特異点、西部絢爛賭場ラスベガスに存在する“カジノ・キャメロット”。
シバの女王は、ここで強制労働の刑に処されていた。
罪状は、カルデア内での詐欺及び資金横領である。
判決は単純明快。
騙し取った金額と同額を稼ぎ終わるまで、強制労働は終わらない。
「うぅ……よ、ようこそいらっしゃいませっ……」
普段のカルデアで見せる余裕綽々な態度はどこへやら。
か細く弱々しい声で、シバの女王は客を迎え入れる。
特製のバニースーツは、彼女の褐色肌を殆ど覆い隠せていない。
普段の恰好も露出の多いものではあるのだが、その意味合いが違い過ぎる。
きちんと説明されなければ、それがバニースーツだとは思えないほどだった。
蝶ネクタイの代わりに装着された首輪には残りの借金残高がデジタル数字でリアルタイム表示され、彼女が隷属の身であることを強く主張していた。
黒のボディスーツは乳首や尻の割れ目が浮き出るほどに薄く、豊満な乳房は今にも生地を破ってしまいそうだ。
網タイツとカフスの代わりに手足には枷が嵌められ、お客様に粗相なきよう彼女の魔力と膂力を制限している。
奴隷がバニーガールの仕事をしているような恰好。
性的であり非人道的でもあるこの衣装は、彼女の尊厳を奪うのに最も適切であった。
客に呼ばれるたび、彼女は早足で歩きドリンクを提供する。
気まぐれで与えられるチップを受け取ると、彼女は深々と礼をして感謝の気持ちを伝えていた。
無論、その金が彼女の手元に残りはしない。
受け取った途端に、消失した金額分の借金のカウンターが小さく音を立てて減少するだけである。
「ひゃっ……!」
甲高い悲鳴と共に、キャスターの体がビクンと跳ねる。
客の手が彼女の尻を撫でたのだ。
その拍子に彼女が運ぶグラスからワインが零れ、床を濡らした。
通常であれば客の責任になるのだが、相手はVIPルームの客人であり彼女は隷属の身。
埋めがたい身分の格差は、彼女を被害者から加害者に変えてしまう。
「も、申し訳ありません……ひぃっ!」
カチャン、と。
失態のペナルティとして、カウンターが借金増額を示す。
いくら働いても、彼女の借金が減ることは無い。
どのような基準で借金が増減するのか、それを決定するのは彼女ではないからだ。
「う、うぅ……」
貧すれば鈍する。
キャスターの思考は、一刻も早く解放されたいという感情によって重く鈍り、下卑た笑みを浮かべた周囲の提案を受ける羽目になってしまう。
一発逆転を狙う者の足掻きは、富裕層にとって人気の見世物だ。
それがいかに低俗であるとしても、安全圏から見る他者の破滅は甘い蜜の味がする。
VIPルームの中央に設置された、専用のゲームスペース。
キャスターのギャンブルを鑑賞するため、多くの客が彼女へと視線を送る。
会場ではキャスターが借金を返済できるかどうかのギャンブルが開催され、大型のモニターにリアルタイムで変動するオッズが表示されていた。
九十九%以上の客は彼女の破滅にベットするため、キャスターの勝利は一万五千倍というとんでもない倍率を記録していた。
(ふん、今に見ていることですねぇ。私は絶対に勝利して、ここから抜け出して見せますっ……!)
そんなキャスターの決意は、一時間も持たずに崩れ去ることになる。
今のキャスターは借金を抱え、賭けられる元手が無い。
よって全てのギャンブルは運営との勝負。
勝利すれば借金が減り、負ければ増額。さらに追加のペナルティが課せられる。
全二十ゲームのポーカー勝負は、序盤こそキャスターの優勢であった。
特異のブラフと駆け引きにより、順調に借金を返していく。
「勝っているのにチップが手元に残らないのは、仕方ないとはいえ損した気分です……」
そんな軽口を叩けたのは六ゲーム目までだ。
ブラフと読んだ相手の勝負手に敗北した瞬間、キャスターは甲高い声をカジノ内に響かせた。
「ひゃっ……!」
失ったチップは少額だが、負けという事実が問題だった。
運が絡むギャンブルにおいて、敗北ごとにペナルティが課せられる今回のルールから逃れることは不可能だ。
スタッフに壇上へと案内された一人のVIP客が、キャスターの尻に触れたのだ。
撫で、揉まれ、指が吸い付くように柔らかな尻肉が揺れ動く度、彼女の喉からは甘い嬌声が漏れ続ける。
挑戦者の集中力を乱すペナルティという名目で公然と行われるセクハラ行為に耐えながら、キャスターはより一層決意を固めた。
(こんな嫌がらせに屈するものですか。絶対に勝ってみせますよぉ……!)
「ひっ、く、うぅっ……」
一時間が経過した頃には、キャスターの決意はもろくも崩れ去っていた。
陰核に張り付けられたローターの振動。
尻穴を這い回るように動き続けるアナルプラグ型バイブ。
執拗にこねくり回される乳房。
与えられる性的快楽は、キャスターの思考を溶かす。
二度の絶頂を経て、既に手元のカードすらまともに認識できないほどに彼女の思考能力は低下していた。
「──ッ!」
三度目の絶頂と同時の敗北に、キャスターの借金は元の額へと逆戻りした。
「も、もう無理ぃ……ギブアップ……させ、て……」
このギャンブルに途中棄権は存在しない。
キャスターの心が折れれば、あとは見世物として嬲られるだけだ。
「──っ!」
ポーカー、バカラ、ブラックジャック、ルーレット、クラップス。
あらゆるギャンブルで敗北を重ね続け、次の種目は観客参加の麻雀対決だ。
ブラックジャック敗北のペナルティによって装着されている口枷からは、くぐもった動物のような声にならない音が漏れ続けていた。
枷を嵌められ発声ができないキャスターが麻雀というゲームで勝つことは不可能であった。
点数を全て吐き出し、飛びのペナルティとしてその度に他のプレイヤー三名に犯される。
そして次の参加者たちが下卑た笑みを浮かべて席に座るのだ。
もはやゲームでもギャンブルでもないそれに、キャスターは囚われた。
美麗な肉便器として、時折放られる施しのチップだけが彼女の借金を減額させる。
参加者全員が飽きるかキャスターが壊れるまで、彼女の労働は続くのだ。