MOD盛り盛りのスカイリムでドヴァキンの従者プレイ~雇い主が万年発情期なんだが~ 作:Ingwelsh
第13話:雇い主は説教を受けるようです
~ハイ・フロスガー 中庭~
スカイリムの中心部、世界のノド。
タムリエル全体を見ても標高の高い部類に入るその山の中腹に、ハイ・フロスガーはある。
山の裾野から雪に覆われ、時には吹雪くこともある寒さ厳しい環境だ。
ハイ・フロスガーの裏手、少々開けている中庭に、ドラゴンと化したBeatriceは降り立った。
翼による風圧で地面の雪がぶわりと舞い上がる。
多少、地面が露出したその範囲にBeatriceがゆっくりと足をつけると、ぐっと首を低くする。
俺が降りやすいようにしてくれているのだ。
長いことふわふわとしていた感覚に襲われていた俺はだいぶ足元が覚束なかったが、何とかBeatriceの首に縋りながら数刻ぶりに地面に足を付ける。
そのままBeatriceの首から手を離し、足を上げたり下ろしたりしていると、ハイ・フロスガー裏手の扉が開くのが見えた。
「また、随分と酔狂な訪れ方をするものだな、若きドラゴンボーンよ」
扉の中から先頭に姿を見せ、Beatriceに声をかけてきたのはアーンゲール師だった。
その後ろからボッリ師、アイナース師、ウルフガー師もついてくる。グレイビアードが揃い踏みだ。
「お久しぶりね、師よ。私がどこからどう現れようと、気にしないのではなくって?」
ドラゴンの姿のまま、普段よりも数段低い声色で、Beatriceが嘯いた。
そんな悪びれない彼女の姿に、アーンゲール師はあからさまに大きな溜め息をついた。
「気にする必要が無いのは確かだが、流石に此度の行いは目に余るものがある。
さっさと人間の姿に戻って中に入るがいい、たっぷりと灸を据えてやる」
そう冷たく言い放って、アーンゲール師はくるりと背中を向けた。
残りの三人も何も言わず――元々何も言わない人たちだが――背を向けるが、こちらに向ける眼差しに、どことなく悲し気な色を帯びていた。
そんな視線と言葉を受けた当のBeatriceは、すぐには動かなかった。
小さく肩をすくめるように翼を動かすと、その身を橙色の炎で包んでいく。
「全く、師は頭が固くていやんなっちゃうわね」
「さすがに、ベアトリーチェは羽目を外しすぎだと思うぞ」
いつものLykaiosの姿に戻り、仕方ないという風にため息をつくBeatriceの脇腹を、俺は小さく小突いた。
~ハイ・フロスガー~
雪風が吹きすさぶ屋外からハイ・フロスガーの建物の中に入ると、一気に寒さが和らぐ。
世間から隔絶された修業の場らしい、石造りの質素で寒々しい建物だが、屋内では火が焚かれており思ったほど冷えは感じなかった。
だが、今の俺はサーベルキャットの毛皮に全身を包まれている。人間の姿だったら、もう少し寒く感じるかもしれない。
扉をくぐってすぐの場所、中央の開けた空間に、アーンゲール師を初めとしてグレイビアードの面々が待ち構えていた。
俺達の姿を認めると、顎をくいとしゃくり視線を開けた場所の中央に投げる。そこまで来いということらしい。
流石にここまで来たらBeatriceにも逆らう様子はない。大人しく指示に従い、グレイビアードの面々に囲まれるように立った。
俺もそれについていくが、床の円形のところに足を踏み入れたところで、アーンゲール師から声がかかった。
「よい、供の者はそこで腰掛けて見ておれ。お主にかける言葉は今は無い」
そうやんわりと止められた俺は、指示された石造りの長椅子に腰を下ろした。
思っていたよりも、石の長椅子は硬く冷たい。毛皮が直に触れる形になっているから、猶のことひんやりと感じられた。
そこから、無言のままでBeatriceを見やる。彼女は円形の床の中心でじっと立っていた。
まるで、グレイビアードからの最後の試練を終えた後、竜語で祝福の言葉を授けられた時のような態勢だ。だがこれから行われるのはそんな喜ばしいものではない。
重苦しい空気をそのままに、アーンゲール師が口を開いた。
「若きドラゴンボーン、ベアトリーチェよ。お前が下界で何を成そうと、何を行おうと、我らの関与するところではない。
既に悪しきアルドゥインは去り、愚かなミラークは滅び去った。ドラゴンボーンの為すべき役目も、今は声の道を究める以外に無かろう。
だが、如何にお前が奔放で淫蕩と言えども、相手は見極めねばならぬ」
「……」
厳かに、淡々と、アーンゲール師が言い含めるようにゆっくりと言葉を投げかけていく。
Beatriceは答えない。口をきゅっと結んだままで、直立不動のままで言葉を聞いていた。
アーンゲール師の説教は終わらない。
「その全身から立ち上るドラゴンの臭気に、歪に変質したお前の魂。
当初から清らかな魂はしておらなんだが、ドラゴンのそれが入り混じった今の、なんと醜悪なことよ。
……それにその腹を見るに、既にドラゴンを
「……はい」
アーンゲール師のいっそ憐れむかのような言葉に、小さくBeatriceが肯定を返した。
俺は座ったままで目を見張った。よく立ち上がらなかったものだと自分でも思う。
確かに、ドラゴンの時はさほど目立たず分からなかったが、Lykaiosの姿に戻った今は幾分か腹が膨らんでいるように見える。
ドラゴンの卵を体内に孕む。そんなことが実際に起こりえるとは。
Beatriceの言葉を聞いて、傍目にも分かるほどにアーンゲール師は落胆した。肩を落とし、大きく息を吐く。
「やれやれ……宿した以上は無下にすることも出来んし、ドラゴンもこの世に生きる命、仕方が無いのだがな。
淫靡に生きるにしても、限度を弁えよ。
ドラゴンボーンとして在る以上、お前の行いはアカトシュとキナレスが見ているのだ。
お前がどう生きて、どう果てるかは我等の与り知るところではないが、それでもお前を見出した、グレイビアードとしての責務がある」
「はい……以後、気をつけます」
アーンゲール師の諭すような言葉に、Beatriceは深く頭を垂れた。
そこでようやく、張りつめていた重たい空気がふっと和らぐ。
それまでとは打って変わって、穏やかさを含んだ声色でアーンゲール師が言葉を紡いだ。
「よい。胎の子を産み落とすまではここに留まるといいだろう。
ところで……随分と変わった種族の供の者を連れておるな。あれは、カジートではあるまい?」
アーンゲール師の瞳が俺に向いた。俺の身体が緊張で硬直する。
Beatriceが視線を彷徨わせ、戸惑った様子で口を開いた。まぁ、彼女には先程俺が直接伝えただけで、実際に場面を見ていないから仕方が無いのだが。
「はい……本人が言うには、サーベルキャットだと。彼は、自身を犯した獣の特徴を、取り込む力があるので」
「なるほど……これは異なものよ。デイドラの悪戯にしても、随分な気にいられようだ。
後で彼を談話室に連れて来なさい。色々と話を聞きたい」
俺を見つめたままでなにやら話が進んでいる。が、悪いようにされる風ではないらしい。
口を噤んだまま、背筋をピンと伸ばしたままの俺の頬を、冷や汗が一筋タラリと流れていった。