戸倉ミサキ調教記~強気な彼女のもう一つの顔~ 作:道程ケンヂ
薄紫色とも銀色とも取れる長髪を靡かせ、一人の少女が目の前の建物を見上げていた。少女、と呼ぶには些か大人染みた雰囲気を持つ彼女だが、纏っている服が高校の制服であることを見ればおおよその年齢は計ることが出来る。それが15から18の間の歳の女性ならば、少女と呼んでも何の問題も無いだろう。
深く切れ込みの入ったロングスカートから見える生足が、制服の上からでも分かる程に膨れている胸が、彼女の女性としての魅力を物語っている。もっとも、彼女には性的なアピールをするつもりはまるでなく、ただ動き易いからという理由で制服を改造しているのだが、見ている方からしてみればそんなことはどうでもよかった。
彼女の名は戸倉ミサキ。歳は16で、カードショップ『カードキャピタル』でアルバイトをしている女子高生だ。クールな性格と苛烈な口調、そしてややキツい性格と顔立ちから同級生や店の客たちから怖れられる彼女であったが、今はその美しい表情を訝し気に歪めている。
それは、目の前の建物とそこに飾られている看板のせいであり、自分自身の記憶に対する疑問によって生まれた表情であった。どうしても納得出来ないミサキの口からは、彼女が今、抱いている疑問が自然と零れ出る。
「こんな所にカードショップなんてあったっけ……?」
『カードショップ E-ROSS』……ミサキが見上げている看板には、そう文字が描かれていた。黒の背景にピンク色の文字が書かれているだけの看板は、ぱっと見ではいかがわしい店の物に見えなくも無い。ミサキもまた、最初に見た時はスナックか何かの看板だと思ったのだが、店名の前に書かれていた店種を現す文字を視界の端に捉えたことで驚いて二度見してしまったほどなのだ。
しかして、ミサキが疑問に思っているのはこの看板のいかがわしさでは無い。もっと単純に、
自慢では無いが、ミサキは記憶力が非常に良い。店で取り扱っているカードの名前や効果など、一度見ればそのままそっくり頭の中に入って来る。そんな彼女だからこそ、毎日通学路として使い、学校と家への往復路として使っているこの道の途中で見つけ出したこの店の存在に疑問を抱いていたのだ。
こんな派手な看板、一度見れば記憶に刻みつくだろう。記憶力の良いミサキならなおのことだ。だがしかし、どんなに記憶の書庫を探ってみてもミサキの脳内にはこんな看板を見た覚えはない。なら、この店はつい最近に出来たということなのだろうか? それにしては、店の客やカードキャピタルの店主である『新田シン』が新店舗であるこの店のことを話題にしないのはおかしい。
なら、どういうことだろうか? ただの自分の記憶違いなのか? ……あり得ないとは思いつつも、ミサキの中では一種の答えらしきものが出来上がって来る。それは、どうでも良いがどうにかして答えを出したい疑問を解決したいと思った彼女の心理がでっちあげた、それっぽいものである。
実はと言うべきか、ミサキはカードショップでアルバイトしていながら、つい最近まで本格的にカードゲームで遊ぶことはしていなかった。最近になって店にやって来たとある客との出会いで発奮し、初めて『ヴァンガード』の対戦を経てから本格的にカードプレイヤーとなったのだ。それまではとある理由でカードファイトを避けていたのだが……まあ、今はその話は良いだろう。重要なのは、ミサキが今まで意図的にカードゲームを避けていたと言うことだ。
もしかしたら、自分はこの看板を見ることを無意識の内に避けていたのかもしれない。ミサキはそう思ったのだ。今まで自分はヴァンガードと関わることを避けて来た。実際にゲームをプレイすることも、情報を得ることも積極的には行おうとはしなかった。だからこそ、この看板と店に気がつかなかったのではないだろうか?
そして、ヴァンガードを始めた今だからこそ、この派手な看板に気が付いた……そう考えれば全て腑に落ちる。全ては自分自身の弱さが故の減少だったのだと、そう納得することが出来た。些か無理な決めつけかもしれないが、とにかくミサキはそう結論付けたのだ。
(情けない話だな、本当に……でも、その事に気が付けたってことは、アタシも変われてるってことなのかな……?)
自分に対する情けなさと、自分の変化に対する喜ばしい感情が半々。胸の内を占めるのはそんな複雑な感情で、ミサキは自嘲とも歓喜とも取れる笑みを口元に浮かべた。そうして自分の中の疑問に決着をつけた訳なのだが……次はの疑問は、この後自分はどうするか? という点にある。
(当然、入ってみるしかないね……)
これも何かの縁だ、敵情視察も兼ねて、中に入ってみるべきだろう。どことなく妖しい雰囲気があるものの、中を見るまでは決めつけは良くない。そう考えたミサキは、この見知らぬカードショップに入店することを決めた。
薄汚い雑居ビルの案内図を見て、『カードショップE-ROSS』の場所を確認し、ミサキは建物の中を進む。自分がこうして、他の店に一人で遊びに行く日が来るとは思いもしなかった。それが故に、彼女はやや浮かれた気分でもあった。それは確かに、彼女が変わったが故の行動であったのだが……この後、ミサキはこのカードショップに出向いたことによって、自分自身が大きく変わることになるとは露にも思ってはいなかったのであった。
薄汚いビルのこれまた薄汚い扉を開けて『カードショップE-ROSS』の中に入ったミサキは、その内部が思ったよりも広く、そして綺麗であることに少しばかり驚いていた。元々がクールな性格なので表情に変化こそなかったものの、カードキャピタルのライバル店であるこの店の内装に感心したことは間違いない。
カードキャピタルが普通のカードショップだとするならば、『E-ROSS』は大人のカードショップと言った所だろう。黒を基調とした内装を鮮やかなネオンライトが照らす店内は、ちょっとしたおしゃれなバーにも思える。しかして、展示されているカードはヴァンガードを主体としたホビー商品であり、ここがカードショップであることをはっきりと示していた。
これならば確かにカードキャピタルの客たちが話題にしないはずだ。なにしろ、まるで対象年齢が違いすぎる。ここは成人済みの大人の客が来る様な店であり、小中学生や高校生をメインターゲットとしているカードキャピタルとはまるきり趣が違うのだ。カードキャピタルに来る客はこんな店には来ないのだろうし、逆も然りなのだろう。店内を見回してみれば、来店しているのは全て自分より一回りも二回りも年齢が上であろう大人の男性ばかりで、彼らは全員新入りであるミサキへと無遠慮に視線を注いで来ていた。
その視線にミサキは居心地の悪さを感じて背筋に寒気を走らせる。恐怖、と言うよりかは悪寒……そう表現するに相応しいこの感覚に、ミサキは少々戸惑っていた。
この店の客の視線は、若造であるミサキを歓迎していない悪意のある視線では無い。むしろ、どこか期待と喜びを入り混じらせた歓待の視線である。だがしかし、それには形容し難いおぞましさが同時に感じられるのだ。
ミサキは女子高生であり、十分に美少女と呼ばれる分類に入る美貌を持ち合わせている。若く美しい女がやって来たことに、中年のカードオタクたちは期待を募らせているのかもしれない。なんにせよ、視線を注がれる対象であるミサキにとっては、良い気分のするものではないのではあるが。
(……場違いな場所みたいだし、出ようかな。カードキャピタルとは全然雰囲気が違うし……)
ライバル店の視察も出来た。内装や展示方法には見習うべきものもあるだろうが、カードキャピタルには合わないだろう。そう考え、もうこの店を見ることは十分だろうと判断したミサキがドアノブに手をかけた時だった。
「いらっしゃいませ、初めてのお客様ですよね?」
「え……? あ、はい……」
不意に背後から声をかけられたミサキは、ついその声に振り返って返事をしてしまった。声をかけて来たのは、この店の従業員と思わしき男性で、不思議な雰囲気を放っている。若そうにも見えるが、中年と言われても納得してしまいそうな何とも妙な容姿をした彼は、嬉しそうに笑みを浮かべるとぺこりと頭を下げてミサキに挨拶をして来た。
「当店にようこそいらっしゃいました! さあさあ、遠慮なく中を見回って下さい!」
「あ、はぁ……」
営業スマイルと共に店の奥へと促されたミサキは、どうにも彼を振り切って帰る気分にはならなくなってしまった。もしかしたら彼も新規客であるミサキを常連客にしたいと言う思いがあるのかもしれない。店の売り上げを気にするのはシンを見ていれば分かるし、自分も売り手側の人間だ。そう考えると、ここで無碍に申し出を断るのは心苦しく思えた。
「奥にファイトスペースもあるんですよ。良ければ、見るだけでもどうぞ」
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
結局、やんわりとした集客の言葉に従うことにしたミサキは、店の奥へと足を運ぶことになった。思ったよりも広く、そして品揃えの良い『E-ROSS』の内部を見ながら歩んだ彼女は、二階へと続く階段を見て再び驚きの感情を胸にする。
(二階、あったんだ……)
ビルの案内板にはそんなことは書かれていない気がしたが、実際に階段があるのだから何階層化には分れているのだろう。とにかく、ミサキは店の従業員に続いて階段を上って行く。
「ああ、申し遅れました。私、店長の
「……戸倉ミサキです」
「ミサキさん、ですか。いやぁ、素敵なお名前だ! この所、ミサキさんの様な若いお客
様がいらっしゃらないので、凹んでいた所なんですよ!」
階段を昇りながら話しかけて来た店長に対して不愛想に対応するミサキ。馴れ馴れしく名前で呼ばれたことに若干の苛立ちを覚えるも、彼の言葉から察するにテンションが上がっての反応なのであろう。どうやら、本当に若い客が来たことが嬉しくて仕方が無い様子だ。
(……まあ、仕方が無いか。この店、あんまり繁盛してる訳でもなさそうだし……)
一階に居た客は10名程度だった。その全員が良い歳をした大人であり、互いに友達付き合いがあるという感じでもなさそうだ。この店で出会い、この店でしか付き合いの無い趣味仲間……そんな所なのだろう。
つまり、子どもたちの様に学校の友達を連れて来てくれる訳では無い。宣伝効果も無いだろうし、それでは集客は望めない。大人向けカードショップにはある程度の需要はあるだろうが、爆発的な需要があるかどうかと聞かれれば怪しい所だ。だからこそ、江島はミサキと言う他の若い客を呼び込んでくれそうな客に目を付けたのだろう。
(面倒なことになっちゃったな。でも、仕方が無いか)
心の中でやれやれと思いつつ、表面上はその思いを出すことはしない。しかし、不愛想なミサキの態度は、例え喜んでいたとしても苛立っている様に見えただろう。
まあ、どうでも良い。少し内部を見学してから、適当な所で切り上げてしまおう。そして、もう二度とこの店に来なければ良いのだ。それで終わる話なのだから、これ以上考えても仕方が無い。
そう結論付け、店長との会話を適当に続けたミサキは、ようやく階段を上り切って上の階へと辿り着いた。そうして、店長の開けた扉の奥へと進み……今度は、驚きの感情で表情を染め上げることになる。
「こ、これって……!?」
「あ、ようやく良い反応をしてくれましたね。そうです、最新鋭のカードファイト用の機器ですよ!」
誇らしげな顔をする江島。それもそのはずで、上の階にあったのはヴァンガードの本格的な試合で使われる様な最新鋭機材だったのだ。巨大な保護用ガラスケージの中に向かい合う様に設置されている一対のファイターズデスク、その間には広大なスペースが空けられており、一見無駄な空間にも思える。しかし、ヴァンガードの大きな大会を一度でも観戦したことのある人間ならば、この機材の凄さは十分に理解出来た。
「これ、ユニットをVR技術で投影するマシンですよね?」
「よくご存じで! その通りですよ。これを使えば、イメージだけじゃない本格的なカードファイトを楽しめるんです!」
そう……デスクとデスク、ファイターとファイターの間に空けられたこのスペースは、決して無駄なものでは無い。この空間には、デスクに置かれたヴァンガードのカード情報を読み取り、そのカードに描かれているユニットを実際に出現させるためのものなのだ。これにより、誰でも簡単に大迫力のファイトを楽しめるという訳である。
問題は、この機材の値段がべらぼうに高いことだ。ミサキも一度カタログを見た際に値段を見たが、0がかなりの数が並んでいた記憶がある。どう考えても、カードキャピタルの様な小さな店が購入出来る金額では無い。しかし、そんな機材がこの店に存在している……正直な話、カードファイトを始めたばかりのミサキでさえ、その凄さは理解出来るほどの機材なのだ。
イメージの中だけではない、実際に自分の目の前で白熱した戦いを繰り広げるユニットたち、そしてそれを自分が先導者となって指揮をする。カムイやアイチならば目を輝かせる話だろうし、ミサキと同様にクールな櫂ですらも興味を示すかもしれない。
ミサキもまた、思いがけない出会いに驚いていた。そうして、もしもこの機材の存在を知ったら、子供たちも『E-ROSS』に流れてしまうかもしれないと危機感を抱く。しかし、今のミサキにはそれよりも思う所があって――
「……ファイト、してみますか?」
「!?」
最新鋭のファイト機材に視線を注いでいたミサキは、再び背後から声をかけられて勢い良く振り返った。それは、ミサキ自身が待ち望んでいた言葉だったからだ。
ヴァンガードファイターならば誰しもこんな最新鋭の機材を使った白熱の試合を体験してみたいと思うだろう。それは初心者のミサキであっても……いや、初心者のミサキだからこそ、そう強く思っていた。
そんなミサキに渡りに船とばかりに差し出された提案は、彼女に考える間もなく肯定の反応を示させた。言葉にするよりも早く、ミサキは大きく首を縦に振って江島へと返事を返す。
「お、お願いします!」
「ははは! 元気なお嬢さんだ! ミサキさんの様な方が熱心にヴァンガードをプレイして下さって、私は嬉しいですよ! ……では、ミサキさんの初入店を祝って、この機材でカードファイトをしてみましょう。お相手は、私が務めさせて頂くと言うことでよろしいでしょうか?」
「勿論です!」
最初のローテンションが嘘の様に大声を出して返事をしたミサキは、浮かれた心のまま自分のカバンを漁ってデッキを取り出した。
最近入手したヴァンガードのデッキ……カードキャピタルの店長である新田シンが自分の為に作ってくれた『オラクルシンクタンク』のデッキを握り締め、嬉しさに顔を綻ばせるミサキ。これから行われるであろう白熱したファイトへの期待は表情にも表れ、ミサキの頬は紅潮して口元には笑みが浮かんでいた。
だが……彼女は気が付かなかった。対戦相手である江島もまた、ミサキとは違った意味の笑みを浮かべていることを……。そして、この店の客たちもまた、江島と同じ様な笑みを浮かべていることにもだ。
捕食者の様な、そんな獰猛な笑みを浮かべる男たちの輪の中で、ミサキはただ無邪気にファイトが出来る喜びを感じていたのであった。
「あの……アタシ、実は初心者で、その……」
「ああ、あまり気にしないで下さい。カードファイトは結果よりも過程、勝利よりも楽しむことが優先ですから」
「あ、ありがとうございます」
ケージの中、所定の位置に付いたミサキは、初心者故の硬さを感じながら深呼吸を繰り返していた。ファーストヴァンガードをセットし、手札も引き直しまで終えて、ファイトはすぐにでも始められる状態にはあるが、どうにも落ち着かない。その理由は、このケージを取り囲む男性客たちの視線にあった。
最新鋭の機材を使った本格的なファイト、それは十分に観戦の対象になる。しかも、ファイターはミサキの様な美少女なのだから男たちの興奮もひとしおだろう。
結果、この店に居た客たち全員がミサキと江島の対戦を見守っていた。見世物にされている感覚に落ち着かないミサキではあったものの、このままこうしていても埒が明かないとばかりに深く呼吸を行った後、動揺と緊張を振り切る。
「……始めましょう」
「ええ、よろしくお願いしますね」
短い挨拶の後、ミサキはデスクにセットした自分のカードを手にした。惑星クレイに降り立った自分の最初の分身。この戦いの先導者となる、始まりのユニット。これを裏返した時、カードファイトは始まる。数度しか行ったことの無いこの瞬間にまた緊張を覚えながらも、ミサキは江島と同時に大きく声を出して叫んだ。
「「スタンドアップ、ヴァンガード!!」」
デスクの中心、ヴァンガードサークルにグレード0のカードが設置される。その瞬間、ミサキの目の前で大きな光が弾けた。
その眩さに目を伏せたミサキが再び顔を上げれば、そこには美しい女性の姿があった。ミサキと同様の長い髪を靡かせ、花を模した様な派手な飾りを後頭部に取り付けた露出の多い女預言者……その名は『ロゼンジ・メイガス』、ミサキがファーストヴァンガードとして、自分の最初の分身に選択したユニットだ。
髪型もそうだが、すらりとした体躯と豊かな胸を見ていると、どうにもこのユニットが自分に似ている気がしてならない。と言っても、ミサキにはこんな派手な服装をするつもりは無いし、頼まれたとしても願い下げである。初めてのファイトの時にシンが観客たちにこのユニットにライドしたミサキの姿を想像させた際には蹴りを叩き込んだほどだ。
そんな彼女が、今、目の前にいる。恥ずかしさを感じつつもそれを凌駕する興奮を胸にしていたミサキであったが、江島が笑みを浮かべて自分を見ていることに気が付き、彼が自分に先攻を譲ってくれていることにはっとしてプレイを開始した。
「あ、アタシのターン。サークル・メイガスにライド。ライドされたロゼンジ・メイガスの効果で一枚カードをドロー……これでターンを終了します」
各ターンの初めに、ファイターは自分のヴァンガードを一つ上のグレードのユニットにすることが出来る。これを『ライド』と呼ぶ。ライドはカードファイトの中で最も重要な要素でもあり、これを行えないこと、つまりは手札事故を起こすことはそのまま敗北に直結することにもなり得た。だからこそ、最初の段階で5枚の手札の内にグレード1、2、3のカードを最低一枚ずつ確保しておくことが重要であり、ゲーム開始前には引き直しの機会も与えられている訳だ。
ミサキは今回、そのセオリーを守ってしっかりとライド用のカードを確保してからゲームに臨んでいた。ロゼンジ・メイガスに代わってライドした円形の武器や兜を身に纏う美女、『サークル・メイガス』が目の前に出現したことに感激しながら、ミサキはターンの終了を宣言する。
先攻のプレイヤーは、最初のターンには攻撃を行えない。先にグレードを上げられる有利の分、攻撃に移るタイミングは一歩遅れてしまうデメリットを抱えているミサキではあったが、それは逆に相手の出方を伺える好機とも言えた。オラクルシンクタンクのデッキを使うミサキは、じっくりと腰を据えて戦いに望むことが得意だ。だからこそ、この展開は彼女にとって望み通りだと言えるだろう。
「では、私のターン……『ナイトスクワイヤ アレン』にライド。『ぐらいむ』の効果を発動してカードをドローした後、攻撃に移ります」
江島もまたセオリー通りのプレイングを披露していた。彼が使うデッキは『ロイヤルパラディン』……ミサキのデビュー戦の相手である『先導アイチ』と同じクランのデッキだ。安定した展開とそれによる攻撃は信頼性が高く、初心者の入門に相応しい上に突き詰めればどんなデッキとも十分に戦えるポテンシャルを秘めている。
デッキから察するに、攻撃力と展開力ならば江島が有利、手札を活かした防御と盤面の有利を握ることに関してはミサキが一歩リードしている、と言う感じであろうか。兎にも角にも、ミサキにとっては馴染み深いクランが相手であることは、彼女にある種の安心感を与えていた。
「ミサキさん、攻撃に対するガードは?」
「ノーガードで」
後攻が行う一発目の攻撃を敢えて受けるミサキ。ここで攻撃を防ぐのに手札を使う必要は無い。それならばユニットを温存し、次のターンに備える方が有意義だ。
ヴァンガードファイターの誰もが考える作戦を普通に実行したミサキは、江島のドライブチェックをただ冷静に見守る。結果、ノートリガーで攻撃は強化される事は無く、ただただ江島のアレンはミサキのサークル・メイガスへと攻撃を繰り出して来た。
『たあぁぁぁぁっ!!』
ブーストも強化も無く、ただ手にした剣でサークル・メイガスを攻撃するアレン。普通ならばここでミサキは1ダメージを受け、ダメージチェックを行うだけのはずだった。
しかし、ミサキは何か不気味な感覚を身に感じていた。それは対戦相手の江島が見せる笑みであったり、このファイトを見守る観客から浴びせられる視線から起因するものだ。彼らはただ、女子高生のファイトを観戦している訳では無い……女の勘か、ミサキはそのことを直感していた。
だが、一体彼らの目的は何なのであろうか? いくら鋭いミサキでも、そこまでは想像出来はしない。男たちへの不安と苛立ちと、ほんの少しの恐怖を感じたミサキは、その一人一人を睨む様にして威嚇を行っていた。のだが――
『きゃぁぁぁぁぁっ!?』
「えっ!? きゃぁぁぁぁぁっっ!?」
サークル・メイガスにアレンの攻撃がヒットした瞬間、ミサキは自分の体に違和感を覚えた。男たちを睨むことを止めて視線を下に逸らしたミサキは、攻撃を受けて痛みに叫んだサークル・メイガスと同じ悲鳴を上げることになる。
なんと、確かに着ていたはずの制服がズタズタに裂け、ミサキの体から消え去っていたのだ。スカートも、ワイシャツも同様で、ミサキは今、女性としての恥ずかしい部分を隠すブラジャーとショーツだけの姿になっている。
「な、なに? どういうこと!? これ、なにが起きて……!?」
「ああ、慌てないで下さい、ミサキさん。それは別に本当にあなたの服が破れたのではありません。それは、ただの
「イメージ……? アンタ、何言ってんの!? ふざけた真似するなら、こっちもそれなりの考えが――」
「本当ですよ。この空間の中には、ヴァンガードファイターすらもイメージの産物となる……つまり、私たちもユニット同様の存在になってしまうということです。そして、イメージの産物たる我々は、対戦相手のイメージにも影響を受けるのです」
「なによ、それ……? そんなふざけたこと、信じられる訳が……」
「まあ、信じられないならそれでも構いませんよ? 一応言っておきますが、私は今、ミサキさんの服を剥ぐイメージを持って攻撃を行いました。想像力が足りなかったのか一発では丸裸には出来ませんでしたが……まだダメージは5も残っています。さあ、ファイトを続けましょうか?」
「ぐっ……!?」
ねっとりとした視線を隠す事無くミサキにぶつける江島。それは他の男性客も同様で、彼らの目にもミサキの下着姿は晒されている様子だ。いやらしい笑みを浮かべ、誰も彼もがミサキの姿への感想を口にしている。
「服の上からでも分かってたがデカい乳してんなぁ。さっさと邪魔なブラも剥いで、乳輪と乳首のデカさを確かめてやりたいぜ」
「脚もすらっとしてるし、ケツも良い感じにぷりっとしてやがる。へへへ……もっと大事な部分はどうなのかねぇ?」
「クソッ! 見んなっ! 見んじゃねぇよ! このクズどもっ!!」
恥ずかしさに頬を赤らめ、涙目になって叫ぶミサキ。見知らぬ男たちの前で服を剥がれ、下着姿を視姦される屈辱は少女であるミサキの心を深く抉る。しかし、それ以上に感じた怒りがミサキを奮い立たせ、彼女の精神にやる気を満ち溢れさせた。
(絶対……倒す! こいつら全員、叩きのめしてやる!)
理解出来ない状況はもうどうでも良い。重要なのは、ここでこの男たちを叩きのめす方法だ。
必ず江島とのファイトに勝ち、このケージを出た後で全員を暴力で叩きのめしてやる……そう心に固く誓ったミサキは、下着姿の恥辱を堪えながらデッキからカードを引いて叫んだ。
「私のターン! 『プロミス・ドーター』にライド! ライドされた『サークル・メイガス』の効果で一枚ドロー!」
グレード2のユニット『プロミス・ドーター』にライドするミサキ。鉄壁の防御を誇る盾を体の各部に装備したこのユニットは、今のミサキにとっては見ているだけで安堵出来る存在だ。全身を包むのはぴっちりとしたタイツであり、豊かなボディラインを隠す事無く晒してしまっていることは気にしないでおこう。自分がその服装になっている訳でも無いのだから。
と言っても、下着姿よりもあの服装の方がマシだ。そう思いながらカードをドローしたミサキは、次いで攻撃の準備を整えるべくユニットを次々と場に繰り出していく。
「リアガードに『オラクルガーディアン・ジェミニ』、『サイレント・トム』をコール!」
フィールドに配下のユニットを召喚したミサキは、攻撃の体勢が整ったことを確認した後に江島へと怒りを込めた視線を向ける。この屈辱、この恥辱、決して許しはしない……怒りを燃やし、相手を叩きのめすイメージを固めたミサキは、その感情を込めてユニットへの攻撃を宣言した。
「『サイレント・トム』でヴァンガードをアタック!」
『はぁっ!!』
ミサキの指示に従い、傍らに美女の幽霊を侍らせた包帯男が『ナイトスクワイヤ アレン』へと攻撃を繰り出した。江島はその攻撃を防御する訳でも無く、普通にダメージを負う。
「ぐぅっ……! 怒ってますね、ミサキさん……! あなたの私を叩きのめすというイメージが衝撃となって私を襲っていますよ!」
「喜んでんじゃねー、この変態がっ! そんなに痛みが嬉しいなら、もう一回くれてやるよ!」
江島はミサキの攻撃を受けて苦しみながらも喜んで見せた。彼に対する嫌悪感に体を震わせるミサキであったが、怒りの感情でそれを吹き飛ばしてヴァンガードで二回目の攻撃を仕掛ける。ここでトリガーを引き、江島に強烈な一撃を食らわせることが出来たのなら良かったのだが……残念ながら、トリガーユニットがめくれることはなかった。
『うあぁぁっ!』
「うっっ! ……ダメージチェック」
二回目の攻撃を食らって苦しむ江島は、ミサキに蛇の様な視線を向けながらデッキトップを捲る。固唾を飲んでその姿を見守るミサキであったが、江島の捲ったカードが光り輝いたことを見て、表情を強張らせた。
「……ゲット、ドロートリガー。カードを一枚引き、ヴァンガードにパワーをプラス」
「ぐっ……! ターンエンド」
ダメージトリガー……攻撃を受けた側に与えられる反抗の機会。江島は、そこで見事にチャンスを掴んでみせた。手札を補充しつつ、防御を固めることに成功したのだ。
これではもう、自分のユニットの攻撃は届かない。自身の不運を嘆きつつ、ダメージ量では自分が勝っていると強引に意識を切り替えたミサキは悔しさを噛み殺してターンを終了させた。
「では、私のターン……『沈黙の騎士 ギャラティン』にライド。リアガードに『ハイドックブリーダー アカネ』と『文武の賢者 ジャーロン』をコールし、アカネの効果を発動」
ミサキ同様にグレード2のユニットにライドした江島は、手札から次々とユニットを召喚した。さらに、そのユニットの効果でデッキからもカードを呼び出しつつ、盤面を整えていく。
「……『ぽーんがる』の効果発動、ソウルチャージ。そのままアタックに移りましょう。まずはジャーロンからです」
「ううっ!?」
自身の効果で攻撃力を上げた『文武の賢者 ジャーロン』の攻撃が『プロミス・ドーター』に迫る。これ以上のダメージを避けたいミサキは、咄嗟に手札からユニットをガーディアンサークルにコールしてその攻撃を防いだ。
「ふむ……お次はギャラティンでヴァンガードをアタック!」
「くぅっ……! の、ノーガード……!」
続いて繰り出される攻撃に対し、ミサキは防御を行おうとしたが……ドライブチェックという不確定要素のあるヴァンガードの攻撃を防ぐことを諦め、攻撃を受けることにした。ここでユニットを消費して、攻め手が足りなくなっても困る。一時の恥を防ぐために勝利を諦める訳にはいかないのだ。
「では、ドライブチェック……」
ギャラティンの剣がプロミス・ドーターに迫る。攻撃を受ける寸前、江島が捲ったカードが光り輝いたことを誰もが見逃さなかった。
「ゲット、クリティカルトリガー。クリティカルはギャラティンへ、パワーはアカネへ!」
「ぐっ! うあぁあぁぁあぁっっ!??」
無慈悲にも、ミサキへの攻撃は
大きく、ツンと上向きになっているバストも、丸くて白い美尻も、女性として一番隠したい性器も……全てが、観客たちの前に晒されることとなった。だがしかし、ミサキにはそんなことを気にしている余裕は存在していなかったのだ。
「あ、あぁぁあぁあぁぁああぁっっっ♡♡♡」
ギャラティンの攻撃を受けた瞬間、ミサキの体を鋭い衝撃が襲った。しかし、その衝撃はミサキに一切の痛みを与えることはなく、代わりに喘ぎ声を上げさせてしまうほどの快感を押し付けて来る。
それはまるで胸の頂点をねっとりと舐められているかの様な、それでいて荒々しく乳房を揉まれている様な感覚であり、そう言った知識に疎いミサキはその快感に完全に意識を持っていかれてしまった。豊かなバストをぷるぷると揺らし、悩まし気な表情で喘ぐ彼女に向け、江島の卑猥な言葉が浴びせられる。
「素晴らしい……! ミサキさんの大きなおっぱいをたっぷりと虐めてやりたかったんですよ! 今、私の手にはミサキさんの胸の感触が、舌には乳首の味が感じられています! ああ……何と素敵なことでしょう!」
「ふざ、けんなっ……! この、スケベジジイが……!」
びりびりと頭の裏側を痺れさせる様な快感に体力を消耗しながらミサキが侮蔑の言葉を江島へと吐き捨てる。しかし、その声には最初の頃にあった鋭さは無く、男女の交わりで快感を感じている女の声になっていた。
表情もまた頬を上気させた何とも淫靡な物になっている。ケージの外から聞こえて来る歓声は快感が落ち着いて来たミサキの羞恥心を駆り立て、彼女から平常心を徐々に奪っていった。
「ダメージチェック……ゲット、ヒールトリガー。ダメージを一点回復して、パワーをヴァンガードに……」
「ほほぅ、運が良いですな。しかし、まだ私の攻撃は残っていますよ?」
「くぅっ……!!」
ヒールトリガーで回復したことで、ダメージは2対2に戻った。しかし、まだ江島には攻撃を仕掛けられるユニットが残っている。
トリガーとブースト、更に自身の効果で攻撃力を上げた『ハイドックブリーダー アカネ』の攻撃力は、31000にまで上昇していた。対するミサキの『プロミス・ドーター』は19000……ガードするには、15000もの数値が必要だ。
残念ながら……ミサキの手札には、一枚でそれだけの数値を叩き出せるカードが無かった。ここで敢えて攻撃を受けることも作戦の一つであったが、先ほど受けた快感の残滓が体に残るミサキは、再びその衝撃を受けることを恐れて手札を消費することを選ぶ。
「ガード! サークル・メイガス、サイレント・トム!」
手札から一枚、フィールドから一枚、カードを防御に回して三度目の攻撃を防ぐミサキ。しかし、これでまた盤面は不揃いな状況に戻ってしまった。この状態から再び攻撃の体勢を整えるのは苦労するだろう。
「アタシの、ターン……」
祈る思いでカードをドローするミサキ。しかし、引いたカードはこの状況を打破するには至らないカードであった。ライドフェイズ時、ミサキは歯を食いしばって羞恥と屈辱に耐え、新たなユニットへと自身の意識を潜り込ませる。
「『戦巫女 サラサ』にライド……っ!」
「おや……? ギフトを持たないカードにライドしても良いのですか? ミサキさん」
「っっ……」
江島の挑発にもミサキは何も答えることが出来なかった。運の悪いことに、彼女が切り札としているカードはここまで手札には来ず、そのためデッキの強みを活かしたプレイが出来ないでいたのだ。
普段ならば鉄壁の防御を誇るギフト『プロテクト』を手にして万全の状況を作っていたはずのミサキは、整っていない盤面と決して多いとは言えない手札を抱えて状況に歯噛みするしかない。周囲で彼女の裸体を眺める男たちの視線や下卑た言葉も、彼女から冷静さを奪っていつも通りのプレイングをすることを阻害していた。
「『サイレント・トム』と『プロミス・ドーター』をコール。ジェミニは移動させる」
申し訳程度に整えた盤面で攻撃を仕掛けるミサキ。だが、苦し紛れの攻撃で江島を倒すことは叶わず、トリガーを引けた幸運があってもダメージ5まで追い込むことで精一杯であった。
「ターン、エンド……」
「おやおや、惜しかったですねぇ……では、私のターンです!」
後少し、もう少しで勝利出来たのに……そんな悔しさを噛み殺し、男たちの卑猥な視線を全裸で受け止めるミサキの目には、一杯の涙が浮かんでいた。気丈にも鋭い視線で江島を睨むミサキであったが、そんな彼女の行動も男たちを楽しませるスパイスにしかならない。
「おい、見ろよ。あんな目してるが、涙目な上に顔も真っ赤だぜ!」
「強気な女が屈辱に震える姿ってのは堪らねえな! しかも、女子高生の全裸付きだ!」
「イメージとは言え、良いもん見させて貰ってるぜ! 乳も尻も良い感じの肉付きで、何
ともエロいじゃねえの」
「黙れっ! 黙れよぉっ! 頼むから、もう黙ってくれ……!」
ミサキはもう限界だった。カードファイトの行方などもうどうでも良く、ただただこの羞恥と屈辱から解放されたいと願うことしか出来なかった。いくら気が強く、大人びているとは言え、ミサキは16歳……世間一般で言えば、少女と呼ばれるか弱い存在なのだ。そんな彼女が全裸で晒し者にされ、あまつさえ両親との大切な思い出に関わっているヴァンガードの対戦中にこんな辱めを受け、気を強く持てるはずも無かったのだ。
もう負けても良い。早く自分をこの地獄から解放してくれ……心が折れたミサキの瞳からは大粒の涙が零れだし、それがまた彼女に自分の心が弱っていることを自覚させる。幼子の様に鳴き始めたミサキを見て、男たちは憐れむどころか更に調子に乗って彼女を囃し立てだした。
「あはははは! ミサキちゃん、恥ずかしくって泣いちゃった? 裸を見られて恥ずかしいのかな~?」
「だまれ、だまれぇ……っ。この、クズがぁ……!」
「おじさんたちはクズだからねえ! そうやって泣いてるミサキちゃんを見て興奮しているんだよ。お尻もおっぱいもぶるんぶるん揺らして、もっともっとおじさんたちを喜ばせておくれ!」
「う、う……この、変態、がぁ……っ」
「その変態に裸を見せつけてるミサキちゃんも十分変態さんだよ! 良かったね! おじさんたちの仲間入りだ!」
「そ、そんなこと、ある訳無い……! もう、何も言うな……言わないで……」
折れた心に追い打ちをかける男たちの言葉に、段々とミサキの声もか細くなっていく。ついには懇願にも近しい言葉を口にしたミサキに対して、江島は最後の仕上げとばかりにファイトを進めて彼女を追い詰め始めた。
「ミサキさん……最初に言いましたよね? この空間では、私もあなたもイメージの産物になるって……相手へのイメージが強く、明確になるほど、そのイメージがお互いに影響を及ぼす強さも増す。逆に弱まれば、相手への影響も弱くなるんですよ。先ほどのターン、あなたの攻撃は最初ほどの強さが無かった。最後の攻撃に至ってはまるで何も響きませんでしたよ。つまり……あなたは、私への憎しみを失いつつある。自らの敗北がイメージ出来てしまったから!」
「ひっ!?」
その通りだった。ミサキは、自分の攻撃で勝負を決められないことに気が付いた時から、自分の敗北をイメージしつつあったのだ。憎しみに心を支配されている時には考えもしなかったそのイメージを胸に浮かべた瞬間から、ミサキはその恐怖を増大させていた。
この勝負に負けたらどうなるのだろうか? 断じてタダでは済むはずが無い。こんなことをする奴らなのだ、自分は滅茶苦茶にされるに決まっている。もしかしたら、一生このままここで囚われてしまうかもしれないのだ。
「ほら……あなたの中の敗北のイメージが明確になる……! ファイトに敗れ、恐怖の闇に包まれるあなたの姿が浮かんでくる……!」
「ひぃっ!? や、やめてぇぇぇぇええぇぇっっ!!」
江島の言葉が、男たちの嘲笑と視線が、ミサキの心を追い詰める。精神は怖れに支配され、心は臆病で弱い存在に成り果てた。ミサキは今、完全に怯え切っていた。
負けたら犯される。辱められる。二度と帰れない。何もかもを失う。堕ちる。日の当たらない場所に連れて行かれる。怖い、怖い怖い怖い怖いこわいこわいこわいコワイコワイコワイ……! ミサキにはもう、正常な思考すらも残されていなかった。
(怖い、怖いよ……! 助けて父さん、母さん! シンさん! アタシを助けて!)
もうこの空間にはいつもの強気な戸倉ミサキは存在しない。今のミサキは、恐怖に怯え、助けを求める子供と何ら変わりなく、ただ無力な少女と化していた。そして、そんな少女たちに肉欲を滾らせる男たちが下種な妄想を押し付けることなど容易い。江島は、男たちの代表としてミサキへとその卑猥なイメージを押し付けて、彼女に更なる痴態を晒させていく。
「どうしたんですか、ミサキさん? そんなに怖がって、おしっこまで漏らして……! 高校生にもなって恥ずかしいでしょ?」
「あ、あぁああぁぁぁぁぁぁっっ!! そんなっ、なんでっ!? なんでぇぇっっ!?」
江島の言葉を耳にした瞬間から、ミサキの股座からは凄まじい勢いで尿失禁が始まってしまった。普段の放尿よりも何倍も激しい失禁は止まることなく続き、ミサキの足元に温い黄金の水溜まりを広げていく。
「おしっことまらないぃっ! なんで!? なんでぇっ!? お願いだから止まってよぉぉっ!!」
「ああ、そんなに激しくお漏らしを続けるなんて、ミサキさんは皆さんにお漏らししてる姿を見て欲しいんですね? なんていやらしい娘だ!」
「ち、ちがっ! あ、ああぁあぁあぁぁっっ! 体が勝手に動くっ!? やめっ、やめてぇええぇぇぇっっ!!」
続いての江島の言葉で、ミサキの体は彼女の意思に反して観客の男たちの前へと動き出してしまった。情けない失禁姿を晒すミサキは、ガラスケースへと近づくとがに股になり、体をがくがくと揺らして男たちの劣情を煽る。
「はっはっは! 小便漏らしながら乳と尻を振るなんてとんでもないエロ娘だな! こんな若い変態、俺は見たことねえぞ!」
「ちがうちがうちがうちがうぅうぅっ! アタシは、変態なんかじゃ、ないぃ……っ!」
「何だって? 私は変態で、おしっこする所を見られて興奮してますだって?」
「それなら、そうですねぇ……ミサキさんの恥ずかしい姿を記録に残してあげましょう。皆さん、カメラで好きに撮影しちゃってください」
「いやあぁあぁあぁぁぁぁっっ! やめてよぉおぉおぉおぉおぉぉっ! そんなっ、そんなことしないでぇぇぇぇっっ!!」
自分に向けられる幾つものスマートフォンとそこから響く断続的なシャッター音、激しく点滅するフラッシュやムービー撮影中を示すランプの光の一つ一つに恐怖を感じ、ミサキは泣き叫ぶ。
もう自分の体は自分の言うことを聞かない。男たちの玩具として、弄ばれるだけなのだ。そのことを理解したミサキは、今日三度目の江島の呼び止めを受けて涙で顔をぐちゃぐちゃにしたまま振り返る。視線の先では、江島がファイトを進め、今まさにミサキにトドメを刺そうとしている所であった。
「ミサキさん、私のヴァンガードはWトリガーを得て超高火力になりました。ミサキさんの手札では、この一撃は受け止められませんね」
「そ、そん、な……! 待って、待ってよ! まだ、ダメージチェックが残って――」
「僅かな可能性に賭けるのは自由ですが、まあ無理でしょうね。一応確認しますけどその前に、あなたに最後のイメージを与えておきましょう」
「ひ……っ」
江島がミサキへと指を突き付ける。口を開き、力強い言葉で最後の命令を下す。ミサキはただ、成すが儘にされるほかなかった。
「戸倉ミサキ……あなたは、ダメージが6になった瞬間、途轍もない多幸感を得て、人生最大の性的絶頂を迎える。その時、潮噴きも同時に行うこと……! いいですね?」
「あ、あぁ、あぁあぁ……っ。ま、待って! そんなイメージ、アタシに押し付けないで……!」
「では、ダメージチェック行きますよ~! まずは一枚目……!」
ミサキの懇願を無視して、江島は無慈悲に彼女のデッキトップを捲った。出て来たカードは『CEO アマテラス』……ヒールトリガーでは無い。
「あぁああぁぁああぁっっ♡♡♡ まっ、てえぇぇっっ♡♡♡ からだじゅう、ぞわぞわしてえっっ♡♡♡ こわいっ♡♡♡ こわいよぉおっっ♡♡♡」
5枚目のカードがミサキのダメージゾーンに置かれる。その瞬間から、彼女の体には激しい快楽が駆け巡り始めていた。延々と冷めやらぬ快感が全身を駆け巡り、失禁もまた排泄による性的な快感をミサキに与える様になる。もはや、ミサキに出来ることは祈るのみ……ヒールトリガーが来て、この場での敗北を避けられることを祈るのみだ。
「おねがい、きてぇ……っ♡♡♡ ヒールトリガー、出てよ……じゃなきゃ、アタシ……っ♡♡♡」
今、自分の体の状態を顧みれば分かる。このまま敗北してしまえば、自分は間違いなく壊れてしまう。男たちの淫らなイメージに溺れ、卑猥な絶頂を迎え、そのまま堕ち切ってしまう……そのことを理解しているミサキは、ひたすら必死に願う。どうか今一度、自分にチャンスを下さいと、神に必死に願いを送った。
「おねがい……おねがい、おねがいぃ……っ!!」
「……二枚目、行きますよ? 覚悟は良いですか……?」
「あ、あぁぁぁぁ……っ」
江島がデッキトップを捲る。そのカードをダメージゾーンに置き、観衆の視線の下に晒す。懸命な祈りを続けていたミサキもまた男たちと同時にカードを目にして……絶望的な表情を浮かべた。
「『インペリアル・ドーター』……」
「……残念、ヒールトリガーではありませんでしたね。これでミサキさんの敗北が決定です」
「ぅぁぁ、ぁぁ……っ」
ダメージ6……ミサキの霊体はクレイから消滅し、粉々に消え去った。彼女を支えるために集結したユニットたちもミサキを見捨て、散り散りになる。
負けた。敗北した。自分が、負けてしまった……頭の中で反響する江島の言葉がミサキの心を蝕み、強引なイメージを植え付け、そして――
「んひいいぃいぃいぃいぃぃいぃぃぃぃいぃぃぃいぃいぃいぃいいぃぃいっっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ おほっひぃいいいぃいいぃいぃいぃいぃっっ♡♡♡♡♡♡♡」
ミサキの脳裏に、精神に、体に……その全てに刻まれていたイメージが炸裂する。押し付けられたイメージ通り、小便と潮を撒き散らし、全身をぴんと伸び上がる様に硬直させて、無様なアヘ顔を男たちに見せつけながら、ミサキは絶頂した。これほどまでに屈辱的な目に遭わされているのにも関わらず、彼女は幸福と快感しか感じていない。それもまた、男たちに植え付けられたイメージ通りだった。
(いぐううぅううぅうぅっっ♡♡♡ イクのとまらないいいぃいぃぃいっっっ♡♡♡ だめっ♡♡♡ だめえぇぇぇっっ♡♡♡ アタシ、もう、こわれ――あぁあぁぁぁあぁぁああぁぁぁぁあぁっっ♡♡♡♡♡♡♡)
失禁、潮噴き、視姦、想像愛撫、露出……様々な快感に支配されたミサキの意識は、男たちの嘲笑う様な視線を浴びながら闇の底へ沈んでいった……。
「……おはよう、ミサキさん。良く眠れたかな?」
「う、う……?」
次にミサキが目を覚ました時、彼女は全身に凄まじいまでの虚脱感を感じていた。体には快感が未だに残り、息をするだけでも体が疼いてしまう。男たちは床に寝そべるミサキに不躾な視線を注いでおり、それが彼女の恐怖心を駆り立てた。
「あ、れ……?」
唐突に、ミサキは自分が服を着ていることに気が付いた。ここに来た時と何ら変わらない宮地学園の制服……しかし、それはミサキ自身の愛液と尿で出来た水溜まりに浸っていたせいか、酷く汚れて卑猥な臭いをぷんぷんと漂わせている。
「制服が破れたのはイメージだよ。だけど、ミサキちゃんがイキまくっちゃったのは実際の体も同じ。イメージで感じ過ぎちゃうと、現実の体にも影響が出てしまうのさ」
ご丁寧に解説してくれた男のおかげでミサキは先ほどのファイトが現実であったことと、自分がとてつもなく情けの無い姿を晒してしまったことを認識する。同時に男たちへの憎しみも再燃したが、それよりも早くに男たちはミサキへと取引を持ち掛けて来た。
「ミサキさん、その姿でお家に帰るつもりですか? 愛液と小便に塗れた汚い姿で街を歩けるとでも?」
「ぐっ……! なら、裸で帰れって言うの? そんなこと、絶対に出来るわけないじゃない!」
「いいえ、違いますとも……。ここにミサキさんの通う学校の物と同じ制服があります。ミサキさんが私たちの出す条件を飲めば、これをあなたにお譲りしましょう」
「条件……? アンタたち、何が目的よ……?」
「なに、大したことではありませんよ。私たちはミサキさんの様な女性を待っていたんです。誇り高く、聡明で、気の強い女性をね……! そんな女性をイメージの中で好き勝手に犯す、最高でしょう?」
「くっ……! この、クズどもがっ!」
「何とでもどうぞ。さて、私たちの出す条件ですが……あなたのアンダーヘア、まん毛ですね。それを全て剃らせて頂きます。それを以って、制服の代金と致しましょう。ああ、勿論ですが、一本残さず全て剃り上げる様子は記録させて頂きますよ」
「なっ!? ふ、ふざけるなっ! 誰がそんな条件を――」
「嫌なら良いんですよ? ですが、そんな汚れた臭い姿で帰ったらあなたやあなたのご家族が困るんじゃないですか? 噂好きな方が、ある事ない事言いふらすかもしれませんよ?」
「うぅっ……」
完全に男たちにペースを握られたミサキは、押し黙ったまま想像を働かせる。確かに彼らの言う通り、このままの服装で帰ってしまえばシンに迷惑をかける危険性があった。女子高生であるミサキがレイプされたなんて噂が出た日には、カードキャピタルの経営にも影響が出てしまうかもしれない。
(駄目……! それだけは、絶対に駄目! シンさんに迷惑はかけられない……!)
両親を亡くしてから自分の面倒を見てくれたシンに負担をかける様な真似はしたくない。例え僅かな可能性であろうとも、そんな道を選ぶくらいなら自分が恥をかく道を選ぶ。そうして、ミサキは男たちの思惑通りの結論を出すに至ったのである。
「……わかった。アタシの下の毛で――」
「まん毛、です」
「くっ……! ……ま、まん毛で、制服の代金を支払う。だから、このことは黙っていて……!」
「……決まりです。さあ、カメラの用意をして下さい。あと、おしっこと愛液で汚れた下着と制服は真空パックで保管を。良いコレクションになりますからね」
「くっ……! うぅっ……!」
悔しさに、屈辱に、涙が滲む。だが、もうこれしか道はない。男たちの手で制服を脱がされ、整えてあるアンダーヘアに剃刀を当てられ、その光景を複数のカメラに撮影されながら、ミサキは堪えるしかなかった。
「……さぁ、ミサキさん。あなたが今から何をするのかをカメラに向かって説明して下さい」
「う、う……っ! アタシは、今から……制服と自分のまん毛を交換するために、見ず知らずの男たちに剃毛されます……! 恥ずかしい場所の毛を一本残らず剃って貰って、その全てを撮影して貰いますっ!!」
「……ああ、良い表情だ。その悔しさと羞恥が滲んだ顔! 震えるバストとヒップ! これから蹂躙される性器……! 余すことなく撮影してあげますね、ミサキさん……!」
江島の合図を皮切りに、ミサキへの罰が執行された。性器の周辺を剃刀でなぞられ、丁寧に整えていた彼女のアンダーヘアは剃り跡すら残さない程に刈り取られてしまった。子供の様な性器に仕上げられてしまったミサキは情けなさに涙を零すも、そんな彼女に男たちの更なる追い打ちがかけられる。
「……ミサキさんのまんこは、もう一生毛が生えなくなる。私たちのイメージ力を上まらなければ、このままずっとパイパンまんこのままになる……そんなイメージを植え付けておきました。可愛いおまんこのままでいられて良かったですね、ミサキさん」
「は、ぁ……? アンタたち、何処まで、アタシのことを……う、うぅうぅぅぅうっっっ!!」
江島の残酷な言葉に、ミサキの心は木っ端微塵に砕け散った。これから先、裸になった自分の秘部を見て、そこが無毛であることを理解する度、ミサキは彼らにされた仕打ちを思い出すのだ。
あまりにも惨い仕打ちにミサキは声を殺して泣きじゃくりだす。男たちは、そんなミサキに容赦の無い追い打ちを仕掛けるべく次々と言葉責めを開始した。
「ほら、良く撮れてるだろう? ミサキちゃんの初イキ&初敗北シーンの写真だよ!」
「剃毛されてる所も全部撮影しておいたからね! これから何時でもこの店で見ることが出来るよ!」
「自分のおしっこと愛液の中で蹲ってる情けない姿も撮影済みさ! スナップ写真は幾らでもあるよ!」
「ミサキちゃんのおしっこ塗れの制服も、えっちなお汁で汚れたショーツも、今、刈り取ったまん毛も……この店のミサキちゃんコレクションとして厳重に保管するからね!」
「く、ぅ、ぅぅ……っ! もう、やめて……帰らせてよ。お願いだから……っ!」
「……ええ、構いませんよ。店の奥にシャワールームもあります。そこで体を綺麗にしたら、どうぞお帰り下さい。私どもはこれ以上の手出しも、今後の脅迫も行いません。ただ……ミサキさん自身が望むのなら、またこの店にいらして下さい。新しい制服のポケットにメンバーズカードを入れておきます。ミサキさんが望むなら、またこの場に来ることが出来るでしょう……!」
「……だれが、こんな店に二度と来るもんか……!」
最後に僅かばかりの抵抗を見せ、ミサキはシャワールームへと向かった。そして、誰も見ていない部屋の中で、一人声を殺して泣き続けた。 完膚なきまでの敗北と羞恥地獄、そして屈辱の強制剃毛をいっぺんに味わったミサキは、ただ声を震わせて咽び泣く事しか出来なかった。
だが……ミサキはまだ知らない。この日を境に、自分の中の何かが目覚めてしまったということを……。ヴァンガードを始めたことによって変わり始めたミサキは、また新たな変化を迎えようとしていたのである。
そして、そのことを見透かしているかの様に……扉の外では、『カードショップE-ROSS』の男たちが全員で満面の笑みを浮かべていたのであった。