MOD盛り盛りのスカイリムでドヴァキンの従者プレイ~雇い主が万年発情期なんだが~ 作:Ingwelsh
第1話:雇い主は街でも有名らしいです
~ホワイトラン領・街道~
Beatrice。性別女、種族Lykaios、Lv10、戦士。
天谷桐士。性別男、種族Breton?、Lv1、一般人。
馬車を破壊された二人は、周囲の死体から使えるものをかき集めた後、徒歩で街道を移動していた。
なにせ戦いになった時に、役立てるのがベアトリーチェしかいない現状だ。下手に道を外れて野生動物や山賊にちょっかいを出すわけにはいかない。
だが、悲しいことに天谷桐士はどこまでも一般人であった。
「ベ、ベアトリーチェ……すまない、少し、休憩を……」
荷物で膨らんだバックパックを背負い、足取り重くぜーはーと息を荒くしている俺。
Beatriceが呆れ顔で後ろを振り返った。彼女のバックパックも膨らんではいるが、対して足取りは軽快そのものだ。
「トージ、貴方一応は荷物持ちでしょう? 男なのに、その程度でヒーコラ言ってどうするのよ」
「う、五月蠅い……冒険者と一般人を、一緒にするな……!
第一、俺はインドア派なんだよ……」
そう反論してBeatriceをにらみつけるが、その瞳には力が無かったことだろう。
ため息をついて肩をすくめたBeatriceは、前方を指さした。その先には高く聳え立つ大きな城砦が見える。
「もう少しだからしっかりしなさい。ほら、ホワイトランが見えて来たわよ」
ホワイトラン。スカイリムの中央部に位置する、交通と貿易の要所。城砦、ドラゴンズリーチの膝元に広がる街は栄えており、活気に満ち溢れた場所だ。
メインストーリーの序盤で訪れることも相まって、スカイリムのプレイヤーのかなりの割合が、この街の世話になっていることだろう。
「こうして見ると、大きいな、ドラゴンズリーチは……」
遠方から見ても分かるその巨大さに、圧倒されたようにつぶやく。そんな俺を見てBeatriceはくすりと笑った。
「今更そんなことを言うなんて、本当にインドア派なのね。はぐれないよう、しっかりついてらっしゃい。」
馬屋の前の角を左に曲がって、Beatriceは見張り門をくぐってゆく。俺は遅れないよう歩を早めようとした、が、身体がそれを許してはくれなかった。
~ホワイトラン~
二つの見張り門をくぐり、街の中に入ると、途端に喧騒が耳に押し寄せてきた。
鍛冶場で鉄を叩く職人、市場での客引き、子供たちの笑い声、談笑する衛兵。
その街で生きている人たちが、平和な時を過ごしていた。
「おー……ホワイトランの街だ……」
一人称視点で見た時と同じ場面が、いつもゲームで見ているのとは段違いのリアリティで視界を彩っているのに、俺は感嘆の声を漏らした。
それを微笑まし気に見ていたBeatriceが、城門の前から移動して俺を手招きする。そちらに身体を寄せた俺に、Beatriceはバックパックを下ろしながら口を開いた。
「私と貴方で、手分けして物資を売りに行きましょう。私は鍛冶屋に行くから、貴方は雑貨屋に行ってちょうだい。
売ってほしい物だけ貴方に渡すから、ベレソアに手持ちの物全部買い取ってもらって。
さあ、荷物を整理するわよ。バックパック下ろして」
俺は言われるがままに、背負っていたバックパックを地面に下ろした。中に入っていた剣、ダガー、鎧などをBeatriceに渡すと、骨、皮、鉱石を受け取る。
そうしてバックパックに詰め直し、背負いあげると、先程よりもずしんと重さが加わった。
「お、重……!」
「骨類が重さがあるからね、しょうがないわ。大丈夫よ、ゆっくり歩いてもいいから」
そう言うと、軽くなったバックパックを背負ってBeatriceは城門からほど近くの鍛冶屋に向かっていった。
戦乙女の炉はホワイトランの入り口傍にある鍛冶屋だ。その利便性から、利用するプレイヤーも多い。その分、何か事件があると真っ先に被害に遭ってしまうのだが。
俺は歯噛みした。Beatriceは軽い荷物を持ってすぐ傍の店へ行けるのに、自分は重たい荷物を背負ってだいぶ歩かないといけない。不公平だ。
だが嘆いていてもしょうがない。俺は足を引きずるようにして、雑貨屋への道を歩いて行った。
~ベレソア一般雑貨店~
10分ほどかけて、俺は目的の店に辿り着いた。店の場所こそよく知っているものの、実際に荷物を背負って歩いていくとだいぶ感覚が違う。
扉を開けると、ブレトンの男性が声をかけてきた。
「よく見てくれ。探しているものが必ずあるはずだ……おっと、見ない顔だな?」
店主――ベレソアが、入って来た俺を品定めするように眺める。その所作にほんの僅かに顔をしかめたが、それも一瞬のことだ。カウンターの前まで足を運び、バックパックを置く。
「これらの、買取をお願いしたい」
「よし来た。中のは全部ってことでいいな? 少し、そこの椅子に腰かけて待っていてくれ」
バックパックを開き、中の品物を取り出していくベレソア。俺は言われた通り、窓際の椅子に腰を下ろした。
窓の外から、市場の人々の声が聞こえてくる。この店は市場に面しているため、城門の前よりも声が大きく聞こえた。
疲れのせいか、状況整理のためか、ぼんやりと窓の外を眺める俺。と、そこにベレソアが声をかけてくる。
「お前さん、おおかたベアトリーチェ女史の雇った荷物持ち、ってところだろう? 戦士にしては貧相すぎるものな」
その言葉に、ハッとして視線を戻す。何故そこまで看破されたのか。そんな驚きが瞳から溢れている。
「どうして分かった、って顔をしているな? 簡単なことだよ、お前さんの背負ってきたバックパック、あれは女史のお手製だからな。
ここを見てみな、名前が入っているだろう」
ベレソアが空になったバックパックを持ち上げて、よく見えるように側面を見せてくる。その部分に確かに「Beatrice McCall」の刺繍がされていた。
なるほど、手製のバックパックなら出所や所属がはっきりするのも無理はない。
「ベアトリーチェ、女史と言ったか? 有名人なのか?」
「あぁ、ホワイトランで知らない人間はいないだろうよ、何しろ、従士様であらせられるからな」
問いかけると、ベレソアは骨類を床に置きながらそう答えた。
ホワイトランの従士。首長・大バルグルーフにその有用性を認められた人物。となると、彼女は既に西の監視塔での事件に対処済みということか。
そういえば先程Beatriceに渡された荷物の中に、明らかに他よりも大きな骨があった。ドラゴンのものなのだろう。
「最近、急にドラゴンの噂を耳にするようになったが、こうして女史に骨を持ち込まれるとおちおちしてられんな……よし、オーケー。これが代金だ」
鑑定が済んだベレソアが、俺に向かって手招きしてくる。立ち上がり、カウンターに向かった俺の眼前に、差し出される皮袋。受け取ると程よくずっしり来る。
中を開けて確認すると、1000枚ほどの金貨が入っているのが見えた。
「ベアトリーチェ女史に雇われた男ってことだ、もう女史にいただかれちまったんだろう? 見境なく男を食うからな」
金を懐にしまうのを確認したベレソアが、途端に下卑た視線を向けてきた。俺は思わず言葉に詰まる……実際食われたわけだが、口にするのは恥ずかしい話題だ。
だが、沈黙は雄弁に勝る。状況を把握したベレソアが高らかに笑った。
「はっはっはっ、そうだろうな、そうだろうとも。
気にするな、この街で女史と身体を交わさなかった男はいないぞ。首長であっても、浮浪者であってもだ。勿論、俺もな」
ベレソアの言葉に、思わず俺は額を押さえた。節操が無いにしても程がある。むしろBeatriceの貞操観念はどうなっているんだ、と疑問に思わざるを得ない。
明らかに困惑した表情の俺を見て、ベレソアはカウンターから出てきて窓の外を指さした。
「ここだけの話だがな、女史はどこででもヤるし、誰とでもヤる女だ。辺りに人が居ようが居まいが全くお構いなし。
それでもいいって思えるほどに、魅力にあふれた女だから、皆やめられないんだな。その証拠に……ほら、耳を澄ませてみな」
声を潜めるベレソア。耳をそばだてると……店の外から確かに、不可解な音が聞こえてきた。
肉と肉がぶつかり合う音。くちゅくちゅという水音。そして喘ぎ声。
「まさか……ヤってるのか……?」
「ヤっているんだなこれが。ジョンの坊やでも捕まえてるかね?」
愕然とする俺に対し、ベレソアはどこまでもいつも通りだ。肩をすくめて両手を広げるベレソアに対し、俺は力なく椅子に再び座り込む。
まさか自分の作ったキャラクターが、こんな形で街で有名になっているとか。考えたくなかった。
「まぁ諦めて受け入れるこったな。女史は傭兵を大事にするから、死ぬことはそうそうないだろうが、ま、頑張れよ」
ベレソアが俺の肩を叩いてくる。荷物は軽くなったのに心が重い。もう一つ大きく、ため息をつくしかなかった。
プロローグから本編に入って三人称視点になるのもあれなので、一人称視点に修正しました。