妖精騎士トリスタン。
或いはバーヴァン・シーと呼ぶべきか。
彼女は本来であればこのカルデアに召喚される英霊ではない。
時間軸の狂った未来の縁。
今現在は存在すら知らないカルデアに召喚された彼女が、人理修復などというカルデアの目的に従うはずもなく。
ケラケラと嗜虐的な笑みを浮かべたバーヴァン・シーは好き放題に暴れ回り、カルデアへと多大な被害をもたらした。
その性根が心優しき少女であろうとも、その性格が与えられた偽りの物であろうとも、今ここにいる妖精騎士トリスタンはカルデアに害をもたらす存在であり。
そうであればカルデアは容赦をしない。
その性根を叩き折り、“教育”を行う。
「あら、もう朝? こんな正義のミカタに酷いことをするなんて、カルデアってのはとんだ邪悪なんだなぁ。次は何? この美貌に釣られた男共が犯しでもするの?」
地下の更生施設にて行われた一週間の拘束と説得は彼女の心に何も響いておらず、その不遜な態度が変化することは無い。
カルデア流の“指導”では、彼女の心を折るには至らなかったのだ。
両手足を鎖で縛られ地面に転がされたまま、それでも他者を見下すバーヴァン・シーに匙を投げた職員は、本職の手を借りることを決意する。
男性職員に引き連れられて入室したのは、二名の女性サーヴァント。
武則天とカーミラだ。
「はっ、サーヴァントが人間風情の小間使いとは墜ちたものねぇ? 今の私より、貴方たちの方が数倍無様に映るわ」
そんな彼女の挑発にも、武則天たちは微かに苦笑を浮かべるだけだ。
なぜなら、かつては自分らがそちらの立場であったから。
あの悪夢を再び味合わぬよう、かつて受けた仕打ちを新人に行うために彼女たちはこの場にやってきたのだから。
期限は一週間。
決して殺したり壊したりはするな。
そう短く告げて、職員は去っていく。
了承の意を告げた武則天とカーミラの二名は、憐憫と嗜虐の入り混じった表情を浮かべながらバーヴァン・シーを見下した。
一週間後。
武則天とカーミラは職員たちの前に、バーヴァン・シーを引き連れて現れた。
魔力の籠った拘束用の首輪こそ嵌められているが、その肉体にも、着ているドレスにも、一切の傷や汚れは見当たらない。
四肢は自由で、事実としてバーヴァン・シーは己の足でここまで歩いてきている。
カルデアに来たばかりの惨状を想起させる姿に、職員たちは思わず後ずさる。
しかしそこで、彼女の表情がかつての嗜虐に満ちたものではないことを認識した。
それは怯えだった。
鞭を持ち、バーヴァン・シーの左右に立つ武則天とカーミラを、彼女は恐れている。
一週間でどのようなことがあったのか、それは彼女たちにしかわからない。
しかし、目に見える傷がないということは激しい暴力や非道な拷問では無かった──いや、その程度では済まなかったということなのだろう。
「──ッ」
カーミラがバーヴァン・シーの腰へ右手で撫でるように触れた。
それがなにかの合図だったのだろう。バーヴァン・シーは一歩前に歩を進めると、己の着ているドレスをゆっくりと脱ぎだした。
羞恥も怒りもなく、彼女はただ怯えている。
怒られたくないから、言われた通りにする。
唐突に始まったストリップショーに、職員たちはただただ困惑する。
ドレス、下着、装飾品の順に全てを脱ぎ捨て、職員たちの前で全裸となり、そしてバーヴァン・シーは職員たちへ向けて土下座をした。
プライドも自尊心も完全にへし折られたのだと示す行為に、職員たちはようやく目の前のサーヴァントは無力化されたのだと安堵した。
だが、職員たちは目の前のサーヴァントに近づけない。
一切の外傷無く心のみをへし折る武則天とカーミラの手腕は素晴らしいものであったが、それはあまりにも完璧過ぎた。
召喚された直後と何も変わらないバーヴァン・シーの外見、そして首輪のみという緩すぎる拘束。
本当に大丈夫なのかという疑惑が、職員たちの脳裏から離れてくれないのだ。
その結果、衣服越しにもわかるほど股間を膨らませながら恐怖で後ずさる職員たちというある種間抜けな光景が繰り広げられてしまった。
武則天は己の完璧な仕事を信頼できんのかと憤慨し、カーミラは困ったようにため息を吐く。
そしてその両者の瞳が、ある一人の職員へと向いた。
その職員は、灯りに近づく虫のようにふらふらと歩を進めている。
恐怖よりも性欲や征服欲が勝った男が、一人だけ存在したのだ。
武則天とカーミラはちらりとお互いを目線だけで見て、薄い笑みを浮かべながらその男を歓迎した。
二人に手を引かれ、職員はバーヴァン・シーの背後へ立つ。
カーミラにズボンを手際よく脱がされ雄々しくそそり立つ肉棒が晒されると、見えていないはずなのにバーヴァン・シーの肉体が恐怖でビクッと震えた。
「──何も問題は無い」
「──ただ欲望の赴くままに腰を振ればいい」
両耳に囁きかけられる誘惑は甘美で、男であれば逆らえる者などいるわけがない。
熊の巣穴に侵入するかのようにゆっくりと、男の肉棒はバーヴァン・シーの秘部へと挿入されていく。
「ぐっ……んんっ……」
バーヴァン・シーの喉から微かに漏れる音は、苦悶の声のように聞こえる。
本人が必死に堪えようとしていることもあり、その声はどちらかと言えば音と表現する方が正しいようなものだったが。
だが重要なのは、彼女が犯されていても一切の抵抗をしていないことだ。
その気になればすぐにでも首輪を引きちぎりながら職員を惨殺することも容易い彼女が。
「ぐっ、くぅっ……!」
ゆっくりと、しかし徐々にピストン運動の速度は増していく。
蕩けるような膣の感触。
冷酷で粗暴で残虐な女であるバーヴァン・シーが額を地に伏せ、あれほど蔑んでいた男たちに服従しているという優越感。
そして何より結合部から漏れ出ている愛液が示す、目の前の雌が己の肉棒で感じているという事実が、彼を一人の男から一匹の雄に変えている。
「──ッ!」
ドクドクという音が聞こえるほど盛大に、バーヴァン・シーの膣内へ注がれる白濁液。
職員は天にも昇りそうな幸福感に包まれ、バーヴァン・シーは絶望の表情を浮かべていた。
その表情の原因は犯されている現状ではない。
彼女の視線の先……先程までバーヴァン・シーに恐怖していた他の職員たちが皆一様に薄ら寒い笑みを浮かべながらこちらへと歩いてくるのが見えたのだ。
「ぅ、ぁ……」
掠れた声は誰にも届くことは無い。
もう大丈夫なのだと免罪符を手に入れたこの場の雄たちは、その欲望を目の前の雌へとぶつけるのみである。
その豊満な乳房に、すらりと伸びた両足に、真紅に染まった髪に、青ざめている顔面に手が伸びる。
「ひぃっ────!」
悲鳴を上げてしまったバーヴァン・シーの傍で打たれた鞭の音が、武則天とカーミラからの“お仕置き”すらも合図する。
その事実に、彼女は再度大きな悲鳴を上げた。
まるで断末魔のように。
「ぅ、ぅぅっ……」
日が暮れ、満足した職員たちが去り、残ったのは三騎のサーヴァント。
全身を白濁液で染め上げて倒れ伏すバーヴァン・シーと、彼女を見下す武則天とカーミラだ。
既に枯れ果てたのか、涙を流さずに泣き続けるバーヴァン・シー。
同情という言葉が羽毛のように軽くなるであろうその光景にしかし、そんな彼女を見下す四つの眼は嗜虐的な笑みに満ちていた。
「全く、あれだけ教育してあげたのに情けない」
「十を超える絶頂に部屋中に響く嬌声と絶叫。更には己が被害者であるとでも言いたいかのような視線と涙……貴様にはまだ教育が足りんかったか」
「雌としての価値を高めようとして傷をつけないようにしたのは失敗だったのかしら」
「うむ、妾とそなたで教育するのじゃ。今度は拷問の許可も貰っておこう」
「――え?」
鳴き声は、一瞬で止んだ。
「や、やだ……やだ、やだ、いや。もう無理、ゆるして……ください、もう、いや……今度はちゃんとしますから、何でも言うこと聞くから……ひっ──!」
バーヴァン・シーの懇願は受け入れられること無く、彼女は再び、地下の更生施設へと引きずられていった。