MOD盛り盛りのスカイリムでドヴァキンの従者プレイ~雇い主が万年発情期なんだが~ 作:Ingwelsh
~ハイ・フロスガー 談話室~
ハイ・フロスガーをしばし所在無さげに一人ぶらついていると、アイナース師が俺を呼びに来た。
勿論無言で、一言も言葉を発することのない彼だが、身振り手振りで俺に着いてこいと言っているのは伝わった。
恐らく、アーンゲール師が先程言っていた「話がしたい」の頃合いが整ったのだろう。
Beatriceはというと、先程からボッリ師とウルフガー師が傍についてドラゴンの力の使い方を教わっているようだ。
窓から中庭をちらと見たら、ファイアブレスを吐いているBeatriceの姿が見えた。
廊下を歩き、ブーツの靴底をカツカツと鳴らしながら、俺は談話室まで向かうアイナース師の後を追っていく。
やがてアイナース師が広い部屋の前で足を止めて振り返る。ここがそうなのだろう。
俺は内戦クエストは、帝国側について全部終わらせてしまうタイプだったから、この談話室のお世話になることはなかった。
内戦が続いている状態でメインクエストを進めていくとアーンゲール師を議長に休戦協定をまとめることになるのだが、俺は未体験の領域だ。
談話室の大テーブル、入り口から見て左側の真ん中の椅子に腰かけるアーンゲール師が、入り口に立つ俺をフードの奥からじっと見つめていた。
「そこに座るがいい、供の者よ」
「……失礼します」
一礼して部屋に立ち入り、指し示された椅子に腰かける。石製の椅子はひんやりとして毛に覆われた肌にも気持ちいい。
背筋をピンと伸ばしてまっすぐと座る俺の姿を見たアーンゲール師の口元が、僅かに緩んだ。
「ベアトリーチェの供の者というから、どんな無頼者かと思っていたが、案外正しい教育を受けてきたもののようだな」
「あっ、いえ、そんな……どうも」
どうやら第一印象は良好なようだ。思わず頬を染めつつ後頭部に手をやる。というかBeatriceへのアーンゲール師の評価は、存外に低いのだろうか。
俺が姿勢を戻すのを待って、アーンゲール師が机に両の肘をついた。そのまま組んだ手の上に顎を乗せる。
「さて、お主の名前はトージ・アマヤだと、ベアトリーチェから聞いておるが。その名から判断するに、お主はスカイリムの人間ではあるまい?」
「はい……その通りです」
「どこの出身だ?」
続けざまに放たれるアーンゲール師の質問。俺は口を噤むしかなかった。
スカイリムの人間でないのはその通りだ。だが俺の出身はシロディールでもハンマーフェルでも、ましてやエルスウェーアでもない。
タムリエルの外、ニルンの外、この世界の理の外側から来ましたなど、この世界に住まうアーンゲール師に告げてもよいものか。ハーシーン様は神様だし、そもそも世界の外側に住んでいる方だからよかったとしても。
どう答えたものか。アーンゲール師のことだから答えを引き出すことを諦めてくれたりはしないだろう。何しろいくらでも待てる人だ。
散々頭を回し、何とか答えを捻りだした俺が口にした言葉は。
「……分からないんです。気が付いた時には破壊された馬車と一緒に、ホワイトランの街道に放り出されていました」
そう、「覚えてない」で逃げる作戦である。
ぶっちゃけ俺のスカイリムには、ゲームスタートで乗っていた馬車が襲われて死んだと思われ取り残されたドヴァキンが山ほどいる。Beatriceだってそうなるはずだった。
同じようなプロセスを踏んで、その前の記憶を持たない人間がいたっていいじゃないか。いいのだ。きっと、多分。
俺の答えに納得してくれたのか、アーンゲール師が手を解いて背もたれに身体を預けさせる。
「なるほどな……己の出自を知らぬまま、世界を彷徨うか。
不安も大きかろうが、ベアトリーチェに伴い続けていれば、少なくとも道は見えてくることだろう。
あれは、淫蕩で奔放ではあるが、性根の芯はしっかりした娘だ」
アーンゲール師のどこか諦めたような、責任を放棄したような言葉に、俺はしっかと頷いた。
Beatriceは淫蕩で淫乱だ。そこは間違いない。ただ、心が決して折れることのない強さを持っているのも、また間違いない。
そうでなければあんなに自分自身が変質しつつあるのに、変わらず淫蕩でいられるはずもない。
そこは俺自身、確かな確信があった。
そこからはしばらく、アーンゲール師との雑談が始まった。
シャウトは体感したか。ドラゴンを間近に見た時はどう思ったか。ドラゴン語の壁を見たことはあるか。などなど。
俺はゲームとしてのスカイリムを知っているから、答えに窮することもままあったが、こちらに来てからの体験から話すことに終始するよう気をつけた。そうでなければ出自の際の話とバランスが取れない。
そうしてある程度話を重ね、打ち解けたところで、アーンゲール師が俺の腹に視線を落とす。
「ところで、ベアトリーチェと同様トージも妊娠しておるのだな。胎におるのは、やはりサーベルキャットか?」
「妊娠??」
思わずおうむ返しに言葉を返してしまう俺に、アーンゲール師の口角がさらに持ち上がった。
「オーラ・ウィスパーという生命反応を探知するシャウトがある。それを用いた時に、お主の胎にも複数、小さな反応があるのが見えたのでな。
様子を見るに、ベアトリーチェの産卵とさして間を置かずに時を迎えるであろう。あれを留める理由がまた一つ増えたな」
再びテーブルに肘をついたアーンゲール師が、くくと喉を鳴らす。
俺は呆気に取られるしかなかった。サーベルキャット兄弟に中出しされてからまだ6時間程度しか経ってない。
それが既に子供の命の鼓動が見えるほどにまで育ち、ある程度の日が経てばもう出産まで行くという。
いくら何でもサイクルが早すぎやしないだろうか。それともサーベルキャットだとこうなのだろうか。猫だからか。猫だからなのか。
「まぁいずれにせよ、出産まではゆっくりとしていくがいい。雪山の上の石造りの建物である故、優しい環境ではないがな。
産湯くらいは浸からせてやれる、安心して産んでいくがいい。
あぁ、そういえば湯沸かしの説明をせねばならんな、後で案内する」
そう楽し気に話すアーンゲール師の右手がふわっと動いた。
それを受けて、俺は改めて頭を下げた。子供を産むに優しい環境ではないだろうが、野外で産むよりは何倍もいいだろう。
俺は来るその日が思っていたよりも早くに来ることに慄きながら、アーンゲール師との雑談を再開するのであった。