中国三大悪女の一人に数えられる、アサシンのサーヴァント武則天。
カルデアは彼女の扱いを彼女がカルデアに召喚される前から決定していた。
かつて敵として立ち塞がった彼女を討伐する際に彼女が出した被害は、他のサーヴァントに比べ突出して多いというわけではない。
だが、その質が問題だった。
彼女に殺された人々及び数少ない生存者には、全てにおいて惨たらしい拷問の跡が残されていた。
手足を切断された程度なら、まだ軽い。
全身に火傷の跡がある男が、低体温症で死んでいた。
両目を刳り抜かれた女の手には、切断後の残った自身の目玉が握られていた。
股先から両断された死体を調べると、死因は餓死だった。
数少ない生き残りも身体の一部を欠損、あるいは精神に異常が現れている。
職務に忠実なカルデア職員とはいえ、皆は心無き機械ではないのだ。
仲間が残酷に殺され、黙っていられるほど彼らは人を捨てていない。
強い恨みは奥底に封じ込めたまま、彼らは着々と準備を進めていた。
彼女、武則天に報いを受けさせるために。
そして彼女がカルデアに召喚されたこの瞬間に計画は実行され、成功したのだ。
「がッ、ぎィィィィ──!」
少女の絶叫が、無機質な地下室の壁を震わせる。
そこはかつてエリザベートの教育を行った、地下の更生施設だ。
だが、今回は規模が違う。
そして何より、職員の目が違う。
武則天の素肌には、すでに無数の傷跡が刻まれている。
大小さまざまな鞭や刃物の跡は、もはや数えきれないほどに彼女の肌を駆け巡っていた。
「ひっ、ぐ、がぁ……」
苦痛に耐えきれず絶叫を繰り返した喉は内側から裂け始めていた。
内と外から、彼女は血を流している。
すでに四十八時間が経過した。
武則天の周囲には最低四名の職員が入れ替わり配備され、常時苦痛を与え続ける。
鞭で腕を打たれ、包丁で足を割かれ、槌で背を叩かれ。
へし折れた指は両手足二十本一切の例外なく全てがあらぬ方向へ捻られた。
爪は全て剥がれており、柔らかな指先の肉には複数の針が突き刺さったままだ。
痛みに慣れないよう、常に新たな苦痛を職員たちは少女へ振りかざす。
「──ひ、ヒィッ……!」
武則天の涙で霞む両の瞳が、新たな拷問具を視界に捉える。
それは今までと同様に、とても見覚えのあるものだ。
カルデア職員へとその暴虐を向けた記憶が、彼女の中には色褪せず残っている。
無論、この場の生き残りにも。
因果応報、自業自得。
己が罪に向き合い絶望と後悔に沈めと、職員の燃える瞳は言葉なく伝えていた。
ガチャガチャという音と共に、器具の設置は完了する。
弱り切った体ではもはや抵抗もできず、彼女は人形のようにされるがままだ。
武則天の四肢は、彼女の腕ほどに太い鎖で強制的に広げられた。
大の字を描くような姿で、彼女は宙吊りになっている。
そして垂直に天から吊るされた一本の鎖が、彼女の首輪を引っ張り上げていた。
首を適度に締め上げながら武則天の体は大地から十センチ程度空中に持ち上げられる。
両腕の鎖は壁に。
両足の鎖は大地に。
それぞれ魔術で固定された鎖は微塵も弛まず彼女の拘束を全うしていた。
上下左右から強く引っ張られる形になった武則天の四肢と頭部は、ただそれだけで強大な苦痛に晒される。
「が、かはっ、ぐ、あぁ……!」
ミシミシと全身の軋む音が、彼女の耳を犯す。
四肢に力を込めて数ミリでも高く体を持ち上げ、必死に気道を確保する。
酸素を求めて体を揺する姿は、少女の痛々しい姿を無視すれば滑稽とも捉えられた。
無論、これはただの準備段階だ。
刑罰は開始すらしていないと、職員は彼女を更に痛めつける。
更に十時間が経過。
武則天は十時間、全く同じ責めを味わった。
それは軽度の八つ裂き刑だ。
限界まで引き伸ばした四肢の鎖を、命令に従わない限り追加で締め上げ続ける。
眠るな。
声を上げるな。
体液を零すな。
エトセトラ、エトセトラ。
命令は全てが無理難題だった。
痛みに耐えかねて意識を失えば、眠ったと判断され鎖は引き絞られる。
そして悲鳴を上げて意識を取り戻し、声を出したと鎖を引き絞られる。
ついには失禁して黄色の液体をまき散らし、再び……。
結局、両肩が脱臼するまでこの責めは続いた。
気を失った武則天は鎖を外される。
そして新たな刑が執行されるのだ。
「──ん、んん……」
意識を取り戻した武則天の眼は、目の前に広がった地面を捉える。
「なるほど、ついに、か……」
掠れた声を上げ、彼女は全てを理解した。
それは有名な、誰でも知っている処刑法。
「断頭台とは、また……」
武則天は鋼鉄のギロチンに拘束されていた。
首と両手首を枷に嵌められ、腰の高さに固定されている。
直角に折れ曲がった腰は三重に鎖が巻かれている。
両足は足首の部分で完全に固定された。
そして首の上空には、鋭利な刃が血を求めてキラリと輝いている。
「まだ、だ」
「──むぐっ!」
だが、職員は処刑を行わない。
死なせてたまるものかと怒りを燃やし、彼女の口に一本のロープを咥えさせた。
その先は他でもない、武則天の命を奪うギロチンの刃へと繋がっている。
「生を渇望しろ。全ての苦痛を味わえ。そして無様に無残に死んでいけ」
この程度で、済ませるはずがないだろう。
表情を一切変えず、職員はそう宣言する。
「む、ぐぅ……!」
口を開けば、刃は落ちる。
逆に言えば、武則天が生を望む限り彼女は生きるのだ。
ここからが本番の開始だ。
あらゆる拷問が彼女に降り注ぐ。
あらゆる苦痛が彼女を襲う。
痛みが、苦しみが、快楽が。
全てが彼女の命を奪う死神に早変わりした瞬間だった。
「────」
もはや、武則天は声を上げる気力すら残されていない。
白かった肌は痛々しい火傷跡に塗り潰され、そのうえから幾重にも傷跡が走る。
キャンバスを塗る絵の具のように、彼女の肌はボロボロに汚れていた。
残されたのは、生への渇望のみ。
力の入らない四肢とは違い、食いしばった歯だけが全力を振り絞っている。
「───ギィッ!」
望まぬ肉体の反射で、武則天の喉と上半身が跳ね上がる。
連動して揺れるギロチンの音が、彼女の肌を震わせた。
武則天の秘部に挿入された器具が、稼働を再開したのだ。
無数に棘の付いた鉄の器具が回転し、彼女の秘部を蹂躙する。
快楽を塗り潰すように発生した痛みが、体内から武則天を染め上げていく。
口端から泡を噴き出しながら、彼女は必死に抵抗を続ける。
五分後。器具の回転は止まり、武則天の全身から力が抜ける。
そして五分後、また回転は開始される。
常に刺激を与えるのではなく緩急をつけた痛みは、彼女の感覚を永久に鋭敏なまま保つ。
血と愛液が入り混じった薄く赤い液体を、武則天は股から垂れ流し続ける。
膣と尻穴で繰り返される蹂躙は、武則天の足元に大きな水溜まりを形成していた。
「グ、ゥッ……!」
器具は再び動き出した。
無限に続く地獄に、武則天の精神は頑強に抵抗を続けている。
だが、肉体は限界を超えていた。
「───ヒィっ」
涎で滑った口元から、ロープが外れる。
静かに、滑らかな動きでギロチンは落下を開始した。
「───!」
首を両断する寸前で、しかしギロチンは動きを止める。
首を両断しないよう、あらかじめ設定されていたのだ。
「ひ、は、あぁ……」
死の瞬間を垣間見た武則天。
全身が弛緩し、痙攣を繰り返す。
脳を直接かき回されたような感覚。
恐怖と安堵、その他本人にも不明の感情が入り混じり、武則天の精神は崩壊し始める。
だから、完全に壊れる前に治さなくては。
職員は記憶処理を武則天へと行い、拷問の記憶を一部消去する。
そして新鮮な精神を、再び彼らは凌辱するのだ。
一度の死では、生ぬるい。
永久に、永劫に、彼女は処刑され続ける。