MOD盛り盛りのスカイリムでドヴァキンの従者プレイ~雇い主が万年発情期なんだが~ 作:Ingwelsh
~ウィンターホールド~
ソリチュードからウィンターホールドまで、馬車で揺られること……多分一時間から二時間ほど。具体的な時間は分からない。俺のパソコンにインストールされているスカイリムなら、移動は一瞬だし現地時間も表示するMODをインストールされているから分かるのに、なんかもどかしい。
「着いたわ。ここね」
「うぅ~、寒っ……さすがタムリエルの北の端……」
馬車の御者に50ゴールドを支払って下りると、これまでよりも一層に冷たい風と降りしきる雪が肌を刺した。いや、雪と風ならともかく、ほとんど吹雪だ。こんな中に防寒具もなしに突っ立っているなんて、いくら俺もBeatriceも獣人だからって無茶過ぎる。温度変化をリアルにするMODを導入していなくてよかった。
「『フローズン・ハース』裏手の廃墟、って言ってたっけ?」
「そうよ。この吹雪の中、女史をお待たせするのも悪いわ。急ぎましょう」
吹雪で若干視界が悪い中で、ウィンターホールドに入ってすぐ右手にある「フローズン・ハース」、その裏手に回る。かつての大崩壊で崩壊し、そのままになっているのであろう廃墟の中には、アークメイジのローブに身を包んだRa'yeniaが立っていた。
「来たわね」
「ラエニヤ女史、お手紙ありがとうございます」
口角を小さく持ち上げて笑うRa'yeniaに、まずBeatriceが頭を下げる。ここまで俺のために尽力して、この寒空の中待ってくれているのだ。有り難い限りである。俺の頭も自然と下がった。
「ありがとう。それで、何が分かったんだ」
礼を述べながら話を切り出すと、Ra'yeniaは手に持った折りたたんだ二枚の紙を、こちらに差し出してきた。
「分かったことは、二つあるわ。アルケイナエウムが所蔵する書物の中に、トージが元の世界に帰るのに必要な事柄の、ヒントを見つけたの」
その言葉に俺とBeatriceが目を見開く。まさか本当に、アルケイナエウムに情報が眠っているとは。Beatriceはまだ可能性があるだろうが、俺は大学の中に入ることは難しいだろう。Ra'yeniaの助力がなかったら得られなかったはずだ。
「そうか……それで俺達を、ウィンターホールドまで呼び出したんだな」
「アルケイナエウムの書籍をおおっぴらに持ち出すわけには行きませんものね」
俺が口を開き、Beatriceも腕を組んで頷くと、Ra'yeniaが大きく肩をすくめながら笑った。
「そういうことよ。いくら私がアークメイジだからって、大学の秘蔵図書を持ち出すわけにはいかないからね。今回持ってきたのも、内容を抜粋したメモ程度のものよ」
そう言いながら俺の手に、折りたたんだメモを握らせるRa'yeniaだ。確かに引用元の書籍を持ち出せれば一番いいんだろうが、それはアルケイナエウムの、ひいては大学の持ち物で、重要な書籍。無断で持ち出したなどとあったら、あの司書のウラッグ・グロ・シューブが絶対黙っていないだろう。本の写しを作るにしても、手書きでは当然時間がかかるわけで。
ともあれ、ここにあるのは本の内容を抜粋したメモだ。一枚目を指し示しながらRa'yeniaが言う。
「まずは、一枚目。トージの帰ろうとしている、世界についての情報よ」
「なになに……」
メモを開くと、そこには会話文がいくつか書かれていた。内容はこうだ。
『第二紀758年栽培の月4日。ラグナルがまたあの夢を見たと深刻そうな顔で告げてきた。鉄の箱が石の地面を独りでに走り、見上げるほどの建物が無数に並んだ町の夢を。』
『第二紀758年真央の月11日。あの夢を見たと訴えるものは日に日に増えてきている。今日はヒャルマルとオロフ、フレダが揃ってやって来た。驚くことに三人とも、同じように白い壁の部屋の中にいて、光る板を見ていたと主張した。』
「……これは」
「誰かの手記……の一部かしら? 随分と内容が抽象的だけれど……」
記された内容を見て、俺は大きく目を見開いた。俺の隣でBeatriceが不思議そうな表情をしている。
独りでに走る鉄の箱。見上げるほどの建物。白い壁の部屋。光る板。恐らくは、現代日本に普通にあるものを指すと思われる言葉ばかりだ。
俺の顔を見て、Ra'yeniaが頷く。
「そうよ。このメモの出典元は『ザエボス聖堂の管理者の記録』というタイトルで、第三紀初頭頃までハーフィンガルに存在したとされる、ザエボス聖堂を管理していた人間の日々の生活、集う人々との対話の内容を記したものなの」
彼女の説明に、真剣な表情になる俺だ。聖堂には多くの人が集まる。その聖堂の管理人となれば、記録する情報は歴史的にも意味があるだろう。しかしそんな聖堂があったとは、全くもって知らなかった。
「ザエボス聖堂は
「デイドラ!?」
「もしかして、アカトシュの聖堂の裏に、デイドラの聖堂が……」
そして続けて話された彼女の言葉に、俺もBeatriceも驚きに目を見張る。まさか、エイドラの聖堂に隠れてデイドラの聖堂を作っていたなんて。そんな無茶なことをする人物がいたとは。
Beatriceが信じられないと見張った目を見つめ返して、Ra'yeniaがこくりと頷く。
「そういうこと。アカトシュの祠の裏に隠し通路があって、そこを通るとヴァーミルナの祠があったそうよ。他にも何柱か、デイドラの祠があったとか」
「その聖堂の……管理人に、聖堂に集った人が、この話を?」
ふっと笑いながら話したRa'yeniaに、俺がメモから顔を上げると、大きく頷いてから彼女は再び話し始めた。
「ヴァーミルナは悪夢を司るデイドラよ。彼女が見せた悪夢だと、私も最初読んだ時は思ったんだけれど、悪夢にしては禍々しさの薄い内容だし、何よりトージの話との類似性が各所に見られる。怪しいと思わない?」
「そうか……確かにそうだ」
彼女の言葉に、俺は素直に同意した。正直、ただの悪夢で片付けるには夢の内容と俺の世界に符合する点が多すぎる。この書き方を見る限りでは俺の世界をデイドラが見てきて、その内容を夢に見せている、と考えるのが自然だろう。
それにハーシーン様も「この世界に行われた改変」という形で俺達の世界からの関与を感知している。街の人々はそんなこと一切気にした様子はないし、認識している素振りもないのにだ。
Beatriceが難しい表情をしながら口を開く。
「トージがこの世界に来たことには、デイドラが関与している。そう見てよろしいのですね?」
「どのデイドラか、までは分からない。この言葉を残した四人の人物がどのデイドラを崇拝していたかも分からないし。けれど、関与していること、エセリウスの外の世界を知っていることは間違いないわ」
彼女の問いかけにRa'yeniaははっきりと頷いた。どのデイドラが関与しているのか分からないのは少し残念だが、それはこの先調べていけばいいだろう。もしかしたらファルクリースにあったという聖堂の跡地なんかに、情報が残っているかも知れない。
俺がすんと鼻を鳴らして眉間にシワを寄せると、Ra'yeniaがひらりと手を動かした。俺の手に握られた、もう一枚のメモに目を向ける。
「こっちについてはこのくらいね。それで、もう一枚の方。これは帰る手段についての情報と言えるわね」
彼女に促されながらメモを開くと、そこにはどこかの遺跡の開き方、内部の様子、そして最深部で起こったことが時系列を追って記されていた。
遺跡の石棺の奥には扉があること。扉の向こうは下に下にと下っていくが、難しい道のりではないこと。最深部にはアカトシュの祠があること。
それだけを見ると遺跡の探索記録だが、どうもそういう意味合いで写してきたわけではないらしい。Ra'yeniaが指を一本立ててみせる。
「トージが元の世界に戻るには『帰還』のシャウトが必要で、ドラゴンボーンではないトージがシャウトを短期間で身につけるには、ドラゴンになる以外に方法がない……前にそう話していたわよね?」
「ああ、そうだが……」
彼女のもったいぶったような問いかけに、俺は同意を返すが。その直後、Ra'yeniaはとんでもないことを話しだした。
「これは『アカトシュの恵み』という本の一節よ。神話時代、アカトシュの住まう領域に足を踏み入れ、アカトシュの恩恵を授かって
「なんですって!?」
彼女の放った言葉に、Beatriceが驚きに目を見開く。
ドラゴンになる。人間が。そんな事が神話時代に起こっていたなんて。いや、だが昔はドラゴンが普通にタムリエルの空を飛び回っていたと聞く。ドラゴンに「なる」ということも、ありえない話ではなかったのかも知れない。
しかしこの人物、ドラゴンになったのならどうやってこの本を残したんだろう。爪文字で石版に刻んだりして、後世の人物が翻訳して本にしたのだろうか。
「アカトシュの恩恵を受ければ……ドラゴンに?」
「そう。でもアカトシュの祠に祈るだけじゃダメよ。アカトシュの住む領域に行き、恵みを授からなければならない。そこで、ここ」
俺が漏らした言葉に頷きながら、Ra'yeniaがメモの一番上を指差す。走り書きされるように大きく書かれたそれは、「スカイテンプルの遺跡」。
「大学の北東にある『スカイテンプルの遺跡』よ。ここはとても小さな遺跡なのだけれど、雪の下に建物が続いていて、アカトシュの領域への扉が隠してある、と書かれているわ」
彼女の発言に、俺もBeatriceも目を見開いた。スカイテンプルの遺跡に行くにあたって、ウィンターホールドの町は一番近い場所だ。ここから流氷の上を渡ったり、冷たい海を泳いだりしないといけないが、そこまで距離は離れていない。
「もし、それが本当なら……」
「ここまで来たのは遠回りではないはずだわ。そんなに距離が離れていない」
俺とBeatriceが顔を見合わせる。もしかして、Ra'yeniaが俺達をここに呼び寄せた理由は、このメモを渡すだけではなく。
「そうね。海岸沿いに行って海を渡ればすぐそこよ。ここまで言ったら、あとはどうすればいいか分かるわよね?」
にんまりと笑いながら俺の肩を叩くRa'yenia。彼女にしっかと頷いて、俺は改めて深く頭を下げた。有り難い。本当に有り難い。
「ありがとう、Ra'yenia」
「ご助力に感謝します、女史」
そうして二人、Ra'yeniaに礼を述べると。ウィンターホールドの北岸の先に浮かぶ島を目指して、吹雪の中を歩き出したのだった。