※この作品はR-18です。

MOD盛り盛りのスカイリムでドヴァキンの従者プレイ~雇い主が万年発情期なんだが~   作:Ingwelsh

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第4話:雇い主の他にもドヴァキンはいるようです

~ジョルバスクル~

 

 

 盛況に終わった産卵ショーを終えたBeatriceが、同様に産気づいたリアと入れ替わりに立ち上がる。

 そしてこちらに向かって歩き出そうとした瞬間。向かって右手、地下の居住区から一人、上がってくる者がいた。

 重装鎧に特有の、硬い金属同士がこすれ合う音。具足の重量感のある足音。背中に背負われた両手斧の長い柄。

 明らかに重戦士であろうその人物は、女性のArgonianだった。

 

 顔に施された簡素ながら目立つ戦化粧、黒目の大きな水色の澄んだ瞳、深い緑色の鱗に覆われた顔に走る傷、後頭部を飾る何枚もの鳥の羽。

 Argonianの美醜感覚の程度は分からないが、衆目を引く女性であることは疑いようもない。出るところに出れば、間違いなく稼げることだろう。

 そんな美女の顔つきに、俺はいやに見覚えがあった。いや、見間違うはずもなかった。

 何故なら。彼女は間違いなく、「俺と最も付き合いが長い」スカイリムの住人であるからだ。

 思わず椅子から立ち上がって叫ぶ。

 

「Ingrid(イングリッド)!!」

 

 名前を呼ばれたArgonian――Ingridがこちらを見て、おやっと言う表情を見せた。それと同時にジョルバスクル内の全員が、そう全員が俺に視線を投げてくる。

 それに気づき、俺は慌てて口を塞ぐ。向けられている視線に少なからず、剣呑な空気を感じ取ったからだ。

 この世界に迷い込んで日が浅い俺にだって、自分に向けられる「怒り」の感情くらいは察知できる。あれは、俺をよそ者と見做した上での「不敬に対する怒り」の感情だ。

 まずい、実にまずい。いくら情事に耽っているとはいえ彼らは一流の戦士だ。ただの荷物持ちでしかない俺など、彼らにとってはそれこそ吹けば飛ぶような塵埃だ。

 両脚が笑い出すのを感じ取った頃合いに、Ingridはその場でパンパンと両手を叩いた。

 

「はいはい、皆その抜身のナイフをしまいなさい。同胞団の導き手への敬意など、団員でない人間にまで強制するものでもないでしょう」

 

 Argonian特有のしゃがれた低い声が、ジョルバスクルの中に響き渡る。 ドーム状になった屋根のおかげで、声は存外、遠くの方までよく届いた。

 そしてその声に従い、皆が次々に視線を逸らし、食べては飲んでを再開する。リアの産卵ショーに再び熱狂し出す団員も数多かった。

 Beatriceはというと、足早にIngridに駆け寄って何かを話している。きっと、先の俺の非礼を詫びているのだろう。

 俺も直接詫びに行った方がいいだろうか、と思案していると、Beatriceが無言でこちらに手招きしている。やはり行った方がいいらしい。

 慌てて傍に駆け寄ると、俺の後頭部をガバッと押さえつけるようにして、Beatriceが手を回してきた。必然的に、Ingridに頭を下げる形になる。

 

「本当にうちの従者が無礼を働いてすみませんでした……ほら、トージも謝んなさい!」

「あ、あぁ……すまなかった」

 

 Beatriceに促されて、俺は素直にIngridに謝った。内心でビクビクしていると、不意にふっと、頭を抑える力が軽くなったのを感じる。

 視線を上に動かすと、Ingridの手が俺の頭を押さえるBeatriceの手にかけられているのが分かった。

 

「大丈夫よベアトリーチェ、そしてその従者も。先程も言ったけれど、同胞団の団員でもない人間にまで、私へ敬意を払うことを強制できるものではないわ」

 

 トーンの低い、それでいて思慮深さと慈愛に満ちた声が耳に響く。Beatriceが俺の頭から手をどけたのを感じ取ると、俺は再び顔を上げてIngridに向かい合った。

 

 Ingridは俺が、スカイリムをプレイして一番初めに作成したPCだ。それこそMODについて知るようになる前の、まっさらな状態のスカイリムでプレイしていた頃からの付き合いである。

 得意武器は両手斧、両手武器と重装と鍛冶に優れ、その剛腕と斧捌きで数多のドラゴンを、ストームクロークを、山賊を屠って来た、スカイリムでも指折りの戦士だ。

 正直彼女を動かしている頃はもっと荒々しい性格の、豪胆な女性を想像していたのだが、予想していた以上に物腰柔らかで穏やかな人物なのには、少々面喰った。

 

 本来、ゲーム中に自分の作成したキャラクターはPC一人しか登場しえない。そのセーブデータの枠を超え、自身が作成したPCをNPCとして(・・・・・・)追加するMODを、俺のスカイリムには導入してある。

 Ingridは同胞団クエストをクリア済みなので、ジョルバスクルに常駐させていたのだが……ここでは、コドラク・ホワイトメインに代わる新たな導き手となっているようだ。

 

「それにしても、ホワイトランには初めて来たはずなのに、よくイングリッドの名前を知っていたわね?」

 

 Beatriceが訝しげに俺の顔を見てくる。俺は内心でぎくりとした。そう、俺は『トージとして』ホワイトランを訪れるのは、今回が初めてなのだ。

 当然ジョルバスクルに立ち入るのも初めてだし、導き手のIngridと出会うのもこれが初めて。それが顔を一見しただけで名前をぴたりと言い当てるのは、何ともおかしな話なのである。

 俺は背中に冷たいものが走るのを感じながら、やおら口を開いた。

 

「ほ、ほら、同胞団の導き手に、あ、新たな者が就任したニュースを、前に宿屋で聞いていたんだよ。大きなニュースだったからな」

「あら、やはりそうだったのね? 私の就任から新入団員も大分増えたから、あちこちに情報が伝わっていったのね」

 

 どもりながらも答えた俺に、Ingridが腕組みをして相槌を打った。よかった、何とか切り抜けられたらしい。

 右手を顎にやり、ふぅんと声を漏らすBeatrice。そんな彼女に、Ingridは指を振りながら声をかけた。

 

「そうそう、貴女がここに居るならちょうどいいわ。一つお願いしたいことがあるのよ」

「はい、何でしょうイングリッド」

 

 Ingridの声に反応したBeatriceが、びしっと居住まいを正してみせる。俺もそれに倣い、姿勢を改めた。

 Ingridはふふっと微笑むと、地図を取り出しその一点を指さした。ホワイトランの東側、ホワイト側の河原沿いだ。

 

「今日中に、出来れば今すぐに、この場所に行ってきてほしいの」

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