---毛利蘭----
彼は今、家庭教師をしながら、ボディーガードのお仕事だって…だから街で見かけても、声を掛けちゃダメって…メールの返事は来るけど、電話のリコールが来ない。私語を発するのはダメなのかな。
毎日のメールのヤリトリ、更に電話でのヤリトリ…そんな生活に慣れてしまった。だから、こういう時…寂しさを感じるのかな。彼の半分がどこかへ行ってしまった感じだ。
スマホから着信音…待望のリコールかな?発信者の名前を見て、空しさが湧きあがってきた。ディスプレイに『工藤新一』の文字…
「今更、何?」
『コナンから話を聞いた。蘭、落ち着いて考えろ。俺の偽物なんだぞ、アイツは!』
本物の新一からだった。もう私にとっては、本物とか偽物とかは関係ないんだけど…
「偽物って何?彼は彼よ。あんたみたいな、忘れた頃に存在を主張する男は、知らない」
『待てって』
通話を切った。だけど、しつこくリコールだよ。
「だから、何?」
『あいつは単なる探偵じゃないぞ』
「だから?」
『俺はお前が…蘭が心配なんだ』
「今まで放置し続けて、よく言えるわね。後、聞いたわよ!コナン君は新一の弟で、私を監視させていたってね」
裏切り行為に近い。自分の弟の存在を偽って、私の監視役に置いて、悪い虫が付かないかのチェックって…私は新一の物じゃないのに…新一だけでなく、新一の両親も絡んでいるはず。コナン君の養育費を出しているし。きっと、コナン君の母親は、新一の母親のメイクした演技なんだわ。有名女優だし。
『えっ!それは違う。誤解だ、蘭。騙されるなよ』
「騙していたのは、アンタでしょ!」
指紋、DNAの照合結果の書類も見せてもらった。有り得ない結果…コナン君が新一である事実。方法が不明なので、有り得ない話だと言う。だから、同一人物だろうけど、コナン君は新一の弟として扱ってくれって言われた。
『アイツはきっとヤバい仕事をしているはずだ』
私は彼の仕事を知っている。その上で関係を続けているの。アンタには言われたく無い!
「だから?アンタだって、同じでしょ?高校生が、身を危険に晒す仕事に、関わって居るって、おかしいでしょ。ねぇ、もう掛けないでね」
通話を切った。ふと見るとメールが着信していた。彼からだ…
『通話中だった。おやすみ』
って…あのバカのせいで、彼からの貴重なリコールが…怒りがこみ上げて来た。新一を着信拒否に設定だな!
---竜神さやか---
親父に直談判している。
「アイツ、頭がおかしいだろ?なぁ、家庭教師を変えてくれよ~」
「冴羽さんの推薦だ。ガードの腕は確かなはずだ」
「おかしいだろ?愛車に、バルカン砲とか対空ミサイルを装備って…」
「ガードの為に必要なんだそうだ…うっ!」
親父の表情がおかしい。なにか怯えているようだ。私に怯えるって、有り得ないよな…ゆっくりと背後へと振り向いた。
アイツがいた。とても冷たい眼差しで、私達親子を見つめている。殺される…恐怖で身体が冷えていく。じょじょに、股間が生暖かくなっていく。失禁…足が震え、全身に鳥肌が立っている。
「どうしたんですか?親子揃って、お漏らしとは…」
感情の籠もらない言葉…まさか、親父も失禁か…
「仕事は契約満了で良いのですか?」
「後…3日…頼めるか…」
あと、3日も?ダメ、生きていられる自信が無いって…
「これ、連れ帰っていいのか?」
親父の首が上下に動いている。宙に浮き上がる私。顎を掴まれて、持ち上げられた。痛い…そのまま、連れて行かれ、ビートルのトランルームに入れられた。殺されるのか…スコップが一緒にいるんんだけど…埋められるのか…
どこへ運ばれているのだろう?私の住処でも学校でもない。随分と長い距離を、それなりの速度で走行しているようだ。
で、停車したのか、エンジン音が突然止んだ。トランクが開き、外へ出された。そこは空港のようだけど…どうするんだ?
「今日は課外授業にする。これを着ろ」
ツナギのような服を出された。
「更衣室は?」
睨まれている…ここでか?って、アイツはさっそく着替え出している。私も着替え始める。アイツの胸元…大きな傷跡があった。あれって、何の傷?
「まだか?」
「えっ?」
アイツに全裸にされ、ツナギのような物に入れられた。そして、抱え上げられて、飛行機に積まれた。
「いいぞ、出してくれ」
「らじゃ~♪」
出す?これって飛行機だよな?いきなり飛び立つ…うっ!気持ち悪い…ぐんぐん上昇しているようだ。
「そろそろいいよ♪」
パイロットの女性が声を掛けた。えっ!いいよ?何が?
「今から無重力体験をさせてやる」
へ?えぇぇぇぇ~!身体が浮き上がる。まさか、ここは宇宙か?
「遠心力を利用した疑似無重力だ。宇宙空間では逆に、遠心力で疑似引力を作り出すんだ。身体で覚え込めよ」
何を覚え込むんだ…この状態で…
「そろそろ、引力の降下を実感させてやる」
降下?落ちるってこと?私はりんごでは無い…って、ハッチを開けて、外へと私を抱えて飛び出した。あの、私、パラシュートを背負っていませんけど…
「良く見ておけ。宇宙と大気の狭間だ。この高度でしか見られない」
え…綺麗な光景が目の前に広がっていた。空の上ってこんなに綺麗なんだ…って、徐々にヘルメットのシールドが曇ってきた。
「雲に突入した。手の平で雲を実感して見ろ」
え?これはさすがに無理…目の前が見えない。何も掴めないし…
「もうすぐ雲を抜ける。体勢を変えるぞ」
体勢を変える?え…アイツが私から手を離した。嘘…一人で落下している私。墜落死か…背中からアイツの腕が生え、私をがっちりと抱き締めてkれた。微妙に胸を揉まれているのは、役得なのだろうか?
「地上の景色を愉しめ。俺はお前の胸を愉しむ」
やはり胸は弄ばれていた…でも地上は何とも言えない光景だ。綺麗だ…って、どこに降りる?いや、落下しているんだ?パラシュートは?まさか、さっきの飛行機に飛び乗るのか?アイツに言葉を伝えられない。このヘルメット、マイクが無い…
「ブレーキを掛ける」
ブレーキ?あぁ、降下速度が緩くなったようだ。それに伴い、斜めに落ちているようだ。
「少し風があるな。まぁ想定内だ」
風で流されているのか…って、徐々に海の方へ…まさか着水するのか?墜落しての水死か?どんどん生存率が低くなっていく。
「パラグライダーモードに移行する」
うん?両手で私を支えているんですが、どうやって操縦するの?コイツと心中か?そんな…
「なぁ、2択だ。今後、勉強に励むか?今まで通りか?」
まさか、今まで通りだと、ここからオトされるのか?コイツ、やりかねない…
「勉強します…」
って、マイクが無い。指で1を示した。
「わかった。では、空港へ戻る」
やはり、2だと海ぽちゃだったようだ…
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無事に空港へ降り立った。いや、何をもって無事と言うんだ?足が震えて、地べたに座り込んでいる。その上、コンビニ袋とお友達である。ゲロゲロだよ…
「出し切ったら、次の場所へ移動する」
まだ、なんかするの…もう無理だよ…
胃袋の中空っぽで、ビートルのトランクルームに入れられている。今度こそ、埋められるのかな…改心しますから、助けて下さい。
着いた先は、夜のサーキットだった。嫌な予感がする。アイツの車が2台ともあるし…ビートルの最高スピードは280って言っていた。じゃ、あのカウンタックもどきは?排気量は半分以下ではあるが…
予想は的中した。カウンタックもどきのフロントに私の身体は固定されていく。それも全裸でだ。運転席から、私の股間が良く見えることだろう。
「レディースの総長ってことなので、お前にスピードを体感させてやる。あんなちんたら走りでは実感出来ない速度の世界だよ」
視線は、路面を見据えている。夜間なので、前方の路面しか見えない。これは拷問か?
「このサーキットだと、320くらまではいけるかな?今日は重装備をのせていないから」
ミサイルとかバルカン砲は無いんですね…って、320を全身で感じるんですか…安全の為にヘルメットは被せてくれたようだ。
「そのヘルメットは空力に配慮している。人間の頭では抵抗が真面だからな」
あぁ、安全の為でなくって、速度の為なんですか…今度こそ死ぬかもしれない。えっ…マジ…拷問が始まった。ウォッシャブル液が股間に降り注ぐが、これって、媚薬で無いのか?悶悶としていく。
「濡れたようだし、始めるか♪」
衝撃波が私を襲った。なんだ、これ…いきなり別世界である。ジェットコースターのいきなりの落下と同じ衝撃である。路面が目の前に迫る。カーブで横Gを体感する。ボンネットと背中に挟まれた胸が持って行かれそうになる。千切れるのか?
無事に走行体験が終わり、またトランクルームの中である。ここが一番安息出来る空間に思えて来た。
目が覚めると自分の部屋のベッドで寝ていた。あれは夢だったのか。起き上がる。きれいに洗い上がった肌。自分でここまで磨いたことは無い。リビングに行くが、アイツの姿は無い。勉強机に行くと…
『自分の可能性は、自分でみつけろ!』
って、メモが残っていた。え?終わり?テレビを点けた日付を見ると、あれから3日経っていた。家庭教師の期間が終わったんだ…平和な日々が戻って来たんだ。嬉しいはずなのだが、何かが空しい。心に穴が開いた気分だ…
---マッキー---
喫茶ポアロでナポリタン三昧♪
「出向中は食べに来られなかったから…女断ち3ヶ月よりつらかったよ」
俺の言葉に安室が笑っている。
「本当にナポリタン好きだな」
「うん♪」
カラン♪
「安室さん、オススメケーキと紅茶を2つ、お願いします」
蘭と園子って友達だ。
「何?」
俺の前に座り、笑顔で俺を見つめている蘭。
「だって、久しぶりなんだもん♪」
「で、コイツは誰?」
って、園子。え?今日はメイクも変装もしていないのに…なんで?
「なんで?そうなる?なあ、蘭。俺の区別って何でしていたんだ?」
安室が含み笑いしている。俺だけが知らないのか?まさかなぁ…
「うん?えぇぇぇ~、気づいていないの?」
驚いている蘭。頷く俺…
「胸の傷…新一にはそんな傷は無い。槇村さんと寝た時に気づいたの。新一では無いって…」
瞳とかオーラとか耳では無く、ソレか…目から鱗だ。普段は傷が見えない服装だけど、まったりモード中は、開襟シャツで胸元を見せている。今日はそうだ。
「え?だって、その後も、俺のことを新一って…」
「ごめんなさい…新一の代わりにしていました。だから、お詫びとして、一生の添い遂げますね♪」
結論は同じらしい。まぁ、いいか。ここのナポリタンを食べられることが重要である今の俺。
「で、コイツは誰よ。蘭の心を射止めて、盗んだコイツは!」
「あぁ、槇村さん。探偵さんなの♪」
実際は何でも屋であるが…
「槇村秀幸です」
って、名乗った俺。
「探偵?蘭、探偵が好きねぇ」
「たまたまよ」
含み笑い気味の安室が、蘭達のケーキセットを持って来た。
「ナポリタン大盛りをお替わり♪」
「まだ、食うのか?3皿目だぞ…」
「ここのナポリタンが食いたいんだよ。食わせてくれよ~。お仕事中は食えなかったんだし…」
「わかったよ♪」
「探偵って、どんな仕事なんですか?」
園子に聞かれた。
「どんなだろうな。内偵が多いから…詳しくは言えないな」
「スパイみたいな?」
「どうだろう?スパイはしたこと無いし」
「あの…今夜も行っていいですか?」
恥ずかしそうに聞いてきた蘭。
「それは構わないけど」
「え?お泊まりデート?蘭、あんた、最近大胆になったわね~」
「え?そうかな♪」
満面の笑顔の蘭。嬉しそうだ。嬉しいならいいか…
---竜神さやか---
あの家庭教師のせいで、人生が変わった気がする。レディースから足を洗った。極限のスピードを体感してしまったせいだ。その為、峠を走るのが趣味になっている。スピードとスリルを追い求めて…だけど、追い求め過ぎて、事故を起こしてしまった。
カーブを曲がり切れずに転倒、ガードレールにぶち当たり、骨折…
その結果、今、病院のベッドの上だ。睡眠薬で眠らされ、起きたのは1週間も経った後だった。なんだかなぁ…
ふと、横を見ると、封筒が枕の下にあった。なんだ?手に取って、開けてみると、アイツからだった。
『なんで、地上に貼り付いているんだ?』
って…そうか…パイロットを目指せってことか…可能性をもっと広げて試せって…なんか幸せな気分である。極道の娘に産まれた私に、こんな夢を見る機会をくれたんだ…アイツ…
---マッキー---
「マッキー、仕事なんだけど…」
って、香さん。
「どんな仕事?」
「ガードなんだけど…」
「誰の?」
「依頼主は工藤優作…」
「はぁ?ガード対象は、アイツ?」
きっと、俺から護れってことか?まぁ、仕事は仕事で私情は挟まないのがプロだよな…