だけど、途中で阻止された。何時の間にか来た司波達也が、ナミちゃんの持つハサミの餌食になったのだ。

 

「なんで…こんなやつを庇うの?」

 

「ナミはそんな子じゃ無いだろ?」

 

一瞬キョットンとした、ナミちゃんだったが、何かを感じ取り、目から大量の涙を流して、司波達也に抱きついた。

 

「お父さぁ~ん」

 

え!

 

◇

 

処置室で司波達也の修理をしている。

 

「ごめんなさい…お父さん」

 

「人工皮膚の下には装甲板が入っているから、大丈夫のはずだよ」

 

先端の曲がったハサミを指差した彼。その彼はナミちゃんの頭を優しく撫でた。

 

「痛かったら言ってくれ。まだ、力の調整が出来ないんだよ」

 

「少し痛いけど、大丈夫だよ。ねぇ、これからはずっと、一緒にいてくれる?」

 

「もちろんだ。っていうか、ここでしか修理が出来ないからな。当分はここで生活だよ」

 

彼の身体はサイボーグ化されていた。本物の司波兄妹は、既に真夜さんにより粛清され、その身体と戸籍を彼らに与えたそうだ。って、女の方は誰だ?

 

「テッサ、ただいま」

 

う~ん、顔が違うので違和感がある。ナミちゃんのように素直に接することが出来ないかな。

 

「おかえりなさい…ジョン。で、彼女は誰?」

 

「うん?お前、散々世話になっただろ?アイだよ」

 

アイ?ヘリに搭載されていた人工知能か…

 

「お久しぶりです。テッサさん」

 

「何がどうなっているの?」

 

志保さんが呆れるように訊いた。戦地に行ったと信じ込んでいた一人である。

 

「記憶が飛ぶようになってきた時に、アイに搭載していた脳スキャン装置で、記憶を量子化してファイル化したんだ。俺の記憶と、アイの記憶を。それに叔母さんが気づいて、人工頭脳の記憶領域にアップロードしてくれたんだよ」

 

「ねぇ、敢えて訊くけど、加齢はするの?」

 

「志保、すまん。歳取らないみたいだ。自前の細胞で顔を再生すると、歳を取るらしいんだけど、工藤優作みたいになっちゃうらしいんだよ。あの顔はイヤだろ?」

 

笑っているジョン。頭を抱える志保さん。それは、私達だけが、歳を重ねるってことだ。

 

「加齢した方がいいか?一応、自前の細胞で作った頭部もあるんだよ。すげ替えて貰うわ」

 

なんか、チートなことを言っているジョン。

 

「お父さん、ナポリタンは食べられるの?」

 

ナミちゃんが心配そうに訊いた。

 

「現状は難しい。味覚センサーが上手く機能しない上、食べた物を消化、吸収出来ないみたいだ。だから、たまに燃料を補給しないとダメなんだよ」

 

この二人、体内に小型の核融合炉を持ち、発電しているそうだ。たまに重水素などを入れないと、発電効率が悪いらしい。そして、発電した電力で、栄養剤を補給したりしているようだ。便利なんだか、不便なんだか…

 

「いずれ、味覚センサーは改良するわ。食べた物はメタノール化できるようにする。それよりも、抱けるの?」

 

って、かずえさん。

 

「あぁ、性器だけは生身だから大丈夫だよ。ただ、自前の細胞では、精巣は作れないから子供は作れない」

 

作れないんだ…うん?それは性器だけが、年齢を重ねるのか?う~ん、訊けない…

 

「あぁ、不完全な細胞の精子が保存されているけど、娘しか出来無いみたいだよ」

 

って、それでも構わない。私、かずえさん、志保さんがお強請りをしていた。

 

◇

 

工藤新一はまた牢屋へ…ナミちゃんに対するわいせつ行為で…蘭さんに対する前科があるので、当分出られないらしい。そして、蘭さんの時と同様に、身分をジョンと偽っての性行為、裁判所も警察も反省が無いと、重い罪を課せるらしい。

 

「お姉ちゃんに酷いことを…」

 

「最低な奴だよね。お父さんに化けて!」

 

って、実の子供達からもバッシングを喰らい、工藤新一は凹んでいるらしい。

 

 

私は…思い切って、ジョンに告白をした。

 

「宗介じゃ不満なのか?」

 

「不満じゃないよ」

 

「なんで俺なの?俺、サイボーグだぞ。結婚できないと思う」

 

「今度は、戸籍が有るんだよね?」

 

「有るけど…蘭が既に妻欄にいるんだよ」

 

「問題はそこか…う~ん…って、宗介とも結婚出来ないじゃん。かなめがいるし」

 

「あぁ、そうだねぇ」

 

って、ジョンの困った顔を久しぶりに見た。一緒にいるだけでも、嬉しいかな。

 

 

みんなからの要望により、自前の細胞で作った頭部になったジョン。少し司波達也色が混じっている。細胞の安定化に彼の細胞を使った為らしい。アイの方は、司波深雪にジョンの色が入っている。そんな感じで、二人は兄妹に見える。

 

「ねぇ、子供欲しいよ~」

 

「子育てをしない奴にはあげないよ」

 

って、意地悪なジョン。まぁ、彼の言うとおり、宗介との子供はかなめが育ててくれている。かなめの中では双子の扱いらしい。

 

「ジョンの子供が欲しいよ~」

 

「って、お前が子供みたいだよ」

 

って、笑っているし。

 

「ねぇ…」

 

「たまには、テッサの身体を検査するか」

 

検査?彼の部屋へ連れ込まれる私。

 

◇

 

ジョンがあることに気づいた。

 

『そうだ…この世界だけが、俺達の世界では無い』

 

ってことに…

 

◇

 

目の前には、出逢った頃の面影のあるジョンがいる。私達の家を買い、そこで暮らしている。

 

「いいのか?」

 

「もちろんよ」

 

ジョンと身体を合わせる。この世界では子供は産まれない。でも、ジョンの鼓動を体内で感じることが出来る。

 

「交わるだけで、色々な刺激を感じる…不思議ねぇ」

 

私の耳元でジョンの寝息が聞こえてきた。交わって、直ぐに安眠かな。疲れているんだな。きっと…

 

あの世界が滅ぶまで、この世界は維持されるだろう。隣の家は宗介とかなめの家である。まだ宗介しかいないけど。

 

「どう?」

 

真夜さんが入って来た。私達と同居している。

 

「味気ない性行為以外は、気に入っています」

 

「ふふふ、テッサさんは、本当に凪とスルことが好きなんですね」

 

まぁ…女性としての本能と言うか…

 

「凪の発想は、いつも斜め上よね。ナポリタンが食べられないなら、生きている必要せいが無いって…」

 

ジョンの中では、セックスよりもナポリタンの方が上だった。

 

「でも、その想いが、この世界を作ったから、まんざら悪くないわ」

 

ジョンとアイが作り上げた世界。ALOの世界を拡張した感じの世界。ジョンとアイは身体を捨て、二人の人工頭脳は、この世界の基幹システムをコントロールする、中央演算装置に組み込まれた。

 

「ここなら、いつまでも生きられる。脳の記憶領域の量子化データをつくればね」

 

医療センターでの終末医療の結末…身体が持たないなら、救える記憶だけでも、この世界で生かす。ここで、人生のロスタイムを過ごすことで、心身ともに人生を全う出来るのではって、結論に達したそうだ。

 

真夜様は老衰になる前に、記憶を量子化して、この世界で生きている。彼女のリアル体は保って2週間って感じらしい。

 

そういう私は、メディキュボイドで、ここへ来ている。ジョンがいなくなったことで、精神を病んでしまったそうだ。

 

「いずれ、みんな、ここに永住するんでしょうね」

 

宗介は、作られた身体が、未完成だった為、ここへの永住を決めた。やはり、頭部以外の再生には無理があったようだ。

 

健康なみんなは、ヘッドセットから脳波のリンクで、このVR世界へ来られる。ナミちゃんも蘭さんもかずえさん、志保さん…みんな、暇な時間はここに来て過ごしている。

 

「うん?叔母さん…来ていたのですか?」

 

彼が目を覚ました。

 

「どう?調子は?」

 

「ナポリタンを味わえる幸せを満喫しています♪」

 

そこには、私達の見たかった、彼の満面の笑顔があった。

 

 

 

 

 

 

 

 




ラストシーンは『戦場のメリークリスマス』を、オマージュしました(^^;
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