MOD盛り盛りのスカイリムでドヴァキンの従者プレイ~雇い主が万年発情期なんだが~ 作:Ingwelsh
~ハイ・フロスガー~
「トージは居るか」
ハイ・フロスガーにて寝起きするようになって三日が経った頃。
大分俺の腹もBeatriceの腹も膨らみが目立ってきた日の午前10時、ハイ・フロスガーの通路で暖炉に当たっていた俺のところに、アーンゲール師がやって来た。
あ、Beatriceのそれについては「目立ってきた」なんて生易しいものではなかった。人間でいえば余裕で臨月になるくらいにぼっこりしているのだった。今のうちに訂正しておく。
ちなみに俺の今の姿は狐獣人(ふたなり)だ。
先日ドラゴンを狩りに行く前にも試してはいたが、やはり俺に「人間や獣人の姿を自在に切り替えられる」能力が備わっていることは間違いがなさそうだ。
便利といえば便利だが、それなら性別も切り替えることが出来てほしい。あとチンポもネコチンやヒトチンになってほしい。正直イヌ科でいないと収まりが悪くてしょうがない。
変身で胎の中にいる俺の子供の種族にも影響していたらどうしたものかと思ったが、Beatriceにオーラ・ウィスパーと共に触診してもらった結果、元気なサーベルキャットの子供がすくすくと成長していることが分かったので、気にせず変身することにしている。
人間でいることを放棄するわけにはいかないが、どうせケモノになれるならケモノでいたいじゃないですか、ケモナーとしては!
まぁそれはそれとしてだ。俺は椅子から立ち上がってアーンゲール師の視線を受ける。
「どうかしたんですか、アーンゲール師」
「うむ、それがな……
我等の長、パーサーナックスが、お前に会いたいと告げてきた」
「……はい!?」
師から告げられた言葉に、俺は顎が外れるかと思った。
パーサーナックス。グレイビアードの長にして、明確に人間の側に立った数少ないドラゴン。
勿論、スカイリムのメインストーリーでも中核を担い、ドヴァキンと多くの接点を持つ、超重要キャラである。
世界のノドの頂上に住まい、頂上に行くには何ヶ所もの「局地嵐」を抜けなければならないため、彼に直接会えるのはストーリーの中盤以降だ。
それが、こんな早くに。いや、この世界はメインストーリーをクリアした後の扱いなのだから、早くも何も無いのかもしれないが。
ドヴァキンでも何でもない、ただの従者でしかない俺を指名してくるとは、どういう風の吹き回しだろう。
「えっ、いや、パーサーナックスと会えるなんて光栄の至りですけど、どうやって頂上まで行けばいいんです?
俺、シャウト使うどころか竜語を読むことすら出来ないんですけれど……あと、ベアトリーチェも『晴天の空』のシャウトはまだ使えませんよね?」
「なんだ、竜語を解せずスゥームを操れない割には、スゥームの種類については知識があるのか?益々もっておかしなやつよ。
頂上までの道程は問題ない、
「迎え?」
俺が首を傾げた刹那、中庭の方から轟音が響いた。ズズーンという、重量物が落下したような音だ。
突然の強い揺れにパニックになる俺を差し置いて、アーンゲール師は平然と「来たようだな」と一言、そして俺を手招きする。
何が何やら分からないまま、師について中庭へと出る俺。そこで
「オダハヴィーング!?」
思わぬ来客に、俺の口から驚愕と感嘆の混じった声が溢れた。
メインストーリーの最中にドヴァキンとホワイトランの首長によってドラゴンズリーチに誘い出され、大ボス・アルドゥインの潜むソブンガルデへ向かう足掛かりとしてドヴァキンをその背に乗せて飛ぶ、赤い鱗が特徴的なドラゴン。
それがオダハヴィーングだ。
自らの名を呼んだ身重の狐獣人を目にしたオダハヴィーングが、怪訝な眼差しを俺に向けてくる。
「
「お前は俺を知らないだろうが、俺はお前をよく知っている。見ていたからな。
パーサーナックスが俺と話したいと聞いた。お前が迎えに来てくれたのか?」
隣でアーンゲール師が目を剥いていたようだが、その時の俺は全く気付かなかった。まぁ、ドラゴン相手にドヴァキンでもない一般人がこんな口を聞いたら、そりゃ不敬にも程がある。ファレンガー以上だろう。
しかしオダハヴィーングは俺の物言いに気分を害した様子はなく、寧ろ面白いものを見たという風に首を持ち上げてみせた。
「
然るにお前が『トージ』だな? 老体はお前を山頂まで招いた。我が背に乗るがいい」
そうしてオダハヴィーングは、右の前肢を上りやすいよう、斜めになるように踏み出してきた。
俺はその肢に飛びつくようにしながらよじよじと、まるでジャングルジムを前にした子供のように上っていく。
人間を乗せて飛ぶことに関しては、オダハヴィーングは一番
いや、だが、それ以上に。
そんな俺を見て、眼下に見えるアーンゲール師がため息をつきながら肩を落とした。
「何をそんなにはしゃいでおる、馬車を前にした子供でもあるまいに」
「だってアーンゲール師、オダハヴィーングですよ!?
その背中に乗せてもらうなんて、これが興奮せずにいられますか!!」
「ドラゴンと化したベアトリーチェの背中に乗ってやって来たのはお主ではないか……」
益々肩を落としたアーンゲール師だったが、まぁしょうがない、この興奮はスカイリムプレイヤーにしか伝わらないだろう。
現実世界に帰還した暁には、「俺オダハの背中に乗って空を飛んだんだぜー」って自慢してやるんだ……!
「飛ぶぞ、掴まれ」
オダハヴィーングの声に、俺は少年のように目をキラキラさせながら首にしっかと掴まる。
そうして二、三度翼を羽ばたかせると、ふわりとオダハヴィーングの身体が浮いた。風圧に圧されて地面の雪が舞い上がるのが分かる。
そうしてそのまま彼はどんどん高度を上げると、世界のノドの頂上に向けて悠然と飛んでいったのであった。
「ドラゴン最高ーーー!……」
俺の抑えきれない興奮の声が、ハイ・フロスガーの中庭に尾を引いて残っていったと、アーンゲール師は後に語る。
~世界のノド~
数分程度の飛行時間だっただろうか。
オダハヴィーングが世界のノドの上空から頂上の平地に向けて、ゆっくりと降下していく。
頂上に積もるパウダースノーをふわりと舞い上げ、柔らかく着地。そして俺を上らせるときにそうしたように、右前肢をすっと前に出した。
梯子を下りるように鱗の出っ張りに手をかけながら、一歩一歩確実に降りていった俺の足が、山頂の雪を踏む。肉球に直に伝わる冷たさに、思わず足を持ち上げた。
そして山頂の反対側、崩れかかった
「
翼がボロボロになった、煤けた緑色の鱗を持つ老竜、パーサーナックスが
俺は
それはハーシーン様の前に跪いた時とは違う。忠誠でも隷属でもなく、純然たる敬意。
パーサーナックスという一匹の、長い時を生き、声の道に生きるドラゴンへの、スカイリムプレイヤーとして抱く敬意が、そうさせたのだ。
狐の頭を垂れたまま、俺はゆっくり、噛み締めるように言葉を紡ぐ。
「パーサーナックス、この場に招いて下さり、深く感謝します。
貴方と直接、話が出来るなんて、思ってもみなかった。ありがとうございます」
「面を上げよ、
私はただ、お前と、
そう優しげな声で告げられて、俺は顔を上げ、パーサーナックスと正面から向かい合った。
俺を言葉の壁から見下ろすパーサーナックスの瞳は、どこまでも深い色を湛え、どこまでも優し気な眼差しをしていた。