※この作品はR-18です。

戸倉ミサキ調教記~強気な彼女のもう一つの顔~   作:道程ケンヂ

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ここから先、暫くエロ要素が薄いお話が続きます。エロ描写を楽しみにしてくださっている方々には申し訳ありませんが、お話を進める上で大事な部分になりますので、ご容赦ください。


悪漢成敗

 

 その日、ミサキは『カードキャピタル』でも『E-ROSS』でもない、初めて行くカードショップへと足を運んでいた。その店を訪れた理由は至極単純で、偶々通りがかったその店の中に見知った顔を見つけたからだ。

 『カードキャピタル』の常連客である『先導アイチ』の妹の『先導エミ』は、その店の中で誰かと言い争っている様子であった。兄に似ず気は強いものの、しっかりと礼儀を身に着けている彼女がそこまで食って掛かる相手が気になったことと、単純にエミのことを放っておけなかったミサキはその店の中に入り、事情を聴くことにしたのである。

 

 結論から言えば……エミの怒りは、真っ当なものであった。彼女が物言いをつけた相手は3人組の青年たちであり、全員が柄の悪そうな格好をしてニタニタと笑いながら彼女とこの店の店主である老婆を舐め腐った目で見ては、気持ちの悪い笑い声を上げるような、ミサキから言わせればクズ野郎といった感じの男たちである。そこから更にエミの話を聞いたミサキは、彼らの行っている悪事を聞き、その悪質さのあまり驚きが隠せなくなってしまった。

 

 なんと、彼らはこの店を訪れる客たちをカードファイトで倒しては、彼らを脅してもう二度と店に来ないようにしているというのだ。当然、その行動は営業妨害であるし、善良なカードファイターからしてみても迷惑極まりないものである。しかし、彼らの強さに恐れをなした常連客達は店を離れる決断をし、店主である老婆も若い青年たちを相手にするのは相当に難しいことのようでなんの打開策も見つけられずにいたという。

 エミは、アイチたちに黙ってヴァンガードの勉強をしに来ていたこの店の惨状を聞きつけ、男たちにそんな馬鹿な真似は止めるように話をしたのだが……小学生である彼女の言うことをそんな悪漢たちがまともに聞くわけがない。鼻で笑われ、カードファイトも出来ない故に説得の材料がないエミが憤慨している時にミサキがやって来て……今に至るというわけだ。

 

 もしもこの話が本当だとするのなら、彼らを許すわけにはいかない。カードファイターとしての風上にも置けぬ悪事を働く男たちには、お灸を据える必要がありそうだ。

 しかし、男たちの悪辣さはミサキの想像を遥かに超えるものであった。ミサキがギロリと鋭い目付きで彼らを睨んだその瞬間、仲間の1人がエミを素早い動きで捕らえ、人質としたのだ。

 そうして自分たちに有意な状況を作り上げた男たちは、ゲラゲラと笑いながらミサキに鞄を渡すように命令した。エミを盾にされてはミサキも彼らに逆らうわけにはいかず、命令に従ってスマホやカードデッキの入った鞄を丸ごと渡した彼女に対して、男たちは更なる下劣な命令を下す。

 

「よし、じゃあ次は……服を脱いで俺たちに渡せ」

 

「なっ……!?」

 

 男たちの中のリーダー格と思わしき人物は、ミサキの膨らんだ胸や尻へと不躾な視線を向けながらそう言った。人質にされているエミも、この店の店主である老婆も、あまりにも常識を無視したその命令に驚き、言葉を失ってしまう。

 今、この店には自分たち以外は誰もいないものの、うら若き乙女であるミサキに肌を晒せなどというふざけた指示を出した男たちに心底軽蔑した目線を向けたエミは、人質にされて男たちに捕らわれている状況ながらも気丈にミサキへとその命令を拒むように叫ぶ。

 

「ミサキさん! こんな奴らの言うことを聞いちゃだめです! 私は大丈夫ですから、そんなことしないでください!」

 

「そうよ、お嬢さん。こんないつ潰れてもおかしくない店のために、あなたみたいな若い子が恥をかく必要はないわ」

 

「ガキとババアは黙ってろ! ……で、どうするんだよ? もっとも、お前が言うことを聞かないってんなら、このガキと店がどうなるかはわからんがな!」

 

 エミと老婆を恫喝し、ミサキを追い詰めるように睨む男たちは、自分たちの優位を確信している。ファイトにおいても、腕力においても、自分たちがミサキに負けるとはこれっぽっちも思ってはいないのだ。

 だから、これは彼らにとっての遊びのようなものだ。のこのこと自分たちのテリトリーに侵入したミサキとエミという玩具を使って、どれだけ楽しいことが出来るかという遊び。気の強そうなミサキを徹底的に辱め、嬲り、最終的には涙を流して自分たちに許しを請うまで追い詰めてやろうと、彼らは脳内に次々とミサキをいたぶる方法を考えては、それを実行した時の彼女の反応を想像して猟奇的な笑みを浮かべていた。

 

 この服を渡せという命令も、そのための第一歩だ。大嫌いなタイプの男たちの命令に従う以外の道をなくし、彼らに肌を晒すという屈辱を味合わせた上で更に下品な野次を飛ばすことでミサキを動揺させ、彼女の冷静さを奪ってしまおうという思惑の下に彼らはミサキへと脱衣命令を下したのである。

 大方、今のミサキの心の中では、彼らに従いたくないという気持ちと従わなければエミが危険な目に遭うという分析がぶつかり合っているのだろう。そして、そのぶつかり合いに勝つのは間違いなく後者だ。

 これからミサキはエミのことを思い、悔しさを感じながらも自分たちの言うことに従って服を脱ぎ捨て、下着姿になる。恐らくはまだ誰にも見せたことがないであろう起伏に富んだ美しい女体を男たちの前に曝け出し、恥ずかしさに耐えながら気丈に振舞う彼女の姿を堪能しながら、一層その羞恥を煽ってやろうと、男たちが心の中で舌なめずりをした、その時だった。

 

「いいよ、わかった。服を脱げばいいんだね?」

 

「み、ミサキさんっ! だめっ!」

 

「大丈夫だよ、エミ。何にも心配はいらないから」

 

 店内に響いたミサキの声は、一切の躊躇いを感じさせないはっきりとしたものだった。それを慌てて止めるエミにも平然とした様子で返答し、本当になんてことでもないように宮地学園の制服を脱ぎ始めた彼女は、顔色をまるで変えることもなくあっさりと下着姿になって、今しがた脱ぎ捨てた服を男たちへと差し出す。

 

「ほら、これでいいんでしょ?」

 

「あ、ああ……へへっ! 案外、素直じゃねえか!」

 

「おほ~っ! 制服の上からでもわかったけどよ、やっぱおっぱいでっけえなぁ!」

 

「尻もむっちむちでいい感じの安産型じゃねえの! でも、引っ込むところは引っ込んでる、最高に美味そうな雌の体だぜ!」

 

「……褒めてもらってるところ悪いんだけどさ、あんたたちみたいなクズに何言われても嬉しくも恥ずかしくもないんだよね。うるさいから、その口を閉じてくんない?」

 

「へ、へへっ! 強がりやがって、本当は恥ずかしくて堪らねえ癖によ……!」

 

 羞恥も、憤りも、屈辱も、今のミサキの様子からは感じているようには思えない。本当に、男たちに見られても何も感じないとばかりに堂々とした様子でそう語る彼女を見て、逆に男たちが動揺してしまうほどだ。

 それでも、彼らは自分たちが優位であるという認識を捨てられなかった。きっと、ミサキは必死に恥ずかしさを抑え、演技をしているのだ。普通の女子高生がこの状況で一切心を揺さぶられないなんてことはない。絶対に、きっと、多分……彼女は、羞恥を堪えて――。

 

「……下らない。年下の女の子を人質にして、無理矢理人に命令を聞かせて、服を剥いで……それで勝ったつもり? あんたたちみたいな人間以下のクズに対して、見られて恥ずかしいとは思うわけないじゃん。……ほら、ダサいあんたたちにサービスしてあげるよ。目ん玉よ~く開いて、せいぜい今のうちに頭に焼き付けとけば?」

 

「へっ……!?」

 

 動揺する心を必死に鎮めようとしていた男たちは、ミサキがそう吐き捨てながら自分のブラのホックを外し、彼女の髪の色と同じ紫色のそれを脱ぎ捨てて自分たちへと放り投げた姿を目にして、完全に思考を停止させた。ミサキのたわわに実った胸の果実は、誇張表現なしに美しく、生で女性の乳房を見ることなど初めてである彼らは、突然の出来事に何の反応も出来なくなってしまったのである。

 

「……エミ、アタシは本当に大丈夫だから心配しないで。すぐに助けてあげるからね」

 

 そんな男たちとは対照的に、ミサキには人質にされているエミに声を掛ける余裕があるようだ。力強くそう言いながら微笑みを見せる彼女の姿を見れば、その言葉が嘘ではないことは一目でわかる。自分たちの想像を遥かに超える反応を見せるミサキに対して困惑する男たちは、事ここに至って本当に自分たちが優位なのかがわからなくなってしまっていた。

 

 どうしてミサキはこんなにも余裕がある? 彼女は乳房を他人に曝け出すことに一切の羞恥を感じていないとでもいうのだろうか? 女子高生という多感な時期に、自分が嫌悪感を抱く性格の名前も知らない男たちに柔肌を晒したとしても、何も感じないなんてことはどう考えてもあり得ない。だが、実際にミサキはああして堂々と仁王立ちしている。本当にもう、男たちには彼女のことが何一つとして理解出来ないでいた。

 

 だがしかし……ここまでの物語を全て知る諸君たちならば、彼女がどうしてこんなに平然としていられるかはもうお分かりだろう。

 そう、ミサキにとっては下着姿を見られるなんてことは日常茶飯事どころか、慣れ親しんだライフワークと言っても差し支えないレベルの行為なのだ。『E-ROSS』では常にニプレス&前貼りの全裸にほぼ等しい姿か、それすらも身に着けていない全裸で過ごしている彼女には、今さら乳房を見られるなんてことで動揺なんてするはずがないのである。

 加えて、確かに目の前の男たちはミサキが忌み嫌うタイプの人間だが、それ故に彼らに対して何の感情も抱くことはなかった。人間以下のクズ、猿のような存在だと相手を認識してしまえば、動物相手に裸を見せる程度の軽い気分で乳房すらも晒すことが出来る。

 そして何より、彼らには『E-ROSS』の男からは感じられるミ(・)サ(・)キ(・)へ(・)の(・)愛(・)が感じられないのだ。

 ゲンをはじめとした『E-ROSS』の男たちは、豊富な人生経験を活かしてミサキの成長を手助けをしたり、カードファイトの手解きをしてくれたり、彼女に女としての悦びを教えてくれる尊敬すべき人間たちである。そんな彼ら一人一人が心からミサキを愛し、可愛がってくれるからこそ、彼女は女としての幸福を彼らから感じることが出来るのだ。

 それに対して、この男たちはどうだ? ミサキのことをダッチワイフ人形か何かだとしか思っていない、最低のクズ共としか言いようがないではないか。そんな奴らに何を言われたところで、ミサキの心には何も響かないのである。

 

(恥ずかしさも、悔しさも、気持ち良さも……みんながくれたものの方が、比べ物にならないくらいに上だ! こんなの、全然恥ずかしくない!)

 

 『E-ROSS』で過ごした日々は、ミサキの心を強くしてくれた。何度も折られ、辛酸を舐めさせられ、屈辱を味合わされたからこそ、彼女の心は今までの何千倍も強くなったのである。

 そうして気高く強くなったミサキの心は、この程度の辱めでは揺るがない。愛のない、ただの羞恥を感じさせようとするだけの男たちの行為では、ビクともしない程に彼女の精神は強固なものになっていた。

 

「く、クソっ! 女のくせして調子に乗りやがって……! フーファイターズの俺たちが、お前みたいな奴に負けるはずがねえんだよ! こうなったら、ヴァンガードファイトで勝負だ! お前が勝ったら、俺たちはこの店から手を引いて、二度と関わらないと誓ってやる。だが、俺たちが勝ったら……お前には、俺たちの奴隷になってもらうぜ!」

 

「き、キヘヘ……! そのでっかいおっぱいとむっちむちのケツをたっぷり弄ってやるよ!」

 

「あんあん喘がせてやるから、楽しみにしとけよな!」

 

「子供の前で下品なことを言うんじゃない! わかった。その勝負、受けてやるよ。アタシも約束は守るから、あんたたちも言った事は忘れるんじゃないよ!」

 

「へへへへへ……! いい返事だぜ。安心しな、俺たちもヴァンガードファイターだ。ファイトの際に交わした約束は、絶対に守ってやるよ」

 

「ふんっ……鞄を寄越しな。その中にアタシのデッキが入ってる。アンタたちは、誰が勝負すんの?」

 

 上半身裸の状態で胸を揺らしながらファイトテーブルの前に立ったミサキは、男たちに手を伸ばして自分のデッキを渡すように言った。3人の男たちの内、誰が自分の相手になるのかとそれぞれの顔を見回す中、あくどい顔で笑った彼らは、心底意地の悪い声で信じられないことを言う。

 

「悪いが……お前のデッキを渡すことは出来ねえな」

 

「……なんだって?」

 

「デッキは渡せないと言ったんだ。お前には、この場でデッキを組んでファイトしてもらうぜ」

 

「お前には今からこの店のカードを使ってデッキを作ってもらう。制限時間は30分だ」

 

「ああ、そうそう。俺たちは3人全員でお前の相手をするから、デッキも3つ作れよ。んで、俺たちの内、誰か1人にでも負けたら、その時点でお前の敗北な!」

 

「そ、そんなの卑怯よ! 自分のデッキを使わせない上に、短い時間でデッキを3つも作らせて、しかも1回の負けも許されないだなんて! 自分たちに有利な状況を作り上げて勝って、それで本当に胸を張れるの!? うっ!?」

 

「うるせえよ、ガキ! これはファイター同士の問題なんだ。ファイトも出来ない奴はすっこんでろ!」

 

「エミっ!! ……その子に手を出すんじゃないよ!」

 

「それはお前の返答次第だな。わかってると思うが、お前にゃ選択肢なんてねえんだよ!」

 

「う、ぅ……!」

 

 エミの細い腕を掴み、強い力で捻じり上げる男たちに向けて怒声を上げたミサキは、彼らへの怒りで脳が沸騰しそうになっている。

 ファイターとして風上にも置けない行為の連発。自分たちが勝つためにならばどんな手段でも使うというその腐った性根に対して怒りを爆発させたミサキは、得意気にこちらを見る男たちの条件を飲んだ上で勝利することを心に誓い、大きく彼らへと頷いてみせた。

 

(絶対に……許さない! あんな奴らにヴァンガードファイターを名乗る資格なんてない! ここで叩きのめしてやるんだ!)

 

 怒りの炎を燃え上がらせるミサキは、握った拳を震わせながら改めて自分自身にそう誓う。だが、実際問題として、それがどれほど困難な行為かも理解していた。

 今から3つのデッキを作り上げ、それを試運転無しで使用して3勝しなければならない。時間にも余裕はなく、まともにコンセプトから考えていたら間違いなくタイムリミットがやって来てしまうだろう。一応、構築済みデッキを使用すればその問題は解決出来るが、その程度のデッキで男たちに全勝出来るとは到底思えない。

 

(あいつらに勝てるデッキを3つ……どう組めばいい? デッキビルドの方法はタイゾウさんに教えてもらったけど、こんな短時間で3つもデッキを組むなんて、アタシにはまだ無理だ。でも、でもっ……!!)

 

 諦めたくない、屈したくない、負けたくない……ここで敗北することだけは、絶対に許せない。例えどれほど困難な道だろうと、絶対に乗り越えて勝利を掴んでみせる。自分を鍛えてくれた、数多くのファイターたちのことを頭に思い浮かべたミサキが、極限まで神経を研ぎ澄まさせた、その瞬間だった。

 

『ミサキ……ミサキ……!』

 

「えっ……!?」

 

 心の中に直接響く、自分の名を呼ぶ声。確かにその声を感じたミサキは、驚きの表情を浮かべてその声の主を探すも、店の中には自分たち以外の人間の姿は見えない。だが、ミサキは今もなお、自分を呼ぶその声を感じていた。

 聞き覚えのあるその声。無数の人々が自分を呼んでいる感覚が、徐々に強まっていく。

 最初は困惑し、その声に戸惑って居たミサキであったが、心が落ち着くと共にその声の出所が自分のすぐ目の前……レジの裏に並ぶ、カードパックの内側から聞こえていることに気が付き、それと同時にその声がはっきりと心の中に流れ込んでくる。

 

『ミサキよ、あの下郎どもを許すな。今こそ、我らスパイクブラザーズの下で鍛え上げたお前の力を見せる時だ!』

 

『ミサキハ、ワガグンノ、ハハ。ソレヲ侮辱スル、モノハ……敵ダ! 全軍、出撃! アノ愚カ者ドモヲ喰ライ尽クセ!!』

 

『あの程度の悪事で調子に乗っているチンピラには、悪の組織としておしおきが必要だな。淫乱怪人ドスケベ・ミサキよ、貴様に我が軍勢の指揮権を委ねる。奴らに真の恐怖というものを教えてやれ!』

 

「ザイフリート……デスレックス……デスワーデン・アントリオン……! みんなの、ユニットたちの声が、聞こえる……!?」

 

 『スパイクブラザーズ』。『たちかぜ』。『メガコロニー』。以前に『E-ROSS』で行われたファイトにて、敗れこそしたものの善戦したミサキに目を掛けてくれたユニットたちの声が、姿が、今のミサキには感じられていた。

 彼らは皆一様にミサキの思いに応え、彼女に力を貸すべく戦いの準備をしている。3つのクランのユニットたち全員が、ミサキのために立ち上がってくれているのだ。

 

(わかる……! どのパックを開けて、どのカードをデッキに組み込めばいいのかが全部わかる! ううん、みんなが教えてくれてるんだ! 惑星クレイのみんなが、セックスサポーターのアタシに、孕み奴隷のアタシに、淫乱怪人のアタシに……力を貸してくれてる! これなら、勝てる!!)

 

 ミサキは、一心不乱にカードパックを開封すると、そのカードをまともに見ないままに3つの束に振り分けていった。傍から見れば彼女がヤケクソになっている様にしか見えず、実際にその姿を見守るエミと老婆は不安気な表情を浮かべ、逆に男たちは既に勝利を確信した笑みを浮かべているのだが……ミサキには、彼らの感じることが出来ないユニットたちの声を感じることが出来ていた。そして、その声に従って、今の彼女に最適なデッキを猛スピードで組み上げているのである。

 

 今まで自分は、何度も負けては屈辱と快感を味わってきた。しかし、それと同時に彼女は着実に成長を重ねてきた。1回敗北を喫する度にファイターとして成長し、欠点を克服し、どれだけ辱めを受けても何度でも立ち上がり、また次の戦いを挑むことを止めはしなかった。

 敗れ、無様な姿を晒し、どれだけ笑われようとも、それを幸せだと、楽しいと、そう思わせてくれる人たちがいた。自分の成長を認め、自分のことのように喜び、導いてくれる人たちがいた。

 重ねて来た敗北は、決して無駄ではない……『E-ROSS』で得た経験が、ファイトの際の記憶が、これまでの戦いで培った技術が、今、ミサキの中で結びこうとしている。

 ゲンやタイゾウのような、真のヴァンガードファイターには敵わないかもしれない。だが、超人的な記憶力と聡明な頭脳を持ち、何より強き男たちとクレイのユニットに愛される彼女だからこそ出来るファイトは、確かに存在していた。

 

(……完成、した……! アタシの今までが詰まった、みんなと一緒に作り上げた、3つのデッキ! これなら、あいつらにだって絶対に勝てる!)

 

 きっかり30分、制限時間丁度に出来上がった3つのデッキを手に、ミサキは男たちと向かい合う。そこでもユニットたちの声を聞き、それぞれが戦いたいと訴えた対戦相手の前にデッキを置いたミサキは、既に勝ち誇った表情を浮かべる彼らを見つめ、湧き上がる興奮に身を任せつつ、されど頭は冷静さを保ちながら……ファイトの始まりを宣言した。

 

「スタンドアップ、ヴァンガード!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで最後! 『デスワーデン・アントリオン』でヴァンガードにアタック!」

 

「ぐうっ! の、ノーガード……ダメージチェック、ノートリガーだ……」

 

「アタシの勝ちだね。んで、これで3勝だけど……何か物言いはある?」

 

「う、うぅっ……こんな、こんなバカなことが……!?」

 

「俺たちフーファイターズが、急造デッキ相手に三連敗するだなんて……こんなことがあのお方に知られたら……!?」

 

 それから十数分後、自分のダメージゾーンに置かれた6枚のカードを茫然とした様子で見つめる3人の男たちは、現実を受け止められずにいた。よもや、圧倒的有利な筈のファイトに全敗してしまうなんて、考えてもいなかったのである。

 しかし、どんなに首を振り、こんなものは嘘だと自分に言い聞かせてみてもこの現実は変わらない。彼らは、たった30分でミサキが作り上げたデッキを相手に、完全敗北を喫したのだ。

 

「約束通り、この店から出ていって、二度と顔を出すんじゃないよ! それと――」

 

「あぎっ!?」

 

「うぎゃぁっ!?」

 

「ごべぇっ!?」

 

 勝者であるミサキは、男たちの股間を思い切り蹴り上げ、悶絶して蹲る彼らの手からカードデッキを奪うと、まるでゴミムシでも見るかのような蔑んだ視線を向けて、苦々し気に吐き捨てた。

 

「アンタたちみたいなクズがヴァンガードファイターを名乗れないように、このデッキは没収させてもらうよ。これで少しはファイトスペースを奪われた人たちの気持ちを理解するんだね」

 

「う、うぅ……ちっくしょーーっ!!」

 

 ファイターとしても、男としても、徹底的にプライドをへし折られた男たちは、ミサキに逆らうことも出来ずに涙目になって店を飛び出していった。情けないその後ろ姿を見送りながらふん、と鼻を鳴らしたミサキは、彼らが置いていった自分の制服を再び身に着けながらエミへと話しかける。

 

「もう大丈夫だよ。これでアイツらも少しは懲りたでしょ」

 

「凄い……! 本当にあんな不利な状況から勝っちゃうなんて、ミサキさん本当に格好いいです!」

 

「そんなことないよ。アタシはただ勝てる戦いに勝っただけ。そんなアタシなんかより、このお店のために自分よりも年上で強そうな男たちに食って掛かったエミの方が何倍も格好いいって」

 

 普段通りの制服姿になりながら、優しくエミを褒め称える言葉を口にしたミサキがふわりと優しい笑顔を彼女へと見せる。女性としての優しさと、ファイターとしての格好良さを見せつけたミサキの姿に、エミは心からの憧れの眼差しを向け、彼女を尊敬していた。

 

「……わかってると思うけど、このことはアタシたちだけの秘密だよ? あんな真似をしたってシンさんが知ったら、きっと卒倒しちゃうからね」

 

「は、はいっ! 絶対に、誰にも言いませんっ!!」

 

 そうして、最後に悪戯っぽく笑ってそう念押ししたミサキの言葉に、エミはぶんぶんと首を振って頷く。ミサキがパンツ一丁の格好で男たちとファイトしただなんて話が広まったら、彼女に良からぬ思いを抱く者も現れるかもしれない。そうでなくともこのことがバレたら彼女に恥をかかせるということを理解しているエミは、今日の出来事は自分とミサキだけの秘密として、墓場まで持っていくことを誓った。

 

「じゃあ、アタシは先に帰らせてもらうね……お婆さん、デッキ作りのために使ったカードの代金は後日必ずお支払いしますので、少しだけ待っていてください」

 

 エミと店主である老婆にそう言い残して、ミサキは店を出ていく。自分たちの危機を救い、颯爽と去っていった彼女の姿を見送りながら、エミはミサキへの感謝と尊敬の思いを強めていた。

 が、しかし……そのミサキの強さは、彼女と倍以上も歳の離れた男たちに抱かれることによって培われたものだ。そんなことを知る由もないエミは、ミサキの表向きの姿に対して無邪気に憧れ、自分も彼女のようになれたらなと無垢な願いを抱くのであった。

 

 




多分、明日もお話を投稿します。お楽しみに。
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